自民党大会で裏金議員への処分を指示したと岸田首相。しかしその裏金議員たちは、裏金づくりをいつ誰が始めたか「わからない」といい、政治活動に使ったというが根拠を示さない。
真相が闇のなかのままでは妥当な処分になるはずがない。まず解明を!証人喚問にも応じるべきだ。

 

すごいなあ、自民党大会って。これだけの問題がありながら、方針や党則改正についての討論が議事になく、約90分で終了。これじゃ、党大会というよりセレモニーだな。

 

党歌を熱唱wとあったんで、どんな歌詞よ?と見に行ったんだが
裏金集団のくせに「皆の幸福」とは?!

 

政治とは虚構です。
約束したことは必ず忘れる、そして次の課題をいつのまにか提示して忘れる、その繰り返しが自民党です。
こうした営みを脈々と続けてきたからこそ、あなた達は政権を担えてきました。
そのことを深く自覚し、裏金の真相解明を忘れないで遂行してほしい。↓


岸田文雄
政治とは実行です。
約束したことは必ずやり遂げる、そして次の課題を見つけ取り組む、その繰り返しが政治です。
こうした営みを脈々と果たしてきたからこそ、我々は政権を担わせていただいている。
そのことを深く自覚して、引き続き政策遂行に全力を挙げていきます。

 

 

 派閥の政治資金パーティーの裏金事件を巡り、いまだに「説明責任」を果たす姿勢が何も見られない自民党。

 朝日、毎日両新聞社が16~17日に行った全国世論調査によると、岸田内閣の支持率はそれぞれ22%、17%。不支持率は同67%、77%で、朝日の調査では2012年末に自民党が政権に復帰して以降で最も高い結果となった。

 17日に東京都内で開かれた自民党大会で、岸田文雄首相(66)は関与した議員の処分を茂木敏充幹事長(68)に指示したことについて言及。「党紀委員会の議論を経て厳しく対応をする」と説明したことから、18日午前の参院予算委員会の集中審議では、立憲民主党の古賀之士議員(64)が、この党紀委員会の議論を公開して透明性を高めるべきではないか、などと質問したのだが、岸田首相は「(党紀委員会は)党として政治責任、処分について判断する組織」などと答えるばかりで、まるでかみ合わず。

 岸田首相のノラリクラリ答弁に対し、SNS上では《相変わらずヤル気ないな》と呆れた投稿が飛んでいたが、《少年院で書かされる反省文みたい》とのツッコミがみられたのが、自民党が党大会で採択した2024年運動方針のスローガン。「政治を刷新し、改革の道を歩む-深い反省に立ち、かならず変える、かならず変わる。」だ。

 

■岸田首相の曖昧な姿勢こそ「かならず」変えた方がいいのではないか

 スローガンを見た有権者などからは、ほかに《自民は絶対に変わらない》《裏金作りを合法的にする仕組みに変えるということか》との皮肉に加え、こんな“考察”も。

《岸田さんの答弁と自民スローガンに共通すること。それは具体的な中身が何もないこと》

《これぞ「岸田構文」》

 確かに岸田首相は16日の全国幹事長会議でも、「大事な時だからこそ、自民党がやらなければならない」「その為には自民党が変わらなければならない」と声を張り上げていたのだが、肝心要の「何を」やるのか、「その」は一体何を指すのか。さらに言えば「いつまでに、どう変わるのか」がサッパリ分からない。具体的に「何を」「どう」変えるのかが示されていない2024年運動方針も同じだろう。

 国会答弁で「検討する」を多用していた岸田首相。「何を」「いつまでに」「どうするのか」が全く分からないとして、野党議員などから「検討使」と揶揄されていたが、この曖昧な姿勢こそ「かならず」変えた方がいいのではないか。

 

第91回党大会 岸田文雄総裁 演説(全文) 岸田の空虚な言葉が連なる虚像は剥げ落ち泥船は沈没寸前

 


