恥の拡散

 

 

 コロナ禍における「自民党・銀座3兄弟騒動」と派閥の裏金問題が、意外な観点から結びついた──。茂木敏充・党幹事長が火消しに躍起なのも無理はない。裏金問題で国民は国会議員に厳罰を求めており、その議論の中で週刊新潮のスクープ記事が再び注目を集めている。

 

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 コロナ禍の2021年1月、政府は2回目となる緊急事態宣言を発令し、国民に日常生活で様々な“自粛”を求めた。にもかかわらず、自民党の3人の国会議員は夜の銀座で“豪遊”していた。

 週刊新潮(2021年2月4日号)のスクープ記事を元に、デイリー新潮も詳報を行った。その中から2本の記事タイトルだけをご紹介しよう。

◆緊急事態宣言下、麻生側近議員が23時まで「イタメシ」と「銀座クラブ」をハシゴの証拠写真(21年1月26日)

◆平気でウソをつく松本純議員 クラブホステス同伴? まだある同席2議員の“問題写真”(同・2月1日)

「銀座3兄弟」と名づけられたのは、元衆議院議員の松本純と大塚高司、そして現職の田野瀬太道の3氏だった。担当記者が言う。

「当時の3氏は全員が現職の国会議員で、2月1日に自民党へ離党届を提出しました。ところが党は『自発的な離党だけでは不十分』と判断し、党の処分として3氏に離党勧告を突きつけたのです。自民党の処分には8つの種類があり、離党勧告は除名に次いで2番目に重い処分でした」

 自民党の処分については、党の公式サイトにある「党則」で簡単に確認できる。それによると上から順に、【1】除名、【2】離党勧告、【3】党員資格の停止、【4】選挙における非公認、【5】国会及び政府の役職の辞任勧告、【6】党の役職停止、【7】戒告、【8】党則の遵守の勧告──となっている。

迷走する自民党
 今回の裏金問題で自民党は、1人の国会議員には除名処分を下した。その一方で、同じ罪状であっても、お咎めなしというケースもある。ネット上では「矛盾している」との指摘が多く、自民党の迷走が浮き彫りになっている。ベテランの政治記者が言う。

「1月7日、東京地検特捜部は池田佳隆・衆議院議員を政治資金規正法違反の疑いで逮捕しました。すると自民党は同じ日、池田氏の除名処分を決定したのです。一方、1月19日に特捜部が大野泰正・参議院議員を同容疑で在宅起訴、谷川弥一・衆議院議員を略式起訴しても、党は処分を下しませんでした」

 同じ裏金問題で立件されても、池田氏は除名しておきながら、大野、谷川両氏は自民党としては処分を下さなかった。SNSなどで異論が噴出したのは無理もない。

「自民党の本音としては『本来なら、離党すれば処分なしでOK』と考えていたようです。と言うのも、池田氏に処分を下した理由について、読売新聞の取材に党幹部が『本人と連絡が取れず、離党の意思を確認できない』ことを挙げたからです(註)。確かに大野、谷川両氏は党に離党届を出しましたし、谷川氏は1月22日に議員も辞職しました」(同・ベテラン記者)

 

無為無策の岸田首相
 とはいえ「銀座3兄弟」の時も、3人の国会議員は離党を表明している。ところが、「それだけでは不十分」と党は離党勧告の処分を下したのだ。

「『銀座3兄弟』と『裏金立件3兄弟』の処分を比較すると、全く整合性が取れません。『銀座3兄弟』を前例とするなら、大野、谷川両氏にも党として処分を下すべきでしょう。一方、SNSでは『推定無罪の原則を適用するなら、むしろ池田容疑者に処分を下したことがおかしい』と、行き当たりばったりの自民党の処分方針を揶揄する投稿もありました。確かに3人に処分を下すか、3人とも処分を下さないか、理論的にはそのどちらかしかないはずなのです」(同・ベテラン記者)

 FNNプライムオンラインは2月19日、「【速報】自民党が“裏金”議員51人全員に政倫審での説明促す方針固める 今夜以降出席の意思確認へ」との記事を配信した。

 本来なら、この51人にも党として処分を下す必要がある。ところが、自民党総裁である岸田首相を筆頭に幹部の弱腰が目立ち、手をこまねいている印象なのだ。

及び腰の茂木幹事長
「51人の処分をどうするのか、岸田首相は頭を抱えているだけで、何の方針も打ち出せていません。3月1日の政倫審での答弁も、『しかるべきタイミングで、党としても判断していきたい』と述べるに留まりました。確かに処分を下す必要は認めているようです。とはいえ、これまでの“肌感覚”で言えば、51人について裏金金額の多寡など内容を精査し、悪質性が高いなら3番目の『党員資格停止』、それほどでもないなら4番目の『選挙における非公認』を適用するのが妥当なところ、と判断している自民党の国会議員が多いですね」(同・ベテラン記者)

 ところが、自民党にとって困ったことに、「銀座3兄弟」については突出して厳しい処分を下してしまった。

「今になって自民党の幹部は、銀座3兄弟に対して離党勧告を突きつけたことを後悔している有り様です。51人もの議員を切り捨てることになれば、党の運営が大混乱に陥ってしまいます。党幹部にとっては『銀座3兄弟に対する処分を前例にすることだけは勘弁してほしい』が本音で、そのために茂木幹事長が火消しに必死なのです」(同・ベテラン記者)

 スポニチアネックスは1月26日、「安倍派幹部は『銀座3兄弟』と『どちらが悪質か』 離党か辞職か自民厳重処分検討」との記事を配信した。

 記事によると、党内には「少なくとも安倍派の中堅幹部には、離党や議員辞職を求めるべきではないのか」という意見があるという。だが、茂木幹事長も岸田首相も及び腰だと指摘した。

