きょうの潮流
 

 今になって35年前の文書が取りざたされています。自民党の「政治改革大綱」。そこにはパーティーの規制や政治資金の透明化、派閥解消への決意が盛り込まれていました

 

▼発端は、リクルート子会社の未公開株が有力政治家らに賄賂としてばらまかれた「リクルート事件」でした。そのころ疑惑を追及していた本紙に「安倍、宮沢側がリ社に総裁選資金ねだる」との記事が載りました

 

▼「ポスト中曽根」を争った安倍晋太郎氏と宮沢喜一氏がリ社の会長から5千万円を提供されていたというものです。「表の資金ではまかなえない」「自民党代議士に配る裏工作資金がほしかった」。両者の秘書は供述調書でそう述べて

 

▼政治とカネ、メディアと権力の問題を追ってきた本紙のベテラン記者が著書に記しています。「カネで総裁のイス、ひいては首相の座を買う、そのカネを企業にたかる…自民党の金権腐敗の奥深さを改めて感じさせられる」と(藤沢忠明著『権力監視はどこへ』)

 

▼裏金疑惑の報道はすばらしい、権力を追及する姿勢が頼もしい―最近「赤旗」を購読したいと寄せられた声です。他紙の記者も驚嘆するほどの調査力、そのノウハウはベテランから若手記者へと受け継がれています

 

▼自民党の「政治改革」は昔も今もまやかしですが、より良い政治を求める国民と権力を監視するメディアがあるかぎり。購読申し込みにはこんな声も。「真実の報道、正義の報道、未来への報道を楽しみにしています」。きょう「赤旗」創刊96周年。

 

 

 自民党の「オウンゴール」によって大きなチャンスが生まれました。派閥による政権のたらい回しを許さず、自公政権を解散・総選挙に追い込み、政権交代を実現することで今年を良い年にしようではありませんか。後世において、あのとき希望の政治への扉が開かれ、歴史が変わったのだと言われるように。

 

 

 

「政治とカネ」疑惑の発覚と広がり


 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる「政治とカネ」の疑惑は、自民党と岸田政権を揺るがす大疑獄へと発展しました。物価高のもとで生活苦に追われる国民をしり目に、法の抜け穴を利用した不正な方法で私腹を肥やしてきた政治家への国民の怒りが爆発し、自民党と内閣に対する支持率は急落しました。
 

 この問題は自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)に所属する議員がパーティー券収入のノルマ超過分についてキックバック(還流)を受け、裏金化していたとされるものです。しかし、このような形で裏金を得ていたのは安倍派だけに限られず、志帥会(二階派)、宏池政策研究会(岸田派)、平成研究会(茂木派)、志公会(麻生派)という主要な5派閥すべてに共通する問題でした。
 

 なかでも安倍派は組織的に裏金づくりを行い、その額も過去5年間で5億円と大きく、所属議員の大半に還流しているだけでなく、政治資金収支報告書に記載しなくても良いと伝えて口止めするなど悪質なものでした。このため、岸田首相は所属閣僚4人の更迭に踏み切り、安倍派の党役員も交代しました。
 

 臨時国会閉幕を待って東京地検特捜部は捜査を本格化させ、立件も視野に一斉に事情聴取や家宅捜査を行いました。この事件は長年続いてきた自民党各派閥の悪弊を浮かび上がらせるものですが、このような裏金作りがいつから、どのような形でなされ、何に使われてきたのか、事実の解明と責任の追及が行われなければなりません。

 重篤化した自民党の宿痾

 「宿痾」というのは、長い間治らない慢性の病気のことです。自民党は以前からこのような宿痾を抱えており、それが重篤化して死に至る病となるリスクが高まっています。それは右傾化と金権化でした。この宿痾によって全身がむしばまれているのが安倍派です。
 

 右傾化という点では改憲と軍事大国化の先兵となり、安保3文書の作成と敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有、大軍拡・大増税や改憲発議に向けての政策転換をリードしてきました。金権化という点でも、キックバックによって組織的な裏金作りを行い、収支報告書に記載せず、金集めに狂奔していた姿が明らかになりました。
 

