主張
安倍派と裏金
「派閥解散」で責任逃れ許すな

 

 自民党派閥の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件を受けて解散を決めていた最大派閥・安倍派が最後の総会を1日開きました。安倍派は1月31日、2018~22年の5年間で、所属議員らが関係する95政治団体に対する総額約6億7600万円の寄付を政治資金収支報告書に未記載だったと公表し、うち公開義務のある3年分について同報告書を訂正しました。しかし、同派幹部は裏金の実態や経過については口を閉ざしたままで、それぞれの議員も使途を明らかにしていません。派閥解散で、国民への説明責任を放棄することは許されません。

組織的な犯罪行為は明白
 安倍派の座長・塩谷立元文部科学相は派閥解散に「断腸の思いだ」などと述べましたが、中枢幹部としての自身の責任には触れませんでした。「5人衆」と呼ばれる派閥事務総長の高木毅前国対委員長らも派閥を取り仕切ってきた幹部としての責任や議員辞職についての踏み込んだ言及を避けました。

 安倍派ではほとんどの議員が裏金づくりをしていました。今回訂正した20~22年の3年間で見ても派閥のパーティー収入は約4億3600万円も増加しました。毎年1億円以上の資金が意図的に隠されてきたことになります。組織的な犯罪行為であることは明白です。関与していなかったという幹部の説明は納得できません。

 塩谷座長は1月末の記者会見で、「慣行として行われてきたのは事実」と認めたものの、それ以降、詳細を全く語っていません。安倍派は清算管理委員会を設け、解散手続きに入るとしていますが、このまま幕引きを図ることは絶対にあってはなりません。

 安倍派所属議員もそれぞれ不記載だった額を公表しています。しかし、裏金づくりをした目的や使い道などについては具体的に語られることはなく、不明のままです。不正な使い方はしていないと主張する議員もいますが、収支報告書に公開せず裏金化すること自体が違法行為です。そうしてねん出した資金の行方を曖昧にすることはできません。

 誰が政治資金収支報告書の偽造を発案し、系統的に行われるようになったのか。ため込まれた裏金は何にどのように使われたのか。事件の全容を徹底的に明らかにすることは、金権政治を一掃する上での大前提です。

 安倍晋三元首相が出身の安倍派は、改憲・大軍拡を推し進める自民党内の一大勢力でした。「伝統的な道徳心」を強調する同派議員が毎年多額の裏金をため込んでいた実態も今回改めて浮き彫りになっています。「美しい国」などの看板の裏で、違法行為を繰り返していた政治家の資格が問われます。

国会での徹底究明不可欠
 派閥の裏金は安倍派だけではありません。国民世論の批判を浴びる中で、岸田文雄首相は実態把握をすると表明し、自民党執行部は2日から安倍派・二階派・岸田派の約90人の議員を対象に事情聴取を始めました。これとは別に、自民党の全議員にアンケートを実施する方針も明らかにしました。しかし、身内の調査で真相を明らかにできるのかとの疑問が相次いでいます。国会が解明の役割を発揮しなくてはなりません。裏金づくりに関与した政治家全員の証人喚問を行うことが不可欠です。

 

 

 

岸田首相に「闇パーティー」疑惑浮上!地元・広島での「総理就任を祝う会」〜実質は岸田事務所仕切りなのに任意団体主催の形式で収支報告書に記載せず〜これがOKなら「派閥による政治資金パーティーの禁止」は骨抜きになる

 
重要なのは派閥解消ではない。政治資金の透明化だ。派閥解散に目を奪われて、政治改革の本筋が政治資金の透明化にあることを忘れてはならない。

岸田首相の闇パーティー疑惑は、政治改革の議論が本筋をそれ、派閥解消論で誤魔化されつつある現状に警鐘を鳴らしたと言えるだろう。

 
 
 
岸田文雄首相の「闇パーティー」疑惑が国会で浮上した。

立憲民主党の大西健介議員が追及したところによると、岸田首相の地元・広島で2022年6月、政財界関係者らが発起人となって任意団体をつくり「総理就任を祝う会」を開催。飲食の提供はなく、会費1万円で1100人が参加した。この任意団体の代表は、岸田文雄後援会と同一人物だという。

だが、会場の受付や経理は岸田事務所が担当した。会費収入のうち約320万円は、岸田首相が代表を務める自民党支部に寄付されたという。

岸田首相は、受付や経理を岸田事務所が担ったことについて「事務局から不慣れだとの相談を受け、私の事務所がお手伝いをした」と説明。「祝う会」を主催したのはあくまでも任意団体であり、政治資金パイティーではなく「純粋な祝賀会だ」と強調した。

これに対し、大西議員は実質的には岸田首相が開催した政治資金パーティーであり、収支報告書に記載していないのは不記載にあたると主張。「闇パーティー」として厳しく批判したのである。

岸田首相は「いわゆる派閥」の解消を打ち上げ、派閥からカネと人事の権能を奪うことで実効性を担保すると説明している。政策集団として存続することは認めつつ。①派閥による政治資金パーティーの禁止②派閥が人事の推薦名簿を提出することをやめるーーの2点を徹底することで「いわゆる派閥」は姿を消すという主張だ。

しかし、岸田首相自身の「闇パーティー」のように、「任意団体による祝賀会」の名目で集めた資金の一部を政治家側が受け取ることが許されるのなら、派閥が自ら政治資金パーティーを開催しなくても、任意団体を設立して事実上のパーティーを開催し、収入を派閥に寄付してもらえばよいことになる。

つまり、岸田首相は自らが打ち上げた派閥解消策の抜け道を、自ら実践していたということだ。

このような抜け道がたくさんあるから「派閥による政治資金パーティーの禁止」を打ち出してところで、自民党内の大勢は強く反対しないのである。

岸田首相が派閥解散を打ち上げた大きな狙いは、裏金事件で高まる政治資金の不透明さへの批判をかわすことにあった。しかし、自民党の歴史を紐解けば、派閥解消は何度も表明されながら、ほとぼりがさめれば復活することの繰り返しである。

重要なのは派閥解消ではない。政治資金の透明化だ。派閥解散に目を奪われて、政治改革の本筋が政治資金の透明化にあることを忘れてはならない。

岸田首相の闇パーティー疑惑は、政治改革の議論が本筋をそれ、派閥解消論で誤魔化されつつある現状に警鐘を鳴らしたと言えるだろう。