子育て支援金は負担増であると同時に、不公平な仕組みです。医療保険の仕組みを使って徴収するので、同じ収入でも協会けんぽに比べ、市区町村の国保に加入している人が負担が大きくなる。同様の仕組みの介護保険料は、年収300万単身者で、協会けんぽ2.8万、国保は4.4万で1.5倍(厚労省試算)

ただでさえ医療も介護も保険料が市区町村国保が高いという不公平があるのに、これを子育て支援金にまで拡大することは正当化しえないのではないか。国保は、フリーランス、自営業者の方が多い。今回の子育て支援金は、働き方による「不公平」を拡大するものです。

 

 

 岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」を目指す政府は16日、児童手当の拡充、育児休業給付率の引き上げや「こども誰でも通園制度」創設などを柱とする少子化対策関連法案を閣議決定し、衆院に提出した。少子化対策の財源の一つとして、公的医療保険料と併せて徴収する「子ども・子育て支援金」は2028年度時点で「1人当たり月500円弱」。岸田首相は賃上げと歳出改革により「実質的な負担は生じない」と繰り返している。識者が「詭弁(きべん)に聞こえる」と疑問を投げかける理屈を、首相は支援金以外でも持ち出している。

 

◆「歳出改革と賃上げで実質的な負担軽減」?
 15日の衆院予算委員会。共産党の宮本徹氏は、歳出改革によって医療や介護の公費による支出が減る分、利用者の自己負担は増えると主張。武見敬三厚生労働相は「一定の負担が増える世代層が特に高齢者層に出てくる」と認めたが、「実質的な負担増とはならない」とも強調し、首相と同じ主張を繰り返した。
 

 首相の説明は「歳出改革と賃上げで実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築する」というもの。だから「負担」は生じないとの理屈だが、医療・介護分野の歳出改革の具体的な内容や効果が示されていない上、賃上げは民間企業次第の部分が多い。
 

 公明党の高木陽介政調会長は14日の記者会見で、支援金を巡る政府の説明について「分かりにくく、国民の理解が進まない要因だ」と苦言を呈した。

 

 

◆この理屈なら「どんな政策も通ってしまう」
 歳出改革や賃上げにより実質負担が生じないという理屈は、増税など国民に負担を求める他の機会にも使われかねない。支援金制度による1人当たりの負担額を試算した日本総合研究所の西沢和彦理事は「この説明を言い出したら、どんな政策でも通ってしまう」と批判する。実際、首相は14日の衆院予算委で防衛増税を巡り「経済成長と構造的な賃上げで負担感を払拭できるよう取り組む」と述べている。
 

 西沢氏は「歳出改革で社会保障給付費を抑制した際に自己負担が増えれば、それは『負担』だ。医療や介護の人材不足や質の低下が起きれば、それもサービス低下という『負担』になる」と指摘。その上で「負担がないことを是としていること自体が間違っている。正直に負担内容を説明し、給付と負担が見合うかどうかを国民に問うのが政治の責務だ」と話す。 (坂田奈央)
 

 政府の少子化対策 岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」を掲げ、児童手当や育児休業給付の拡充、親の就労の有無を問わず保育を利用できる制度を盛り込んだ「こども未来戦略」を2023年12月に閣議決定した。国と地方を合わせて、新たに年3兆6000億円規模の予算を充てる。財源確保の仕組みが整う28年度には、既定予算の活用で約1兆5000億円、社会保障の歳出改革で約1兆1000億円、「子ども・子育て支援金」で約1兆円を捻出する。支援金の徴収は26年度から始め、段階的に引き上げる。

 

こんな金額を裏金にしている自民党裏金議員達
そりゃあ国民に1000円や500円増税したって大した事ないと思うよね
まともな人に国政を任せたい
裏金議員は辞職

 

 

 

【少子化加速・格差拡大】岸田首相「少子化対策に月500円徴収」の本末転倒 貧乏で結婚できない若者から徴収したお金をパワーカップルに配るのか

 

 岸田文雄首相は、よほど“増税メガネ”と呼ばれたくないのだろう。2月6日の衆院予算委員会で、少子化対策の財源3.6兆円のうち、「子ども・子育て支援金」として1兆円程度を公的医療保険の保険料に上乗せして徴収する方針を示した。初年度の2026年度に約6000億円を徴収し、段階的に増額して28年度には約1兆円規模にするという。岸田首相は「粗い試算で、拠出額は加入者1人あたり月平均500円弱になる」と答弁した。新たに必要となる予算の財源として、税金ではなく、社会保険料を財源に選んだわけだ。

 この「1人あたり月500円」という表現には、多方面から批判の声が上がった。国民民主党の玉木雄一郎代表は、Xでこう述べている。

〈少なくとも保険料を直接負担する被保険者1人当たりの負担額を説明すべきで、協会けんぽで月1,025円、組合健保で月1,472円という試算もあります。年額で言うと2万円近い負担になる人も出てきます〉(2月6日午前11:59に投稿)

