松野氏のほか、いずれも安倍派幹部で、事務総長を務める高木国会対策委員長(当時)や世耕参議院幹事長(当時)など、10人以上の議員側が、2022年までの5年間で1000万円を超えるキックバックを受け、政治資金収支報告書に収入として記載していない疑いがあることがわかったのです。

さらに、安倍派の座長を務める塩谷元文部科学大臣や萩生田政務調査会長(当時)、経済産業大臣を担っていた西村氏など、派閥の幹部6人を含む安倍派の大半の所属議員側が、パーティー収入の一部についてキックバックを受けていたとみられることが関係者への取材でわかりました。

 

 

安倍派の事務総長は◇2022年8月から高木氏が務めています。◇前任は西村氏で2021年10月から2022年8月まで、◇さらにその前は、松野氏が2019年9月から2021年10月まで務めました。

Q.ほかの安倍派の議員の反応で注目は?

 

 

 

A.事態の深刻さを示唆する発言も飛び出しました。
安倍派で、防衛副大臣を担っていた宮澤氏は12月13日、記者団に対し、2022年までの3年間にあわせて140万円を政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにし、「おわびしたい」と陳謝しました。
その上で「派閥の方からかつて政治資金収支報告書に記載しなくてもよいという指示があった。『大丈夫かな』とは思ったが、長年やっているのなら適法なのかと推測せざるを得ず、指示に従った」と述べました。
また今回の問題が発覚して以降「派閥から『しゃべるな』という指示もあった」と述べました。

Q.キックバック、ほかの派閥は?
A.二階派「志帥会」も、所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分を派閥の収支報告書に収入として記載していなかったとみられることが12月上旬、明らかになりました。

 

ノルマを超えた分は議員側にキックバックされ、所属議員ごとのパーティー券の販売ノルマや議員側にキックバックした金額などを記したリストを作成していたとみられます。
こうしたリストをもとに、パーティー収入の運用を組織的に管理していた疑いがあります。

 

ただ、安倍派とは違って▽キックバックした分は派閥の収支報告書に議員側への支出としては記載されていて▽議員側の政治団体も収入として記載していたとみられるということです。

また、岸田総理が会長を務めていた岸田派「宏池政策研究会」でも、派閥が実際に集めた収入より少ない金額が収支報告書に記載されていたとみられることが、関係者への取材で12月中旬、明らかになりました。

 

ただ、収支報告書に記載されていなかったとみられる収入の規模は、安倍派や二階派と比べ、少ないということでした。
岸田派も所属議員がパーティー券の販売ノルマを超えて集めた分の収入を議員側にキックバックしていましたが、その分は派閥側の収支報告書に収入や支出として記載していたとみられています。  

Q.捜査当局は、どう動いたのか?
東京地検特捜部は12月19日、政治資金規正法違反の疑いで強制捜査に乗り出し、安倍派「清和政策研究会」と二階派「志帥会」の事務所を捜索しました。

 

この時点で、安倍派の議員側にキックバックされ裏金化した資金の総額は2022年までの5年間で、およそ5億円に上り、二階派でも派閥の収支報告書に記載されていないパーティー収入の総額が5年間で1億円を超えるとみられるということがわかりました。

安倍派と二階派では、派閥側の指示のもとでパーティー収入の一部を収支報告書に記載しない運用が組織的に行われていた疑いがあり、特捜部は、派閥の幹部や議員の認識など詳しい経緯について実態解明を進めたとみられます。

Q.派閥側を強制捜査した狙いは?
A.特捜部が強制捜査に踏み切ったのは、パーティー収入を裏金化する運用が、いつから、誰が主導して行われたのか、その指揮系統の解明のため、事務所などを捜索して関係資料を押収することが欠かせないと考えたからだとみられます。

 

今回の事件は、捜査の対象が複数の派閥にわたっているうえ、派閥側と、キックバックを受けていた議員側の政治団体、それぞれに収支報告書の記載義務を負う会計責任者と、国会議員がいるなど、捜査の対象となる関係者が多いのが特徴です。

このため、特捜部は全国から応援の検事を集めて捜査態勢を拡充していて、臨時国会閉会後のこのタイミングで強制捜査に踏み切りました。

その後、12月27日には、安倍派の池田佳隆衆議院議員の事務所、翌28日には、安倍派からおよそ5000万円のキックバックを受けていたとみられる大野泰正参議院議員の事務所など、関係先を捜索しました。

 

