さらに今年6月から、医療費の初診料が27円、再診料は12円(3割負担の場合)引き上げられる。

「ますます低所得者ほど医療や介護サービスが受けにくくなります。本来であれば、低所得者ほど比重が大きくなる保険料への上乗せや消費税ではなく、所得税や法人税などで賄うべきです」(伊藤さん)

一部の自民党議員たちに裏金を政治活動以外に使用していた“脱税疑惑”が出ているが、自民党はお手盛りの党内調査で幕引きをはかろうとしている。そんななかでの“増税”に、国民の怒りは爆発寸前だ。

 

 

「公的保険の加入者1人あたりの拠出額は、粗い試算で月平均500円弱になる。ただし、賃上げと歳出改革によって負担軽減を行うため、実質的な負担は生じない」

 

少子化対策の財源となる「子ども・子育て支援金」(以下、支援金)の負担額について、2月6日の衆議院予算委員会でそう述べた岸田文雄首相(66)。支援金とは、岸田首相が昨年ぶち上げた“異次元の少子化対策”に必要な財源のことだ。

年間3.6兆円のうち、約1兆円を個人や企業が支払う公的医療保険料に上乗せして徴収する。負担は2026年度から始まるという。岸田首相は「賃上げするから実質の負担は生じない」と繰り返すが、〈実質的な増税〉と今国会でも批判が高まっているのだ。

「負担額が500円と言いますが、加入している保険や年収によっては、もっと高くなることを隠して“ワンコイン”の少額ですと国民を欺くやり方です。そもそも、〈賃上げするから増税ではない〉という岸田首相の考えそのものがおかしいのです」

そう指摘するのは、元経済産業省の官僚で政治経済評論家の古賀茂明さん。

実際に、日本総合研究所の西沢和彦理事の試算によると、給料から天引きされる支援金の負担額(被保険者1人あたり)は、中小企業の社員などが加入する「協会けんぽ」で月1025円、大企業が加入する健保組合で月1472円、公務員などが加入する共済組合で月1637円程度となり、月額500円を大きく超える。年間では、1万2000~1万9000円もの負担増になる計算だ。

岸田首相が豪語するように、果たして賃上げや歳出改革で負担が抑えられるのか。

「賃上げされるか否かは、企業によっても個人によっても異なります。そもそも、現在、賃金が上がっている欧米諸国は、30年かけて企業の生産性を上げ、賃上げを実現してきました。日本は、この30年、人件費を削ることで国際競争力を維持しようとしてきた。1~2年の短期間なら賃上げできたとしても生産性や競争力を上げない限り、賃上げは続きません」(古賀さん)

むしろ、岸田首相が短期間での賃上げを声高に叫ぶことで、中小企業は倒産のラッシュになりかねないという。さらに歳出改革についても、「社会保障が、より一層削減されるだけ」と、古賀さん。

税と社会保障が専門の鹿児島大学教授の伊藤周平さんも、支援金制度は、「弱者にツケを回す“隠れ増税”だ」と、こう批判する。

「保険制度は、保険料を納めた人が給付を受ける権利を有します。しかし支援金制度は、恩恵にあずからない人まで支払わなければならないので、事実上の増税です」

 

所得が低い人ほど負担は重たく……
国民の負担増は「支援金」だけにとどまらない。

「2024年度から、市区町村や都道府県が森林を整備するための財源となる“森林環境税”が年額1千円徴収されます」(古賀さん)

さらに気がかりなのが、岸田首相が決定した“防衛費増額”の財源だ。2027年度までの5年間で、少なくとも総額43兆円が必要になる。岸田首相は14日の衆院予算委員会でも、「1兆円程度を国民の負担でお願いする」と、“増税”を示唆。

この財源は、どうなるのか。

「1兆円の財源については、いずれ消費増税などで賄われる可能性があります。しかし、昨年末に“裏金問題”が発覚したこともあって増税の議論が先延ばしされています」(伊藤さん)

現時点で決まっているのは、東日本大震災後に導入された“復興特別所得税”2.1%のうち1%を防衛費に充て、その分、徴収期間を最大13年間延長することだ。これにより年収500万円の世帯の場合、年間約1千円の負担増に。

そのうえ、改定されるごとに上がり続ける介護保険料も重くのしかかる。

「介護保険が始まった2000年当初、40~64歳の人が納める介護保険料は約2000円でしたが、毎年改定されて上がり続け、2024年度は1人あたりの平均が月6276円になる見込みです。65歳以上の方が納める保険料も、当初の2900円から現在は6000円超に。今後、高齢化が続くかぎり負担は増えていきます」(伊藤さん)

結果、2024年度からの40~64歳が納める保険料も前年度より年間2704円の負担増に。前述した支援金や、森林環境税、復興特別所得税などを合わせ、今後も介護保険料が同様のペースで上がっていった場合、2026年度以降の1人あたりの負担は、2023年度と比べて2万7776円も増えることになる。

