派閥による政治資金パーティーを開催できなくても、任意団体を主催者にすれば、パーティー収入を派閥メンバーの政治団体へ還流できる。資金集めは何とでもなるのだ。

 

 

 口では何とでも言える。岸田首相は1月31日の衆院代表質問で、自民党派閥の裏金事件について「わが党は解体的な出直しを図り、信頼回復に向けた取り組みを進めなければならない」などと答弁。ところが、舌の根も乾かぬうちに“岸田派復活論”が浮上している。

 そもそも、派閥解散は、派閥から人事とカネだけを切り離して政策集団に衣替えする「偽装解散」に過ぎない。それを裏付けるのが、岸田首相の最側近である木原誠二幹事長代理の発言だ。

 木原氏は30日、ユーチューブ番組で、岸田首相が自派閥の解散をいの一番にブチ上げた背景について「ご本人なりのケジメだったんでしょう」と指摘。解散を決めた岸田派が再結集する可能性を問われ、「それってやっぱりオカシイよね」と前置きしつつも、こう答えた。

「(すぐに再結集するのは)信頼を得られないだろうから、それなりに一定期間を置かないといけないし、集まり方や理念をもう一度構築する必要がある」

 ほとんど復活宣言に等しい。ただ、再結集しても表立ってカネを集められないが、抜け道は開いている。岸田首相の“闇パーティー”がいい例だ。

 

脱法パーティーで資金集め可能

   2022年6月に岸田首相の地元・広島で開かれた「内閣総理大臣就任を祝う会」をめぐり、主催した任意団体が事後、収益の一部を岸田首相が代表を務める自民党広島県第1選挙区支部に寄付。政治資金パーティーの実態を隠し、収支を分からなくする脱法パーティーだったとの疑惑が持たれている。岸田首相は29日の衆院予算委員会で、この問題を追及された。

 今後、派閥による政治資金パーティーを開催できなくても、任意団体を主催者にすれば、パーティー収入を派閥メンバーの政治団体へ還流できる。資金集めは何とでもなるのだ。

「岸田首相の最側近から“復活論”が出てくるとは、いかに『派閥解散』が名ばかりに過ぎないかを表しています。いくら『本来の政策集団に生まれ変わる』と訴えたところで、ポストやカネとは切っても切れないでしょう。そもそも、宏池会(岸田派)の理念は源流をたどれば『国民の合意を政策に反映する』です。本来のあるべき姿に戻るというのなら、まずは原点に立ち戻るべきであり、抜本的な政策の見直しが必要です」(政治評論家・本澤二郎氏)

 裏金問題は派閥解散や再結集が本筋ではない。まずは実態解明が先決だ。

 

 

「森元首相を証人に呼んで」五輪汚職事件・高橋治之被告側が仰天要求→証人尋問は行われるのか

 
 
 裏金問題で渦中の子分「安倍派5人衆」を離党や議員辞職させまじと、自民党執行部に精力的に働きかけた森喜朗元首相だが、1月31日に東京地裁で行われた裁判で「森氏を証人として法廷に」と仰天要求する場面があった。

 東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会スポンサー企業などから計約1億9800万円の賄賂を受け取ったとして、受託収賄罪に問われた大会組織委員会元理事・高橋治之被告の第3回公判でのことだ。

 昨年12月の初公判で検察側は、高橋被告が組織委会長だった森元首相からマーケティング担当理事としてスポンサー集めなどを任され、組織委に働きかける権限があったと陳述した。これに対し、高橋被告は全面無罪を主張し“戦闘モード”全開。31日も弁護側が冒頭陳述で、高橋被告にはスポンサー企業を募るなどの具体的な職務権限はなく、提供された資金は民間同士の取引の対価だと反論、「賄賂ではない」と否定した。


「驚きの発言があったのは、弁護側の冒頭陳述が終わった直後のことでした」

 こう話すのは、東京五輪汚職の関連裁判を傍聴し続けているスポーツライターの津田俊樹氏。さらに続ける。
 
「冒頭陳述は2時間以上あり、法廷内は緊張感のないシラけた空気に包まれていました。ところが、いったん、陳述を終えて座った弁護人が、『裁判長』と手を挙げ、話し出した。『被告を無罪にするため、森氏の証言が必要です。森氏の証言がベストエビデンス。検察は森氏を証人として呼んで欲しい。裁判長もそのように取り計らって下さい』という趣旨の発言をしたのです」

■任意での事情聴取どまり

 五輪汚職事件で森元首相は、参考人として検察に任意で事情聴取された。受託収賄で執行猶予付きの有罪判決が確定した紳士服大手「AOKIホールディングス」の青木拡憲前会長から「見舞金」として200万円を受け取ったことも判明している。組織委会長は理事以上の権限がありそうだが、司直の手は森元首相には及ばなかった。

 31日の法廷で、弁護側の「森氏を証人として呼んで」という要求に、検察側は「(森氏は)証言者の中に入っていません」と拒否したものの、その声は小さかったという。弁護側は閉廷後、記者団にあらためて「検察側が森氏を証人請求すべきだ」との見解を示した。さて、証人尋問は行われるのか。森元首相にはぜひ、法廷に出てきて欲しいものだ。