会合に出席していた自民党青年局の藤原崇局長は、報道陣に「女性の体を触っていないか」と問われ、真面目な面持ちで「今の認識では触っていないです」と返答。再度、触っているのかと聞かれると、「触っていないです」と答えながら表情がわずかに緩んでいく。目尻が下がってしまい、苦笑いというより思い出し笑いのようなにやけた表情に見えてしまったのだ。この質問のタイミングに出たニヤニヤ笑いと、しどろもどろになってしまった受け答え、視聴者への印象は悪かった。

「私の内閣が目指す多様性とは全く合致しない」と岸田首相に言われてしまった川畑氏は自民党を離党し、藤原氏は役職を辞任した。さて、次はどんな問題が明らかになるのだろうか。

 

 

 臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップする連載。今回は、自由民主党和歌山県連が主催した会合の懇親会で過激ショーを行った理由に「ダイバーシティ」という言葉が使われたことについて。

 

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 自民党和歌山県連が主催した”新感覚のおもてなし”の過激ショー懇親会は、いったいどこが新感覚なのか、庶民にはわからない。昭和の時代から何ら変わりなく、オヤジたちが鼻の下を伸ばして喜ぶような会合が行われていただけだ。

 自民党女性局のフランス研修で、松川るい参議院議員がエッフェル塔の前で撮った写真を投稿し「エッフェル姉さん」と批判を浴びた際のメンバーの一人、広瀬めぐみ参議院議員が起こした不倫騒動に続き、今度は自民党青年局が問題を起こした。懇親会で肌の露出が多い女性によるダンスショーを行っただけでなく、口移しでのチップを渡すなど呆れるような事実が次々と出てきた。

 ダンサーに口移しでチップを渡していたのは、なんと世耕弘成前参院幹事長の秘書だった。世耕氏がその秘書に厳重注意をしたというが、これを企画したのも世耕氏の元秘書、川畑哲哉県会議員だ。新旧の議員秘書が揃いも揃って問題を起こすとは、世耕事務所のおもてなし感覚とはいったいどのようなものだろう。

 批判が殺到するこの問題についてマイクを向けられた川畑氏は「私の想定を超えた不適切な状況になっていると認識をいたしました。口移しまでは想定できていませんでした」と、いくぶん赤らんだ顔で釈明した。ところがこれもいい訳に過ぎなかったようだ。チップを用意したのは川畑氏で自らも女性ダンサーにチップを渡し、世耕氏の秘書を女性ダンサーのもとへエスコートしたのも川畑氏だと報じられているからだ。

 その川畑氏の表情は強張っていた。女性ダンサーを「触っていない」と答えたものの、突っ込んで聞かれているうちにどんどん瞬きが多くなっていく。コメントする度に口元を固く引き締め、視線が下に何度も落ちていく。不安が強くなり、焦りが出始めたような表情を見ると、疑わしさが増していくものだ。。なぜこの企画になったのか問われるとは、「多様性・ダイバーシティということで、もろもろの要件にかなうのかなと」答えた。政治家の解釈の幅広さと独自性には本当に驚かされる。

 

 ここ数年、政府でも企業でも、何かにつけて多様性やダイバーシティという用語が使われてきた。過激ショーを企画するためのコンセプトとして使ったのも、周りが専門用語を使っているから、自分も使ってみようという感覚だったのか、女性ダンサーを呼んだ理由として適当な説明が見つからず、使い勝手がよさそうだからと用いたのかはわからない。懇親会に参加した自民党の議員らがはしゃいでいた、喜んでいた、笑っていたとメディアで報じられ始めたが、多様性やダイバーシティをどう考えていたのだろう。

 専門用語を使う人は、自分はできるヤツ、物知りだと思わせたいというのは、世間的によく言われるところだが、よくわからない専門用語を使う人は、自分のステータスを上げたいのだという研究結果がある。多様性をはき違えている川畑氏は、その一人だったのだろうか。

 中身が意味不明でも専門用語があるだけで、説得力が増したような気がするという心理的傾向に「ジンクピリチオン効果」がある。また説明文などの中に数字を沢山使ったり、難しい数式を使えば、それが正当化されたり、価値があるように思わせたりできるという「ナンセンスな数式効果」というバイアスもある。川畑氏にとって多様性やダイバーシティは、この効果でいう数式と同じような役割を果たしていた気がする。専門用語を使ったことで、女性ダンサーのショーが企画に適う意味あるものと世間に思わせたかったのだろう。。どこでどんな言葉を使うのか、どのような言い回しをするのか。本来なら政治家こそが気を付けるべきものだろうが、最近はずいぶん等閑になっているようだ。

 会合に出席していた自民党青年局の藤原崇局長は、報道陣に「女性の体を触っていないか」と問われ、真面目な面持ちで「今の認識では触っていないです」と返答。再度、触っているのかと聞かれると、「触っていないです」と答えながら表情がわずかに緩んでいく。目尻が下がってしまい、苦笑いというより思い出し笑いのようなにやけた表情に見えてしまったのだ。この質問のタイミングに出たニヤニヤ笑いと、しどろもどろになってしまった受け答え、視聴者への印象は悪かった。

