「おまえの都合なんてどうでもいいよ!」角和夫会長は雲隠れ、演出助手は降板…宝塚のパワハラは終わらない

 
「“遅筆”の小池先生では毎度お馴染みだが、もはや笑い事では済まされません。台本が遅れると、音楽家と振付家は徹夜で作曲し振付を考えないといけない。今回も夜に楽曲が花組生に渡り、翌日の稽古までに覚えねばならない事態に。亡くなる直前の有愛さんと同じ状況で、生徒は睡眠時間を削って舞台用のアクセサリー作りに追われている」

 上辺だけの改革では、過重労働もパワハラも終わらない。
 
 
〈今変わらなければ宝塚歌劇が永続する道はないとの危機感を持ち、(略)、理事長として、不退転の決意で臨んでまいります〉

 宝塚歌劇団の機関誌『歌劇』1月号で“改革”への決意表明をするのは、劇団理事長の村上浩爾氏である。

◆ ◆ ◆

理事長に就任した村上氏が過重労働対策に乗り出す
 昨年9月30日に宙(そら)組の有愛(ありあ)きい(享年25)が自死した問題で、パワハラを行った上級生の謝罪を求める遺族と劇団で協議が続くが、劇団運営元の阪急阪神ホールディングス会長・角和夫氏は目下“雲隠れ”中だ。
 
「大阪の政財界幹部が集まる新年互礼会、副会長を務める関西経済連合会の年頭会見と新年パーティも欠席していた」(阪急関係者)
 村上氏は昨年12月1日付で理事長に就任。今年から公演回数を減らすなど、パワハラと共に有愛を苦しめた過重労働対策に乗り出した。冒頭の機関誌への寄稿「宝塚歌劇団理事長就任にあたって」でも〈生徒やスタッフ、公演関係者の心身の健康管理を組織としてサポートする〉と述べる。

騒動の最中、劇団は演出家のパワハラを隠蔽
 だが――。1月開幕の星組公演の舞台裏で“事件”が起きていた。同公演のレビュー(歌と踊りがメインのショー)『VIOLETOPIA(ヴィオレトピア)』を手掛けるのは、劇団所属の演出家・指田珠子(さしだしゆこ)氏である。

「2019年に演出家デビュー。若手ホープとの呼び声が高い一方、今最もスタッフに恐れられている。後輩を『おまえ』呼ばわりし稽古場で『謝れー!』と激昂する」(生徒)

 公演準備が本格化した昨年10月。有愛の死で劇団に対し厳しい目が向けられる最中のことだ。

「おまえの都合なんてどうでもいいよ!」

 指田氏は電話口でそう演出助手に怒鳴ったという。

「当時、この演出助手は他公演も掛け持ちしていた。地方公演で他県に滞在中、突然指田先生から『明日、打ち合わせをするから宝塚に来い』と言われた。別の公演中だと答えると、電話で罵詈雑言を浴びせられたそうです。その後も先生は散々こき使った挙句に『おまえがいなくても稽古は回る』と暴言を吐いていました」(前出・生徒)

 深夜労働と指田氏からの理不尽な説教が連日続いた演出助手は周囲に「稽古まで無事に生きられるかな」と漏らすように。そんな折、自転車で帰宅中に転倒。幸い、膝の打撲で済んだが、劇団と話し合い、稽古初日を前に降板した。

「劇団は怪我を降板の表向きの理由としたが、演出助手が指田先生の指導によって心に深く傷を負ったことを重く見ていた。大事にしたくない劇団は先生のパワハラを放置し、隠蔽してきたのです」(劇団関係者)

小池修一郎氏は小誌の取材に対し、事実関係を否定
 小誌は劇団に指田氏のパワハラの有無を尋ねたが、答えなかった。ハラスメントを不問にされている演出家は指田氏だけではない。

「僕なんてセクハラ・パワハラ・脱税帝王だよ」

 最近、周囲にそう開き直ってみせたのは「宝塚のジャニーさん」こと、小池修一郎氏だ。週刊文春は昨年 12月21日 、 27日発売号 で同氏の行状を詳報。若手演出助手を温泉に誘い、〈タマタマなら性交にしろっ!〉といった強烈なセクハラメールを送っていたこと、舞台の良席を手配した謝礼として脱税の温床である花代を、ファンから受け取っていたことなどを報じた。週刊文春の取材に対し、劇団は十分な調査なしに、本人への聞き取りを基に事実関係を否定した。

「有愛さんへのパワハラでも、加害者側の上級生の主張が無条件に採用されたことが問題視されていた。相変わらず、劇団はパワハラと真正面から向き合っていないのです」(同前)

上辺だけの改革で生徒は睡眠時間を削る日々
 2月10日から宝塚大劇場で開幕する花組公演『アルカンシェル〜パリに架かる虹〜』は、小池氏脚本・演出の新作である。この公演でも、過重労働対策の一環で稽古日数を確保するため、初日を当初の予定から1日遅らせることになったが、

「稽古初日のクリスマスまでには台本が完成する予定が、年を越し約3週間遅れた。稽古日が1日増えても意味がない」(別の生徒)

 前出の劇団関係者が憤る。

「“遅筆”の小池先生では毎度お馴染みだが、もはや笑い事では済まされません。台本が遅れると、音楽家と振付家は徹夜で作曲し振付を考えないといけない。今回も夜に楽曲が花組生に渡り、翌日の稽古までに覚えねばならない事態に。亡くなる直前の有愛さんと同じ状況で、生徒は睡眠時間を削って舞台用のアクセサリー作りに追われている」

 上辺だけの改革では、過重労働もパワハラも終わらない。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2024年2月1日号)