これも「キックバック」では? 自民に献金し、自衛隊に戦車を納める三菱重工が防衛省の会議メンバー

 
 4日の参院予算委員会では、自衛隊の戦車やミサイル生産を受注する三菱重工業が自民党に政治献金し、経営幹部が政策に影響を与える防衛省の有識者会議のメンバーを務めていることを巡って、質疑が繰り広げられた。立憲民主党の辻元清美氏は、利害関係者を有識者会議に入れるのは控えた方がいいと追及。岸田文雄首相は「寄付によって左右されるものではないと考えている」と述べ、問題ないとの認識を示した。(川田篤志)

◆首相「不自然ではない」
 辻元氏は、防衛省、自衛隊の元幹部や大学教授ら計17人で構成する「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」のメンバーに三菱重工の宮永俊一会長を選んだ政府の対応を問題視。「防衛省と利害関係者じゃないか。企業のためにも利害関係者は入れない方が良い」と指摘した。首相は「実際に防衛産業に関わっている方から意見を聞くのは不自然ではない」と主張した。

 防衛力の抜本的強化に関する有識者会議 2022年12月に閣議決定した国家防衛戦略で明記された「戦略的・機動的な防衛政策の企画立案機能の強化」のため、防衛省が今年2月に設置。座長は榊原定征経団連名誉会長。民間企業からは三菱重工のほか、NTT会長、読売新聞グループ本社社長も参加。榊原座長は初会合で、円安や物価高などを踏まえ、防衛費のさらなる増額を検討するよう提起した。会合は原則非公開で、後日、議事要旨が公表される。

 続いて、辻元氏は、自民の政治資金団体「国民政治協会」に対する三菱重工の献金額を質問。首相は、政治資金収支報告書が公開されている2020年から22年に「いずれも3300万円の寄付をいただいている」として、3年間で計9900万円と答弁した。
 
 
 辻元氏は「国の根幹に関わる防衛政策の会議に利害関係者を入れて、多額の発注をし、自民党が政治献金を受け取る。まるでキックバックではないか」と批判。「こういうことが駄目だから、企業・団体献金を禁止しようと言っている」と訴えた。
 首相は有識者らに加え、党所属議員の議論を経て政策決定する手続きを説明して「特定の企業からの寄付が政策決定に影響を与えることは考えにくい」と強調。辻元氏は「影響を受けないと言いながら、政策に影響を与える有識者会議の委員に就けて矛盾していると思わないか」と迫ったが、首相は「矛盾しているとは思わない。防衛産業の実態を把握した上で、総合的な日本の防衛力を考えなければいけない」と反論した。

◆三菱重工「利益誘導には当たらない」
 木原稔防衛相や深沢雅貴防衛装備庁長官の答弁によると、三菱重工に発注した装備品は、戦車や護衛艦、敵基地攻撃能力(反撃能力)に使用される国産長射程ミサイルの開発などで、13~23年度の契約額は計4兆2000億円。契約額の順位は22年度まで7年連続でトップになっている。
 
 
 三菱重工は本紙の取材に、宮永会長の有識者会議への参加について「当社としては利益誘導には当たらないと考えている」と回答。自民側へ政治献金する理由について「企業の社会貢献の一環として重要性を有するとの経団連の見解に賛同し、実施している」とコメントした。
 
 

在日米軍経費 過去最大

23年度 8522億円

国民の生活苦尻目に米軍奉仕

 
 
 日本政府が2023年度の当初予算に計上した在日米軍関係経費の総額が、8522億円と過去最大を更新したことが分かりました。さらに23年度補正予算にも3169億円が計上されており、実際には1兆円を超える見通しです。物価高騰で生活苦が広がる中、米軍奉仕が極まっています。
 
 「在日米軍関係経費」は、防衛省分として(1)在日米軍駐留経費(米軍思いやり予算など)(2)在日米軍再編経費(3)SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費―があり、これ以外に他省庁分(自治体への基地交付金など)があります。

 第2次安倍政権以降、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設の強行で米軍関係経費の総額が右肩上がりになってきました(グラフ)。23年度も辺野古新基地建設経費が1035億円(22年度比で273億円増)と顕著に増えました。

 また、思いやり予算の一つ「提供施設整備(FIP)」も298億円と31億円増加。FIPの増額は、在日米軍の「抗たん性」(敵の攻撃に耐えて基地の機能を維持する能力)を強化するためのもので、米中が軍事衝突した際に在日米軍基地への攻撃を現実的な危険として想定しています。日本本土が戦場になっても米軍が生き残れるようにするものです。

 23年度補正予算では馬毛島(鹿児島県西之表市)への米空母艦載機離着陸訓練(FCLP)の移転に伴う自衛隊基地建設費2684億円や辺野古新基地建設費326億円などの米軍再編経費が計上されました。