 

自由民主党 総裁の岸田文雄です。
第91回党大会にあたり、ご挨拶申し上げます。

<政治改革>
現在、一部の派閥の政治資金に関わる問題によって、国民から多くの疑念を招き、深刻な政治不信を引き起こす結果となっております。

党総裁として国民の皆様に心からお詫び申し上げます。

また、本日お集まりの党員・党友・各級議員の皆様には、地域の最前線で、厳しいご批判の声を受け止めていただいておりますこと、大変申し訳なく思っております。

先ほど、党則、党規律規約、ガバナンスコードの改正について、幹事長から報告させていただきました。
自民党としてすぐに取り掛かれるものは、速やかに実行する。
私が本部長として立ち上げた政治刷新本部での議論の成果の第一歩です。

政治資金規正法改正についても、議員本人の責任強化、外部監査の強化、デジタル化による透明性向上の3つの視点から、具体的な準備を指示しているところであり、今国会での法改正を実現していきます。

そして、説明責任を貫徹すべく、引き続き、関係議員に促してまいります。

その上で、先日、幹事長に対し、関係者に対する党としての処分について結論を得るよう指示しました。
不記載の金額や程度、これまでの役職等の議員歴や説明責任の果たし方など、状況を総合的に勘案し、党紀委員会の議論を経て、厳しく対応をしてまいります。

「信なくば立たず。」

政権奪還から12年。
何故、政治資金の収支を明確にするとの当然のルールすら守れなかったのか。そこに緩みや驕りはなかったか、ものを言えない風土はなかったか、深い反省の上に、政治の信頼回復に向けて、私自身が先頭に立って、自民党改革、政治改革を断行することを改めてお約束いたします。

そして、全国の同志の皆様に、「自民党とともに歩んで間違いはなかった」「自民党を支えてきてよかった」と言っていただけるよう、必ず立て直してまいります。

今後、私自身や党幹部が全国にそれぞれ足を運び、党員・党友、国民の皆様の声を聞く、「政治刷新 車座対話(仮称)」を進めてまいります。

<皆様への御礼>
前後いたしましたが、党員・党友・各級議員の皆様の弛まぬご努力に、深く感謝申し上げます。
また先ほど表彰されました党員、団体、組織の皆様、誠におめでとうございます。

本年も、友党・公明党の山口代表、日本経済団体連合会の十倉会長にもご出席賜りました。厚く御礼申し上げます。

<能登半島地震>
さて、今年は、例年になく緊迫した年明けとなりました。

元日に発生した、令和六年能登半島地震。
改めてお亡くなりになられた方々に哀悼の誠を捧げ、被災された全ての方々にお見舞い申し上げます。

重なる困難の中、地元自治体、自衛隊、消防・警察はじめ全国からの応援の皆さまの不眠不休の対応に深く感謝申し上げます。
能登の皆さんの「外に優しく内に強靭な絆の力」に心から敬意を表します。

震災から2か月半。
被災地の実情や被災者の方々に寄り添った復旧・復興に向けて、国を挙げて取り組んでいます。

自然豊かな「能登の里山・里海」を生かした農業や漁業を残していく。
職人の皆さんに輪島に戻ってもらい、輪島塗の伝統をつないでいく。
悲しみを乗越え、前を向いて歩む被災者の皆さんを支えていく。

多くの党員が募金活動など、行動してくださいました。
国民政党として、自民党は、国民とともにある。被災地とともにある。

被災者の帰還、被災地の再生に向けて、「出来ることは全てやる」「やらなければならないことは必ずやる」総理総裁として責任をもって実行してまいります。

そして、今回の災害の教訓も踏まえ、防災・減災対策を更に強化し、災害に強い国土づくりを推進します。

<国際情勢>
本年に入り、国際社会は「混沌」の度合いを高めています。

ロシアの侵略開始から2年が経つウクライナ、アフリカをはじめとする世界各地の食料不安やエネルギー問題、不透明な中東情勢とガザ地区の人道状況、核兵器の開発や使用をめぐる言動が不安を煽っています。

