立憲の若手議員の底力を見た「政治改革案」 維新から「改革政党」の座を奪い取れ! 古賀茂明

 
古賀さんまだ国民民主党に期待します。あんだけ崩壊仕切っている政党は「野党」とは言えません。完全に維新同様自公政権の補完勢力となっている。発言している内容見てくださいな、まるで極右顔負けのことばかり。立憲の若手の苛立ちにもに今回の姿勢はまあ信じましょう。でも連合という組織が札束を持って干渉してくることは予想がつく。その時毅然とした姿勢を見せつける事が出来るであろうか。
 
 
 
 正直言って驚いた。

 立憲民主党が発表した「本気の政治改革実現に向けて 政治とカネの問題に対する立憲民主党の考え方」と題した政治改革案を見たときの私の率直な感想だ。
 
「ここまでよく踏み込んだな。こんな思い切りの良さが立憲のどこにあったのか」と思った。

 私は、立憲になんの義理もないし、これまでも同党については是々非々で、必要ならば批判もしてきた。そんな私から見ても、今回の改革案は絶賛せざるを得ない内容だ。(その内容の重要な部分については後に触れる)

 ただし、政治家の公式発表をそのまま信じるのは危険なので、立憲の複数の議員に取材をしてみた。

 そこでわかったのは、実は執行部は当初ここまで徹底した改革案にするつもりはなかったようだということだ。とりわけ、政治資金パーティーの完全禁止には懐疑的だった。なぜなら、立憲の幹部たちも自ら政治資金パーティーを開き、そこで得た収入が政治活動を支える重要な柱の一つになっていたからだ。

 ところが、立憲の改革案には、「政治資金パーティーは全面禁止」とはっきり書いてある。

 政治資金パーティーについては何らかの規制強化が必要だ。だが、全面禁止は困る。そこで、妥協案として何とか国民世論から受け入れられる案を作る必要がある。そう執行部は考えていたようだ。

 ところが、同党の政治改革実行本部総会を開いてみると、若手を中心に全面禁止論が沸騰した。全面禁止は無理だという反対論も出たそうだが、結局若手の勢いが優った。「(裏金問題は)自民党の話ではあるが、これだけ政治資金パーティーへの国民の不信感が高まっているのに無理して残す必要があるのか。国民目線で考えれば、全面禁止が当たり前だ」という若手の正論に反対派は押し切られたのだ。

 ここで、改めて、自民と立憲、さらに日本維新の会の政治改革案のうち、企業・団体献金、政治資金パーティー、政策活動費の3点に絞って見ていきたい。この他にも多数の論点があるが、今挙げた3点について完全な改革案を実施しなければ、他の点でどんなに厳しくしても必ず抜け穴ができて、元の木阿弥に終わる可能性が高いからだ。逆にこれらの3点について完全な改革を行えば、金による政治という最も本質的な問題がかなり解消することが期待できる。
 
 そこで、この3点に関する3党の改革案について、順に見ていこう。

 第1に、企業・団体献金について。

 岸田文雄首相は国会でどんなに追及されても、企業にも政治活動の自由があるなどと意味不明なこと(岸田首相は最高裁判決などを付け焼き刃的に持ち出しているが、これは、本質を全く理解しないまま誤った判例解釈をしているに過ぎない)を言いつつ、何があっても企業・団体献金の禁止には反対という立場だ。自民は、企業・団体から金と票をもらって権力と利権を維持し、その見返りにそれらを提供した企業・団体に補助金、公共事業、減税、彼らのための規制環境を与える。このいわば壮大な贈収賄構造が自民政治の本質だから、この姿勢はある意味当たり前かもしれない。

 逆に言えば、ここを突破されると彼らはほとんど生きていけないことになる。

 一方、立憲、維新はともに企業・団体献金禁止を掲げている。これは両党とも以前からの立場だ。しかし、維新については、パーティー券収入が献金とはされないことを利用して、パーティー券を企業に大量に売りつけているのではという批判がある。

 実は、維新は、元々大阪の自民党から分派した勢力だ。支持層には地元の企業が多く、自民と同じ政治資金の構造を引き継いでいる。

 第2の政治資金パーティーについては、自民は、派閥によるものは禁止するが党や個人によるものは禁止しないとしている。

 一方、立憲は全面的に禁止すると踏み込んだ。これは大変な意味を持つ。「全面的に」ということの意味は、個人だけを対象とするパーティーも禁止ということだ。

 これに対して、維新は、政治資金パーティーの禁止は盛り込まず、企業・団体がパーティー券を購入することだけを禁止するとしている。

 個人がパーティー券を買っても大きな金額ではないから、両者の違いはそれほど大きくないと言う人もいるが、これは間違いだ。なぜなら、個人に売ったとして表向きは個人向けの領収書を出しても、その領収書を使って企業が交際費などの経費として落とすことが(これが税法上正しいやり方ではないとされて否認されるリスクはあるが)実際には広く行われていると議員たちは証言している。
 
 パーティー券はイベントの参加料なので、普通の飲食費ではないという扱いで1人あたり5千円(2024年度から1万円に引き上げられる)という上限がない。出席しないと寄付とみなされるが、出席すれば良いので、社員を参加させて写真を撮っておき、経費として落とすという手法も使われている。

 要するに個人向けと言っても大きな抜け穴があるのだ。

 第3に、政策活動費について。

 そもそも政策活動費の定義が明確でないが、最近問題になっているのは、政党などから党幹部に「渡し切り」で「巨額の資金」が移転され、その後「領収書なし」で政治活動に使われたとされる資金である。

