世襲議員であり政治を知らないまま議員になった典型的な人。しかし金だけはしっかりと家族中で政治資金を使い回すという顔ににあわない強かさを持っているお嬢様。

ポンコツ炸裂の“加藤の乱”──。今後どんな展開をたどるのか。

 

 

岸田政権の看板政策である「異次元の少子化対策」をめぐり、加藤こども政策相が「異次元のポンコツぶり」を見せている。社会保険料に上乗せする「子ども・子育て支援金制度」の徴収額について、まともに答弁できていない。「(保険)加入者1人当たり月平均500円弱」と説明してきた岸田首相を背後から刺すような発言が物議をかもしている。

◇ ◇ ◇

政府は支援金制度について、2026年度に6000億円、27年度に8000億円、28年度に1兆円と段階的に引き上げて徴収する方針を掲げている。岸田は国会で、上乗せ徴収額が28年度は1人当たり月平均500円弱になると説明してきた。

 

ところが、である。日本総研の西沢和彦理事の試算によれば、支援金制度によって生じる負担額は労使合わせて、協会けんぽが月額1025円、組合健保が同1472円、共済組合が同1637円。21日の衆院予算委で立憲民主党の早稲田夕季議員が西沢理事の試算を引き合いに「(負担額は)500円より高くなるのでは」と追及すると、加藤は「可能性はある」と認めた。
その答弁に至るまで、加藤は終始オロオロ。手元の答弁資料に目を落としながら別の質問への答弁を読み上げてしまい、早稲田から「違う、違う」と突っ込まれて答弁不能に。再度、早稲田が同じ質問を繰り返したものの、加藤は答えられず、答弁整理のために小野寺予算委員長が速記のストップを指示。思わず「大丈夫かよぉ……」と嘆息する小野寺の声が委員長席のマイクに拾われていた。

翌22日の衆院予算委でも加藤のポンコツぶりが炸裂した。

立憲の石川香織議員が「国民負担が1000円を超える可能性はあるんじゃないか」と問いただすと、加藤は「可能性としては、あり得る」と発言。動揺したのか、別の大臣席に着席してしまい、苦笑いを浮かべながら正しい席に座りなおす一幕もあった。

一方、質問を終えた石川に対して「答弁が荒れちゃってゴメンね」と言わんばかりに満面の笑みを浮かべる場面も。悪びれた様子などみじんもないテヘペロぶりに、官邸は「これ以上ボロが出ないよう、加藤大臣に答弁させたくない」(官邸関係者)と慌てているという。

ゴマカシとウソで塗り固められた屁理屈には無理がある
岸田が説明してきた「500円弱」は保険加入者1人当たりの平均に過ぎず、負担額が一律に「500円弱」というわけではない。数字マジックを身内から否定されては、面目丸潰れだ。

「加藤大臣のグダグダぶりは目も当てられませんが、諸悪の根源は、支援金制度について『1人当たり500円弱』『実質的な負担はない』と言い張る岸田総理です。事実上の『子育て増税』なのに、『増税メガネ』と批判されたトラウマがあるからか、社会保険料で徴収して『増税ではない』とゴマカしています。賃上げによって徴収分を補うとして『実質負担はない』と強弁していますが、負担増に変わりはない。おまけに徴収額もデタラメ。こんなゴマカシとウソで塗り固められた屁理屈を言い繕おうとしても、無理があるのは当然です。岸田総理は負担額の試算について『法案審議に間に合う形で示したい』と言っていますが、注目度の高い予算委に出してくるかどうか見ものです」(ある野党議員)

ポンコツ炸裂の“加藤の乱”──。今後どんな展開をたどるのか。

 

 

自民党パーティー券キックバック裏金事件がもたらした日本の危機、「政治家だけは特別」が通れば国民の税負担意識は崩壊

 
自民党裏金問題は、納税義務において、政治家が一般国民と別扱いされていることを明らかにした。国民の怒りは、その点に向けられている。高齢化社会で負担が増すことは避けられないが、負担の公平が確保されていなければ、それを乗り切ることはできない。
 
市民団体が自民党裏金問題を脱税と告発
自民党の裏金事件に関して、脱税であるとする告発状が市民団体から提起された。
この団体は、「自民党ウラガネ・脱税を許さない会」。2月1日、安倍派の実力者ら幹部議員7人と、政治資金規正法違反の罪で立件された議員や元議員3人が、派閥からの還流分を所得として計上せず、脱税したとして、所得税法違反疑いの告発状を東京地検に提出した。

多くの国民は、今回の事件に関して、「収支報告書不記載は確かに問題だが、報告書を修正すればそれで終わりというものではない」と考えている。

今回の告発は、それを明確な形で表現したものだ。

「政治家と一般国民が納税義務で別扱い」に怒り
普通の感覚で考えれば、キックバック裏金は課税対象であり、したがって税務申告が必要なはずだ。それにもかかわらず、申告がなされていないのではないか? つまり脱税ではないか? という疑いを、多くの人々が持っている。

