主張
東日本大震災13年(上)
高齢化、経営難に寄り添え

 

 甚大な被害をもたらした東日本大震災・原発事故から、11日で13年です。震災に加え、深刻な不漁、コロナ禍、物価高騰の“4重苦”で、住民の暮らしと生業(なりわい)が困難に直面しています。地域の再建・維持に国が責任を果たし続けることは、能登半島地震の被災者も励ますことになります。縮小・打ち切りではなく、被災者の要求に沿った再強化が求められています。

見守り細り増える孤独死
 13年がたつなかで災害公営住宅入居者の高齢化と生活苦がすすみ孤独死が相次いでいます。入居には所得制限があり、もともと自力再建のむずかしい高齢者が多いのに加え、一定の所得を超えると出ていかなければならないため、働き盛りの世代が抜け、見守りやコミュニティーの維持を担う人が減っているのが一因です。

 団地を見回り、支援が必要な人を見つけ、相談にのる生活支援相談員の配置数はピーク時(2016年度)の790人から22年度には296人と半分以下になっています。10年間の復興・創生期間の終了時に相談員の配置事業を打ち切った自治体もあります。岩手県の場合、相談員が配置されている災害公営住宅では、コミュニティー形成の拠点となる集会所の利用が月15~20回あるのに対し、配置のない約7割の団地では月0~2回にとどまっています。すべての集会所に相談員を配置する、入居の所得基準を引き上げるなどで、コミュニティーの維持を図り、孤独死を防ぐ必要があります。

 生活再建のために借りた災害援護資金が返せない状況が生じています。13年間で完済する必要がありますが、22年9月時点で、最初の支払い期日が来たのに滞納している割合が35%、57億円を超えます。死亡などの場合は支払い免除になりますが、国は相続人に返済を求めています。自治体には免除の裁量がありますが、自治体の負担になるので、ためらうのが現状です。国の責任で支払期間延長や免除対象者の拡大を行い、年金生活者など今後も返せるめどがない人は直ちに免除すべきです。

 被災から立ち上がった事業者の経営支援も重大な課題です。中小業者がグループをつくって経営再建を図るためのグループ補助金は地域経済再生に役立ってきました。しかし4重苦のなかで経営がたちゆかず、廃業や倒産に至る例がでています。その場合に、補助金を使った施設・設備を売却・処分すると補助金を返さなければなりません。水産加工などで、取れる魚種が変わって別の機械を買いたくても元の機械を処分できないなどの事態も起きます。実情に即した柔軟な支援で事業者と地域経済を支えなければなりません。

同じ苦しみを繰り返すな
 東日本大震災から13年、阪神・淡路大震災からは来年で30年です。しかし避難所は依然、劣悪で、住宅や事業再建は「自己責任」とされ国の支援は不十分なままです。大規模な復興計画で建設が長引き、よそに移ったまま結局、戻れない事態も防ぐ必要があります。大震災の教訓を総括し同じ苦しみを繰り返させない政治の取り組みが待ったなしです。東日本大震災の復興特別所得税の約半分を大軍拡の財源に流用して国民に増税を押し付けることは許されません。被災者が希望をもてるよう国は抜本的に支援を強めるべきです。

 

 

主張
東日本大震災13年(下)
地震国日本に原発はいらない

 

 東京電力福島第1原発事故から13年です。核燃料が溶け落ち、原子炉建屋が爆発し、大量の放射性物質が放出されました。広範な地域が汚染され、とりわけ福島県では農林水産業や観光業など地域の産業に深刻な被害が引き起こされました。いまもなお数万人が故郷に戻れず、避難を余儀なくされ、暮らし、生業(なりわい)などの被害も続いています。

共存できない異質の危険
 ひとたび重大事故が起これば地域社会が崩壊する。そんな「異質の危険」をもつ原発は、日本社会とは共存できません。原発のない日本は、福島事故の教訓であり、多くの国民の願いです。

 政府と東京電力は、福島第1原発の事故収束・廃炉を2051年までに完了させるとしていますが、そんな見通しはたっていません。福島県民も8割近くが「達成できない」と回答しています。(福島民報4日付)