 

「銀座の処分が重すぎた」
《党則上、処分権限を持つ茂木敏充幹事長は、あくまでも自発的な対応を求める立場。「大所帯を敵に回したくない」(関係者)との思惑がちらつく。当の首相は早くも日和ったのか、官邸で記者団に安倍派幹部を処分するか問われ「明確な説明責任を促すのが第一だ」と慎重姿勢》

 茂木氏は、裏金問題と銀座3兄弟問題が“リンク”することだけは絶対に避けたいと考えているようだ。

 読売新聞オンラインは2月3日、「自民関係議員聴取、成果に疑問の声…茂木氏は銀座通いで3人離党したのは『厳しかった』」との記事を配信した。

《東京・銀座のクラブ通いが判明した議員3人は離党したが、茂木幹事長は1日のBSフジの番組で「今までの基準からすると厳しかった」と述べ、参考にならないとの考えだ》

 要するに「銀座3兄弟への処分はあまりに重すぎて、今となっては間違っていた。裏金問題の処分は3番目の『党員資格停止』など、もっと軽いものにしたい」と発言しているわけだ。

 読売の記事では党内の中堅議員が取材に応じ「銀座通いより裏金の方が重大なのは明らか。それより軽い処分では国民の理解は得られない」と反論しているが、賛意を示す国民は圧倒的な多数に達するはずだ。

 何しろ「銀座3兄弟」は自粛というルールを破っただけとも言えるが、裏金作りに手を染めた議員は完全に法令に違反している。国会議員は法令を遵守すべき立場にあるのは言うまでもなく、それに違反した所属議員に党は厳しい罰を与えるべきだろう。

納得しない国民
 SNS上の投稿を見れば、国民の多くは裏金議員の51人に対しても最も重い「除名」を望んでいることが分かる。2番目に重い「離党勧告」ですら納得できないという意見も珍しくない。最後にXから、自民党を理路整然と批判している投稿を2つ、引用させていただこう。

《コロナ禍にクラブで会食した議員には『離党勧告』なら、裏金問題に関わった議員はそれ以上重い処分でなければ納得できない》

《コロナ禍の銀座3兄弟は離党勧告でしたので、今回の裏金議員はそれより重い処分を科すのが筋です。離党勧告より重いとなると、除名しかありません(略)金額や人数の多寡は全く関係ありません。脱税ですよ? 》

註:逮捕の池田議員、「離党の意思確認できず」スピード処分に…野党「逮捕前にけじめ求めるべきだった」(読売新聞オンライン・1月7日)

デイリー新潮編集部

新潮社

 

 

岸田首相が嫌いすぎる朝日新聞の「多事奏論」にたじろぐ…「報道機関としての資質を欠いている」論理性が欠如し意味不明

 
夕刊フジの記事です。なんとまあ~としか言い様がない記事だ。
 
 
【岩田温「日本の選択」】

「もう言い飽きたからこれで最後にしたいのだけれど、岸田文雄氏は首相としての資質を欠いている。私はそう結論している」
 
朝日新聞の高橋純子編集委員は、記者コラム「多事奏論」(2024年2月17日)で右のように記している。何の説得力もないコラムを読み、たじろいだが、私は次のように言い返したい。

「もう言い飽きたからこれで最後にしたいのだけれど、朝日新聞は報道機関としての資質を欠いている。私はそう結論している」

高橋氏のコラムを何度か読んだが、被災者に寄り添おうという岸田首相の行動にケチを付けたいとしか思えなかった。端的に感想を言えば、「情悪」の一言に尽きる。とにかく、岸田首相が嫌いで、嫌いで仕方がないとの一念で書かれているように感じた。ポストが赤いのも岸田首相のせいであると言い出しかねない勢いだ。

「素にして頓(とん)にして狂(きょう)」と、岸田首相を嘲笑うが、その言葉はそのまま自身に返ってくるのではないか。

事実を報道すること、あるいは事実に基づいて国家権力を批判することが、報道機関の責務と言ってよい。だが、感情の赴くままに罵倒することは報道機関の仕事ではない。それはプロパガンダの類である。高橋氏のコラムは次のように締めくくられている。

「岸田頓珍漢物語は、演説終盤『総裁任期中に改正を実現したい』と宣して大団円を迎える。日本国憲法25条『健康で文化的な最低限度の生活を営む権利』を一日も早く被災地で回復させることに全力を注ぐべき首相が、憲法改正に前のめる。暗にして愚。もう言い飽きたけどやっぱり言う。首相としての資質を全く欠いている」

理解困難な罵詈(ばり)雑言に聞こえる。憲法改正を党是とする自民党の総裁が改憲を唱えることに、何の疑問があるのだろうか。護憲を唱える自民党の政治家がいれば、それこそ羊頭狗肉と批判されて然るべきだ。

■批判するなら、根拠は明確に

私は岸田首相を英邁な宰相とは思わない。だが、ここまで愚弄することが正当とも思わない。批判したいのであるならば、その根拠は読者の多くが納得できるよう、明確であるべきだ。
 
世の中には「宇宙からの交信がきた」などと謎のメッセージを語る人々が存在する。聞こえているのだから致し方ないが、私にとっては無意味な世迷言にしか聞こえない。

朝日新聞の「多事奏論」を読んで感じるのは、そういう人々の言葉と酷似しているということだ。一言で言えば、論理性が欠如していて意味不明なのである。 =おわり

■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。大和大学准教授などを経て、現在、一般社団法人日本学術機構代表理事。専攻は政治哲学。著書に『いい加減にしろ!』(ワック)、『日本再建を阻む人々』(かや書房)、『興国と亡国―保守主義とリベラリズム』(同)など多数。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。