Q.一連の強制捜査に、政府・与党内からはどういう反応が?
「特定の政策集団のみならず、党全体、政権にとっても非常に深刻な事態になった。とにかく政策の遅滞を避けるべく取り組みを進めていくしかない」(政府高官)

特に、組織的関与も指摘される安倍派は、次のような声も出るほどでした。

「派閥存続の危機に直面している」(安倍派内)

強制捜査に関連して12月19日、安倍派は「多大なるご迷惑とご心配をおかけし、政治の信頼を損ねることとなり、心よりおわび申し上げる。重大に受け止め、捜査には最大限協力し、真摯に対応していく」というコメントを出しました。

また、12月19日、派閥の事務所の捜索を受けて、自民党二階派の会長を務める二階元幹事長は「多くの関係者にご心配とご迷惑をおかけしていることを心よりおわび申し上げる。捜査当局からの要請には真摯に協力し、事案の解決に向けて努力していく」というコメントを出しました。

Q.その後、実態解明はどう進んできたのか?

 

国会議員のうち、参議院議員の任期は6年で、3年ごとに半数が改選されますが、安倍派では、少なくとも参議院選挙があった2019年と2022年に開いたパーティーについては、改選となる参議院議員にパーティー券の販売ノルマを設けず、集めた収入を全額キックバックしていたことが関係者への取材でわかりました。

 

 

一方、衆議院議員は解散があり、選挙の時期が不規則なため、こうした運用は行われていなかったということです。

安倍派では、2019年に改選を迎えた参議院議員側は、こうした運用によって、収支報告書に収入として記載していない金額が膨らんだとみられるということです。

また、新たな疑惑も明らかになりました。

 

 

安倍派と二階派に所属するそれぞれ複数の議員側が、販売ノルマを超えて集めた分のパーティー収入を、そもそも派閥側に納入していないケースがあることが関係者への取材でわかったんです。

こうしたパーティー収入は、派閥側や議員側の政治資金収支報告書に収入として記載されていない疑いがあり、収支報告書に記載されていないパーティー収入の総額はさらに膨らむ可能性があるというのです。

そして、安倍派では、その総額が、おととしまでの5年間でおよそ1億円に上るとみられることが関係者への取材で新たにわかりました。

 

 

こうしたパーティー収入は、派閥側や議員側の政治資金収支報告書に記載されていない疑いがあるということです。

関係者によりますと、こうした議員側の中には派閥の幹部らも含まれていて、1000万円を超えるパーティー収入を派閥側に納入していないケースもあるということです。

安倍派では大半の所属議員側にパーティー収入の一部がキックバックされ、収支報告書に記載されていない資金の総額が去年までの5年間で、およそ5億円に上るとみられることがすでに明らかになっていて、安倍派で裏金化した資金の総額は、合わせて6億円規模に膨らむ疑いがあるということになりました。

 

 

また二階派では、販売ノルマを超えて集めた分のパーティー収入を、そもそも派閥側に納入していないケースの総額が、おととしまでの5年間でおよそ1億円に上るとみられることが関係者への取材で分かりました。

 

二階派の会長を務める二階・元幹事長の事務所や、事務総長を務めた経験がある平沢・元復興大臣の事務所も、パーティー収入の一部を派閥側に納入していなかったとみられるということです。

二階派では、所属議員側にキックバックされ、収支報告書に記載されていないパーティー収入の総額が、おととしまでの5年間で1億円あまりに上るとみられることがすでに明らかになっていて、派閥の収支報告書に記載されていない資金の総額は、2億円を超える疑いがあるということになります。

 

この問題をめぐって、二階派「志帥会」は、おととしまでの3年間に記載していないパーティー収入が1億3600万円あまりあったなどとして政治資金収支報告書を訂正しました。

また、派閥の会長を務める二階 元幹事長など国会議員と元国会議員あわせて7人の側への派閥からの寄付、あわせて6533万円も書き加えられました。

記事の冒頭でも記しましたが、この事件で特捜部は、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で、1月19日に、安倍派と二階派の会計責任者について在宅起訴しました。

 

また、岸田総理が会長を務めていた岸田派でも、2020年までの3年間でおよそ3000万円の収入を派閥の政治資金収支報告書に記載していなかった疑いがあり、捜査を進めてきました。

岸田派の当時の会計責任者については罰金刑を求める略式起訴をしました。

関係者によりますと、岸田派の当時の会計責任者は特捜部の任意の事情聴取に対し、パーティー収入の一部を収支報告書に記載していなかったことを認めているということです。

そして、岸田派「宏池政策研究会」は、おととしまでの3年分の政治資金収支報告書を訂正しました。
このうち2020年には記載していないパーティー収入が896万円あったなどとしています。