 溶け落ちた核燃料(デブリ)の取り出しは、サンプル採取すら見通しがたっていません。デブリ由来の高濃度放射能汚染水も、国費を投入して設置した凍土遮水壁が十分な効果をあげられず、増え続けています。極めて危険なデブリを隔離できず、放射能汚染水も厳格に管理できていない状況です。

 政府と東京電力は、高濃度放射能汚染水を多核種除去設備(ALPS)で処理した「ALPS処理水」について、「関係者の理解なしには処分しない」と漁業者に約束していました。それを公然と破り捨て、海洋放出を4回も繰り返すなど許されません。

 事故収束のめども立たず被害も続いているのに、岸田政権は原発回帰へと突き進んでいます。原発の最大限活用と新規建設を方針とし、老朽原発を60年を超えて運転させられるよう法律を改悪しました。ロシアのウクライナ侵略に起因する国際エネルギー市場の混乱に乗じた財界や原発業界の巻き返し要求を丸のみしたものです。

 その背景として、自民党の政治資金団体・国民政治協会に対して、原子力産業協会会員企業が10年間で70億円を超える献金をしていることを指摘しなければなりません。

 今年元日の能登半島地震は、半島各地に甚大な被害を与えました。震度7が観測された志賀町にある北陸電力志賀原発では、変圧器が損傷し、いまだに一部の外部電源が失われたままです。東京電力柏崎刈羽原発でもトラブルが起きました。

 今回の地震で、原発事故の際に避難路となる半島の主要道路が寸断されました。福島原発事故の際も地震で道路が寸断され避難が困難でした。地震と原発事故が重なれば「避難計画」など「絵に描いた餅」であることは明らかです。地震・津波国日本の原発は、あまりにも危険です。

世論と運動で原発ゼロを
 能登半島北部の珠洲市にあった原発立地計画は、長年の住民の運動で阻止しました。「原発がなくて本当によかった」という思いが大きく広がっています。

 異質の危険、最悪の高コスト、「核のゴミ」に加え、再生可能エネルギー普及を妨害する原発頼みをやめさせ、省エネ・再エネに転換する時です。世論と運動で自民党政治を終わらせ、脱炭素・原発ゼロへの扉をひらきましょう。

 

 

すべての原発廃炉に

首相官邸前 反原連抗議

 
 
 東日本大震災で起きた東京電力福島1原発事故から13年の11日、首都圏反原発連合は「記憶を風化させないため」を合言葉に、首相官邸前抗議を行いました。「原発全廃」「汚染水海洋放水即中止」などのボードを掲げた100人(主催者発表)が、ドラムの響きにあわせて、「地震の国に原発いらない」「原発動かす岸田はやめろ」「すべての原発廃炉・再稼働反対」などとコールしました。

 官邸前抗議の冒頭、ステートメントが読み上げられ、自民党裏金問題は、脱税の問題を内包していると同時に企業献金などによる“金権政治”という問題も含まれると指摘。自民党が原発関連企業から多額の献金を受けていることに触れ「どうりで脱原発の世論が高まっても政府は原発を推進するわけです」と批判。「地震大国・日本にも、世界のどこにも原発はいりません。核と人間は共存できません」と表明しています。

 参加したミサオ・レッドウルフさんらがスピーチし、放射能被害により故郷を奪われた人々への思いを巡らせながら、13年前と変わらない脱原発の思いを発信しました。

 川崎市から参加した女性は、「能登半島地震でダメージをうけた志賀原発は運転停止中で幸運だった。改めて地震大国の日本に原発があることは危険だと思い知らされた。原発の即時廃炉を希望する」と訴えました。

 

東日本大震災・福島原発事故13年

震災の記憶 次代に

岩手・陸前高田

 

 東日本大震災から13年となる11日、岩手県陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園には、犠牲者を悼んでたくさんの人が訪れました。思い出を語り合ったり、花を手向けて手を合わせたり。

 

 地震発生時刻の午後2時46分、防災無線のサイレンが響くと、ざわめきが消えました。波の音が強く聞こえるなか、訪れた人たちは手を合わせて黙とうしました。(写真)

 同県一関市から毎月11日に花を手向けに来る、という女性(64)は、震災で友人を亡くしました。「ここに来ると、涙が止まりません。当時は、ボランティアの人たちに助けてもらいました。今度は、私たちができることをしないと」と話しました。