 このような病気を治癒するためには、世論による批判と法的な規制が欠かせません。根本的には政権交代によって罰し、解党的な出直しを迫る必要があります。自民党は30年以上も前に、派閥による資金調達の制限や党役員と閣僚らの派閥離脱、派閥解消の決意などを掲げた「政治改革大綱」を決定していたのですから。自主的な改革や努力に任せても「百年河清を俟つ」に等しいことは、今回の事件によっても明らかです。
 

 政治資金集めのパーティーは事実上の献金にほかなりません。政党助成金が導入されたとき、企業・団体献金は5年以内に禁止されることになっていました。その約束が守られていれば、このような二重取りで裏金を作る悪弊は生じなかったはずです。パーティーを始めとした企業・団体献金を禁止し、政治資金の流れを透明化するための制度改正が急がれます。
 

 捜査の結果、政治資金規正法違反や脱税ということで逮捕され有罪となれば、議員辞職は免れず、公民権停止となって選挙に出ることもできなくなります。国民の信頼を回復するためには、少なくとも裏金受領の有無と使途を進んで明らかにして派閥を解消し、国会での証人喚問に応ずることが必要でしょう。
 

 

 表紙を変えて延命させてはならない

 今回の裏金疑獄は、「令和のリクルート事件」だと言われます。リクルート事件は1988年に発覚した戦後最大の贈収賄事件で、関連会社の未公開株が政治家や官僚などに賄賂として贈られ、竹下登首相や宮澤喜一蔵相が辞任に追い込まれました。
 

 竹下後継として名前が上がった伊東正義総務会長は「表紙だけ変えても中身を変えなければダメだ」と言って要請を断りました。今回の裏金疑獄は、表紙だけ変えて生き延びてきた自民党がどれほど腐りきってしまったかを白日の下にさらしました。
 

 その後就任した宇野宗佑首相は女性スキャンダルで海部俊樹首相に交代し、参院選で自民党は過半数を失い「ネジレ国会」になります。さらに金丸ゼネコン汚職で政権を失い、政権復帰後も橋本龍太郎首相が参院選で敗北、後を継いだ小渕恵三首相が急死し、森喜朗首相に交代したものの「神の国」発言で支持率が急落して危機に陥りました。
 

 このとき、「自民党をぶっ壊す」と言って登場したのが小泉純一郎首相でしたが、結局は自民党を救うことになりました。その後も1年交代の短期政権が続き、総選挙で敗れて民主党政権に代わりますが、第2次安倍政権によって政権復帰に成功します。
 

 このように自民党は支配の危機に陥るたびに派閥間で政権をたらい回しにする「振り子の論理」によって目先を変えながら生き延びてきました。今回もこのような疑似政権交代で生き伸びようとするにちがいありません。
 

 それを許さず、追い込まれ解散で野党に政権を奪われた麻生首相の二の舞を演じさせなければなりません。表紙を変えても同じことを繰り返すにちがいないないということは、これまでの歴史が教えているのですから。

 唯一の活路は共闘による政権交代

 自民党の宿痾を治癒し「政治とカネ」の問題を解決するためには、政権から追い出して政治に緊張感を取り戻すことが必要です。そのための唯一の活路は市民と野党の共闘です。憲法を尊重し、平和・民主主義・人権を守り、国民要求の実現をめざす本格的な政権交代によって希望のもてる未来を実現しなければなりません。
 

 戦争法反対運動以来、野党共闘は多くの経験と実績を積み重ねてきました。これに危機感を募らせた自民党の激しい巻き返しに会って、一時は困難に直面しました。しかし、12月7日に市民連合を仲立ちとした政策要望会が開かれ、立憲・共産・れいわ・社民・参院会派「沖縄の風」の5党・会派が次期総選挙に向けて5項目の共通政策を確認しました。共闘の再構築に向けて重要な一歩が踏み出されたことになります。
 

 ここで強調したいのは、野党共闘に背を向けることは危機に陥った自民党を救うことになるということです。政治をまともなものに立て直すためには「政治とカネ」の問題で腐りきった自民党を権力の座から追い出して責任をとらせなければなりません。そのために必要で唯一可能な方法は、市民と野党が手を結ぶことです。
 

 「非自民非共産」を唱えて共闘から共産党を排除する動きがありますが、これは決定的な誤りです。今回の裏金疑獄発覚の発端は共産党の「しんぶん赤旗」日曜版のスクープでした。安倍元首相の「桜を見る会」や前夜祭の問題も共産党の田村智子副委員長の国会質問から明らかになりました。統一協会や勝共連合から敵視され、真っ向から対峙してきたのも、政党助成金を受け取らず「政治とカネ」の問題で最もクリーンなのも共産党です。
 

