主張
日産の減額強要

 

下請けいじめの構造にメスを
 日産自動車が、多数の下請け企業に支払代金の減額を強要する下請けいじめを長年続けてきたことが発覚しました。下請け側に何の責任もないのに、コスト削減を目的に一方的に支払代金を減額していたとして、公正取引委員会から下請法違反で勧告を受けました。

 円安で日産など輸出大企業は巨額な利益をあげています。一方、下請け企業は原材料費や人件費の上昇分を取引価格に転嫁できずに苦しんでいます。発注者の強い立場を利用した下請けいじめは許されません。日本経済全体の成長も阻害します。

氷山の一角にすぎない
 減額した総額は、2021年1月から23年4月までの間で約30億2400万円にのぼります。下請法違反としては過去最大です。日産は、これをすでに返金したといいますが、それで済まされる問題ではありません。

 減額は数十年にわたり続けられた可能性があります。下請け企業側は、取引関係が打ち切られることを恐れて減額を受け入れさせられてきたのでしょう。

 自動車製造業は、タイヤホイールやエンジンなど膨大な数の部品が必要で、日産のような自動車メーカーを頂点に1次下請け、2次下請け、3次下請けと、ピラミッドのような階層をともなった下請け企業群が積み重なっています。

 21年3月にはマツダが、下請け企業に手数料名目で総計約5100万円を支払わせていたとして、下請法違反で、勧告を受けるなど、類似の事例が発生しています。

 重層的下請け構造のもと、下請けいじめの単価たたきが横行し、不当な取引の見直しを求めることや告発自体、大変困難です。

 それでも、下請法に関する公正取引委員会への相談件数は22年度に約1万4000件にのぼり増加し続けています。それに対し、同委員会による勧告は年1桁台にとどまり氷山の一角にすぎません。抜本的な改善が求められます。

 立ち入り検査などの強い権限がある専任の下請け検査官は、公正取引委員会で122人、中小企業庁で57人にとどまっています。専任の下請け検査官の大幅増員は急務です。同時に、不公正取引への罰金額の抜本的な引き上げ、被害額の3倍の被害救済の違反金制度を創設するなど、単価たたきが「割に合わない」ようにすることが必要です。

 下請振興法は、振興基準で、単価は、下請け中小企業の「適正な利益」を含み、労働条件の改善が可能となるよう、親企業と下請け企業が「協議」して決定しなければならないと定めています。

中小企業が潤ってこそ
 しかし、中小企業庁の調査によると下請け企業のコスト上昇分の取引価格への転嫁率は45・7%で半分以上が転嫁できていません。

 同庁の自動車産業の下請けへのヒアリングでは、「価格交渉を申し出たところ、コスト上昇の根拠資料を求められたため提出したが、回答期限までに回答はなく、その後音沙汰なしとなっている」などの声があがっています。

 コストカット型経済を改め、雇用の7割を占める中小企業が正当な利益を受け、そこで働く人が潤ってこそ、経済の好循環につながります。下請振興法に実効性をもたせることに政治の責任で取り組まなければなりません。

 

 

年金上げる財源ある

倉林氏、運用益の活用求める

厚労相「運用益36兆円」

参院予算委

 
 
 日本共産党の倉林明子議員は18日、参院予算委員会で、物価高で暮らしていけないとの切実な声や女性の著しい低年金の実態を示し、抜本的な年金の引き上げを迫りました。

 倉林氏は今年の年金改定率が2・7%で、昨年の物価上昇率3・2%を下回っており、「実質の所得は下がっている」と指摘。第2次安倍政権以降の12年間で公的年金の減額が年金約1カ月分に相当し、「消費税率は2倍、介護保険料や国保料の値上げも断続的に続き、実質可処分所得はさらに目減りしている」と強調しました。「月額7万円弱の年金では足りず、痛む膝を引きずりながら仕事を続けている」との高齢女性の声を紹介し、物価高を上回る速やかな再改定を求めました。

 再改定に言及しない岸田文雄首相に対し、倉林氏は「活用可能な財源はある」として、2001年以降で累積収益132兆円をあげている年金積立金の運用で、目標を超えた運用益総額を質問。武見敬三厚生労働相は「20~22年度で約36兆円だ」と答えました。倉林氏は「今後の人口減少を踏まえれば積立金の計画的な取り崩しは可能だ」として、目標を上回った収益を速やかに年金受給者に還元して年金を引き上げるよう主張しました。