岸田派は1月18日、「記載漏れは当時の会計担当者の帳簿作成上の転記ミスや会計知識の過誤などによって生じたもので、いわゆるノルマ超過分の還付を収支報告書から除外するなどの不適正な処理を意図したものではなく、事務処理上の疎漏によるものだ。深くおわびし、再発しないよう、今後は外部による監督を含め十分な管理体制を整備していく」というコメントを出しました。

Q.特捜部は、派閥の幹部らから任意で事情を聴いてきたが?
A.東京地検特捜部は、安倍派と二階派の事務所を捜索のあと、松野 前官房長官、高木 前国会対策委員長、世耕 前参議院幹事長、塩谷 元文部科学大臣、萩生田 前政務調査会長の安倍派の幹部5人から任意で事情を聴いてきました。

 

その後の関係者への取材で、松野 前官房長官ら幹部5人が、特捜部の事情聴取に対し、いずれも、派閥の政治資金収支報告書の不記載への関与を否定する趣旨の説明をし、「ノルマを超えた金額が議員側に還付されていることは知っていたが、パーティー収入の一部が派閥側の収支報告書に記載されていないことは知らなかった」などと話していることがわかりました。

 

一方、安倍派の会計責任者は収支報告書への不記載を認め、「収支報告書に記載しなければならないことはわかっていた」などと説明しているということです。

 

そして特捜部は、派閥の運営を取りしきる事務総長を務めた経験がある西村 前経済産業大臣や下村 元政務調査会長からも任意で事情を聴きました。

 

また特捜部が、二階派の会長を務める二階 元幹事長からも任意で事情を聴いたことが関係者への取材でわかりました。

特捜部は派閥の政治資金収支報告書にパーティー収入の一部が記載されなかった詳しい経緯などについて確認したものとみられます。    

Q.派閥の幹部やキックバックを受けていた議員の認識がどうだったかは、大きな注目点となったが?
A.捜査では、派閥の幹部、そしてキックバックを受け取っていた議員側が、収支報告書の記載内容をどの程度把握していたのか、そのやり取りの解明が最大の焦点になりました。

政治資金規正法は、パーティーなどの収入や支出を、主催した派閥などの政治団体が収支報告書に記載することを義務づけていますが、記載義務については、その団体の会計責任者やそれを補佐する人を対象にしています。

 

収支報告書の不記載や虚偽記載を具体的に指示するなど、積極的に関与して「共謀」した事実が認められた場合には、政治家本人も罪に問われることになりますが、そうしたケースは多くはありません。

政治家本人の立件には、一定のハードルがあるといえると思います。

この記事の冒頭でもお伝えしましたが、東京地検特捜部は松野 前官房長官ら安倍派の幹部7人や、二階派の会長を務める二階 元幹事長など派閥の幹部からも任意で事情を聴いてきましたが、いずれも派閥の会計責任者との共謀は認められないとして、立件しない判断をしました。

東京地検は1月19日の記者会見で「派閥の収支報告書の作成は専ら会計責任者が行っていた。幹部らは、どのように記載していたのか把握まではしておらず、虚偽記載の共謀があったと認めるのは困難だと判断した」と説明しました。

関係者によりますと、安倍派でパーティー収入の一部を裏金化する運用は、20年ほど前から続いていたとされていますが、おととし2022年のパーティーの前に、会長を務めていた安倍元総理大臣が「現金のやりとりは疑念を招く」などとして取りやめを提案し、派閥の幹部らで協議したということです。

 

しかし池田議員ら高額のキックバックを受けていた一部の議員から反対の声が上がったため、幹部らが再び協議し、運用が続いた経緯があることがわかっています。

特捜部は、派閥の運営を取りしきる事務総長経験者や「5人衆」と呼ばれる幹部7人から任意で事情を聴き、こうした経緯などついて確認を進めてきました。

しかし、幹部らはいずれも虚偽記載への関与を否定し「キックバックは知っていたが、派閥の収支報告書に記載されていないことは知らなかった」などと説明したということです。

また、会計責任者は「派閥の会長には、各議員のノルマやキックバックの金額を相談していたが、収支報告書の記載については会長や幹部らに相談していない」と説明しているということです。

共謀を認定するには、幹部らの具体的な指示や報告・了承があったことなどを立証する必要がありますが、今回の刑事処分は派閥の事務所の強制捜査から1か月、国会開会前というタイミングでした。