 自民党の二階俊博元幹事長が5年間で約50億円も党から政策活動費をもらっていたことや、甘利明前幹事長が在任35日間で3億8千万円もの政策活動費を受け取っていたことで、選挙の買収に使われたのではないかなどと疑惑の目が向けられているが、岸田首相は「適正に処理されている」とまともに答弁しない。もちろん、政策活動費そのものの廃止には絶対に反対である。

 これに対して、立憲は、「使途不明な」「政策活動費」など政党「幹部への多額の渡し切り」を禁止とした。つまり、各党が慣習的に行っている党幹部に対する巨額の渡し切りの資金供与をやめるというのだ。

 一方、維新の対応は中途半端だ。「領収書に紐づかない」「政策活動費」の廃止と「透明化」と書いてある。22年分の政治資金収支報告書によれば、藤田文武幹事長に毎月81万~1234万円の政策活動費を支出していたことや、19年分以降は毎年、馬場伸幸代表ら幹部数人に計4497万~5966万円を配っていた(22年分は馬場氏への支出はなかった)という後ろめたい事実があるからだろう。

 両党の対応をよく見ると、領収書なしの使用は認めないということでは一致しているが、立憲の提案では、領収書があっても、幹部への多額の渡し切りはできなくなる。つまり、自民や維新が行っている党幹部への巨額の政策活動費の供与ができなくなるわけだ。
 
 ちなみに、維新は「透明化」とは言っているが、領収書は必要としつつも公開には後ろ向きだ。「政治資金収支報告書にはすべて記載するものの、氏名や住所などについては一部あるいは全部の非公開も選択できることとする」とまで書いた。全く腰砕けである。

 政治家は、人に言えない政治工作を行う必要があるというのが永田町の常識だ。しかし、国民や有権者あるいは献金者は、人に言えない政治工作などやらないで欲しいと考える。当たり前のことだ。

 自民も維新も国民目線とはかけ離れている。政策活動費がこれだけ問題にされているのにまだその温存を企むのは、よほど人に言えない汚い金の使い方をしたいのだと疑われても仕方ない。

 では、立憲はなぜ簡単に幹部への巨額の渡し切りをやめると言えたのか。これまでに聞いた話や私の推論でもわからない。そこで、私は、立憲の政治改革実行本部事務局の落合貴之事務局長(衆議院議員、当選3回)に思い切って電話で聞いてみた。

 すると、驚くような答えが返ってきた。

 立憲では岡田克也幹事長が2年前に、幹部への政策活動費の渡し切りをやめたというのだ。だから議論する必要もなかった。

 では2年前にそれをできた理由は何かと聞いたら、よくわからないが、岡田氏が、なくても困らないはずだと言うので、半信半疑でやめてみたら、本当に大きな問題がなかったということだった。

 実は、政策活動費のかなりの部分は、最終的には地方議員の買収や贅沢な飲食費に充てられているという話がある。それは、有権者には内緒にしておきたいということなのだろう。だが、岡田氏は、買収などもってのほか、本当に必要な会議のための飲食でも贅沢は不要だし割り勘でも良いという考え方らしい。

 政治部の記者が「政治には金がかかる」とわけ知り顔で解説するが、金をかけないように努力すればできるのだ。

 久々に聞く痛快な話だった。

 ここまでの話をまとめると、3党の間での政治改革の議論では、完全に立憲の一人勝ちだということになる。国民は誰もが立憲案を支持するだろう。
 
 そして、もう一つ、重要なことがある。それは、立憲の改革案が若手主導でまとめられたことだ。幹部の中には渋るものもいたが個人のパーティー券購入まで禁止とできたのは、彼らの力なのだ。自民党の若手がほとんど声を上げられないのに比べて、なんと頼もしいことか。

 実は、立憲では、民主党政権が終わってから国政に入った議員が6割に達している。もはや彼らには「悪夢の3年」と安倍晋三元首相に揶揄されたトラウマはない。だから、思い切った意見を言えるらしい。

 今回の提案合戦で、維新の「唯一の改革政党」というキャッチフレーズは地に落ちた。

 代わって立憲が「我こそ真の改革政党」という旗印を掲げるときだ。

 この先、野党間で足並みを揃えるためには、立憲が大幅に譲歩することが求められるかもしれない。それを許せば、またしても政治資金改革は中途半端なものに終わり、自民党の利権政治は温存されることになるのは必至。何としても初心を貫いて欲しい。

 ただ、少し心配なことがある。

 それは、立憲がこれほどまでに尖った提案をしているのに、それをマスコミが大きく取り上げないことだ。その原因の一つとして、立憲の幹部がこれを強くアピールしていないことがある。改革で後ろ向きな姿勢を見せる維新と戦う姿勢を見せればいいのにと思うのだが、どうしても歯切れが悪い。

 選挙協力を得るためという口実で、裏で談合し、結局、個人向けパーティー券販売を許したり、幹部への渡し切り資金を認めたり、公開に制限をつけたりするなどの落とし所に辿り着くことを立憲の一部の古参幹部が狙っている。そんなことをつい心配してしまう。

 そこで提案だ。

 国民が、立憲の改革案を大々的に評価し、それをサポートするという意思表示を行ってはどうか。「最後まで頑張れ!」と応援しつつ、「一歩でも後退したら選挙で投票しないぞ!」と声を上げるのだ。

 中途半端な妥協をするくらいなら、今国会での政治資金規正法改正案がまとまらなくても良い。

 むしろ、次の解散総選挙において、この点を争点にし、政権交代ないし伯仲国会を目指す。その先で、妥協のない改革を実施すれば、はるかに日本の民主主義のためになるだろう。

古賀茂明