 女性では月額9万~10万円の厚生年金受給者が最も多く(グラフ参照)、国民年金受給者も加えると10万円以下の受給者が全体の85%を占めるなど、「女性の低年金が著しい」と指摘し、世帯単位を前提とした制度の抜本的見直しが必要だと主張。無年金や暮らせない低年金の問題解決のために最低保障年金を導入するよう検討を求めました。岸田首相は多額の税財源などを理由に「難しい」と拒否しました。

 倉林氏は「今のままでは年金生活者も女性も置き去りになる」と強調しました。

 

春闘2024集中回答日 賃上げ水準は 満額回答相次ぐ 要求額超の回答も

~専門家 “賃上げ率 去年上回る4%台か”~

 

 

春闘の賃上げ率 去年は30年ぶりの高水準

厚生労働省は大手企業などを対象に春闘の妥結状況について昭和40年から集計を行っています。
それによりますと、2002年以降、12年連続で、1%台で推移しました。その後、政府が経済界に対して賃上げを求めるいわゆる「官製春闘」などを背景に2020年まで7年連続で賃上げ率は2%台となりました。
しかし、2021年には新型コロナウイルスの影響などで賃上げ率は1.86%と再び2%を下回りました。その後は、おととし(2022年)の賃上げ率は2.20%まで上がり、去年には物価高騰や人手不足などを背景に30年ぶりの高い水準の3.60%となりました。

ことしは去年に続き高い賃上げ水準を維持して、持続的な賃上げを実現できるかが焦点となっています。

春闘 集中回答日 満額含む高水準の回答相次ぐ

ことしの春闘、集中回答日の3月13日、自動車や電機などの製造業を中心におよそ200万人の労働者が加盟する東京・中央区の「金属労協」の本部では、大手企業の回答の金額が次々と報告されました。

自動車や電機、鉄鋼などの大手では満額を含む高い水準の回答が相次いでいて、中には労働組合の要求額を上回る回答もあります。

自動車 トヨタ 日産
〇トヨタ自動車 満額回答
トヨタ自動車は賃上げとボーナスについて、組合の要求通り満額回答しました。トヨタの労働組合は「職種別」や「資格別」に賃上げ要求額を示し、最も高いケースでは月額2万8440円の賃上げを求めたほか、ボーナスにあたる一時金は過去最高の月給7.6か月分を要求していました。満額回答は4年連続です。

〇日産自動車 満額回答
日産自動車は、組合の要求どおり、1人あたり平均で月額1万8000円の賃上げで満額回答しました。去年の春闘での月額1万2000円の賃上げを上回り、いまの賃金体系が導入された2005年以降で最も高い水準です。また、一時金についても月給の5.8か月分で満額回答しました。

〇SUBARU 満額回答
SUBARUは、月額1万8300円の賃上げの要求に対し、満額で回答しました。いまの形で要求するようになった2020年以降で最高となる水準で、一時金も6か月分で満額回答となりました。

〇三菱自動車工業 満額回答見送る
三菱自動車工業は、2万円の要求に対して1万7500円の賃上げで回答し、一時金については、月給の6.3か月分の要求に対して、6か月で回答しました。ことしは満額回答を見送っています。

このほか、12日までに、ホンダはベースアップと定期昇給の相当分をあわせた総額で月額2万円の賃上げ、ボーナスは月給の7.1か月分で満額回答しています。いずれも1989年以降で最も高い水準となります。

スズキは、総額で月額2万1000円の賃上げの要求に対し、要求額を超える10%以上の賃上げを行うと回答しました。賃上げの水準は過去最高となっています。ボーナスは、月給の6.2か月分で満額回答しています。

マツダは、いまの人事制度が始まった2003年以降で最大となる月額1万6000円の賃上げ、ボーナスについても月給の5.6か月分で満額回答しています。

大手電機メーカー
〇日立製作所 満額回答
日立製作所は、組合の要求どおりベースアップとして月額1万3000円の賃上げで満額回答しました。去年の春闘での月額7000円の賃上げを上回り、今の要求方式となった1998年以降で最も高い水準となりました。
満額回答は3年連続で、ベースアップと定期昇給をあわせた賃上げ率は、平均で5.5%となっています。