必要な捜査は尽くされたのか、疑問も残る形になったと思います。

特捜部は二階元幹事長からも認識について確認したということですが、いずれも会計責任者との共謀は認められないと判断したものとみられます。

 

 

一方、安倍派の所属議員側について特捜部は、1月7日、4800万円余りのキックバックを受けたとみられる衆議院議員の池田佳隆容疑者らを証拠隠滅のおそれがあるとして逮捕しましたが、19日、新たに、多額のキックバックを議員側の政治団体の収支報告書に記載していなかったとして、5000万円を超えるキックバックを受けたとされる大野泰正参議院議員を政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で在宅起訴し、4000万円を超えるキックバックを受けたとされる谷川弥一衆議院議員(当時)を略式起訴しました。

そして1月26日、特捜部は、池田議員らを虚偽記載の罪で起訴しました。

安倍派では大半の所属議員側が裏金のキックバックを受けていましたが、中でも特に高額だったのが池田議員、大野議員、谷川議員でした。

特捜部の判断の基準の1つになったとみられるのが金額です。

 

かつては「1億円」の不記載や虚偽記載が検察の立件ラインとされてきましたが、その基準は下がってきていて、実際に、おととしには、薗浦元衆議院議員がパーティー収入など4000万円を超える虚偽記載などの罪で略式起訴されたほか、2020年には「桜を見る会」をめぐる問題で、安倍元総理大臣の秘書がおよそ3000万円の収支を記載しなかったとして略式起訴されました。

今回、3人の議員はいずれも4000万円を超える裏金のキックバックを受けていたとされ、略式起訴された岸田派の元会計責任者や二階・元幹事長の秘書の虚偽記載の金額は3000万円余りでした。

特捜部は、過去の事件との公平性などを考慮し、3000万円を一定の基準にして今回の刑事処分を判断したものとみられます。

 

なお、政治資金規正法違反の罪で略式起訴されていた谷川弥一 元衆議院議員と、岸田派の元会計責任者について、東京簡易裁判所は1月30日までに罰金100万円と公民権停止3年の略式命令を出しました。           

Q.1月19日以降、安倍派「5人衆」はどう発言?
A.安倍派の萩生田 前政務調査会長は1月22日、記者会見し、パーティー券の販売ノルマを超えて集めた収入など2700万円余りを政治資金収支報告書に記載していなかったことを明らかにして陳謝しました。

 

そして、これまでに支出したおよそ955万円の使いみちについては、国会議員や外国の要人、マスコミ関係者などとの会合費や、海外に出張した際の活動費だと説明しました。

萩生田氏は「派閥事務局から収入・支出ともに記載を禁じられていた。会計に関することは詳細まで把握していなかったが、積極的に把握と指導に努めるべきだった。大変反省している」と述べました。

 

世耕 前参議院幹事長は19日、記者会見で、2018年からの4年間でおよそ1540万円のキックバックを受けて政治資金収支報告書に記載していなかったと明らかにし、「政治資金の管理については秘書に任せきりの状況となっていた」と陳謝しました。

 

元事務総長の松野 前官房長官はコメントを発表し、平成30年から5年間で、自身の資金管理団体において、派閥からの寄付あわせて1051万円分が不記載になっていると明らかにしました。
松野 前官房長官は1月26日記者会見し、派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で政治不信を招いたとして陳謝しました。また、議員辞職や離党する考えはないと説明しました。

 

安倍派事務総長の高木 前国会対策委員長はコメントを発表し、おととしまでの5年間で派閥から1019万円のキックバックを受け、政治資金収支報告書に記載していなかったと明らかにしました。
高木 前国会対策委員長は27日記者会見し「国民に多大なる政治不信を招くことになった」と陳謝しました。一方、議員辞職や離党については否定しました。

 

元事務総長の西村 前経済産業大臣は1月19日、記者会見で、派閥側から議員側へのパーティー収入のキックバックについて「歴代会長と事務局長との間で、長年、慣行的に行われ、私たちは関与することはなかった」と釈明しました。
また、2022年までの5年間で100万円のキックバックを受けていたことを明らかにした上で、裏金などの目的ではなかったと説明しました。

Q.今回の問題では、12月に官房長官ら安倍派の4閣僚が交代という異例の事態に。人事をどう見たか?
A.12月14日の人事は、何よりも安定性を重視したと言えますが、体制を立て直すのは、そう簡単ではないと思います。
そして、必ずしも政権側が思い描いたとおりに人事が進んだとは言えません。
政府内では当初、安倍派の政務三役全員を代える案もありましたが、安倍派から強い反発の声があがりました。

