言ってみれば、この方は立憲民主党と国民民主党と維新そして公明党まで含めた連携政権でもいいと言っているのか?この論理は賛成できない。国民が更に不幸になる。

 

 

 

野党が政権の選択肢にならない日本の不幸
 日本は政権選択のカードすら持たない不幸な国と言えないだろうか。少なくとも私はそう考えている。

 

 なにしろ、現政権の不支持率が8割を超えてもなお、次期総選挙で「野党が政権を握る」という予想すら、出てこないのだから……。

 毎日新聞が2月16、17日に行った世論調査によれば、岸田内閣の支持率は14%、不支持率は82%となった。自民党支持率も16%と急落し、野党第1党・立憲民主党の支持率は16%となったことで、これまで大きく開いていた両党の支持率差はなくなった。

 自民支持率が1割台に落ち込むのは、2012年12月の自公政権復帰後で初めてとのことである。

それでも自民は選挙に負けない
 内閣支持率は、無党派層の動向次第で大きく変動する一方、自民は保守層など伝統的な支持基盤を固めており、党内には「自民の支持率が安定している限りは選挙で大負けすることはない」との楽観論が根強くあったとのことである(「自民支持率16%、自公政権下最低に 裏金問題など直撃 世論調査」)毎日新聞2024/2/18)。

 ただし、毎日の世論調査では、自民の支持率が低くなる傾向があるという説もある。

 そこでNHKの世論調査も見ておくと、岸田内閣の支持率は25%、不支持は58%である(NHK世論調査2024年2月)。各党の支持率は、自民党が30.5%、立憲民主党が6.7%、日本維新の会が3.1%と、野党側の支持率はいずれも10%に満たない。

 NHKの世論調査が正しいとすると、根強い自民支持層に守られて、自民党は大負けしないという議論が正しいだろう。ただし、自民党が2009年9月に世間転落する前の8月の支持率が23%、9月が15%だから、支持率25%はかなり低いものである。

なぜ野党の大勝が予想されないのか
野党第一党の立憲民主党の泉健太代表 Photo/gettyimages

 不人気な政権や与党であれば、多くの国では、選挙で野党の勝利が予想されるだろう。

 イギリスを見ると2025年の1月までには解散総選挙をしなければならず、そうなれば保守党スナク首相の支持率の低さから、野党労働党が勝利、政権交代が予想されている(「英スナク首相「総選挙は今年後半を想定」 支持率回復へ時間稼ぎか」日本経済新聞2024年1月4日)。

 日本でなぜそうならないかと言えば、野党に外交政策の一致がないからだ。

 日米安全保障をどうするかが一致しなければ政権は担当できない。そこで思い出されるのが、2017年9月29日、新党「希望の党」の代表を務める小池百合子東京都知事が表明した「排除の論理」だ。

 あのとき、この論理を国民が受け入れていれば、いま我々は政権選択の選択肢を手にしていたかもしれない。

 

岸田内閣「不支持率8割」でよみがえる、小池百合子「大敗北」の記憶

そしてつづく「底なしの腐敗」…!

 

自民支持率が1割台に落ち込むのは、2012年12月の自公政権復帰後で初めてとのことである。それでも、次の選挙で自民党には政権を維持するとの楽観論が広がっているそうだ。

日本は、政権選択のカードすら持っていない世界でも稀な国である。これは不幸なことだと少なくとも私はそう考えている。なにしろ、現政権の不支持率が8割を超えてもなお、次期総選挙で「野党が政権を握る」という予想すら出てこないのだから。

 

その大きな原因は、「野党に外交政策の一致がない」からだ。日米安全保障をどうするかが一致しなければ、政権は担当できない。

もちろん、トランプ政権になれば、日米同盟が危うくなることも予想できるのだから、この際、自主防衛を真剣に考えるべきだという方もいるかもしれない。しかし、日本が対峙する、中国、ロシア、北朝鮮はいずれも核を有しており、かつGDPは中国だけで日本の4倍以上ある。

 

ヨーロッパ諸国が「自主防衛」が可能な理由
一方で、ヨーロッパがアメリカに頼らず防衛するのは可能である。

2023年の時点で、ロシアのGDPは1.9兆ドル、人口1.4億人だが、これに対してドイツ、イギリス、フランス、イタリアの合計のGDPは13.0兆ドル、人口は2.8億人である。