東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みや、北朝鮮による核・ミサイルの脅威も増大しています。
拉致問題の解決は待ったなしの最優先課題です。
北方領土問題も忘れてはなりません。

世界中で争いの火種がくすぶる中で、我が国の安全を断固守りぬくとともに、世界の平和に責任を果たしていかなくてはなりません。

それができるのは誰か?
激動する国際社会に対応できるのは誰なのか?

自公の安定した連立政権以外にはありません。
憲法観も安全保障観もバラバラの野党に任せるわけには絶対にいかない。

戦後最長の4年7ヶ月外務大臣を、そしてこの約2年半内閣総理大臣を務め、首脳外交にあたってきました。
昨年はG7広島サミットを主催させていただきました。

この経験と各国首脳との関係を最大限に活用して、日本の安全と世界の平和のために責任を果たしていく覚悟です。

<経済>
二年半前の総裁選では、コロナの克服とともに、経済、外交、日本の未来に向けたお約束をし、全身全霊、実行・実現してまいりました。

第一が、国民の可処分所得の向上です。
政権発足以来、「新しい資本主義」を掲げ、成長と分配の好循環のため、新たな官民連携の理念のもと、賃上げ・投資促進、科学技術イノベーションに力を注いでまいりました。

賃上げや設備投資は30年ぶりの水準。
株価は史上最高値を更新しました。
今年は、この前向きな動きを定着させる勝負の年です。

何よりも重要なのは、「物価高を上回る所得の実現」です。
今年の春闘の第一次集計では、33年ぶり、かつ、昨年を大幅に上回る5%を超える賃上げが実現し、「新たな資本主義」への扉が開こうとしています。

30年間続いたデフレ志向、縮み志向と完全に決別するため、ここで手を緩めるわけにはいきません。

医療・介護の現場では新しい賃上げの仕組みを入れました。
建設や物流業界では構造的な賃上げのための新法をこの国会に出しています。

6月には、一人4万円の減税を行います。
民間の力強い賃上げを減税で下支えし、物価高を上回る所得を国民お一人お一人に必ず実感していただきます。

「賃金があがることが当たり前だ」との意識が行き渡れば、日本経済は必ず再生します。
みんなでこのチャンスを掴み取ろうではありませんか。

<安全保障、エネルギー、経済安全保障等>
お約束の第二が、防衛力の強化です。
国民の命と我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、五年間で四十三兆円の防衛力整備の水準を確保し、防衛力の抜本的強化、倍増を決定いたしました。
同盟国、同志国との連携も更に強化していきます。

第三が、グリーン政策の推進です。
国際的エネルギー危機の中で、国民生活を守るため、安定供給と脱炭素を達成すべく、再エネも原子力もしっかりと活用していく政策へ舵を切りました。
今後、官民連携で150兆円のGX投資を着実に実行します。

そして第四に、経済安全保障の強化です。
既に施行させた経済安全保障推進法に加え、今国会で、セキュリティクリアランス制度の創設へ新法を成立させ、具体的な運用を開始していきます。
サイバー対応能力向上にむけた法案も、可能な限り早期にお示しします。

さらに、食料安全保障の観点を踏まえ、農政の憲法である「食料・農業・農村基本法」について、制定以来、初めて本格的に改正します。
世界的な需給変動、環境問題、担い手不足など、地域の基幹産業である農業をめぐる課題を克服し、地域の成長へとつなげていきます。

人口減少・少子化問題も日本の社会・経済の持続可能性に関わる問題です。
こども・子育て支援策の強化も、児童手当の抜本的拡充、高等教育の負担軽減、保育所の76年ぶりの配置改善、児童扶養手当の拡充など、本格実施のステージに入ります。
今国会で法案を成立させ、遅滞なく実行してまいります。