「一連の問題に関与していない若手まで代えるのはおかしい」(安倍派内)

結果として安倍派の4閣僚・5副大臣は全員交代の一方、政務官の交代はこの時点では1人となり、岸田総理は「一人一人の意向や事情を勘案した上で判断をした」と説明しました。

 

 

岸田総理には、政治資金問題に厳格に臨む姿勢を示したい思いの一方、最大派閥の安倍派とは対立を避けたいという判断もあったとみられます。

 

ただ、結局その後、2024年1月31日、安倍派に所属する小森 総務政務官と加藤 国土交通政務官も、収支報告書に記載していない収入が新たに明らかになったとして辞任しました。

Q.4閣僚の交代人事、より具体的には?

 

 

A.閣僚の人事では、岸田総理は去年12月14日、松野官房長官や西村経済産業大臣ら安倍派の4人の閣僚を交代させ、後任に▽岸田派の林官房長官▽無派閥の齋藤経済産業大臣▽麻生派の松本総務大臣▽森山派の坂本農林水産大臣を起用しました。



この人事で、4人いた安倍派の閣僚が1人もいなくなりました。
新閣僚は、いずれも安倍派以外の派閥か派閥に所属していない閣僚経験者で、うち3人は、9月の内閣改造で閣外に出たあと、わずか3か月で呼び戻された形です。

 

閣僚として記者会見や国会審議をこなし、不祥事などを抱えていないと確認できていることもポイントで、政府関係者はこう話しています。

「即戦力で選んだという、ひとことに尽きる」(政府関係者)

Q.ほかの人事はどうなったのか?

 

A.自民党では▼萩生田政務調査会長▼高木国会対策委員長▼世耕参議院幹事長も辞表を提出し、安倍派の「5人衆」と呼ばれる有力議員がいずれも閣僚や党幹部の役職を退きました。

安倍派の幹部が政権中枢から外れ、政府からすると窓口役がいなくなった形です。
ある政権幹部は政府・自民党内の調整が難しくなるのではないかと不安をのぞかせていました。

そして12月22日、党幹部の後任人事では、政務調査会長に渡海 元文部科学大臣を起用。

 

また、国会対策委員長には、浜田 前防衛大臣が起用されました。

 

岸田総理としては、安倍派の4人の閣僚らを交代させたのに続き、党の要職にいずれも無派閥のベテラン議員を起用して体制の立て直しを図り、2024年の通常国会に臨むことになりました。

Q.人事以外に、岸田総理はどう対応?
岸田総理は12月7日、総理大臣と党総裁の間は、より中立的な立場で国民の信頼回復に努めたいとして、みずからが会長を務めていた岸田派「宏池会」を離脱しました。

 

そして岸田総理は13日夜、記者会見を行い、14日に人事を行う意向を表明。
 

その際には、こう発言していました。
「国民から疑念を持たれるような事態を招いていることは極めて遺憾だ。国民の信頼なくして政治の安定はありえない。政治の信頼回復に向けて自民党の体質を一新すべく先頭に立って戦っていく」
 

「政治改革を求める国民の厳しい声に真摯に耳を傾けて、党所属の議員とひざ詰めの議論を集中的に進めていく」
「国政に遅滞を来すことがないよう全力を挙げなければならない。速やかに人事を行うことが適切だと判断した。国民の信頼回復のため『火の玉』となって自民党の先頭に立って取り組んでいく」

 

そして、年が明けて、自民党は、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、再発防止策や派閥のあり方などを議論するため「政治刷新本部」を設置し、1月11日、初会合を開きました。

冒頭、本部長の岸田総理大臣は「国民の厳しい目、疑念の目が注がれており、自民党をめぐる現在の状況は極めて深刻という強い危機感のもと、一致結束して事態に対応していかなければならない」と述べました。

自民党の「政治刷新本部」は38人で構成し発足。

 

 

岸田総理大臣が本部長を務め、麻生副総裁と菅前総理大臣の総理大臣経験者2人が最高顧問に就きました。

 

党内で無派閥の菅前総理大臣らが派閥の解消を主張する一方、人材育成などの観点から解消に否定的な意見も根強くある状況を踏まえ、派閥の役割や機能などについて丁寧に意見集約を進めていく構えでした。

Q.そうした中で岸田総理が1月18日、「岸田派の解散」を突然、表明したということか?
A.そうですね。
岸田総理は記者団に、こう述べました。

 