さらに、ポーランド、リトアニア、ラトビア、エストニア、フィンランドは、経済的には小国ではあるが、ロシアに侵攻され支配された苦い経験があり、国民の戦う士気は高い。うちポーランドのGDPは0.8兆ドル、人口3800万人である(GDPと人口はIMF, World Economic Outlook Database。GDPは為替レート換算)。ポーランドだけでもロシアの2.5分の1のGDPがある。

他にもヨーロッパには、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国が多数ある。

 

トランプ氏が「お前たちは十分に豊かな大国なんだから、アメリカに頼らず自分で守れ」というのは、それなりに理屈がある。

 

なお、1956年のハンガリー動乱でソ連に弾圧されたハンガリーが、なぜ現在、親ロシア的言説を吐くのか私には分からないが、動乱後、自由を求める人々が国外に脱出し、自由とか独立とか民主主義に関心のない人々が残ったからなのかもしれない。

動乱で国外に流出した人は20万人、当時の人口は1000万人程度であったから、2%の人が国外に逃れたことになる。「たった2%」と思われるかもしれないが、自由を求めるオピニオンリーダーの喪失の影響は、大きいのかもしれない。

 

日本とドイツの左派の「大きすぎる違い」
私は、日本の安全保障政策については、日米同盟しか選択肢はないと思うのだが、そう考えるのは、日本の左派にとっては難しいことらしい。

現在ドイツの政権を担当し、シュルツ首相を党首としているドイツ社会民主主党(SPD)は、親ソの労働者階級のための政党だった。ところが、SPDは1959年にゴーデスベルク綱領を制定してマルクス主義の階級闘争と絶縁した。中道左派の国民政党へと変身し、1960年にはNATOによる西側軍事同盟への参加に賛同した。つまり、SPDもそれまでは、日本の左派が日米安保に賛同していなかったのと同様に、政権担当能力を欠いていたということだ。

その後、SPDは、1966年にはキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)と大連立を組んで、戦後はじめて政権に参加した。1969年から1982年にかけては自由民主党(FDP)と連立を組んで首班で政権を担当した(ブラント政権、シュミット政権。その後、1998-2005年にかけてシュレーダー政権)。

SPDは社会民主主義の政党であるから、当然、大きな政府と福祉政策の政党である。
だが、中小企業家層の支持を集め、どちらかと言えば小さな政府を求めるFDPとの連立政権も維持できた。これにより、FDPは福祉のカットは政権基盤を危うくすることを学んだとされ、SPDは市場経済にあまりに介入することは経済の効率を低め、かえって福祉政策の原資を危うくすることを学んだと見られている。

悔やまれる小池百合子「排除の論理」の大敗北
ドイツに対して、日本の場合はどうだろうか。

2017年9月29日、新党「希望の党」の代表を務める小池百合子東京都知事は、同党との合流を決めた民進党(当時)の受け入れを巡り、「排除の論理」を明らかにした。

憲法改正や安全保障関連法への態度で候補者を選別する意向を示したのだ(「小池氏「排除の論理」鮮明 民進に反発の声」日本経済新聞2017年9月29日)。

 

私は、憲法改正や安全保障関連法への態度で一致していなければ、政党としての体をなさないと思う。

憲法改正は、抽象論で誤魔化せても、安全保障関連法への態度で一致していなければ、政権は維持できない。日米安保条約で、集団的自衛権の行使を認めなければ安保条約は意味をなさないからだ。

 

ところが、「排除の論理」と言われて希望の党の人気は失速した。

もちろん、急に態度を決めろと言われても困るという理屈は分かる。しかし、ドイツのSPDが階級闘争から絶縁し、政権担当能力のある中道左派へと歩み始めるきっかけとなったゴーデスベルク綱領の制定の背景には、1950年代を通じての議論があった。日本の左派政党は、SPDが1959年にしていたことを60年近くもさぼっていたのだから、急に決めろと言われるのはしかたがなかったと私は思う。

 

「排除の論理」を捨て、政権の選択肢を失った…
財政と安全保障とでは全く違う。

財政再建を唱える議員が、地元への予算バラマキに積極的である例は、いくらでもある。財務省も財政再建を唱えている議員の地元バラマキには協力的だったりする。
お金のことならいくらでも妥協できるが、安全保障はそれができない。

 

私は、安全保障政策での「排除の論理」は当然のことだと思う。

 

しかし、それは世論には受け入れられなかった。もし、「排除の論理」で新党ができていれば、今が政権交代のチャンスだったと私は思う。