岸田総理「4月解散&総裁選無投票再選」の可能性…自民党が議員に配っていた「自画自賛レポート」入手

 
 
〈岸田総理は(中略)自由で開かれた国際秩序をさらにもう一歩進めるためにリーダーシップを発揮してきた〉
 
1月23日、26日、29日の3日間に分けてメールボックスにこんな自画自賛レポートが届き、自民党秘書たちは首をかしげたという。送り主は自民党本部。中堅議員の秘書が困惑しながら語る。

「タイトルは『岸田政権の取り組み』で、〈地元での説明やメディア対応などでご活用ください〉の文面とともに送られてきた。以前にも政権の支持率が低迷した時に党本部からペーパーが送られてきたことはあったが、今回はA4用紙48枚というかつてない文量だ」

冒頭は「外交編」の一節だが、「新しい資本主義編」も〈2年間の取組の結果、(中略)デフレを完全に脱却し、新たな経済に移行する千載一遇のチャンスが巡ってきている〉などと岸田文雄首相(66)を称える文章が延々と綴られている。

2月4日にJNNが公開した最新の世論調査によると、岸田政権の支持率は23%台と危険水域にある。この時期に大量のレポートを配布した目的は何なのか。

「首相は、衆院の早期解散に向けた道を模索しているのではないか。レポートは地元での演説を念頭に置いた内容で、『選挙が近い』と準備を促すものでは、との観測もある」(全国紙政治部記者)

低支持率の今、わざわざ負け戦に打って出るとは信じ難いが、党幹部経験者は「今後の国会日程を考慮すると、簡単には否定できない」と言う。

「このまま9月の総裁選へ突入すれば、首相の再選の芽は無い。政権の延命には、解散カードを切るしかないところまで追い込まれている。肝心なのは解散時期。5月の連休明けだと、裏金問題に端を発した政治資金規正法の改正問題で国会は紛糾する。6月末の通常国会終了後だと遅い。支持率が低迷したままなら、岸田おろしが始まる恐れがあるからだ。ならば新年度予算を3月中に成立させ、大サプライズの4月解散しかない。4月に予定される3つの補選で負け越せば、いよいよ解散に踏み切れなくなる。その前に手を打ちたい」

発足以来政権を支えてきた麻生太郎副総裁(83)、茂木敏充幹事長(68)に断りなく派閥解散を宣言した時から、岸田首相には怖いものが無くなった。麻生派以外の派閥が事実上解散し、政権運営をフリーハンドで行えるのだ。ブレーキの壊れた首相は延命のため、「万博延期」のカードを切ることも厭(いと)わない。政治ジャーナリストの角谷浩一氏が明かす。

「高市早苗経済安保担当相(62)が突如提唱したが、これは官邸内で議論が交わされているのを察知したからだろう。能登半島地震復興のためと言えば、大義名分も立つ。何より野党第一党を目指す維新の会に強烈な逆風を浴びせられる」

昨年までは何度も解散をちらつかせながら、伝家の宝刀を抜くには至らなかった。しかし、派閥解散を宣言した時と同様、逆ギレといえる形で解散権を行使し、総選挙で大負けを回避できれば悲願の総裁選無投票再選の芽も見えてくる。

無敵の人となった首相。ためらいなく解散カードを切っても不思議ではない。

『FRIDAY』2024年2月23日号より

 

「森元総理は塩谷さんを“いけにえ”に5人衆を守ろうと…」 渦中の安倍派・塩谷立座長は「私や幹部が辞めて決着する問題ではない」

 
実にくだらん!
 
 
 通常国会が開幕した。内外に問題山積だが、焦点となるのはやはりパー券裏金問題。自民党・茂木幹事長からは安倍派幹部の離党や議員辞職の要求まで飛び出した。その裏では森元総理も暗躍し……。渦中の清和会トップ・塩谷立座長(73)が彼らとのやり取りを明かした。
 
 ***

 派閥の解体が進む自民党。

 6派閥のうち、麻生、茂木両派を除く、安倍、二階、岸田、森山の各派は既に解散を決定。長年、党を支えてきた骨格がガタガタとなっている。

 中でもダメージが大きいのは、何といっても安倍派、すなわち清和政策研究会だ。今回の事件では、ノルマ超過分のパーティー券販売代金という“入り”と、そのキックバックという“出”の、二つの金の処理が焦点になった。安倍派の場合は、この両面において政治資金収支報告書に記載がなかった。額の大きさ等も含め、その悪質性から、事務局長と議員3名、その秘書3名の計7名が立件されている。

「議員で山分けすべき」の声も
「1月26日に常任幹事会が開かれました」

 と語るのは、さる清和会の関係者。

「議題となったのは、解散後の残金の処理。派閥の金庫には億単位の金が残っているといわれていますが、これをどう清算するかという問題です。職員の退職金や、事務所の処理費用、起訴された事務局長の弁護士費用などを支払い、残りは慈善団体に寄付するという方向で話が進んでいます」

 また、

「派と所属議員との間で、収支報告書の訂正を進めることも決まりました。本来、その仕切りを行うのは事務総長の高木(毅)さんなんですが、彼自身、責任者の一人。そこで西村明宏代議士が窓口を務めることになりました」(同)

