党を挙げて「裏金禁句」の幼稚な追及逃れ──。当事者意識に欠けた無反省な「言葉狩り」にかまけている限り、今国会で岸田政権は火だるま必至である。

 

不十分なリストで幕引きは許さん(左上から時計回りに松野博一官房長官、西村康稔経産相、萩生田光一政調会長、高木毅国対委員長、世耕弘成参院幹事長)

 

 派閥の政治資金パーティーの裏金事件を巡り、自民党が5日午前、野党側が公開を求めていた関与議員の暫定リストを提示した。

 

 この日、明らかにされたリストは最大派閥だった安倍派(清和政策研究会)と「二階派」(志師会)で、両派が1月に届け出た2020年~22年の報告書の訂正に基づき、キックバックを受けた政治団体名、金額、議員名を列記した。対象は現職のみで、「安倍派」は20年が67人、21年が57人、22が年57人。「二階派」は各年5人だった。

「安倍派」では、西村康稔前経済産業相(61)、萩生田光一前党政調会長(60)、松野博一前官房長官(61)、世耕弘成前党参院幹事長(61)、高木毅前党国対委員長(67)の「5人衆」と呼ばれる幹部ら「5人衆」のほか、二階派では二階俊博元幹事長(84)の名前が含まれている。

 だが、暫定リストを受け取った立憲民主党や日本維新の会、共産党、国民民主党の野党4党はリストが「不十分」として再提出を求める考えだ。

 5日、野党国対委員長会談後のぶら下がり会見に応じた立憲の安住淳国対委員長(61)によると、今回提示されたリストは、野党側が求めていた過去5年分ではなく、「3年分」しかなかったこと、収入、支出の具体的な「日付」が記されておらず、アンケート調査の資料もみられなかったためだという。

SNSでは「関与した自民党議員は全員クビが当然」

 

超過分は自身の口座で管理していたと答えた丸川珠代議員

 

「これ、犯罪なんですから、自首せい、じゃないんですか。自民党の方が、疑念を晴らさなきゃって言ってるけど犯罪ですから。早く全部洗いざらいして自首せいと。これにつきます」

 4日のNHK「日曜討論」でこう訴えた、れいわ新選組の大石あきこ共同代表(46)に対し、SNS上では《その通り》《お手盛りのリストで終わらせるな》《自民党ウラガネ議員を逃すな》と賛同する意見が続出。コトの重大性、悪質性を小さく見せようとする自民党に怒りの声が飛んでいたが、無理もないだろう。例えば、今回提示されたリストでも「キックバックを受けた政治団体名」などとあるが、裏金を管理していた口座が政治団体でなく「個人口座」だった可能性もあるからだ。

 実際、自身の政治団体の政治資金収支報告書に2018年からの5年間で計822万円の不記載があったと明らかにした丸川珠代元五輪担当相(53)は、「派閥からノルマ超過分は持ってこなくていいと言われた。資金は(自分の)口座で管理していた」と語ったと報じられている。

《裏金は犯罪。関与した自民党議員は全員クビが当然》

《生ぬるいリスト提示で逃がすな。裏金議員は刑事罰がふさわしい》

 仮にサラリーマンが会社の金を「個人口座」で管理していれば、「横領」や「窃盗」を疑われるのだ。国民の怒りの感情はまだまだ収まらない。

 

 

「裏金って言うな!」自民党が幼稚な“言葉狩り”…岸田首相「定義は困難」でゴマカす無責任

 

「裏金」表現に自民の議院運営委員会理事が登壇して猛抗議

 

 5日から全閣僚が出席する衆院予算委員会の質疑日程が入り、国会論戦は本格化。珍しく野党の足並みもそろい、裏金追及で攻勢を強めている。逆風が吹き荒れる中、火に油を注いでいるのが、岸田首相の反省ゼロの無責任発言。自民党も幼稚な言葉狩りに興じる始末で、この政権は今国会を乗り切れるのか。

 ◇  ◇  ◇

 立憲民主、日本維新の会、共産、国民民主の野党4党の国対委員長は、今国会で定期的に意見を交わす連絡協議会の設置を決定。裏金追及で事実上の「共闘」関係にある。

 野党4党は予算審議を始める前提条件として、自民側に全所属議員を対象とした派閥からの還流の不記載の有無を調べた「裏金議員リスト」の提出を要求。自民側も受け入れ、5日朝、暫定的リストを野党に提示した。野党側はリストの内容次第で審議拒否も辞さない構えを見せ、のっけから自民を大きく揺さぶっている。

 自民の国対サイドの苦労を知ってか知らずか、追及材料を与えまくっているのが、岸田首相だ。裏金問題を巡り、フザけた答弁を連発。今月2日の参院本会議の代表質問では裏金の定義を問われ、こう言ってのけた。

「文脈に応じて、意味、内容が異なってくる。一概に定義をお答えすることは困難」

 政治資金収支報告書という正式な帳簿に載っていなければ「裏金」だ。安倍政権時代の2019年、首相主催の「桜を見る会」に反社会的勢力が出席していたかが話題となった。質問主意書で「反社の定義」を問われると〈形態が多様で、時々の社会情勢に応じて変化し得るもので、あらかじめ限定的かつ統一的に定義することは困難である〉とする答弁書を閣議決定。まさか、ここまで岸田首相も「アベ政治」のゴマカシ手法を踏襲するとは……。

 

野党「共闘」で火だるま必至

 

よお~く見ると、カギかっこ付き

 

  実は施政方針演説でも、岸田首相は「裏金」との言葉を一切、使わなかった。「国民から疑念の目が注がれる事態を招いた」と謝罪したが、あくまで裏金を「政治資金の問題」という表現にスリ替えた。

「岸田首相は昨年11月、岸田派が政治資金パーティーの収入を修正した際、国会で『修正しても総額は変わっていない。裏金うんぬんという指摘はあたらない』と豪語。あくまで記載漏れとの認識を示したが、一転して派閥の会計責任者が立件される事態に。とはいえ、あれだけ大見えを切った手前、今さら裏金を認めるわけにもいかず、定義をウヤムヤにしてけむに巻こうとしているのでしょう」(政界関係者)


 そんな岸田首相の心中を察したのか、野党議員が国会で「裏金」と口にするたび、自民側は猛抗議。1月31日の衆院本会議の代表質問で立憲の泉代表が、辞任した政務官2人について「裏金をもらっていた」と批判すると、自民の議院運営委員会の理事が登壇して異議を唱えた。

 その2日前の参院予算委では共産党議員が用意したパネルに裏金の記述があるのを自民の理事がケチをつけ、〈「裏金」〉と手書きのカギかっこでくくることで決着。おかげで開会が30分ほど遅れた。

 党を挙げて「裏金禁句」の幼稚な追及逃れ──。当事者意識に欠けた無反省な「言葉狩り」にかまけている限り、今国会で岸田政権は火だるま必至である。