 「政治とカネ」の問題を正し自民党の金権腐敗政治を断罪する最適な有資格者は共産党ではありませんか。イデオロギー的な偏見や色眼鏡で見るのではなく、事実と歴史を直視するべきでしょう。立憲と共産の連携を軸に市民が結集する共闘を再建し、「受け皿」づくりによって活路を開くことこそ、2024年の最大の課題です。
 

 自民党の「オウンゴール」によって大きなチャンスが生まれました。派閥による政権のたらい回しを許さず、自公政権を解散・総選挙に追い込み、政権交代を実現することで今年を良い年にしようではありませんか。後世において、あのとき希望の政治への扉が開かれ、歴史が変わったのだと言われるように。(五十嵐仁)

 

 

 

主張

「赤旗」創刊96周年

国民に真実伝える役割さらに

 「しんぶん赤旗」はきょうで創刊96周年です。日本共産党の中央機関紙として1928年2月1日に発行されました。過酷な弾圧や戦争によって休刊・停刊を余儀なくされた時期もありましたが、反戦平和・国民主権・生活擁護の旗を掲げ続けました。

 

 岸田文雄政権の土台を揺るがす大問題に発展している自民党派閥の政治資金パーティー収入を巡る裏金事件は、2022年11月6日号の日曜版スクープが発端です。巨大メディアの多くが権力監視の機能を失う中、真実を伝える国民共同の新聞として、役割を果たす決意を新たにしています。

発端は日曜版のスクープ

 「裏金問題を最初に報道したのが貴紙だったので興味を持ちました」「パーティー券スクープでは拍手です」「応援しています。赤旗を読むのは初めてです」。昨年12月以降、赤旗編集局に期待と注目の声が相次いで寄せられています。

 

 岸田首相は昨年11月の衆院予算委員会で、岸田派のパーティー収入不記載について追及された際、「赤旗」報道に言及しました。自民党議員は「派閥パーティーの記事が党内で話題になっている」と述べ、野党幹部は「リクルート事件を上回る戦後最大のスクープだ」と話したといいます。日本共産党の塩川鉄也衆院議員が「昨年の臨時国会ほど『赤旗』という言葉が飛び交った国会はありませんでした」と1月の第29回党大会で実感を込めて発言しました。

 

 優れた報道を市民の側から評価することを目的に北海道を拠点に活動する市民団体「メディア・アンビシャス」は30日、日曜版のパーティー疑惑のスクープをメディア賞に選んだと発表しました。裏金事件は閣僚や自民党役員を辞任に追い込み、派閥の会計責任者らが起訴されました。今の通常国会では事件の全容解明と金権政治一掃が最大の課題となっています。

 

 政権を窮地に立たせる「赤旗」スクープは今回だけではありません。19年10月13日号の日曜版は、安倍晋三首相が公的行事「桜を見る会」に多くの支援者を招待し、飲ませ食わせしていた国政私物化の実態を詳細に報じました。

 

 当時の国会で日本共産党の田村智子副委員長が取り上げ、国政上の大問題になりました。「桜を見る会」の一連の報道で日曜版は20年の日本ジャーナリスト会議(JCJ)大賞を受賞しました。

 

 「桜を見る会」は大手メディアも取材しましたが、公的行事の私物化ととらえる視点を欠いていました。政治資金パーティーについても同様です。大手メディアはパーティーでの政治家の発言は報じますが、パーティーが多額の企業・団体献金を脱法的に集める手段にされている点には迫りません。国民目線で「おかしい」と感じ、粘り強く調査し報じる姿勢があるかどうかが決定的な違いです。

勇気と希望届ける紙面に

 権力をチェックし不正をただすのは、ジャーナリズム本来の役割です。「赤旗」がその力を発揮できるのは、不屈に101年間たたかってきた日本共産党の機関紙だからです。国民の利益を守ることを第一に勇気と希望を届ける紙面づくりに一層力を尽くします。

 

 多くの人に「赤旗」を読んでいただけるよう心から呼びかけます。力を合わせ、自民党政治を終わらせ日本の未来を開きましょう。