「家は耐えても原発が壊れる」地震国日本のイカサマ発電を世界が認めぬ理由。国の競争力落とす「嘘と隠蔽」再び

 
今回の能登の地震での志賀原発の被災は第二の警告かもしれません。しかし、それも無視して原発依存から脱却しないというのであれば、次は環境コンシャスなGAFAMやテスラなどからの外圧を転換のきっかけにするしかないのかもしれません。
 
能登の地震と志賀原発
(2/9号「気になったニュースから」より)
今年は、元旦に能登で大きな地震やそれに伴う津波や火災が発生して多くの方々が亡くなられたり被災されました。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますと共に被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

この地震では、志賀原発もかなりの被害を受けましたが、北陸電力からの発表は二転三転し、それを受けての政府答弁も一時錯綜しました。変圧器が破損して大量のオイル漏れが発生し、3系統5回線ある送電線のうち1系統2回線が使用不能となり、未だ修理の見通しも立っていません。

また、使用済み核燃料プールでは水漏れが発生し、周囲の線量モニタリングポストも最大18ヵ所で計測不能となり、道路が寸断されて住民の避難路の確保にも課題があることが明らかになりました。
 
読売新聞が2月4日に 「志賀原発の変圧器、最も強い揺れに耐える『クラスC』でも壊れる…修理見通し立たず」という記事を出していましたので、今回はこれに関連したことを書きます。

政府寄りで原発容認派の読売新聞がこのような記事を書いたことからも、事態の深刻さが読み取れるように思います。

なお、この記事のタイトルはその後、「志賀原発、変圧器故障など複数トラブル…北陸電『新しい知見に基づき安全対策講じる』」と書き換えられていますが、どこかから圧力が掛かったのでしょうか。

記事の最後に、「当初の見出しが記事の趣旨を的確に反映していなかったため変更しました」と断り書きが添えられています。

稼働していなかったことも幸いして大事には至りませんでしたが、福島の原発事故を想起してヒヤリとしました。

この原発には、昨年の11月に経団連の十倉会長が訪問して早期の再稼働を求める発言をして注目されていましたが、図らずも、経済界を代表する立場の人の無知と無責任さを曝け出す形にもなったと言えるでしょう。

3.11でも見直されなかった日本のエネルギー政策
私の意見としては、日本は2011年3月11日の東日本大震災に伴う福島の原発災害をきっかけに、原発依存脱却を掲げてエネルギー政策の大転換を断行すべきだったと思います。

しかしながら現実は、官邸や経産省、電力会社など、いわゆる「原子力村」の人たちの思惑に沿って、その後も着実に原発回帰への道を歩んできました。

岸田政権になってからは、ウクライナ戦争も口実に使われて、安倍・菅政権時代にはそれでも水面下で進められていた原発回帰シナリオが一気に表面化し、いわゆる「40年ルール」が事実上撤廃されると共に、原発の新増設や建て替えも認められることになりました。

私は、原発政策の一番の問題は、正しい情報が国民に伝えられないまま、さまざまなディスインフォメーション(嘘、虚偽、隠蔽、プロパガンダ、etc.)に塗り固められた形で進められるところにあると考えています。

安全神話やコストが安いということについても、長年国民は騙されてきましたが、福島の原発事故によって、それらがまったく根拠のないものであったことが露呈しました。

しかしその後も尚、およそ科学的とは言えない不正確な情報によって廃炉の計画が語られたり、処理水の海洋放出が行われたりと、原発推進派の不誠実な態度や隠蔽体質は基本的に何も改まってはいません。

処理水の海洋放出に関する数々の疑問点に関しては、 以前にこのメルマガでも取り上げました。以下はそれが公開記事になったものです。

● なぜ日本政府は「汚染水の海洋放出」に拘るのか? – まぐまぐニュース!

前述した読売新聞の記事においても、北陸電力の松田光司社長は1月31日の記者会見で、「必要な設備や機能は担保されている」と述べ、放射能漏れなどの心配はないことを強調した、とあります。まったく何の説得力もなく、2026年に予定しているという再稼働のことしか頭にないのかと呆れます。
 
民間住宅よりも低い耐震基準
大きな被害を受けた志賀原発の変圧器については、500ガルの揺れにまで耐えられる仕様だったそうですが、今回の志賀原発原子炉直下で計測された加速度は399ガルでした。仕様範囲内でも壊れたのです。

そもそも、我々一般国民は、原発の耐震性は厳しく定められていると思い込んでいます。実際に政府も、「日本の原発の安全性は世界最高水準」と説明しています。

しかし、実はここにも嘘があります。

日本の原発の耐震基準は概ね1,000ガル以下で設計されています。東日本大震災の最大の揺れが2,933ガル、今回の能登の地震でも、先の記事にもある通り、震度7を観測した志賀町の富来地区で2,800ガルを記録しています。