<政治姿勢>
政治とは実行です。
約束したことは、必ずやり遂げる、そして、次の課題を見つけ取り組む、その繰り返しが政治です。
こうした営みを脈々と果たしてきたからこそ、我々は、過去も現在も政権を担わせていただいている。
そのことを深く自覚して、引き続き、政策遂行に全力を挙げていきます。

<憲法、皇位継承>
政策遂行の先に目指すものは何か。

我が日本は、極東の小さな国といえども、四季折々の魅力ある風土、脈々と流れる歴史と伝統、勤勉な国民性、高い技術力、そして世界をリードする気概、世界から尊敬を集める存在です。

私は、このかけがえのない日本を、次代に着実に引き継いでいきたい。
そのために、政治とカネの問題に毅然と取組むとともに、政策を遂行していきます。

そして、党是である憲法改正について、総裁任期中に実現するとの思いの下、今年は、条文案の具体化を進め、党派を超えた議論を加速してまいります。

また、安定的な皇位継承等への対応についても、皇族数確保のための具体的方策等を取りまとめ、国会における検討を進めてまいります。

<結び>
来月には、補欠選挙が行われます。
政策遂行が政治の一つの姿であるとすれば、選挙はもう一つの姿です。
我が党への厳しい御意見を認識しつつも、全力で戦い抜いてまいります。

我が党には幾度の困難を乗り越え、その度に、自らを変えてきた歴史があります。

こんなにも多様な人材がいる。
数多くの政策を実現してきた実績がある。
地域の声を吸い上げてきた歴史がある。
議論を尽くした上で、一端決めれば一致団結する伝統がある。

我が国は今、国の内外に日本の未来を決めるような課題山積です。
自民党でなければならない。だからこそ自民党は変わらなければならない。
我が党が国民の信頼を回復し、政策を前に進めていく。
それこそが、日本の明るい未来につながる唯一の道と確信をいたします。

その先頭に立ってまいります。
皆さんのご協力を切にお願いし、私の挨拶とさせていただきます。

本日は誠にありがとうございました。

 

森喜朗元首相、自民党大会に出席 大型ビジョンに姿映る 裏金問題で岸田首相が聴取検討に言及

 
 
自民党の派閥政治資金パーティー裏金事件を受けて、岸田文雄首相が聴取の対象に含まれると国会で答弁した森喜朗元首相(86)が17日、東京都内のホテルで行われた自民党大会に出席した。

森氏をめぐっては、安倍派(清和政策研究会、解散決定)の前身、森派を率いた経緯があり、清和研でキックバックが始まった経緯を知っているのではないかとして、野党が国会招致を求めている。

森氏はこの日、最前列で党大会の様子を見守った。来賓紹介の際に、来賓の近くに着席した森氏の姿が、会場の大型ビジョンに映し出されるシーンもあった。

岸田首相は15日の参院予算委員会で、裏金問題をめぐる関係者の聴取に言及した際、共産党の小池晃書記局長から再三、森氏を聴取するのかどうかを問われ「森元総理をはじめ関係者がおられるが、その関係者の中でどなたに実態を解明するための聴取するか判断します」「関係者の中に森元総理も入ると認識している。その上で対応を判断します」と、森氏の聴取の可能性に踏み込んだ。この日、首相が森氏と話をしたかどうかは分かっていない。
 
 

国会に出て来い、裁判所で証言しろ…晩節を汚す森喜朗元首相に対し、「政治学者は本気で研究すべき」という声が上がる理由

 
 
 これほど晩節を汚した元首相、聞いたためしがない──今、多くのメディアが森喜朗元首相の参考人招致や証人喚問を巡る報道を行っている。この稿では、その中から2つの新聞記事に注目してみたい。
 
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 1つ目は毎日新聞が3月5日の朝刊に掲載した社説「岸田首相と裏金国会 真相の解明はこれからだ」だ。