〇パナソニックホールディングス 満額回答
パナソニックホールディングスは、ベースアップ相当分として組合の要求どおり月額1万3000円の賃上げで2年連続の満額回答となりました。去年の春闘での月額7000円の賃上げを上回り、1998年以降で最も高い賃上げの水準だということです。

〇三菱電機 満額回答
三菱電機はベースアップ相当分として組合の要求どおり月額1万3000円の賃上げで満額回答しました。2年連続の満額回答で、去年の春闘での月額7000円の賃上げを上回りました。いまの要求方式となった1998年以降で最も高い賃上げの水準だということです。

〇東芝 満額回答
東芝は組合の要求どおりベースアップ相当分として月額1万3000円で満額回答しました。去年は、要求額の7000円に対し、福利厚生で使えるポイントを含めての満額回答でした。3年連続の満額回答で、1998年以降で最も高い水準だということです。

〇NEC 満額回答
NECは組合の要求どおりベースアップ相当分として月額1万3000円で満額回答しました。去年は福利厚生で使えるポイントを含めて月額7000円でしたがこれを上回りました。おととし2022年から、3年連続の満額回答で、1998年以降で最も高い水準だということです。

〇富士通 満額回答
富士通も組合の要求どおりベースアップ相当分として月額1万3000円で満額回答しました。去年2023年の春闘での月額7000円の賃上げを上回り、2年連続の満額回答となりました。1998年以降で最も高い賃上げの水準です。

〇シャープ 
一方、シャープは具体的な金額を明らかにしていませんが、去年の月額7000円を上回る賃上げを行う方針を組合側に伝えたということです。要求額の1万3000円に対し、組合の試算では月額1万円の賃上げに相当するということです。
シャープは液晶パネル事業の不振から2年連続で最終赤字に陥る見通しとなっています。

鉄鋼大手
鉄鋼大手は長年にわたって同じ水準の賃上げを続けてきましたが、その横並びが崩れることになりました。

〇日本製鉄 要求額を超える回答
日本製鉄が労働組合が要求した月額3万円を上回るベースアップ相当分として月額3万5000円の賃上げを行うと回答しました。過去最高の水準で、定期昇給などを合わせると賃上げ率は14.2%となっています。

〇JFEスチール 満額回答
JFEスチールは組合の月額3万円の賃上げ要求に対し、満額で回答しました。定期昇給の相当分を合わせると賃上げ率は12.5%となります。

〇神戸製鋼所 満額回答
神戸製鋼所も月額3万円の賃上げ要求に満額で回答しました。定期昇給を合わせると賃上げ率は12.8%となります。

大手機械メーカー
〇三菱重工業 川崎重工業 IHI
大手機械メーカーでは、三菱重工業、川崎重工業、IHIがいずれもベースアップに相当する月額1万8000円の賃上げでそれぞれ満額回答しました。

東京電力
〇東京電力ホールディングス 満額回答
東京電力ホールディングスはことしの春闘の労使交渉で、パートを含めたすべての社員の年収水準を4%引き上げることで妥結し、2年連続で満額回答となりました。今回の賃上げにより福島第一原子力発電所の事故が起きる前の年収水準に戻ることになります。
また、経営側は初任給についても学歴に応じて9300円から1万3600円引き上げると組合側に回答しました。経営の再建が続く中でも人材の確保に力を入れたいとしています。
【追記 3月14日】

NTT
〇NTT 過去最高水準
14万人あまりが加盟するNTTの労働組合はことしの春闘で、グループ主要5社の非正規雇用を含めたすべての社員を対象にベースアップ相当分として5%の賃上げを要求していました。これについてNTTグループは14日、ベースアップ相当分として月額1万1000円、率にして2.1%引き上げることで組合側と妥結したと発表しました。

ベースアップは11年連続で妥結額は去年を7700円上回り過去最高の水準です。さらに、定期昇給や人事制度の見直しによる増加分なども含めると全体で平均7.3%の賃上げになります。
一方、ことし春に入社する社員の初任給についても大卒の標準的なケースで住宅手当も含めて今より1万円程度多い、30万円以上の水準にすることをあわせて発表しました。
【追記 3月15日】

