「未記載でも合法と認識」「お金のことはあれこれ言うものではないと育ってきて」自民党“裏金”調査報告書に失笑の言い訳続々…「ドリル優子がなぜ聴き取り役?」の声も

 
犯罪を起した者が犯罪を犯したものを調査する。こんなふざけた話が自民党ではまかり通る?何処まで国民を舐めてんだって話!
 
 
「気持ち悪いと思っていたので使わなかった」「不明朗な金銭だった」……報告書に記された国会議員の数々の証言が、「裏金」の特異性を如実に示していた。自民党が2月15日、党派閥による政治資金パーティーをめぐる政治資金規制法違反事件について、関与した議員らに行なった事情聴取の報告書を公表した。
 
報告書の公表も評価は分かれる
「気持ち悪いと思っていたので使わなかった」「不明朗な金銭だった」……

派閥からのノルマ超過分にあたる「キックバック」、つまり「裏金」を受けとったものの、その資金を使わなかったとした議員らがその理由を問われて答えた内容の一部である。

多くの自民党議員が、「後ろ暗いカネ」「グレーなカネ」と認識していたことを、この回答が浮き彫りにしているといえよう。20ページにわたる報告書で何が明かされ、何が明かされなかったのか。その中身を詳報する。

「客観性、あるいは中立性にも最大限配慮した報告書を取りまとめていただいたと考えている」

岸田文雄首相は2月15日、首相官邸で記者団に報告書が公表されたことへの受け止めを問われ、こう述べた。さらに、「あらゆる機会を捉えて、国民の信頼回復に向けて関係者には説明責任を果たしてもらわなければならないと考えており、党としても求めていきたい」と議員側に一連の問題についての対応を求める考えも示した。

野党は、橋本龍太郎元首相ら複数の自民党幹部へのヤミ献金が発覚した「日歯連事件」などでも開かれた政治倫理審査会(政倫審)の開催を求めて攻勢を強めており、与党側がそれに応じる構えもみせている。

政倫審の場に、安倍派の「五人衆」、二階派を率いる二階俊博元幹事長ら疑惑の渦中にある大物議員が立つのかが、今後の焦点となりそうだ。

今回の報告書の公表が一連の政治資金パーティー問題の終幕に向けた一つの区切りとなりそうだが、その中身については評価が分かれている。

「調査は、森山裕総務会長を筆頭とする党幹部6人と二つの弁護士事務所から選ばれた7人の弁護士が担当しました。ただ、自民党から選出されたメンバーには小渕優子選対委員長も参加していました。

小渕さんは過去に政治資金規正法違反のスキャンダルに見舞われ、その際に会計記録の入ったハードディスクがドリルで破壊された状態で見つかったことから『ドリル優子』と揶揄され続けている。いわば疑惑の当事者である小渕さんが議員の聴き取り役に回ったことへの批判は当初から燻っていました。

さらに報告書に掲載された回答はすべて匿名になっており、永田町の記者連中からも『お手盛り感満載』『及び腰だ』などの指摘が相次いでいます」(政治部記者)
 
失笑ものの言い訳を連発
報告書では、現職議員82人に加え、現職議員ではない選挙区支部長3人、8つの派閥・グループの代表者と事務総長ら91人が聴取対象になったという。

「現職議員82人と支部長3人はそれぞれ、安倍派と二階派の所属です。このうち安倍派の対象は79人で突出しています。一方、二階派は6人ですが、派閥の長である二階俊博元幹事長、武田良太元総務大臣ら大物議員が名前を連ねています。

このうち、安倍派の森まさこ氏については、ほかの議員とは違う対応が取られたようです。森氏の夫が聴取を担当した弁護士事務所の所属であるため、『公平性を担保するため』として夫の所属先とは別の事務所の弁護士が行ったとしています」(同)

報告書では、議員がキックバックを受けたことを認識していた場合、認識していなかった場合、それぞれのケースに応じてその理由を無記名で回答させている。

「名前が出ない」という安心感もあってか、議員側は、失笑ものの言い訳を連発しているのが記されている。たとえばキックバックを「認識していた」とする議員の回答で、「収支報告書に記載しなかった理由」として、