 毎日新聞は社説で、国会は裏金作りの全容を解明し、再発防止のために政治改革を実現する必要があると主張。政治倫理審査会こそ開かれたが、裏金作りの実態が明らかになるどころかむしろ疑問が膨らんだと批判した。

 自民党の安倍派は政治資金パーティーを開いた際、収入の一部を所属議員に還流。それが裏金になった。幹部会は、一度は還流廃止を決めながら、後に復活させている。

 なぜ復活させたのか、政倫審の質疑でも真相は明らかにならなかった。毎日新聞は社説で《派閥会長だった森喜朗元首相の国会招致も検討すべきだ》と訴えた。当然の主張だろう。

 2つ目は共同通信が3月3日に配信した「森元首相に証言要請、五輪汚職で 高橋被告、自らの権限否定」との記事だ。

 東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事の高橋治之被告は受託収賄罪に問われている。

 高橋被告は共同通信の取材に応じ、森氏の証人尋問を訴えた。こちらは国会での証人喚問ではない。東京地裁の法廷に立ち、真相を明らかにしてほしいというのだ。

森首相誕生の疑問
 高橋被告は日本の首相経験者に対し「裁判で本当のことを言ってほしい」と要望したことになる。担当記者が言う。

「五輪汚職事件の裁判で、東京地検は森氏の証言を元に『高橋被告は森氏からマーケティング担当理事としてスポンサー集めを任され、組織委に働きかける権限があった』と主張しています。ところが、高橋被告は共同通信の取材に『(スポンサー集めは)任されていないし、聞いたこともない』と真っ向から森氏の証言を否定しています。つまり、森氏は裏金事件では国会での証人喚問、五輪汚職事件では法廷での証人尋問が、共に求められているというわけです。こんな元首相は日本の憲政史上、前代未聞と言っていいでしょう」

 政治アナリストの伊藤惇夫氏は「森さんが首相の座に就いたという事実は、欧米ではあり得ない、日本の政治システムにおける特異性を象徴しているのではないでしょうか」と言う。

「森さんは自分で首相の座を勝ち取ったわけではありません。2000年4月、首相だった小渕恵三さんが病に倒れ、5月に死去しました。自民党は総裁選を行わず、幹部による話し合いで幹事長の森さんを後継に選んだと多くのメディアが伝えました。この報道が事実だったとしても、『なぜ森さんが選ばれたのか』という根源的な疑問は残ります」
 
あだ名のない元首相
 普通、大物政治家には特定のイメージがあり、類型化も可能だという。例えば、田中角栄氏が「コンピュータ付きブルドーザー」なら、小沢一郎氏は「剛腕」という具合だ。

 梶山静六氏や野中広務氏など政局に強いと評判の政治家は「軍師」と呼ばれることが多かった。「政界きっての知性派」と言えば大平正芳氏や宮澤喜一氏の名が浮かぶ。安倍晋三氏は首相になる前、「ボンボン育ちの世襲政治家」の代表と見る向きが多かった。

「ところが、森さんの場合、類型化が難しいのです。表層的なイメージなら豊富です。政界では『座持ちのいい政治家』として知られていました。先輩の政治家は徹底して立て、後輩には睨みを利かせます。人たらしで、大手新聞社でも森ファンというベテラン記者は結構いました。その中の一人に理由を聞くと『大病した時、わざわざ見舞いに来てくれた』と打ち明けてくれました。森さんが人心収攬(しゅうらん)に長けていたことが分かります。とはいえ、“寝業師”とか“カミソリ”とか、政治家としての特徴を端的に表現するようなあだ名が森さんに付けられたことはないのです」(同・伊藤氏)