そして、そうした扱いが慣例化して長年にわたって続いてきたという事実を、自分が重い税負担に苦しんでいることと比較して、何と不公平なことかと憤っている。

国民は、政治資金規正法で課された公開義務に違反したことを怒っているだけではない。納税というきわめて重大な問題に関して、自分たちと政治家が、まったく異なる扱いを受けていることに対して怒っているのだ。
 
キックバックは議員個人の所得であり脱税にあたる
今回の問題を税務面から捉えると、資金を受け取ったのが個人なのか、あるいは団体なのかなど、様々な条件が関連しており、簡単には判断できない。

前記団体の告発状は、キックバックされた資金は、非課税の政治資金ではなく、議員個人の所得であり、所得税の脱税にあたる疑いがあると主張している。

東京新聞によれば、国税庁は毎年、「政治資金に係る『雑所得』の計算等の概要」と題する文書を作成し、確定申告前に議員に向けて配布しているそうだ(東京新聞、2024年2月2日「億単位の裏金がバレても『政治資金』で届けたらOK 庶民なら『脱税』なのに…」)。

文書は、「政党から受けた政治活動費や、個人、後援団体などの政治団体から受けた政治活動のための物品等による寄付などは『雑所得』の収入金額になりますので、所得金額の計算をする必要があります」と下線を引いて注意を呼びかけているという。

こうした呼びかけがなされるのは、実際には雑所得にあたるにもかかわらず、申告がなされていないケースがあるからだろう。

では、今回問題とされているようなキックバックの裏金は、ここで注意を喚起されている問題に該当するのだろうか?それに対する国税庁の見解をぜひ聞きたいものだ。

東京新聞の記事では、「提出された確定申告を見て、必要があれば調査する」ということになっているのだが、裏金問題は今年だけの問題ではなく、これまで長年にわたって続いてきたものだ。過去の申告について、国税庁はどのような判断をしたのだろうか?

なぜ政治家だけが税負担を免除されるのか?
私も、この市民団体の主張とは若干異なる理由によるが、裏金を議員個人が受けても、その議員が管理する資金管理団体が受けても、課税の対象になると考えている(2月11日公開「パーティー券キックバック、起訴3議員以外の議員の課税所得未申告疑惑は、なぜ脱税問題とされないのか?」参照)。

ところで、現行の規定に照らして、キックバック資金をどう扱うべきかは、もちろん重要な問題だ。現実の裁判の過程では、現実の法規を前提として結論を出さなければならない。

ただ、問題は、それだけで済むわけではない。現在の規定を所与のものと考えて是認し、それに照らして現実の問題をどう判断するかというだけのことではない。
 
それと並んで重要なのは、そもそもその規定が正当化できるものかどうかだ。そのレベルの問題として捉えれば、どう考えても政治家だけが特別扱いされていると考えざるをえない。そして、それは納得できない。

国民がこの問題について怒っているのは、政治家が税負担からほとんど逃れてしまっていると考えざるをえないからだ。政治家は、税制を決めるが、自ら税を負担することは少ない。税を負担するのは国民であって、政治家はその例外、という世界になっているとしか思えない。これが、今回の問題の原点だ。

負担の公平がなければ高齢化社会を乗り切れない
問題をさらに深刻化させるのは、今後、負担の増加が避けられないという事実だ。

負担増加は、人口高齢化の進展による社会保障費の増加によってもたらされる。年金にしても、医療費にしても、介護費にしても、高齢者数が増えれば、給付水準を大幅に切り下げない限り、制度を支えるための保険料と税の負担が増加することは避けられない。

そして、日本は、これから、世界のどの国もかつて経験したことがない高齢化社会に突入する。だから、負担の総額が激増することは、避けられないのである。

そうした高負担社会において最も重要なのは、負担の公平化だ。それなくして、これからの高齢化社会を支えていくことは、できない。

「寡(すくな)きを患(うれ)えずして均(ひと)しからざるを患う」という言葉が論語にある。

これは、負担についても言える。言えるというより、負担についてこそ、公平が最も重要だ。

今後の日本に即していえば、負担が増えることを憂える余裕はないのである。負担増は、人々が高齢化社会において医療や介護のサービスを受けるために、どうしても必要なことだ。

そうした社会においては、負担の公平こそが重要だ。それが確保できなければ、日本人は、高齢化社会を生き抜くことはできない。

今回の市民団体による告発は、極めて重要な意味を持っている。最終的な結果が「脱税とは認められない」ということになれば、「政治家だけは特別」ということが確定してしまう。そうなれば、国民の税負担意識は崩壊してしまうだろう。それは、国家の崩壊以外の何物でもない。