伊藤さんは、「保険料の負担増ばかり目立つが、医療費の窓口負担や、介護サービスの利用料のアップも見逃せない」とこう続ける。

「後期高齢者の医療費の窓口負担は2022年度から年収200万円以上の単身世帯で2割に引き上げられました。介護サービスの利用料も、2027年度には同じ負担率になると予想されます」(伊藤さん)

さらに今年6月から、医療費の初診料が27円、再診料は12円(3割負担の場合)引き上げられる。

「ますます低所得者ほど医療や介護サービスが受けにくくなります。本来であれば、低所得者ほど比重が大きくなる保険料への上乗せや消費税ではなく、所得税や法人税などで賄うべきです」(伊藤さん)

一部の自民党議員たちに裏金を政治活動以外に使用していた“脱税疑惑”が出ているが、自民党はお手盛りの党内調査で幕引きをはかろうとしている。そんななかでの“増税”に、国民の怒りは爆発寸前だ。

「女性自身」2024年3月5日号

 

 

ラサール石井 東憤西笑

自民党はカルト集団と化し裏金問題では犯罪集団化…日本そのものがカルト国家になってしまう

 
 
 2月17日のTBS系「報道特集」(歴代文科大臣と旧統一教会)はなかなか踏み込んだ内容であった。

 今国会で問題になっている盛山文科大臣と旧統一教会の関係。のらりくらりとかわす大臣。衆院選に際して教会側の決起集会に参加し、教会の推奨する政策を推進するという推薦確認書にサインした写真を見せられ渋々認めた。

 幹部とハグしたと言われ、「私の年代ではハグなどという習慣はない」と否定したが、番組では現役幹部がモザイクで登場。実際の演説場所に行き、「ここで向こうからハグしてきた」と証言した。

 一説では解散命令を請求するという岸田政権に激オコの教会側が揺さぶりをかけるため一連の写真をリークしたと言う人もいる。たしかに現役幹部が取材に応じるのはそうでもなければないだろう。

 第2次安倍政権以来9人の文科大臣のうち実に7人が教会と関係がある。それはなぜか。

 番組は教会がかなり昔から教育行政に影響を与えてきたことを指摘。80年代に出来た関連団体、大学教授ら2000人以上を擁する「世界平和教授アカデミー」。その初代事務局長に番組は取材。当時の教科書が「原発の危険性」「大衆運動の肯定」など記述し、偏向していると主張(いや、至極まっとうだと思うのですが)、新しい教科書を作るべきだと日教組と対抗した。実際教科書は徐々に保守的になっていった。
 
 さらに元渉外担当へのインタビューでは、教会の計画は2020年には統一教会が日本の国教になり、その教義に従って政府も機能するとうたっていると言う。

 しかしその保守層を取り込む考えと、天皇制を否定する教会の考えは矛盾するのではないかとの番組の問いに、「最終的には天皇も信者になってもらって」と答えたのには驚いた。

 陰謀論と一蹴は出来ない。すでに国会議員やその秘書には教会員が多数存在するという。すでに自民党はかなりむしばまれ、あからさまに教会側の教義と同じ法案が通りつつある。

 盛山氏は叩かれても、もっと疑惑のある萩生田氏や山谷えり子氏は安泰なのもおかしい。

 今や自民党はカルト集団と化し裏金問題では犯罪集団と化している。いや、戦後から長きにわたり、ずっとそうだったのかもしれない。

 このままでは日本そのものがカルト国家になってしまう。内閣支持率が14%でも選挙で自民党が勝つなら、それはもうカルト国家以外の何物でもないだろう。でもそれは選挙に行かないあなた方のせいでもあるのだ。

 

「公には口が裂けても言えないが」…前法務副大臣・柿沢未途の裁判で明らかになった「裏金の使い道」

 
逮捕勾留後、一転し、冒頭に記したように買収を認めた。この公判は審理を迅速に行う「百日裁判」で実施され、3月14日にも判決が出る予定だ。
 
 
 
「全て、争わない」
マスクごしにくぐもった声で起訴内容を認めたのは、柿沢未途前法務副大臣(53)だ。昨年12月28日に逮捕され、年末年始を拘置所で過ごし、やや痩せたようだ。後ろに流していた髪を前におろし、ノーネクタイ姿で衆議院議員時代からの溌剌とした印象は一変していた。
 
2月14日、昨年4月の江東区長選挙を巡り、公選法違反に問われた初公判で、柿沢氏は「多くの人を巻き込み、私の責任は重い」と謝罪。続く20日の被告人質問でも謝罪後に「公訴事実について一切争わないこととした」と述べた。

一方で検察の尋問には「お答えを差し控える」との回答を何十回も連呼し、実質的に黙秘していた。事件の発端や経緯を尋ねられても、「お答えを差し控える」を繰り返し、検事が「責任を認めているならあなたの口からお話しすべきだ」と語気を強めた場面もあった。

検察は、江東区内で同じ自民党ながら対立を深める山崎孝明前区長とその長男の一輝前都議(51)との確執に触れ、「山崎親子の影響力を削ぐために対抗馬の擁立を考えた」と指摘した。