 実際の負担額は、加入する医療保険や所得によって変わり、高齢者世帯と現役世帯でも大きく異なる。

 NHKの報道(2月8日付)によれば、〈政府は世代間の負担割合について検討を進めた結果、当初の2年間は、現役世代を含む74歳以下の医療保険の加入者に対し、事業主の負担分も含め、全体の92%の負担を求める方向で調整を進めています〉と、財源のほとんどを現役世代が負担することになるという。

 つまり、現役世代から支援金を徴収し、これから子どもを作る予定のある夫婦や、子育て中の夫婦を支援することで少子化を止めようとする政策だが、少子化問題に詳しい独身研究家の荒川和久氏は、まったく意味がないと断じる。

「まず、子育て支援をすれば出生率が上がるという因果関係は確認されていません。2007年に少子化担当大臣が設置され、民主党政権で子ども手当が拡充され、家族関係政府支出は1995年比で2倍にも増額したのに、出生数は4割減です。子育て支援を充実させても出生数は増えるどころか減る一方です。

 子育て支援は、少子化だろうとなかろうとやるべきことですが、それと少子化対策とは全く次元の違うものです。子育て支援をすれば、子どものいる夫婦がもう1人子どもを産むかというと、そうはならずに、すでにいる子の教育費に回すだけになりがちです。少子化対策とは、子ども0人→1人という新たな出生増につながるものでないと意味はありません」(荒川氏、以下同)

 少子化対策として集めた支援金を投入する“先”が間違っているというのだ。

 

 

若者の実質賃金が減ることで、ますます結婚できなくなる
 もう一つの問題は、さらに深刻だ。政府の支援策で子育て中の世帯は恩恵を受けられるかもしれないが、独身の若い層や子育てが終わった世帯では、ただただ負担増になる。特に問題なのは、独身の現役世代の可処分所得が減ることだという。

「2023年6月に内閣官房から発表された『こども未来戦略方針』の中では、3つの基本理念の第一に『若い世代の所得を増やす』と掲げられています。この認識はまったく正しくて、今の少子化の原因は、若者の結婚が減っていることにあり、婚姻数の減少と出生数の減少は完全にリンクしています。

 だから、少子化対策で大事なのは婚姻数を増やすことで、そのためには若者が結婚して子どもを持てるような経済環境、雇用環境を整えることが第一です。ところが、政府がやっているのは真逆で、ただでさえ重い社会保険料を増額して若者の実質賃金を減らし、ますます結婚できないようにしている。むしろ少子化を加速する政策と言えます」

 婚姻数が減っているのは、今は価値観が多様化し、「結婚したくない」という若者が増えたからだといわれるが、それも額面通りには受け取れないという。

「“結婚したくない”という人は昔から一定の割合でいましたが、今は“結婚もしたいし、子どももほしいのに、できなかった”という不本意未婚がかなり増えています。そもそも晩婚化などは起きていません。20代で結婚できなかった層が、結婚を後ろ倒しにしたあげく、結局30代になっても結婚できないという、単純に20代での婚姻数の純減なんです」

 価値観は多様化しているかもしれないが、昔と価値観が変わってしまったのは、経済的な理由が背景にあるのかもしれないのだ。

 

子どもを持つことは、高級車やブランドバッグと同じ“贅沢”
「今の若い層にとって、子どもを持つことは、高級車やブランドバッグと同じで、もはや手の届かない“贅沢”なものになっています。世帯年収900万円以上では、子のいる世帯数は昔とほとんど変わっていませんが、900万円未満のボリュームゾーンでは激減している。

 大都市のタワマンに住めるような裕福なパワーカップルは子ども3人を育てている一方で、20代の若者の可処分所得の中央値が300万円にも満たないという現実があり、結婚や出産どころか日々の生活で精一杯なのに、そこからさらに子育て支援金など負担が増えるような政策はいかがなものかと思います。『若い世代の所得を増やす』という基本理念は一体どこにいったのか、と」

 岸田政権がやろうとしている“少子化対策”は、極端な言い方をすれば、結婚できない貧乏な若者からお金を徴収し、すでに複数の子どもがいてタワマンに住んでいるパワーカップルを支援するという、格差を拡大しかねない政策なのである。

 しかし、少子化対策の基本理念の第一に「若い世代の所得を増やす」とあるということは、政府与党も官僚も、問題の本質を理解しているということだ。それなのになぜこうした不可解な政策が通ってしまうのか。

「政府の本音を類推すれば、少子化対策と言いさえすれば、国民からいくらでも搾り取れる、増税できると思っているんじゃないでしょうか。少子化対策に効果があるかどうかは、もはやどうでもいいのでしょう」

 少子化がさらに進めば、徴収額を増額する口実になるので、そのほうが都合がいいのかもしれない。

取材・文/清水典之(フリーライター)