「私の内閣が目指す多様性とは全く合致しない」と岸田首相に言われてしまった川畑氏は自民党を離党し、藤原氏は役職を辞任した。さて、次はどんな問題が明らかになるのだろうか。

 

 

【チップ口移し】自民党過激パーティーへ出席していなかった和歌山県選出の鶴保庸介・石田真敏議員の“幸運”

 
 
「鶴保(庸介)先生は会議で挨拶されてましたよ。懇親会には出ていたかなぁ。なにぶん人数が多かったから」──そう語るのは渦中の自民党和歌山県連の県議の1人だ。セクシーダンサーが加わった自民党青年局近畿ブロック会議の懇親会(昨年11月18日)。注目されているのは懇親会の前に行なわれた会議に、地元・和歌山選出の2人の国会議員が出席していたことだ。自民党ホームページの「青年局ニュース」にはこうある。
 
〈同県選出の石田真敏選対委員長代理や鶴保庸介参議院議員も駆けつける中、近畿地方を中心に勢力を伸ばす野党との差別化や、青年世代として積極的に発信・行動していく必要性を皆で共有しました〉

 石田氏は旧岸田派の元総務大臣、鶴保氏は自民党和歌山県連会長を務める「和歌山のドン」二階俊博・元幹事長の側近として知られ、沖縄・北方担当相を務めた。参院5期当選のベテランだが、次の総選挙では参院から衆院和歌山新1区に鞍替え出馬することを表明している。

 しかも、鶴保氏といえば、過去、政治資金で六本木のキャバクラや和歌山市内のクラブ、銀座のキャバレーなどに支出していたことなどが報じられてきた。それだけに、地元関係者からは、「鶴保さんは次の総選挙で衆院鞍替えが決まっているのに、ダンサー懇親会に出ていたらダメージになる」と心配されているのだ。本誌・週刊ポストが鶴保事務所に懇親会への出席の有無を取材すると、こう回答した。

「鶴保は、懇親会の前に行なわれたブロック会議の冒頭に挨拶をさせていただきました。そのブロック会議も途中で退席しております。なので、懇親会には出ておりません」

 ちなみに石田元総務相も、「自民党青年局近畿ブロック会議には出席したが、懇親会には出席しておりません」(事務所回答)と説明する。

 運良く“セーフ”だったようである。もっとも、和歌山県連内部は目下、“犯人捜し”で大混乱中だ。

動画を撮ったのは
 懇親会での過激ダンスショーをめぐっては、下着姿に見える女性ダンサーが参加者の男性の首の後ろに手を回し、チップのお札を口移ししている写真を産経新聞が報じている。和歌山県連関係者はこう言う。

「羽目を外しすぎた懇親会に怒った和歌山県連の幹部が、翌日、県外から参加した議員も含めて出席議員全員に、手持ちの動画や写真を消去するようにと指示していた。それなのに、マスコミに出た写真は誰が撮ったのか」

 懇親会にダンサーを呼んだのは自民党和歌山県連青年局長の川畑哲哉・県議。世耕弘成・前参院幹事長の元秘書で、今回の責任をとって自民党を離党した。「和歌山のドン」である二階氏と、その座を脅かす新実力者の世耕氏は県連で長く対立関係にある。県連関係者が続ける。

「産経の写真では顔にモザイクがかかっているが、ダンサーに口移しでチップを渡しているのは世耕さんの代理で出席していた秘書です。チップの千円札は川畑県議が用意したと言います。

 その秘書はとても真面目な人なのだが、事務所の元先輩である川畑県議に、パーティーを盛り上げるために無理やりやらされたわけです。そこを誰かが撮った。県連内部では、世耕さんと対立関係にある二階・鶴保系の出席者が撮影したんじゃないかという見方もあります」

 出席者たちの間に疑心暗鬼が広がっているようだ。
 
「掛け声は出していないと記憶しております」
 川畑県議に、過激パーティーでの様子などについて改めて確認すると、以下のような回答が寄せられた。

──話題になった女性ダンサーは今回に限らず、以前から接遇等で起用されていたと伝えられています。その通りでしょうか。

「はい。以前、携わった事業でお招きしています」

──懇親会でのチップは、川畑県議が用意したものか。

「チップは今となっては確認は取れませんが、私が用意した可能性はあります。ただし当該行為(ダンサーに口移しでチップを渡す)まで要請した事実はございません」

──懇親会でダンサーの方たちは、参加者の男性の膝に乗ったり、参加者も女性のお尻を触っていたと伝えられています。

「直接見ていないと記憶しております」

──この間、川畑県議は「ハイ!ハイ!」と会場を盛り上げていたと伝えられています。

「拍手や手拍子はしていましたが、掛け声は出していないと記憶しております」

──この懇親会が騒動にもなっています。この点についてのご見解をいただきたい。

「全ては私の責任です。取り返しのつかないことをしてしまいお詫びのしようもございません。本当に申し訳なく思っています」

 そう答えたうえで、離党の決断については「多大なご迷惑をおかけしました自由民主党に所属を続けられるはずもございません。離党させていただくべきと考えました」と回答した。

 だが、川畑県議の離党だけで国民の政治不信は払拭されるわけではなさそうだ。