今世紀だけでも、1,000ガル以上の揺れを記録した地震は全部で20回ほどあるそうで、年平均1回弱の頻度です。

民間の住宅メーカーでも、例えば 三井ホームが売りにしている耐震性は最大5,115ガル 、 住友林業は3,406ガル です。すなわち、原発の耐震基準は民間住宅よりも遥かに低いのです。

そうであるならば、断層に囲まれ地震多発地帯に立地している志賀原発の再稼働などは考えない方がよくて、今回、停止していて大事に至らなかったことを幸いに、このまま廃炉にした方がよさそうに思います。
 
増大する電力需要の新たな担い手
世界の電力消費量は年々大幅に増加しています(図1)。その中で、自動車産業のEVシフトや情報産業の拡大、またそれらに伴うAIの飛躍的な普及によって、今後、データセンターで消費される電力がかなりの割合を占めていくことになります(図2)。

図2:世界のデータセンターの電力消費量予測

図1:世界の電力消費量の推移(地域別)

また、以下のような記事も見つけました。

‘Bitcoin Vs. The Dollar’―Biden Administration Suddenly Declares U.S. Crypto ‘Emergency’ After Huge Price Surge

ここのところビットコインの価格が大幅に上昇していますが、それに伴って暗号資産のマイニング(採掘)が急増するとの想定から、バイデン政権がマイニングによる電力消費についての緊急調査を命じたというものです。

これを受けて、米エネルギー省(DOE)の統計機関であるエネルギー情報局(EIA)が、2月5日からデータの収集を開始するようですが、この調査結果にも注目する必要があります。

エネルギー問題を本格的に論じ始めると長くなってしまうので、別の機会に譲りますが、現在は化石エネルギーや原子力エネルギーから自然エネルギーへの大転換期であり、また大規模発電による中央制御型から小規模発電の数を増やしてスマートグリッドできめ細かく制御していくようなエネルギーインフラとITインフラを融合させた新たな電力網への転換も急務です。

クラウド企業であるGAFAMやEV企業であるテスラは、いずれもカーボンフリーに深くコミットしているため、消費する電力の種類を気にしています。

グーグルでは、既に私が在籍していた頃からキャンパスの建物の屋根にソーラーパネルを張り巡らせていました。 また、創業者たちが乗っていた車も、当時さかんに環境先進企業のイメージでブランディングしていたトヨタのPHV車プリウスでした(今ではその座はテスラに奪われました)。
 
これを受けて、米エネルギー省(DOE)の統計機関であるエネルギー情報局(EIA)が、2月5日からデータの収集を開始するようですが、この調査結果にも注目する必要があります。

エネルギー問題を本格的に論じ始めると長くなってしまうので、別の機会に譲りますが、現在は化石エネルギーや原子力エネルギーから自然エネルギーへの大転換期であり、また大規模発電による中央制御型から小規模発電の数を増やしてスマートグリッドできめ細かく制御していくようなエネルギーインフラとITインフラを融合させた新たな電力網への転換も急務です。

クラウド企業であるGAFAMやEV企業であるテスラは、いずれもカーボンフリーに深くコミットしているため、消費する電力の種類を気にしています。

グーグルでは、既に私が在籍していた頃からキャンパスの建物の屋根にソーラーパネルを張り巡らせていました。 また、創業者たちが乗っていた車も、当時さかんに環境先進企業のイメージでブランディングしていたトヨタのPHV車プリウスでした(今ではその座はテスラに奪われました)。
 
「原発の嘘」が日本経済を衰退させている
グーグルは巨大データセンターを現在千葉に建設中ですが、原発や火力で作られた電力は購入しない方針のため、再生可能エネルギーに特化した電力会社とPower Purchase Agreement(PPA)と呼ばれる長期契約を結ぶことになります。

原発で発電した電力は「ベースロード電源」と呼ばれることがありますが、需要の変動に合わせた小まめな出力調整が効かないために、原発を保有し続ける限りは、火力などとの併用が求められます。

すなわち、本気でカーボンフリーを推進するためには、原発からの脱却が必須になります。

福島の原発大災害が、日本のエネルギー政策の大転換を促す最初の警告だったと捉えれば、日本政府は結果的にその警告を無視しました。そのため、世界のエネルギー転換の波に乗り遅れ、もともと強かった太陽光発電や風力発電などの分野における国際競争力を失ってしまいました。

今回の能登の地震での志賀原発の被災は第二の警告かもしれません。しかし、それも無視して原発依存から脱却しないというのであれば、次は環境コンシャスなGAFAMやテスラなどからの外圧を転換のきっかけにするしかないのかもしれません。

今後もエネルギー問題については適宜取り上げていきたいと思います。