通信業界
〇KDDI ソフトバンク 過去最高水準
通信業界では、KDDIが、正社員と契約社員、およそ1万人を対象に、ベースアップ相当分と定期昇給などをあわせて平均6%の賃上げを決めているほか、ソフトバンクもおよそ2万人の正社員を対象にベースアップ相当分と定期昇給などをあわせて平均5.5%の賃上げを決めていて、いずれも過去最高の水準での妥結となっています。
【追記 3月15日】

日本郵政グループ
〇日本郵政グループ
22万人あまりの組合員が加盟する日本郵政グループの労働組合は、ことしの春闘で、ベースアップ相当分として社員1人あたりの平均で月額1万円の賃上げを要求していました。これについて日本郵政グループは交渉の結果、ベースアップ相当分として平均で月額5100円の賃上げを行うことで、14日に妥結しました。これは2007年の民営化以降で最大の上げ幅になるということです。

また、一時金について、日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の3社がいずれも月給の4.3か月分となった一方、ゆうちょ銀行は、月給の4.4か月分となりました。
民営化以降、この4社の一時金の水準に差がついたのは初めてで、日本郵政グループは、各社の業績に応じて一時金の水準を決めたとしています。
【追記 3月15日】

小売り 外食 食品・飲料
〇ロイヤルホールディングス ベースアップは要求額上回る
ロイヤルホストなどを展開するロイヤルホールディングスは14日、ことしの春闘で組合側と妥結し、正社員およそ1850人を対象に去年を上回る平均で7.2%の賃上げを行います。この中には、組合からの要求額を5000円上回る、月額1万5000円のベースアップが含まれ、ベースアップの幅は組合が結成された1991年以降で最も高いということです。
このほか、店長や料理長への役職手当の増額なども含まれているということです。
【追記 3月14日】

〇トリドールホールディングス 要求上回る
うどんチェーンの丸亀製麺などを展開するトリドールホールディングスは13日、組合側と妥結し、本社やグループの店舗などで働く正社員およそ1550人を対象に組合の要求を上回る過去最高の平均10%の賃上げを行うということです。
【追記 3月14日】

〇キリンホールディングス 初の満額回答
飲料大手のキリンホールディングスは、ベースアップとして月額1万3000円で満額回答し、定期昇給分をあわせて平均7.5%程度の賃上げで3月13日、妥結しました。満額回答は会社として初めてとなります。

〇ニトリホールディングス
家具日用品大手のニトリホールディングスは、子会社のニトリの総合職社員を対象に、ベースアップを含む平均6%、1人あたり平均月額2万2389円の賃上げを行うことで3月13日に妥結しました。21年連続のベースアップとなります。
パートやアルバイトの時給は一人あたり平均67.3円の増額で妥結し、11年連続の引き上げとなります。

人手不足を背景に外食業界でも、高い水準の賃上げで人手の確保や社員のモチベーションの向上を図る動きが広がっています。
また、小売り、外食、食品・飲料の業界では、集中回答日を待たずに早期に妥結や決着した大手企業も相次ぎました。

“去年を上回る4%台の賃上げ率か”
大手企業の間で高い賃上げ水準の回答が相次いだことしの春闘について、第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、およそ30年ぶりの高い賃上げ率となった去年を上回る4%台の賃上げ率となる見方を示しました。

 

〇ことしの賃上げ率は
4%台に乗るような賃上げ率の高さが期待される。満額回答以上も相次ぎ、経営者の側に、より高い水準を示し有利な採用環境を作りたいという思惑が予想外に強く働いたと思う。

〇中小企業への賃上げ
経営者が業績が悪くても人材確保ため人件費を上げる勇気を持つことができるかだ。これまでは価格転嫁で客離れするマイナスの面があったが、賃上げが広がり消費にお金が回ることで、今までよりも中小企業も値上げがしやすいのではないか。

日銀 金融政策決定会合を控えて

また、3月18日からの日銀の金融政策決定会合を控え、金融市場では近く、日銀がマイナス金利を解除するのではないかという見方が出ています。

これについて、第一生命経済研究所の熊野首席エコノミストは,「春闘のよい結果で経済全体の好循環への期待が高まる。日銀にとっては、デフレ脱却の決め手になるような大きな判断材料になるのではないか」と述べ、大規模な金融緩和策からの転換を後押しするという見方を示しました。