 が、事ここに至っても話は一筋縄ではいかず、

「残金処理に関しては、所属議員の中から異論も出ていたそうです。議員で分配、つまり山分けすべきではないか、との声も。さらには、報告書の訂正をしたくないとゴネた幹部議員もいました。ノルマ超過分を派閥に入れず、手元に保管しており、これは派閥に移す。金には一切手を付けていないから、訂正の必要はないのではないかというわけです」(同)

 訂正すれば、その記載を元に、不記載や虚偽記載で刑事告発される恐れが生じる。それを逃れるための主張だろう。
 
標的は5人衆
 まつりごと清らかにして人和す――。清和会の由来となった故事である。2000年に森喜朗氏が総理となって以来、小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫、そして再び安倍と、延べ5人の総理が輩出した清和会。現在も100名近くの議員を擁する第1派閥であるが、今や水に落ちた犬となった。それをさらにたたくのが、権力闘争激しい永田町の常である。

〈安倍派幹部に離党要求〉

 そう題した記事が読売新聞の1面に載ったのは、1月25日のこと。

〈自民執行部 塩谷、松野氏ら念頭〉

 と続くその記事によれば、自民党の執行部が安倍派の幹部に対し、自発的な離党や議員辞職を求めたという。それをしない場合は、党として離党勧告や除名などの処分も辞さず。そして「幹部」とは具体的には、座長の塩谷・元文部科学大臣や、松野博一・前官房長官などいわゆる「5人衆」を指しているというのである。

「茂木さんの“独走”」
 離党を促している執行部とは、すなわち、茂木敏充幹事長であるが、

「この動きは茂木さんの“独走”とみられています」

 とは、政治ジャーナリストの青山和弘氏だ。

「岸田さんは“俺は何も指示していない”“また茂木のスタンドプレーか”などと周囲に漏らしています。茂木さんは、福田達夫さんを始め党内の中堅・若手から“安倍派幹部は政治責任を取るべきだ”との声が上がっていることから、幹事長としてリーダーシップを示したい。世論を理解しているとの評価を得たい、とみられています。総理の座を狙っていますからね」

 2トップの足並みは乱れるが、ここにあの森元総理が参戦し、事をややこしくしているという。

「森さんが狙っているのは…」
 同派の元会長でいまだ「オーナー」然とする森氏が、「5人衆」を常日頃かわいがっているのは周知の通り。読売報道を見て激怒したのか、麻生太郎副総裁の元を訪れ、不満を述べたという。

 前出・清和会関係者によれば、

「森さんがあちらこちらで言っているのは“5人衆だけは守ってくれ”ということ。子飼いの彼らが失脚すれば、森さんの影響力もそがれますからね」

 しかし、誰もおとがめなしで通りそうにないのは十分承知している。

「そのため森さんが狙っているのは、塩谷座長に責任を取って離党や議員辞職してもらい、それをもって事を収めようということ。そうした“解決策”を周辺に仄(ほの)めかしています」(同)

 しかし、もちろん現在のトップである座長は塩谷氏だが、立件対象となった期間中はその地位になく、就任後も意思決定の権限は限定されていた。彼一人を「いけにえ」として終わりでは、5人衆にあまりに都合の良過ぎる幕引きである。
 
「わがグループには大きな責任がありますが…」
 当の塩谷氏に尋ねてみた。

――茂木幹事長からは何を言われた? 

「こちらから電話をしました。党内で出ている処分論について、どのように考えているか気になりまして。幹事長は“そちらの幹部で判断してほしい”と」

――その返答についての受け止めは? 

「それは違うだろうと思いましたよ。これは清和会だけというより、すでに党全体の問題。それについて“派の問題。自分で考えてほしい”というのは、他人事過ぎます。そもそも、私や幹部が辞めて決着する性質のものでもありません。もちろんわがグループには大きな責任がありますが、二階派も宏池会も同様、起訴されている。その点をどう考えているのか。党全体で政治とカネの根本的問題に取り組むことが、国民からの信頼回復につながるのではないでしょうか」

――森さんとは会ったか? 

「26日に。派閥解散を事前に連絡せずに決議したので、ごあいさつに伺いまして。話したのは10分くらいですかね。報告すると“この流れでは仕方ないな”と。“将来、どういう形かはわからないけど、またグループができるかもしれない。そのことも考えて行動しろ”とも言っていましたね」

「断腸の思い」
――幹部の処分要求については? 

「麻生さんや茂木さんに話をしたとは言っていましたよ。“安倍派の幹部に責任を取らせて終わりは良くない”というような話をされたそうです」

――清和会の歴史に幕が下りることに。座長としてどう受け止める? 

「断腸の思いですよね。グループには長い歴史があり、私も長年そこに所属してきました。私が座長の立場である時に解散となったことは、(創設者の)福田赳夫さん以来、指導していただいた先輩方に申し訳ない……。今後? どうなるかはまだわかりません」

 森元総理の代理人に聞くと、

「自発的な離党や議員辞職を求めた事実は、党執行部自身が否定していると認識しています」

 と述べた。

 かくして終わりの時を迎えんとする第1派閥。

 その最終章は決して清らかでも、和やかでもない……。

「週刊新潮」2024年2月8日号 掲載