弟の無実を訴え続けた姉ひで子さんも国家の被害者だ。袴田巌さんは冤罪という国の犯罪で人生を奪われた方。姉弟の戦いに挑んだ歴史は再び同じ犠牲者を出してはいけないという強い意志の元で…。それにしても過去は戻らない。残酷すぎる!『巌さんお誕生日おめでとうございます』私も一緒に。

 

支援者らからのプレゼントを姉ひで子さん㊧から受け取る袴田巌さん=浜松市で(袴田さん支援クラブ提供の動画から)

 

 1966年に静岡県清水市(現静岡市清水区)で起きた一家4人強盗殺人事件で死刑が確定し、再審公判中の袴田巌さんが10日、88歳の誕生日を迎えた。支援者らが浜松市の自宅で誕生日会を開き、姉ひで子さん(91)は「100歳まで長生きしてほしい」と祝った。

 

 支援者から青緑の長袖シャツと爪切り、赤い花束が贈られた。袴田さんは爪切りを実際に使い、「切りやすい。爪を切るのは健康を維持するのに大事」と話した。赤い花が好きといい、「赤は戦いの色。戦いの世界では赤の方が派手だから」などと元プロボクサーの闘志をにじませた。誕生日会後、プレゼントのシャツを身に着け、支援者と日課のドライブに出かけた。
 袴田さんは、静岡地裁が2014年3月に再審開始とともに死刑の執行と拘置の停止を決めて釈放され、27日で10年になる。長年拘束された影響で、妄想が出るなどの拘禁症状が続く。

 ひで子さんによると、当初は無口だったが、最近はよく話すようになるなど変化もみられる。2月から飼い始めた2匹の猫をかわいがっているという。

 

 昨年10月に始まった再審公判では、静岡地裁が袴田さんを「心神喪失」状態として出廷を免除。ひで子さんが補佐人として代わりに出廷している。今年2月まで9回開かれ、今後数回の審理を経て5月22日に結審する見通し。ひで子さんは「無罪をいただいたら、巌にしっかり説明しようと思う」と話した。(東田茉莉瑛)