「秘書によれば(中略)派閥の事務局から、領収書はいらないと言われた」
「もともと記載したいという思いはあったが、派閥事務局からの記載不要との説明を受けて、記載しなくても合法なのだと認識した」

などと弁明している。キックバックを「認識していなかった」とした議員からは、「派閥の事務所から秘書に対し(中略)派閥からは記載しないでほしい、記載すると他の議員に迷惑がかかると言われた」などの回答があったが、なかには次ページのように生々しい現場のやり取りを答えた者もいる。

「お金のことはあれこれ言うものではないと育ってきて…」
「担当秘書が派閥事務所に呼ばれて、還付金(=キックバック)を現金で渡された。(中略)派閥事務所からは『記載しなくてよい。場合によってはご自身のパーティーのほうに混ぜてもらったらよいのではないか』と言われた。(中略)指示に従って記載はしなかったが、秘書は使うと危ないと考えて現金でそのまま保管していた」

噴飯物だったのは以下の回答だ。

「日ごろ、お金の増減の確認ぐらいしかしていなかったが、会計の確認の習慣を持っておくべきだったと反省している」
「お金のことはあれこれ言うものではないと育ってきて、経理のことは秘書に任せていたが、監督責任を痛感している」

報告書は、キックバックの使途についても調査しており、「会合費」「懇親費用」などのほか、「手土産代」「弁当代」「書籍代」といった政治活動との関連が曖昧なものも。「気持ち悪いと思って使わなかった」「“裏金”みたいなものではないかと思い、全額残した」と違法性を認識していたかのような回答もあったという。

報告書は、調査を踏まえた「再発防止に向けた提言」を打ち出しており、「一人ひとりの議員・秘書において、法令違反やコンプライアンス上グレーな状況を把握した際に、本当にこのやり方でいいのか、霧を晴らす術はないのかを妥協なく追求する姿勢が徹底できなかった」と断じている。

さらに、「上の者に対する畏怖や忖度から指摘されるべきことが指摘されないと不正は重症化」すると指摘。「当選回数による序列や人事への懸念から、若手議員が意見しにくい閉鎖的な組織風土が派閥内に生まれてしまっていたのではないか」と派閥政治が生んだ弊害を訴えている。

結党以来、何度も「政治とカネ」の問題に見舞われてきた自民党。果たして報告書が提案する道筋に沿って、根深い問題の根幹となっている派閥を解消し、再生はできるのだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
 
 

小渕優子氏を裏金調査の聞き取り役にした岸田首相の思惑 「次の首相」狙う茂木氏への牽制か

 
 
 自民党の一連の裏金作りをめぐる調査の結果が公表された。党所属の国会議員全員を対象としたアンケートと、衆院議員の池田佳隆被告ら3人の議員が立件された安倍派、収支報告書への巨額の不記載があった二階派や岸田派の議員らに対する党幹部による聞き取りだ。岸田文雄首相は調査前、「実態把握に努める」と気を吐いていたが、明らかになったのは、政治資金収支報告書に不記載のあった国会議員らの氏名と金額のみで、組織的な裏金づくりの実態はわからない。そして、聞き取り調査の報告書でも、裏金の使い道についての詳細は明らかになっていない。聞き取りを受けた議員からは、そもそも人選から問題があった、との指摘がある。調査の様子を振り返った。
 

 まずアンケート。

 A4用紙1枚で、質問は2018~22年の各派閥の政治資金パーティーについて、収入の記載漏れの有無と、記載漏れがあった際の金額の記入のたった2問だけ。不記載の経緯や何に使ったのかは尋ねておらず、裏金作りの解明にはほど遠い内容になっている。これには党内からも「ポーズに過ぎない」「やっているように見せているだけ」などの声も上がっていた。

■「なぜあんたに言われなきゃならない」

 一方の政治資金収支報告書を訂正した議員への聞き取り調査も、首をかしげざるをえない対応だった。

 聞き取りは、森山裕総務会長、渡海紀三朗政調会長ら党幹部6人と弁護士が同席していたのだが、このメンバーの中に小渕優子選対委員長がいたことに、聞き取りを終えた安倍派の国会議員は、

