主張
自民破廉恥懇親会
露呈した根深い女性蔑視体質

 

 すべての国民があきれ果てているでしょう。自民党の青年局近畿ブロックが昨年11月、和歌山市内で行った会議後の懇親会で、露出度の高い衣装の女性ダンサーを招いて乱痴気(らんちき)騒ぎをした問題です。口移しでチップを渡している画像などが流出し、批判が殺到しています。国会・地方議員が参加しており、こうした企画を立案・参加し、破廉恥な行為を見過ごした政治家の資質、あぜんとする企画がまかり通る政党の体質そのものが問われます。

多様性が聞いてあきれる
 報道によれば、懇親会を準備した川畑哲哉・和歌山県議は企画の趣旨を「多様性」だと述べています。女性ダンサーを招くことがどう多様性につながるのか意味不明です。懇親会の参加者に女性は一人もいませんでした。男性しかいない会に女性を呼んだから「多様性」を持たせたとでもいうのでしょうか。

 青年局の催しに女性が一人もいない。それ自体、自民党の多様性のなさ、男女共同参画の取り組みの決定的な遅れを表しています。女性の参加を想定していたら、こうした企画が立てられたのか、破廉恥な行為が行われたのかと考えると、女性がいないのを当然の前提としている自民党の体質が際立ちます。

 口移しのチップの写真などを見ると、ダンサーが表現者として尊重されているわけではなく、女性による接待役、あえていえば性的な接待役扱いをされているとしか思えません。根底にあるのは、根深い女性蔑視です。この会に出席し、不適切な会だったとして党青年局長を辞任した藤原崇衆院議員は、報道陣から「ダンサーの体を触っていないか」と問われても、はっきり否定せず「当時の記憶では触っていない」と歯切れの悪い答えしかできません。

 川畑県議は離党届を出し受理されましたが、議員辞職は否定しています。離党というのは“党に迷惑をかけた”という表明にしかすぎません。政治家、公人としての資質が問われる問題で、離党ですませられることではありません。

 岸田文雄首相・自民党総裁は、内閣として目指している多様性とはどういうものかを国会で問われて「すべての方の尊厳が損なわれることのない社会」などと答えました。しかし、今回の懇親会が女性全体の尊厳を損なっているのは明白です。公党としての責任が厳しく問われます。

 この懇親会の費用が公費か否かについて、岸田首相は「県連が主催し経費を出しているが、公費は使われていない」と言います。しかし、お金に色はついていません。県連の資金に自民党本部からのお金があり、党本部の収入には税金である政党助成金が入っています。2022年、自民党本部の全収入に占める政党助成金の割合は6割を超え、政治活動の多くを税金に依存しています。国民は今回のような“政治活動”に税金を払わされているわけです。

国民の厳しい審判が必要
 昨年7月には自民党女性局の議員が研修先のパリで撮った写真が「観光旅行か」と批判を浴びました。今回の懇親会といい、国民生活からかけ離れた自民党の感覚が露呈しています。裏金問題に怒りが高まる中での不祥事発覚。国民の厳しい審判が必要です。


【スクープ証言】自民党過激パーティー動画流出の経緯を告白「昨年からダンサーを招いた川畑県議に辞職を迫っていたのですが…」県議会議長経験者が明かす

 

 

 自民党を揺るがしている青年局近畿ブロックの懇親会での「過激パーティー」問題。懇親会出席者と女性ダンサーがチップのお札を口移ししているように見える写真とともに産経新聞のニュースサイトが報じたことで衝撃を与えたが、なぜ参院政倫審(政治倫理審査会)直前のタイミングで画像が流出したかが、揣摩憶測を生んでいる。

 本誌・週刊ポストはこの画像流出の経緯について重大証言を得た。自民党和歌山県連会長の二階俊博・元幹事長の側近で、和歌山県議会議長を務めた藤山将材・県議が本誌の取材に応じた。

「私がメディアに流したわけではありませんよ」

 藤山氏はそう断わったうえで、この間、県連内部で何が起きていたのかの経緯を語った。

「こんなん外に出たら大変なことになるでしょう」
「11月18日の懇親会でのハレンチ騒ぎは、地元では直後から問題になっていました。昨年12月末頃、懇親会の一連の動画を入手した知人から、『けしからん。なにしとるんだ』とお怒りの連絡が来ましてね。『鉄槌を下すんや。(マスコミに)言うたる』とたいへんな剣幕でした。

 ちょうど政治とカネの問題が炎上していた時ですから、こんなものが世に出たら自民党は無茶苦茶になってしまう。私はどうか収めてもらえませんかとお願いに行きました。

 

 ダンサーの件は青年局のメンバーは全然知らされずに、和歌山県連青年局長だった川畑君(川畑哲哉・県議)が単独で連れてきたことがわかっていたので、県青年局長に辞任してもらうのでなんとか収めてもらえませんかというと、知人は『それやったらわかった』と。それで人を介して川畑君に伝えて、辞任を促してもらったんです」

 しかし、川畑氏は辞任しなかった。そこで藤山氏は世耕弘成・前自民党参院幹事長の事務所所長と面会した。川畑県議は世耕氏の元秘書である。

「同僚議員たちからも促してもらったが、川畑君の辞任しない意思は変わらないので、今年2月になって、所長の方に動画を見せました。世耕先生の秘書の方も映っているから、『こんなん外に出たら大変なことになるでしょう』と。

 もう世耕先生から彼に引導を渡してもらわんことには、誰も川畑君を辞めさせることができないとお願いしたんですよ。しかし1週間ほどして、世耕先生は“彼は事務所を辞めた人間だから私から辞めろとは言えない”と話しているという返事をもらいました」(藤山氏)

 そのまま3月になった。

 

「タイムリミットやで」
「最後、3月に入ってお怒りになっている知人から、『いつまで待たせるんだ。どうなってるんだ』と電話があって、『もう明日には動画を(マスコミに)持って行く』とおっしゃるんで、『あと1日猶予をください』と言って待ってもらって、私自身が直接、川畑君に話をしたんですよ。『もうタイムリミットやで』『これが世の中に出た時の影響をわかってる? それでも辞めないんやね』と。

 辞めないなら僕はこの件から手を引くから、あとは自分で勝手に責任取れよと伝えた。川畑君は『青年局の局長としての職責を果たします』と言うんで、じゃあ、先方にもそうお伝えしますよと返した。それで記事が出たわけです」(藤山氏)

 その結果、川畑氏は「迷惑をかけた」と自民党を離党した。

 藤山氏は「私はもう早くに青年局を卒業してますんで、懇親会には出ていませんが、ほんまに彼はどんだけの人に迷惑をかけたんやっていう話ですわ」と証言を終えた。

 この藤山証言についてぶつけたが、世耕事務所から締め切りまでに回答はなかった。一方、渦中の川畑県議からは、問題の経過について詳細な証言が得られた。3月18日配信予定の後編でレポートする。