ロシアが国連決議に違反して北朝鮮から武器を調達し、ウクライナへの攻撃に使用している。ほかにも民間人虐殺、子どもの連れ去りといった戦争犯罪を重ねるロシア。その無法ぶりは目に余る。

 米国によると、ロシア軍はウクライナ東部で、北朝鮮製の短距離弾道ミサイルを複数回使用し、その残骸を分析したウクライナ当局も北朝鮮製だと断定した。

 核、ミサイル開発をやめようとしない北朝鮮との武器取引や軍事技術協力は、国連安全保障理事会の決議で禁じられている。安保理常任理事国のロシアも決議には賛成してきた。それを破るとは無責任極まりない。

 安保理は国際の平和と安全の維持に重い責任を負っている。プーチン体制下の今のロシアには常任理事国の資格はない。

 旧ソ連を継承した新生ロシアは当初、国連を重視した。国際社会での立場と影響力が低下し、拒否権を持つ常任理事国の地位こそがよりどころだったからだ。
 2000年にプーチン政権が改定した「国家安全保障の概念」は、超大国・米国の単独行動主義が強まることで、国際安全保障の機能を持つ国連の役割が低下するのは、ロシアには脅威だという認識を示していた。

 それが今は国連憲章を破ってウクライナに侵略して国連をないがしろにし、拒否権を連発して安保理を機能不全にも陥らせた。

 国連が発足して来年は80年になる。米英仏ロ(旧ソ連)中5カ国の戦勝国に付与された拒否権の是非を含めて安保理の在り方を見直し、国連改革を進めるべきだ。

 ウクライナ侵攻を機にロシアと北朝鮮は急接近した。ロシアは弾道ミサイル以外にも100万発以上の砲弾を北朝鮮から調達したとみられている。2000年以来となるプーチン大統領の訪朝も取りざたされている。

 孤立を深める者同士が特に軍事面で結託することは世界の平和と安定を脅かす。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記は韓国を「主敵」と呼び、朝鮮半島の緊張を高めている。

 韓国当局によると、イスラム組織ハマスが北朝鮮製のロケット弾をイスラエルに対して使った。

 ロ朝の軍事協力の進展と北朝鮮製武器の拡散を、両国と関係の深い中国は座視すべきではない。国際情勢の不安定化を望んでいないのは、中国も同じはずだ。

 

 

主張
米軍の中東空爆
国連憲章無視した攻撃やめよ

 

 米中央軍は、ヨルダンの米軍施設で米兵3人が死亡した無人機攻撃への報復として、2日、イラクとシリア領内にある親イラン武装組織の拠点を空爆しました。イラク政府は、あからさまな主権侵害だと批判しました。3日には米英軍がイエメンの反政府武装組織フーシ派の拠点をまたもミサイルなどで攻撃しました。どんな理由があっても、他国領土に軍事攻撃をかける権利は米軍にありません。

ガザ無差別攻撃が背景に
 2日の攻撃で米軍はイラン革命防衛隊の関連施設など85カ所以上を空爆しました。民間人を含め45人が死亡したとされます。イラクは「主権侵害であり、イラクと地域を悲惨な結末に導きかねない」(軍報道官)と非難し、米国代理大使に抗議しました。

 他国の武装組織を政治的軍事的に支援するイランの行動は武力紛争を各地に広げる危険なものです。公海上で民間船舶を狙うフーシ派の攻撃は犯罪行為です。こうした問題は国際法のルールに基づいて解決されるべきです。

 イラク、シリア、イエメンは主権国家です。国連憲章と国際法は、各国の主権と領土保全の尊重を定め、国際紛争は平和的手段で解決しなければならないと定めています。米軍の攻撃はこれに真っ向から反するものです。

 米軍の攻撃によって、軍事対決は深刻化の一途をたどっています。フーシ派は「エスカレーションにはエスカレーションで応じる」との声明を発表しました。

 イランは「米国が冒険的行為を続ければ、平和と安全の脅威になる」と警告しました。世界最大の軍事力を持つ米国と、中東の大国であるイランの軍事対立は、地域全体を不安定化させかねません。双方に自制が求められます。

 事態の背景となっているのが、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの無差別攻撃です。イスラエルの攻撃によって中東各地で緊張が高まり、親イラン武装勢力やフーシ派はガザのイスラム組織ハマス支持を掲げ、軍事行動を強めています。米国が軍事的報復を繰り返しても、暴力の連鎖が限りなく続くだけです。

 米国は、長年イスラエルを支え、ガザ攻撃にあたっても、イスラエルを支持し、即時停戦を求める国連安全保障理事会決議案に拒否権を行使しました。

 国際社会ではイスラエルに停戦を迫る動きが強まっています。国連総会は昨年10月の緊急特別会合で、人道的休戦を求める決議を採択しました。国際司法裁判所(ICJ)は1月26日、イスラエルに対して、ガザ地区でのジェノサイドを防止するためすべての手段を尽くすことを命じました。

イスラエルに停戦求めよ
 イスラエルはICJの決定に強く反発し、決定の受け入れを拒んでいます。しかし、イスラエルがガザ攻撃をやめなければ、暴力の連鎖が中東の他の地域に広がる危険性はなくなりません。イスラエルにとっても、平和や安全は保障されません。

 イスラエルは国連総会決議やICJの決定を受け入れ、直ちにガザ攻撃をやめ、停戦に応じるべきです。米国に求められるのは、イスラエルへの加担でなく、国際社会の声に従って、イスラエルに働きかけ、停戦に向けた本格的努力に乗り出すことです。