黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年を延長した政府の閣議決定(2020年1月)を巡り、関連文書の開示の是非が争われている訴訟が27日、大阪地裁で結審した。判決は6月27日。

 検察官の定年は当時、検事総長以外は63歳と検察庁法で定められていた。検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されないとの政府見解があったが、法務省が20年1月に法解釈を変更。当時の安倍晋三政権がその後、翌月に63歳となる黒川氏の定年を半年延長すると閣議決定した。

 訴訟の原告である上脇博之・神戸学院大教授は21年、法解釈変更について法務省内での協議の過程が分かる文書を情報公開請求。一部しか開示されなかったことから、不開示決定の取り消しを求めている。

 訴訟では、閣議決定当時の法務事務次官、辻裕教(ひろゆき)氏の証人尋問も行われた。政権に近いとされた黒川氏の定年延長を目的とした解釈変更ではないかとの質問に対し、辻氏は「そのようなことはない」と否定していた。【安元久美子】

 

 

忘れてはならない民主主義崩壊の危機だったあの日

検察庁法強行断念・黒川検事長辞任

首相 とことん責任転嫁

定年延長「問題ない」と居直り

 
 
 世論の厳しい批判で検察庁法改定の強行が断念に追い込まれたうえ、違法な閣議決定で定年延長を強引に決めた黒川弘務東京高検検事長が賭けマージャンの発覚で辞任―。追い詰められた安倍晋三首相は「人事案を最終的に内閣として認めた責任は私にある」(22日の衆院厚生労働委員会)というものの、野党の追及に対し責任転嫁、すり替え、開き直りのオンパレードです。

 この間の事態は、黒川氏の定年延長の閣議決定(1月31日)→「法解釈の変更」を強弁(2月13日)→後付けの検察庁法改定案提出(3月13日)という流れで、すべて安倍内閣主導で進んできました。首相の進退にも関わる問題であり、言い逃れ、開き直りは政権基盤の動揺を示すものです。

すり替えの答弁
 黒川氏辞任で当然問題になるのが、法解釈をねじ曲げてまで強行した定年延長の責任(任命責任)です。しかし首相は22日の衆院厚労委で、「法相からの閣議請議(要請)により閣議決定されるといった適正なプロセスを経た」と、森雅子法相に責任をなすり付けました。プロセスは適正だと開き直っていますが、検察官の定年延長を戦後一度もやったことのない法務省が法解釈を百八十度変えてまで定年延長を求めるなど考えられないことです。

 また、野党も賛成している国家公務員の定年を65歳に引き上げる国家公務員法改正案も含め、丸ごと廃案の動きを強め「コロナ危機の中、公務員の定年延長を議論」などと発言。批判されているのは検察庁法改定への批判なのに、すり替えで責任をあいまいにしようというものです。

 安倍首相側近の一人、世耕弘成参院幹事長は19日の記者会見で「公務員だけ給料が下がらないでいいのか」と突如発言。首相は21日の記者会見で世耕氏の発言を引いて「状況が変わった」などとのべました。検察庁法改定への批判を、国家公務員の定年引き上げの問題にすり替えて、抱き合わせで廃案にしようというのです。

選挙独裁の姿勢
 重大なのは、法をねじ曲げ定年延長を強行した閣議決定は「問題ない」「撤回する必要はない」と公然と開き直っていることです。閣議決定をそのまま残したら、法案が再び出される危険が残ります。

 「勝手に法解釈を変えるやり方は、絶対王政と同じ姿勢だと批判されている」と指摘された首相は、「民主的な選挙を経て、選ばれた多数の国会議員によって選出されている」と、無反省に選挙独裁の姿勢を示しました。