「1000兆円」を超える借金…「利上げ」で返済の金額も跳ね上がる パンパンに膨らんだ国債残高の行方は

 

 日銀は19日の金融政策決定会合でマイナス金利の解除を決めた。今後は次の利上げのタイミングを模索するが、国の借金である国債の利払い費が増えることも、金利上昇時に生じる懸念だ。財政の専門家は「国債費の増加が重荷になる前に、予算の見直しなど財政再建を急ぐ必要がある」と指摘する。

◆金融緩和前に比べて「1.5倍増」
 マイナス金利など日銀の大規模緩和の下では金利が低く抑えられるので、政府は借金である国債発行をしやすくなり財政が緩んだ。緩和開始前の2012年度末に705兆円だった国債残高は22年度末に1027兆円に膨張。23年度末には1075兆円に達する見込みで、緩和前の1.5倍となる。

 

 

 財務省は2月、金利が上昇した際の利払い費増について試算を公表した。名目経済成長率3%と消費者物価上昇率2%を前提にした場合、27年度の想定金利は2.4%に上がると仮定。利払い費は15.3兆円に増え、24年度の9.7兆円から1.6倍に増える。
 

 国の予算は膨張を続けており、24年度の一般会計当初予算における歳出総額は112兆円。そんな中、政府は27年度までの5年間における防衛費を総額43兆円に増やす方針で、今後税収が増えなければ、子育てや社会福祉など暮らしに欠かせない予算を圧迫しかねない。

 日本総合研究所の河村小百合氏は「歳出削減と並行し、欧米のように業績絶好調の企業や富裕層に応分の負担を求めるなど、国全体で財政再建に取り組むことが必要だ」と強調する。(高田みのり、市川千晴)

 

【詳しく】日銀 植田総裁「大規模金融緩和策は役割果たした」 アベノミクスの総括は皆無の記者会見

 

「最悪です」日銀のマイナス金利解除に「国民貧困化の加速は決定的」

 

 

日銀の植田総裁は金融政策決定会合のあとの記者会見で「マイナス金利政策などこれまでの大規模な金融緩和策は、その役割を果たしたと考えている」と述べた上で、当面は緩和的な金融環境を続けていく考えを強調しました。

 

この中で植田総裁は「賃金と物価の好循環を確認し、2%の物価安定の目標が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。これまでのイールドカーブ・コントロール、およびマイナス金利政策といった、大規模な金融緩和策は、その役割を果たしたと考えている」と述べました。

その判断の理由について植田総裁は「春闘での賃金の妥結状況は重要な判断のポイントの1つであるので、実際その通りに判断の大きな材料にした。大企業の賃金の動向をみると、中小企業は少し弱いということはあっても全体としてはある程度の姿になるのではないかということで今回の判断に至った」と述べました。

その上で、今後の利上げについて「金利を引き上げるペースは経済物価の見通し次第になる。ただし、現在、手元にある見通しを前提にすると、急激な上昇というのは避けられるとみている」と述べ、当面は緩和的な金融環境を続ける考えを強調しました。

また今回の決定でこれまでと同じ程度としている長期国債の買い入れ額について「大規模な緩和の終了後はバランスシート縮小を視野に入れていくというつもりでいる。将来のどこかの時点で買い入れ額を減らしていくということも考えたいと思うが、今、具体的に申し上げられる段階ではない」と述べました。

一方、マイナス金利政策の解除が日本経済に与える影響について貸出金利や預金金利の設定は各金融機関の判断だとした上で、「短期金利の上昇は0.1%程度にとどまる。また、これまでと同程度の国債買い入れを継続し、長期金利が急激に上昇する場合は機動的に買い入れオペの増額などを実施する方針で、預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとは見ていない」と述べ、影響は限定的だという見解を示しました。

さらに、これまでの大規模緩和について「異次元の緩和は、一応、役割を果たしたと考えている。異次元の緩和は終了したが、過去に買った国債が残高として大量にバランスシートに残り、同じことはETFについても言える。過去の異次元の緩和の遺産のようなものは当面そういう意味では残り続ける」と述べました。

 

記者会見の質疑応答を詳しくお伝えします。

「大規模な金融緩和政策は、その役割を果たした」
植田総裁は「賃金と物価の好循環を確認し、2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した。これまでのイールドカーブ・コントロールおよびマイナス金利政策といった、大規模な金融緩和政策は、その役割を果たしたと考えている」と述べました。