「宏池会=岸田派の解散についても検討している。政治の信頼回復に資するものであるならば、そうしたことも考えなければならない」

ほかの派閥にも同様に解散を求める考えはあるか問われたのに対し、「とりあえず、われわれとして信頼回復のためにどうあるべきか考えている」と述べました

そして岸田派は、23日、岸田総理の意向を踏まえ解散することを正式に決めました。

【リンク】特集「『自民党を潰しちゃいけない』岸田決断の舞台裏」はこちら

Q.「派閥解散」表明の狙いと自民党内の受け止めは?
A.岸田総理としては、60年以上の歴史を持つ派閥をみずから解散するという、いわば乾坤一擲(けんこんいってき)の一手を打ち出すことで、党内の議論をリードし、国民の政治不信の払拭につなげたい狙いがあるとみられます。

 

ある政府関係者は、こう明かしました。

「岸田総理は『派閥が潰れても自民党は残す』と語っていた」(政府関係者)

一方、突然とも言える表明に、党内には大きな波紋が広がりました。
党の「政治刷新本部」では、派閥のあり方をめぐり議論が交わされている最中でしたので、戸惑いの声が聞かれました。

「いままでの議論は何だったのか」(自民党内)

「事前に相談がなかった」(岸田派以外の党幹部)

今後の政権運営に禍根を残すという見方が出ました。

Q.派閥の是非をめぐる議論は、どうなっていったのか?
A.検察から強制捜査を受けた安倍派や二階派については、岸田総理の「岸田派の解散」発言もあり、それぞれの派閥内から、解散せざるを得ないという声が相次ぎました。

「岸田総理が完全に流れを作った」(安倍派・二階派の各派閥内)

そして1月19日午後、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる事件を受けて「志帥会」=二階派の会長を務める二階・元幹事長は記者会見し、派閥を解散する意向を表明しました。

さらに最大派閥の安倍派も19日午後、議員総会を開き、派閥を解散する方針を決めました。

 

その一方で、党内第2派閥の麻生派や第3派閥の茂木派では、不快感を示す議員が相次ぎました。

「適切に対応していた派閥まで解散する必要はない」(麻生派・茂木派の各派閥内)

岸田政権は、岸田派に加えて、麻生副総裁や茂木幹事長といった、ともに派閥を率いてきた幹部が政権中枢を担い、複数の派閥によって支えられてきました。

 

麻生氏や茂木氏は、派閥の解消に慎重な考えだとみられていたことから、今後の政権運営に影響が及ぶことも予想されました。

そして、麻生派を率いる麻生副総裁は現時点では派閥を解散するつもりはないと岸田総理大臣に伝えました。

麻生氏は21日夜、都内のホテルで岸田総理と会談し、刷新本部での今後の議論の進め方などをめぐって意見を交わしています。

 

また、派閥を解散するかどうかが注目されていた茂木派は、会長の茂木幹事長が存続させる意向を固め、関係者に伝えました。

一方、25日、森山派は、議員や関係者が立件されていないものの、国民から派閥の存在自体に疑念を抱かれているなどとして、解散することを決めました。
これによって自民党の6つの派閥のうち4つが解散することになりました。

その後、茂木派では、小渕選挙対策委員長が1月25日、派閥を退会する意向を会長の茂木幹事長に伝えました。

 

小渕氏は茂木派の前身となる派閥を率いた小渕恵三・元総理大臣の次女で、知名度も高いことから、派閥内からは「退会は痛手だ」という声が出ています。
さらに、関口参議院議員会長や、小渕内閣などで官房長官を務め派閥に影響力を持っていた故 青木幹雄氏の長男の青木一彦 参議院議員も所属する茂木派を退会する意向を明らかにしました。    

 

派閥のあり方については、「政治刷新本部」で議論が行われてきました。

自民党が25日午後、決定した「政治刷新本部」の中間とりまとめでは、派閥は本来の「政策集団」に生まれ変わるため、カネと人事から完全に決別するなどとしています。

具体的な方策として◇政治資金パーティーの開催を禁止し、◇冬と夏に派閥を通じて議員に配る活動費、いわゆる「もち代」と「氷代」を廃止するとともに、◇人事の働きかけや協議は行わないことも盛り込んでいます。

Q.一方で野党側のこれまでの対応は?
A.去年の臨時国会会期末の12月13日。
立憲民主党は、岸田内閣に対する不信任決議案を衆議院に提出しました。

決議案では「国民の内閣に対する信頼は完全に失墜した。岸田内閣は国民の声を聞く力も政策を決定し遂行する能力もない。国政の停滞は許されず、内閣はただちに総辞職すべきだ」としています。