「地元に帰りたかったが、週末返上でヒアリングに行きました。都内のホテルの一室で、小渕さんも座っていて『これから調査をしますから』と言ってくるんです。『なんであんたに言われなきゃいけないんだ。調査されるべきはあんただろ』と心の中ではムッとしました」

 と話した。

 小渕氏をめぐっては、2014年10月に自身が関係する政治団体が開いた観劇会をめぐって、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしていたことが発覚。小渕氏の事務所は証拠隠滅を図ろうと、帳簿データがなどが入ったパソコンのハードディスクをドリルで破壊したのがわかり、特捜部は政治資金規正法違反容疑で小渕氏の秘書らを逮捕した。ハードディスクは復元できなかったことが判明している。
 
 今回の裏金事件では、池田被告の地元事務所にあった複数のパソコンがドライバーのような工具で壊され、証拠隠滅の恐れがあると見られたことが逮捕につながった。小渕氏のときと同じような構図だ。

 そうした背景があることから、小渕氏が聞き取り側にいることに疑問を持っていた自民党議員も多いのだ。

 その小渕氏も含め、調査はどのような様子だったのか。

■「書いてさえおけば問題ないのに」

「小渕氏は最初にいろいろ言いますが、あとは弁護士任せです。弁護士からは、なぜ不記載になったのか、問題がなかったのか、不記載のカネの管理はどうだったのか、とか細かく聴かれました。特捜部の捜査でも同じでしたから、さほど苦にはなりませんでした。ただ、こちらが『ずっと昔からやっていたようなのに、急にダメって言われてもね』『ノルマが多くてそれだけでも大変。キックバックはまれにノルマ以上、売れた時だけですよ』と愚痴っていると、『それはそうだな。書いてさえおけば問題ないのに』と森山先生が口をはさむ程度。小渕氏はさもありなんという表情で、メモを取りながら話を聴くだけで、いなくても全然調べられる内容でした」(前出の安倍派の国会議員)

 今回、裏金の額が一番大きかったのは、在宅起訴された安倍派の大野泰正参院議員で5100万円。小渕氏の政治資金規正法違反事件は、不記載額が3億円超とその6倍ほどにのぼる。小渕氏は不起訴となった後に自分で弁護士や税理士を雇い、「第三者委員会」として調査を依頼し、「小渕氏に不正な処理や虚偽記載の認識はなかった」「ドリルで穴をあけたのはパソコン業者が修理のためにやった」との結論を出し、幕引きとなった。

 小渕氏の疑惑は特捜部が2014年10月に強制捜査に着手する数カ月前から報じられており、

「最初は週刊新潮が疑惑を報じて、刑事告発が出された。その過程で、ドリルで穴という情報が入り、報道から2週間でガサ(家宅捜索)をかけた。こんなことは異例中の異例。事実、立件はしていないが証拠隠滅罪でも捜査している。そんな言い訳が通じるわけがない」

 と当時、捜査にかかわった元検事が話した。
 
 そんな背景がある小渕氏を、岸田首相はなぜ調査する側に入れたのか。

「選対委員長ですから、本来は裏金調査には関係がない。ただ政調会長、幹事長代理なども入っているので、党4役の選対委員長も一緒でないとメンツが立たないだろうと配慮したんでしょう」と官邸関係者が打ち明ける。

■岸田首相がうまく利用した

 だが、茂木派幹部の見立てはこうだ。

「『次』を狙う茂木(敏充)幹事長への牽制(けんせい)だったと思います。調査のメンバーには茂木派から退会を表明した福岡資麿参院議員もいます。茂木幹事長からすれば、調査がうまくいけば小渕氏の功績、失敗すれば幹事長の責任が問われる。それを岸田首相がうまく利用した。小渕氏がこんな調査に不向きなのは誰の目にも明らかですから。わざわざやらせる必要がないのですが」

 小渕氏の調査について、SNSやテレビでも発言している前兵庫県明石市長の泉房穂氏は、

「小渕氏は自分も同様の裏金事件を起こしていて、時間が経ったから今度は調査します、追及します、というのはおかしい。国民目線で言えば、小渕氏ご自身の事件ですら、今もって説明がされていません。自民党は身内ではなく、外部から有識者を起用して第三者委員会で徹底追及すべきです」

 と厳しく指摘している。

(AERA dot.編集部・今西憲之)