「厳格なプロセスはお手盛りだ。歯止めを装って武器輸出大国へ突き進むことは許されない」

 

「平和国家」とはなにか。2005年、外務省のファクト・シートには「平和国家としての実績」が挙げられている。
攻撃的兵器を保有しない、防衛費の対GNP比1%程度、武器の供給源とならず武器の売買で利益を得ないーーことごとく壊してきた岸田政権。その自覚もなく、閣議決定でさらなる暴走は許されない。

 

防衛省が本格導入に向け実証中のイスラエル製ドローン。契約先には先日伊藤忠が協力覚書を破棄したエルビット・システムズも。伊藤忠は、国際司法裁判所がジェノサイド防止の暫定措置命令を発し、外務大臣がその「誠実な履行」を求めたのを受け契約打ち切りを発表。政府が新たに契約したのは大問題。

 

防衛省がイスラエル製攻撃型ドローン導入を進めている問題で質問。
イスラエルの軍事企業3社との契約は今年1月末から2月にかけて。ガザへの攻撃が続き人道状況がさらに悪化、ICJがジェノサイド防止を求める命令を発するなか、おぞましい計画を進めている。やめるべきだ。

 

 

 

 

 岸田文雄首相は13日の参院予算委員会で、他国と共同開発した武器の日本から第三国への輸出解禁を巡り、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機に絞った上で輸出対象国を限定し、輸出案件ごとに閣議決定する考えを表明した。武器輸出ルールを定めた「防衛装備移転三原則」と運用指針の見直しを巡り、完成品の第三国輸出に慎重な公明党が求めていた「歯止め策」を講じる形となった。ただ、殺傷武器の輸出拡大に拍車はかかり、歯止め策の実効性にも疑問は残る。(川田篤志)

 

 

 公明党の西田実仁参院会長は13日の予算委で「なし崩し的にあらゆる装備品が輸出ができるようになる懸念がある。条件や手続きは慎重かつ厳格にしていく必要がある」として、具体的な歯止め策に関する首相の考えをただした。
◆掲げる「三つの限定」に抜け穴はないか
 首相は、輸出を認めるのは国際共同開発品全般ではなく「次期戦闘機に限定する」と明言。輸出先は、武器の適正管理などを定めた「防衛装備品・技術移転協定」を日本と締結した国に限るとし、「戦闘が行われている国に対しては移転は行わない」と述べた。首相はこれらを「三つの限定」と強調した。

 首相は「個別のプロジェクトごとに運用指針に明記していく」とも語り、新たに共同開発する武器の追加に含みを持たせた。協定通りに武器の適正管理が確保される保証はなく、輸出時点で戦闘が行われていない国であっても、その後紛争当事国となり、輸出した武器が使われる懸念は拭えない。

 

 これまで国家安全保障会議(NSC)の決定だけで行われてきた運用指針の変更について、首相は「あらためて閣議決定として、政府方針を決定したい」と説明。輸出の可否の判断についても「個別の案件ごとに閣議決定する」として、輸出を決定する前に与党への協議が確保されるようにする方針を示し、「二重の閣議決定でより厳格なプロセスを経る」と述べた。

◆閣議決定の手続きは「お手盛りだ」
 共産党の山添拓氏は、新たに加わる閣議決定の手続きについて、野党も含めた国会の関与がない点を問題視。「厳格なプロセスはお手盛りだ。歯止めを装って武器輸出大国へ突き進むことは許されない」と批判した。

 



 公明の高木陽介政調会長は13日の記者会見で、首相の答弁に関し「わが党が求めた歯止めについて丁寧に答えていた」と評価。15日に自民、公明両党の政調会長の協議を開き、輸出解禁で合意する見込みだ。

 防衛装備移転三原則 防衛装備品(武器や防弾チョッキなど)の輸出や海外への技術移転を、一定の要件を満たした場合に認める政府方針。日本は国際紛争を助長しないという憲法の理念に基づき、1970年代に武器禁輸政策を採用。2014年に輸出を一部容認したが、殺傷能力のある武器の輸出は原則禁じてきた。昨年12月、政府は三原則と具体的なルールを定めた運用指針を改定し、弾薬など殺傷武器の輸出を一部容認。共同開発品の部品や技術の第三国輸出は解禁したが、完成品まで容認するかどうかは、与党間で検討が続いていた。

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◆参院予算委での主なやり取り
 次期戦闘機の日本から第三国への直接輸出を巡り、13日の参院予算委員会で行われた主な質疑は以下の通り。

 西田実仁氏(公明) なぜ輸出が必要なのか。

 

 岸田文雄首相 3カ国の(戦闘機の)要求性能には差異がある。輸出できなければ価格低減努力ができず、日本は交渉上不利になり、要求性能の実現が困難になる。

 西田氏 輸出には閣議決定を行うべきでは。

 首相 運用指針の見直しは閣議決定したい。輸出する際にも個別案件ごとに閣議決定し、決定前の与党協議が確保されるようにしたい。

 西田氏 輸出解禁の対象は。

 首相 個別の(共同開発)プロジェクトごとに運用指針に明記し、今回は戦闘機に限定する。

 西田氏 なし崩し的に輸出が広がる不安がある。

 首相 次期戦闘機に限定する。輸出先国は防衛装備品・技術移転協定の締結国に限定する。戦闘が行われている国には移転しない。三つの限定と二重の閣議決定という厳格なプロセスで、国連憲章を順守する平和国家としての基本理念を堅持する。

 山添拓氏(共産) 輸出時点で戦闘中でなければ歯止めになるか。

 

 

 首相 侵略など国連憲章に反する行為に使用されることがないよう輸出先を限定する。攻撃に使用されるとの懸念は当たらない。

 山添氏 協定締結は国会に諮っていない。政府・与党のみで閣議決定するのは国会無視では。

 首相 国会の承認を受けた外為法の範囲内で協定を結ぶ。国会の認めた法律の中での対応だ。

 

参院予算委で共産党の山添拓氏の質問に答弁する岸田首相=13日、国会で