岸田内閣に対する不信任決議案について、野党各党は決議案に賛成することで一致。

 

ただ、衆議院本会議の採決では、決議案は自民・公明両党などの反対多数で否決されました。
野党側は、立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党、れいわ新選組などが賛成しました。

年が明けて、立憲民主党は1月18日、「政治改革実行本部」を開き、▼政治資金収支報告書に虚偽記載などがあった場合、会計責任者だけでなく議員本人も処罰の対象にするとともに、▼収支報告書にパーティー券の購入者を記載しなければならない金額を「20万円を超える」から「5万円を超える」に引き下げるなどとした政治資金規正法の改正を目指す方針を確認しました。

泉代表は21日、派閥からキックバックを受け、収支報告書に記載していなかった議員の証人喚問を引き続き求めていく考えを示しました。

 

「数千万円の裏金がありながら、今になって公表して何食わぬ顔で過ごしている議員もおり、自民党の裏金体質を絶対許してはならない。国民の声を高めてルール違反の議員を国会から一掃することが必要だ」
「自民党自身が事実上何もせず、派閥の解体に話をすり替えようとしているのはけしからん話だ。すべての裏金議員は議員を辞めるとともに、岸田派でも3000万円の不記載が分かったわけだから岸田総理大臣は辞任に値する」

 

そして1月30日、立憲民主党、日本維新の会、共産党、国民民主党の野党4党の国会対策委員長が、会談。

新年度予算案の実質的審議が始まる前に事件の全容を明らかにすべきだとして、自民党所属のすべての国会議員を対象に、派閥からキックバックを受けていたかを調べて、その結果を、2月5日までに、国会に提出するよう求めることで一致しました。

 

 

また、政治倫理審査会を開催し、二階派の会長を務めてきた二階元幹事長のほか、安倍派の座長を務める塩谷元文部科学大臣や「5人衆」と呼ばれる有力議員らに説明を求めていくことも確認しました。

Q.通常国会ではどんな論議が?

 

A.2月5日、国会は、衆議院予算委員会で新年度予算案の実質的な審議が始まりました。

立憲民主党の岡田幹事長が、自民党の派閥の政治資金をめぐる問題を受けた政治改革の実行を迫ったのに対し、岸田総理大臣は今の国会で政治資金規正法の改正を実現すると強調しました。

▼立憲民主党の岡田幹事長は、政治改革をめぐり、こう追及。

 

「『火の玉になってやる』とか『先頭に立ってやる』というが、政治は結果責任だ。実行することが責任だというなら、この国会でやり遂げる決意が必要で、『できなければ責任を取る』ぐらいのことが言えないのか」と迫りました。

これに対し、岸田総理大臣は。

 

「自民党が変わらなければならないという思いを持って党の中間とりまとめを実行する。法改正を伴う制度面の改革について、各党・各会派と真摯な協議を行うと明記しており、今の国会で政治資金規正法をはじめとする法改正を実現していく」と述べました。

国会は、6日も衆議院予算委員会で質疑が行われ、立憲民主党など野党側は、政治資金規正法を改正し、企業・団体献金を禁止することなどを求めました。一方、自民党は、岸田総理大臣が今の国会で法改正を実現するとしていて、党内に設けた作業チームで具体的な検討を進めることにしています。

Q.自民が立民に資料を提出 記載された現職議員は?
A.2月5日朝、自民党は、派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けて、各政治団体の代表者を務める議員を明記した資料を立憲民主党に提出しました。

資料には、▽収支報告書を訂正した政治団体▽代表の氏名そして▽訂正した支出の金額が記されています。

令和2年から令和4年までの3年間のもので、安倍派「清和政策研究会」と二階派「志帥会」に所属していた現職の国会議員の氏名などが記載されています。

以下、記載されていた議員の一覧と、資料を掲載します。

安倍派「清和政策研究会」

 

 

二階派「志帥会」

 

 

提出された資料は

 

 

Q.岸田政権は、このまま持ちこたえられるのか?
A.東京地検特捜部による強制捜査が政権へのさらなる打撃となるのは間違いありません。
今後の政権運営の道のりは非常に険しいと思います。

強制捜査より前のことですが、12月13日、岸田総理は、記者会見で声を詰まらせる様子が何度かみられました。
政府関係者は総理の思いがこもっていたと話していましたが、裏を返せば危機感のあらわれとも言えると思います。