「当面、緩和的な金融環境が継続」
植田総裁は、「短期金利の操作を主たる政策手段として、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営する。現時点の経済・物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている」と述べました。

「賃金と物価の好循環の強まり確認」
植田総裁はマイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の転換に踏み切った背景について、「ことしの春闘では昨年に続き、しっかりとした賃上げが実現する可能性は高く、企業からのヒアリング情報でも幅広い企業で賃上げの動きが続いているとうかがわれる。これまでの緩やかな賃金上昇も受けてサービス価格の緩やかな上昇が続いている。このように最近のデータやヒアリング情報からは賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、物価安定の目標が持続的、安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」と述べました。

「預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとは見ていない」
植田総裁は、今回のマイナス金利の解除でいわゆる「金利のある世界」が戻ることの日本経済への影響について、「貸出金利あるいは預金金利は今回の政策変更を受けて市場金利が多少変化するが、その動向を踏まえて各金融機関の判断で設定されると思う。もっとも今回の政策変更に伴う短期金利の上昇は0.1%程度にとどまる。また、これまでと同程度の国債買い入れを継続し、さらに長期金利が急激に上昇する場合は機動的に買い入れオペの増額などを実施する方針だ。このため、今回の措置を受けて預金金利や貸出金利が大幅に上昇するとは見ていない」と述べ、影響は限定的だという見解を示しました。

また先行きについても「現時点の経済物価見通しを前提にすると当面、緩和的な金融、経済環境は継続すると考えているので、こうした緩和的な金融環境が経済と物価をしっかりと支える方向に作用するとみている」と述べました。

「金利水準は市場が決める」

植田総裁は、「国債買い入れは当面これまでと同程度の額で継続するが、その上で金利水準は市場が決めるものというふうに考えている。ただし、金利が急激に上昇する場合は機動的なオペを打つということはバックストップとして担保しておきたい」と述べました。

長期国債の買い入れ「バランスシート縮小を視野に」
植田総裁は長期国債の買い入れについて「大規模な緩和の終了後はバランスシート縮小を視野に入れていくというつもりでいる。将来のどこかの時点で買い入れ額を減らしていくということも考えたいと思うが、今、具体的に申し上げられる段階ではない」と述べました。

利上げのペース「急激な上昇は避けられる」
植田総裁は今後の利上げのペースについて「金利を引き上げるペースは経済物価の見通し次第になる。ただし、現在、手元にある見通しを前提にすると、急激な上昇というのは避けられるとみている」と述べました。

春闘の結果「判断の大きな材料」
植田総裁は、大幅な賃上げが相次いだ今回の春闘の結果について、「予告してきたように春闘での賃金の妥結状況は重要な判断のポイントの1つであるので、実際その通りに判断の大きな材料にさせていただいた」と述べました。

利上げの判断「物価見通し上振れ 上振れリスクが高まれば」
植田総裁は今後の利上げの判断について「おおまかには物価見通しがはっきり上振れるとか、中心見通しがそれほど動かないまでも上振れリスクが高まることがあれば、政策変更の理由になると思う」と述べました。

緩和的な金融環境「物価上昇率2%下回っている間は続く」
植田総裁は物価目標の達成まで緩和的な金融環境を続けるのか問われたのに対して「理屈上は基調的な物価上昇率がまだ2%には達していないと考えている。2%を下回っている間は広い意味では緩和的な金融環境が続くということだと思うが、基調的な物価が上昇していけばだんだん緩和の程度は縮小していくということだと思う」と述べました。

中小企業の賃上げ「ヒアリング先の半分以上 賃上げ計画」
植田総裁は中小企業の賃上げの広がりをどのように判断したのかについて「今回は、短観で調査している中堅・中小企業よりも、さらに小さい事業者も含めてヒアリングを実施した。その結果、ヒアリング先の半分以上の所から賃上げの計画があるという回答を得たということも1つの情報になった」と述べました。

そのうえで「特に小規模の企業はなかなか賃金を上げるのは大変なところも多いことは認識しているが、小規模企業は、全体あるいは大企業がどういう賃金設定をしていくかということを見つつ自分たちの賃金設定も決めていくという傾向がある。その点も加味して今後の中小企業の賃金の動向を予想した」と述べました。