 森氏は「ノミの心臓、サメの脳味噌」と呼ばれたことがあるが、これは揶揄の要素が強く、人口に膾炙したあだ名とは違うだろう。

 ちなみに伊藤氏が初めて森氏を間近で見たのは、自民党の党本部だったという。

リクルート事件にも関与
 森氏は1993年から95年まで自民党幹事長を務めた。伊藤氏が党職員を辞したのは94年で、その前に幹事長だった森氏と党職員が懇談する場に伊藤氏も出席した。

「党職員が口々に『あの時の発言は正鵠を射ていましたね』とか『テレビのインタビューを拝見しました』と森さんにお世辞を言うわけです。普通の政治家なら謙遜するはずですが、森さんは『だよな』という顔で座っている。ちょっと珍しいリアクションで、強く印象に残りました。その後はかなり後年になってから、私がテレビにも出演するようになった頃のことです。ばったり新幹線で会いました。通路を挟んで隣に森さんが座ったのです」(同・伊藤氏)

 森氏は伊藤氏に気づき、「あなたは党の事務局長を経験しているからテレビのコメントも正論だよ」「あなたの本は全部読んでいるからね」などと話しかけてきたという。伊藤氏は森氏の話に応じながら、「こうやって森さんは色んな人たちのハートを掴んできたんだな」と改めて実感したという。

「森さんの人生はスキャンダルが多かったと言われます。自叙伝を出版すると『早稲田大学は裏口入学。産経新聞はコネ入社で、日本工業新聞社に配属されたと堂々と書いてある』と話題になりました。1988年のリクルート事件では、かなり早い段階で未公開株の譲渡が報道されました。森さんが党の調査から逃げ回っていたのを、職員だった私はつぶさに見ています。その後も森さんと“カネ”を巡る疑惑は水面下で何度も囁かれてきました」(同・伊藤氏)

日本特有の政治システム
 森氏が首相に就任したのは2000年4月。だが、翌月に「神の国発言」が飛び出すなど舌禍が相次いだ。また、01年2月にえひめ丸事故が発生した際、ゴルフのプレーを続行したため非難が集中。内閣支持率は急落し、同年4月に森内閣は総辞職した。

「森さんは党内権力を喪失しても不思議ではありませんでした。ところが、首相を辞めても一定の影響力を保持しました。安倍派に直接、指示を下すこともあったのです。背景の一つとして、政治資金をそれなりに確保していたことが挙げられるでしょう。09年の西松建設事件では森さんも多額の献金を受けていたことが発覚し、400万円の返還を発表しました。お世辞にもカネに綺麗な政治家だとは言えません。派閥の裏金問題や五輪汚職事件で名前が出てくるのは当然だと思います」(前出の記者)

 伊藤氏は「森さんの政治家人生を改めて振り返ると不思議なことが多く、論評は私の手に余ると思うことさえあります」と言う。

「どう考えても森さんは首相になれる人ではなかった。彼が日本の最高権力者となったのは、日本にしか存在しない特有の政治システムが影響したのではないかと考えてしまうのです。その『日本特有の政治システム』とは何か、私には分かりません。政治学者など専門家に研究してもらい、システムにおける特異性を解き明かしてほしいと願っているほどです」

次は総選挙
 裏金問題を徹底的に究明するためには、森氏を国会で証人喚問することは絶対に必要だという。だが、実現の見込みは低いようだ。

「参考人招致は偽証罪の規定がありませんから、虚偽証言の懸念が生じます。安倍さんは亡くなられましたし、派閥の会長を務めた小泉純一郎さん(82)も派閥の資金について無関心だったはずです。やはり安倍派の裏金問題を原点から語れる政治家となると、森さんしかいないのです。自民党が証人喚問を求めてもいいはずなのですが、党は森さんを全力で守ると決めたようです。こうなると次の話は総選挙ということになるでしょう。有権者がこの問題を忘れずに自民党へお灸を据えるのか、それとも忘れてしまって棄権したり自民党に投票したりするのかということになるんだろうと思います」(同・伊藤氏)

デイリー新潮編集部

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