一連の政治資金をめぐる問題も背景に、12月のNHKの世論調査では、内閣支持率が2012年の政権復帰以降、最低となりました。
最新の1月は、12月の調査より3ポイント上がって26%でしたが、低迷は続いています。

 

 

永田町で取材をしていますと「政権はいつまで持つのか」という話題を耳にするようになりました。

 

一方で、自民党内には「疑惑の目は党全体に向けられ、岸田総理を引きずり降ろしたところで、事態は改善しない」との声もあります。

野党側は「岸田政権の正当性は失われ、すでに機能も停止している」と批判を強めていて、通常国会で攻勢をかけていく構えです。

Q.派閥をめぐって自民党内で混乱が続いている。党内の情勢はどうなっている?
A1)流動化が進んでいると言っていいと思います。

 

 

6つの派閥のうち4つが解散を決め、所属議員の7割が無派閥となります。
加えて、残る麻生派や茂木派から、退会するという議員が出てきています。

茂木派は、派閥のあり方をめぐって、1月30日、衆参両院の所属議員による会合を開きました。

 

カネと人事から完全に決別するとした党の中間とりまとめに沿って、新たな政策集団としての活動のしかたを検討していくことを確認しました。
また、出席者からは岸田総理が国会で「派閥を解消するというのは政治団体を解消することだ」と述べたことを踏まえ、派閥の政治団体の届け出を取り下げるべきだという意見も出され、今後、協議していくことになりました。
一方、会合では、これまでに退会した小渕選挙対策委員長らに続き、古川禎久 元法務大臣が退会する意向を表明しました。

他方で、麻生派や茂木派からは、先んじて派閥解散を打ち出した岸田総理に対し、不満を口にする議員もいて、政権基盤に影響が出かねない状況です。

Q.安倍派の幹部の責任を問う意見もあるが、どうなる?
A.決着を図るのは容易ではなさそうです。

「安倍派は立件された」という理由で処分すると言っても、岸田派や二階派も立件されていますので、「線引きが難しい」という声もあります。
このため、自発的な離党などを求める意見が出ていますが、見通せない情勢です。

政治資金パーティーをめぐる事件を受けて、解散することを決めた自民党の安倍派は2月1日、最後となる議員総会を開き、派閥としての活動を終えました。

 

この中で、座長を務める塩谷元文部科学大臣は「政治不信を招き、深くおわび申し上げる。安倍元総理大臣の遺志を継いで政策実現に向けて運営してきたが、このような事態になり誠に残念無念だ」と述べました。

総会では、出席した議員から塩谷氏の政治責任を問う声が出た一方、「1人に責任を負わせるべきではない」という意見も出されました。

自民党は2月2日から森山総務会長ら党幹部が、安倍派と二階派の関係議員を対象に聴き取りを始め、派閥からキックバックを受けた金額や使いみちなどを確認することにしています。

 

そして、問題が起きた背景などを把握し、「政治刷新本部」での再発防止策の検討や党改革の議論につなげたい考えです。

Q.能登半島地震への対応は急務。政治とカネの問題で地震対応に影響が出ることはあってはならない。岸田総理はどう政権運営していく?
A.こちら、今後の政治日程になります。

 

 

まずは、地震対応に万全を期すためにも新年度予算案の年度内成立を目指すことになります。

その上で、賃上げを実現し、6月に行う所得税の減税とあわせて、国民に効果を実感してもらうという道筋を描いています。

ただ、衆議院の補欠選挙や、自民党総裁選挙が控えています。
次の衆議院選挙もにらみながら、政権の立て直しを図れるかが焦点となります。

Q.野党もまた役割が問われている。政権にどう対峙しようとしているのか?
A.事件の説明や政治改革を迫り、攻勢を強める方針です。

立憲民主党の泉代表は1月31日の国会の代表質問で、岸田総理に対し、「異次元の不祥事だ。道義的責任、政治的責任があるというなら、党総裁として全ての裏金議員に議員辞職を求めてはどうか。離党勧告や除名処分は行わないのか」と迫りました。

また、2月2日、自民党が始めた関係議員を対象にした聴き取りについて、透明性の高い調査が必要だとした上で、自民党のすべての議員を対象にして、調査結果を国会に提出するよう重ねて求めました。

この国会は、冒頭の審議日程を決める段階から野党ペースで進んでいると言っていいと思います。
立憲民主党などは、政治とカネの問題で「連絡協議会」を設置し、連携して対応する考えです。

ただ、足並みが完全にそろっているとは言えません。
政治全体への不信感が高まっている今、与野党ともに問われる通常国会になりそうです。

(1月29日「ニュース7」などで放送)