裏金議員は揃って収支報告書の訂正で逃げ切ろうとしているが、使途すら不明で脱税疑惑がくすぶったまま。逃げ切りなんて許されない。
 

 

 “やってる感”以外の何物でもない。自民党は13日、派閥の裏金事件を受け、所属国会議員ら384人に実施したアンケート結果を公表。政治資金収支報告書に不記載や不正確な記載があった裏金議員は85人に上ったが、いつ誰が何にいくら使ったのか、まったく不明のまま。裏金の多寡を見ると、意外な“集金力”を発揮している議員がいる。

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 アンケートは野党の要求に基づき、党所属議員374人と次期衆院選の立候補予定者となる支部長10人を対象に実施。設問はパーティー収入に関する不記載や記載漏れが「あったか」「なかったか」を問い、2018年からの5年間の不記載額を1年ごとに尋ねるだけ。これでは、不記載や記載漏れとなった理由や裏金の使途はまったく分からない。

 自民は週内にも裏金議員への聞き取り調査を公表して処分を検討する方針だが、最も悪質な安倍派幹部連中が口を揃えて辞職も離党も否定している以上、大甘処分で済まされるのは間違いない。しかし、立憲民主、日本維新の会、共産、国民民主の野党4党は安倍派や二階派の幹部が政治倫理審査会で説明するよう求めており、そうやすやすとは逃げ切れまい。

 改めて不記載額の多さにはア然とする。過去5年間で合計5億7949万円。最多の二階元幹事長(3526万円)に次いで、三ツ林裕巳衆院議員(2954万円)、安倍派5人衆の萩生田前政調会長(2728万円)がトップ3を占めた。

 不記載額が2000万円以上は二階氏、三ツ林氏、萩生田氏に加え、山谷えり子参院議員(2403万円)、堀井学衆院議員(2196万円)、橋本聖子元五輪相(2057万円)の計6人だった。

 意外なのは、山谷氏や堀井氏、橋本氏の“集金力”。キックバックがデカいということは、それだけノルマを超えるパー券をさばいていたということだ。

 

 

パーティー1回で収入3000万円超
 

お手盛り調査

 特に、スピードスケートの五輪メダリストである橋本氏の集金能力は飛びぬけていて、「橋本聖子後援会」の22年の収支報告書によると、個人で開いたパーティーの収入も〈IOC女性スポーツ賞 橋本聖子さんを励ます会「夢と情熱と、その力」〉の1回だけで3393万円にも上る。

 堀井氏も橋本氏と同じく、スピードスケートのオリンピアン。2人の元五輪選手が多額のキックバックを受けていたことは7日の衆院予算委でも、野党議員から「国民に夢や希望を与える立場のオリンピアンの国会議員が裏金にまみれている」と批判された。

 不記載額1000万円以上が20人に上る中、安倍派5人衆である世耕前参院幹事長(1542万円)や松野前官房長官(1051万円)、高木前国対委員長(1019万円)よりも多額のキックバックを受けていたのが、安倍派の杉田水脈衆院議員(1564万円)だ。

 杉田氏といえば、安倍元首相の「お気に入り」だったとされる生粋の安倍チルドレン。今月8日には、X(旧ツイッター)上でジャーナリストの伊藤詩織さんを中傷したとして、詩織さんへの55万円の賠償を命じた2審判決が最高裁で確定した。LGBTやアイヌ民族への差別的言動などで物議を醸してきた上、裏金問題でもミソをつけ、いよいよ政治家たる資格はない。

 裏金議員は揃って収支報告書の訂正で逃げ切ろうとしているが、使途すら不明で脱税疑惑がくすぶったまま。逃げ切りなんて許されない。

 

 

「買収資金の出どころ」は? 柿沢未途被告の公選法違反事件“完落ち”でも終わらない疑問

 
 
《これで終わりではない》《まだ隠していることがあるのではないか》

 有権者の怒りの投稿はまだ続いているようだ。昨年4月の東京・江東区長選を巡り、公選法違反(買収など)の罪に問われた元自民党衆院議員の柿沢未途被告(53)の初公判が14日、東京地裁(向井香津子裁判長)であり、柿沢被告は「全て争いません」と起訴内容を全面的に認めた。

 起訴状によると、柿沢被告は昨年2~4月ごろ、前区長の木村弥生被告(58)=同法違反罪で在宅起訴=を当選させる目的で区議ら9人に選挙運動の報酬計200万円の提供を持ち掛けたほか、同7~10月ごろ、選挙運動に関わった元区議に報酬計約80万円を支払ったとされる。

 疑惑が報じられた当初は違法行為を完全否定していた柿沢被告。その後、何ら説明責任を果たさないまま法務副大臣を突然辞任し、逮捕、起訴後の2月1日、議員辞職した。

■選挙支援のために支出したカネの出どころは?
 
「私の行動に端を発して多くの人が巻き込まれ、大変申し訳ないと思っています」
 
 法廷でこう振り返り、“完落ち”状態の柿沢被告だったが、選挙買収のために配った多額のカネの出どころを明かしてはいない。

 自分の選挙基盤を強化するためとはいえ、買収資金をポケットマネーから拠出したのか? SNS上でもこんな意見が少なくない。

《買収の原資はどこからだったのか。領収書のいらない政策活動費というやつか》

《どうやって買収資金を捻出したのだろうか。党本部にお願いした?》

《当時の官房長官は松野氏。これは機密費が使われたかも》

「政治とカネ」を巡る醜聞が尽きない自民党に対し、国民もいい加減、愛想を尽かしている。柿沢被告は洗いざらいすべてを白状すべきではないか。