円安「物価見通しに大きな影響なら対応」
植田総裁は、日銀が大規模な金融緩和策を転換したのにも関わらず、外国為替市場で円安が進んでいることついて「為替の短期的な動きについてはコメントを差し控えたいと思います。ただし、それが私どもの経済・物価見通しに大きな影響を及ぼすということになれば当然、金融政策としての対応を考えていくことになる」と述べました。

中小企業の賃上げ動向「全体としてはある程度の姿に」
植田総裁は中小企業の賃上げ動向について「ある程度の情報は収集し、これまでの中小企業の行動パターンを見て今後、こうなりそうかという予想もしているが、絶対、ある程度以上上がるという自信や根拠があってということでは必ずしもない。ただし、ここまでの大企業の賃金の動向をみると、中小企業は少し弱いということあっても全体としてはある程度の姿になるのではないかということで今回の判断に至った」と述べました。

「『異次元』の緩和は一応役割を果たした」

植田総裁はこれまでの金融政策について「『異次元』の緩和は、一応役割を果たしたと考えている。どういう役割を果たしたかについては、現在、レビューを実施中であり、わりと近い将来にその結果を発表できることになるかと思う」と述べました。

そのうえで「『異次元』の緩和は終了だが、過去に買った国債が残高として大量に、バランスシートに残り、同じ事はETFについても言える。過去の異次元の緩和の遺産のようなものは当面そういう意味では残り続ける」と述べました。

新たな短期金利の調整方針「『ゼロ金利政策』でない」
植田総裁は、マイナス金利解除後の新たな短期金利の調整方針の呼び方を問われたのに対して、「特にそれを『ゼロ金利政策』と呼ぼうとは考えていない」と述べました。

「世界経済あらゆるリスク 国内消費回復しないリスク」
植田総裁は今後の経済のリスクについて、「下振れリスクとしては世界経済でありとあらゆるリスクがあり、世界の金融資本市場にマイナスのショックが起こるということはある。国内では消費が思ったような回復をしてこないというのが下振れリスクとしてある。また、上振れリスクとしては、企業の賃金と価格の設定行動がインフレ期待の上昇を伴いつつ上向きになっているが、これがどこかで大きく上に振れてしまうリスクが、今のところ大きくはないが頭の中に置いておかないといけない」と述べました。

ETF処分「確たることは申し上げられない」
植田総裁はETF=上場投資信託の売却を含めた処分について、「どうすべきかは常に考えていると申し上げて良いと思う。具体的に、いつからどういうふうに処分を始めるかという点は、現在、確たることは申し上げられない」と述べました。

利上げ幅「適切な政策金利水準を設定していきたい」
植田総裁は0.1%の利上げ幅が小幅ではないかと問われたのに対して、「マイナス金利も2016年以降続いていたし、低金利も長い時代続いた中での最初の利上げ方向の動きだったことを意識した。いずれにせよ、今後、経済物価見通しをきちんと作って、それに沿った適切な政策金利水準を設定していきたい」と述べました。

 

 

藤井聡京大教授「最悪です」日銀のマイナス金利解除に「国民貧困化の加速は決定的」テレビ出演多数「正義のミカタ」など

 
 
 ABC「教えて!ニュースライブ 正義のミカタ」にレギュラー出演する京大教授の藤井聡氏が19日、X(旧ツイッター)を更新。日銀がマイナス金利政策を解除するなど、大幅な金融緩和政策の見直しを決定したことに対して、私見を述べた。

 「予想されていたとはいえ、最悪です.」とバッサリ。「春闘の結果利上げの条件が整ったから適切だという専門家が結構いますが、昨年も春闘が賃上げでも平均の実質賃金は下落!しかも実質賃金下落は22ヶ月連続中でかつ実質消費もここ最近で最高の下落率!」とブッタ切った。

 その上で「これで国民貧困化の加速は決定的です.」と予測した。

 ネットには「ちょっと上向くとすかさず冷や水をぶっかけるお馴染みのパターン。これでは『失われた』は30年で済みそうもない」「中小企業の利益率が改善される所かコスト高で縮んでいる中、中小零細企業の資金繰りに懸念が出ます」「賃上げの恩恵を受ける者は少数しかいないのに、利上げでローン払いは苦しくなります」など、共感する声が寄せられていた。
 
 