「区長選告示4日前に79歳で急逝しましたが、山崎区長は4期務めた大物区長で、『都議会の首領(ドン)』こと内田茂元幹事長とも昵懇で強い影響を誇っていた。江東区全域を選挙区とする東京15区は柿沢氏の父の弘治元外務相の地盤でもあり、先代からの強固な後援会を背景に野党国会議員として山崎親子と対立しながら当選回数を重ねていった。ややこしくなったのは柿沢氏が自民へ入党したこと」(自民党東京都連関係者)

’21年の衆院選で党本部は柿沢氏ともう1人の候補の双方に推薦を出した。これは異例のことだが、「勝ち上がった方を公認」とのサインだ。柿沢氏が保守分裂選を制し、5度目の当選を果たすと、当選後に自民党へ追加公認された。

しかし、山崎親子の抵抗もあり、自民党東京都連に所属できず、山形県連の預かりとなり、さらに党公認候補となる選挙区支部長に1年以上就けなかった。山崎親子との対立を深める中、昨年4月の区長選を迎えた。

木村弥生前区長(58)を当選させることで、山崎家の影響力を削ぎ、自身の地盤固めにつなげるーー。

公判では、柿沢氏が主体となって、木村氏に出馬を要請し、選挙戦略や政策も立案したことが明らかとなった。さらに木村氏の出馬会見のスピーチ原稿の添削も柿沢氏が行った。父の代から仕えた区議を木村陣営の選対本部の中心人物に据え、自身の秘書4人も派遣。「柿沢プロデュース」の選挙運動を展開していたことも明らかとなった。

「地盤強化の一環として、選挙を控えた区議、元区議など自民党公認の12人に陣中見舞いと称して現金20万円ずつ渡すことを柿沢氏が決め、秘書らに指示。木村氏を当選させるための報酬として計280万円を準備。7人は受け取りを拒むも、5人は受領。うち2人は3月までに返還。残りの3人は被買収で在宅起訴となった」(司法担当記者)

今国会でも話題となっている「政治とカネ」の問題が、別の形ながらこの法廷でも明るみとなった。

政治に信頼を取り戻すーー、昨年末から何度も耳にするフレーズだが、この裁判でも、国会議員は現金の見返りに自身の支援を求め、地方議員のカネに対する甘い認識が露見した。

関西を地盤とする衆議院議員はこう補足する。

「党から私が支部長の政党支部に活動費が入金されると、『俺たちがお前にバッジをつけさせてやっている』と地方議員からすぐに還流を求められる(苦笑)。地方議員の政治団体に還流させ、領収書を取りますが、『もっとよこさないと選挙で落ちることになるぞ』と暗に裏金を要求されたのは一度や二度ではない。

’21年の新潟5区の衆院選では泉田裕彦議員(61)が星野伊佐夫前県議(84)と思われる男性の声で、『とにかく必要経費をばらまこう。2000万(円)や3000万(円)なんか、もったいながったら人生終わりだよ』など裏金を要求された録音テープを公表しましたが、あの手の地方議員はどこにでもいる。

国会で裏金の使途を追及されても、『地方議員に渡してます』なんて口が裂けても言えないでしょう」

東京15区では不祥事が続いている。自民党の前支部長だった秋元司元衆議院議員(52)はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡り、収賄と組織犯罪処罰法違反で逮捕され、空席となった。そして支部長となった柿沢氏が公選法違反で逮捕され、支部長ポストはいま空いている。

2人続けて立件される異例な状況で、4月の補選に向けて候補者選定が進んでいない。党本部は東京都連に丸投げし、公募となりそうだ、と前述の東京都連関係者は眉を寄せ、こう語る。

「東京都では警視庁が選挙にはたいへん厳しく目を光らせ、昭和のような選挙はできない。が、15区は小選挙区制が導入されても、長らく江東区単一の選挙区のままで、保守分裂で争ってもいた。豊洲や有明にはタワーマンションがいくつもあるのに選挙戦を見ていると昭和を思い出す」

昨年11月、柿沢氏は支援者300人に「現金は江東区議選を応援するための陣中見舞いで区長選は関係ない」と自身は公選法を遵守している旨を主張した文書を送っていた。

しかし、逮捕勾留後、一転し、冒頭に記したように買収を認めた。この公判は審理を迅速に行う「百日裁判」で実施され、3月14日にも判決が出る予定だ。

支援者は嘆息混じりに柿沢氏の今後をこう予測する。

「検察にベタ折れしたことで、公民権停止が5年から3年に引き下がるだろう。3年間は出馬できないが、その後は可能となる。推定無罪で十数年と裁判で戦うよりもさっさと認め、3年後の出馬を見据えた大人の対応だろう。
都議時代にも飲酒運転の不祥事を起こし失職した際、丸坊主にして支援者宅を一軒ずつ回って再起した。今回も秘書の面倒を見て、謝罪すれば古くからの支援者はミトさんを許すかもしれん」

昭和の慣習に従ったままの政治家、そしてそんな土壌は刷新すべきではないか。

取材・文:岩崎 大輔

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