日銀、マイナス金利解除決定 17年ぶり利上げ 長短金利操作も撤廃

 
 日銀は19日の金融政策決定会合で、大規模緩和策の一環で、銀行が日銀に預ける預金の一部にマイナス0・1%の金利を適用する「マイナス金利政策」を解除することを決定した。また、長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃も同時に決めた。

 2007年2月以来約17年ぶりの利上げで、約11年続いた「異次元の金融緩和」からの転換点となる。【加藤美穂子、浅川大樹】
 
 

短期金利は0.0~0.1%の間に誘導 日銀、マイナス金利解除決定

 
 日銀は19日の金融政策決定会合で、大規模緩和策の一環として銀行が日銀に預ける預金の一部にマイナス0・1%の金利を適用する「マイナス金利政策」を解除することを決定した。短期金利は0・0~0・1%程度の間に誘導する。また、長期金利を0%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃も同時に決めた。

 2007年2月以来約17年ぶりの利上げ。物価が下がるデフレ対策として約11年続いた「異次元の金融緩和」からの転換点となり、金融政策の正常化に向けた一歩を踏み出した。
 
 足元の物価上昇率は、日銀が目標とする年2%を上回っている。日銀は公表文で、賃金上昇を伴った安定的・持続的な物価上昇という目標達成を「見通せる状況に至ったと判断した」と説明した。

 長期金利については誘導目標を「0%程度」とし、1・0%を一定程度超えることを認めるYCCを撤廃する。市場の急変動を避けるため、国債買い入れを継続。長期金利が急騰した場合は、「機動的に買い入れ額の増額」などを実施するとした。

 これまで金融市場を下支えしてきた日銀の上場投資信託(ETF)と、不動産投資信託(J―REIT)の新規買い入れも停止する。

 マイナス金利の解除は賛成7、反対2の賛成多数で決定。長期国債の買い入れ継続は賛成8、反対1の賛成多数で決めた。
 
 日銀は政策変更の判断材料として、企業の賃上げによって起きる「物価と賃金の好循環」の確認を重要視。企業の労働組合と経営側が交渉する「春闘」に注目していた。連合が公表した15日の回答集計(中間)では、賃上げ率が5・28%と高水準になったことを受け、確信を得たようだ。

 植田和男総裁は19日午後に記者会見し、政策修正の理由を説明する。

 マイナス金利政策の解除によって異次元の金融緩和政策は大きな転換点を迎えた。日本をデフレ状態から脱却させるため、安倍晋三元首相が主導した経済政策「アベノミクス」の要が、黒田東彦前総裁が主導してきた「異次元の金融政策」だった。13年4月から約11年もの間続いたが、植田氏が新総裁に就任してから1年を待たずに手じまいに入る。
 
 新型コロナウイルス禍後の物価上昇で、日本も原材料価格の高騰に伴い企業の値上げが進んだ。また、コロナ禍後の人手不足が手伝い人々の賃金も上昇。日銀は日本経済が解除による利上げにも耐えうると判断した。ただし、植田氏は1月会合で、マイナス金利解除後も「極めて緩和的な金融環境が当面続く」と述べた。金融政策が正常化に向かうとはいえ、不透明な海外経済や賃金上昇の継続性などに配慮する必要もあり、今後の利上げペースは極めて緩やかとみられる。

 マイナス金利政策は黒田氏が就任して丸3年が迫る16年2月から導入された。大量の国債購入による資金供給だけでは、当初「2年」での実現を目指していた2%の物価安定目標の達成は難しいと意識されていた時期だ。当座預金に金利負担を付けることで銀行が投融資に回すお金を増やし、同時に短期金利を低く抑える狙いで導入された。

 現在まで企業への融資や住宅ローンなどの金利は低く抑えられているが、金融機関の収益悪化につながる懸念がある政策だった。スイス国立銀行や欧州中央銀行(ECB)もマイナス金利政策を導入していたが、世界の主要中銀で残っていたのは日本だけだった。

 同じく大規模緩和策の一環で同年9月に導入したのが長短金利操作だった。大量の国債買い入れで長期金利を低く抑えてきたことに伴い、債券市場の機能低下などの「副作用」が問題視されていた。ただ、現状では度重なる政策修正で長期金利の上限に余裕がある状態となり、政策は既に「形骸化」しているとされる。

 また、日経平均株価はバブル期の最高値を上回って史上初の4万円台を付けるなどして高水準にある。ETFなどのリスク資産の買い入れも、もはや必要ないと判断したようだ。【加藤美穂子、浅川大樹】