茂木派の担当者は「代表者欄に書くべきは、派閥の事務責任者である事務総長名ではないか」と話す。今国会では、収支報告書の不記載などの処罰対象を会計責任者だけでなく、議員にも広げる「連座制」の導入も議論される見通し。収支報告書の正確な記載を目指して国会議員の責任を明確化することは、代表者欄の実態に即した記載にもつながるカギになりそうだ。

 

 

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件で、自民6派閥のうち、政治資金規正法違反で立件された安倍、岸田、二階の3派閥は、そろって政治資金収支報告書の代表者欄に会計責任者の名前を載せていた。立件されなかった麻生、茂木、森山の3派閥は、いずれも派閥会長を務める自民党幹部の名前を記載。派閥間で対応が異なっている。(大杉はるか)

◆岸田派「前任者の時からそうなっていた」
 2022年の安倍派の収支報告書の代表者欄には、「松本淳一郎」とあった。パーティー収入を所属議員へ還流した分などを記載せず、政治資金規正法違反(虚偽記入)の罪で在宅起訴された会計責任者だ。同じく還流分を記載しなかった二階派、パーティー収入などを記載しなかった岸田派も、代表者欄には会計責任者名が記載されていた。

 

 

 岸田派の担当者は「前会計責任者の時からそうなっていたから踏襲しただけ。特段、指摘を受けたこともない」と気に留める様子はない。なぜなら、政治資金規正法上、収支報告書の代表者欄や会計責任者欄の内容に関する詳しい規定がないためだ。

 総務省によると、政治団体設立時などに届け出た名前が記載されていればよく、「代表者が実際の代表なのかどうかなど、こちらで審査することはない」(担当者)という。

◆ルール上は問題ないかもしれないが、実態を反映している?
 ルール上問題はなさそうだが、派閥の代表者が非議員の会計責任者というのは、実態とかけ離れている。立憲民主党の岡田克也幹事長は会見で「常識で考えたら、その派閥の会長か事務総長でなければおかしいと思う」と指摘。「この一つ取っても、まともに法律を守っていこうという姿勢が見えない」と批判する。

 一方、立件されなかった麻生、茂木、森山の3派閥の収支報告書の代表者欄には、「麻生太郎」「茂木敏充」「森山裕」と会長の国会議員名。派閥の実態に即した記載だった。

 

 代表者欄の記載内容に関するルールがあいまいなために対応の違いが生じたと言えそうだが、どうあるべきなのか。

 茂木派の担当者は「代表者欄に書くべきは、派閥の事務責任者である事務総長名ではないか」と話す。今国会では、収支報告書の不記載などの処罰対象を会計責任者だけでなく、議員にも広げる「連座制」の導入も議論される見通し。収支報告書の正確な記載を目指して国会議員の責任を明確化することは、代表者欄の実態に即した記載にもつながるカギになりそうだ。

 

 

二階俊博氏の国会招致要求 政策活動費50億円支出「こんな金額どうやって使うのか」立民猛追及

 
 
立憲民主党は29日の衆院予算委員会で、自民党派閥をめぐる裏金事件で秘書が立件された自民党の二階俊博元幹事長(84)を参考人招致するよう求めた。

二階氏をめぐっては、政党が政治家に支出し、使途を明かさなくてもいい「政策活動費」が、幹事長時代の5年間に50億円近くが支出されていたことが明らかになっており、立民はこの問題を厳しく追及。山井和則衆院議員は「二階事務所の秘書も立件されている。巨額の50億を超える政活費、脱税の可能性があるのではないか。さまざまな深刻な問題をはらんでいる」とした上で、予算委員会への参考人招致を求めた。

これに先立ち、同党の階猛衆院議員は「政策活動費を1人の議員に50億円も渡せば、使い残しで蓄財し、脱税している可能性も高いように思う。しっかり調査して国会に報告してほしい」と指摘。これに対し、岸田文雄首相は「政治活動のために支出した経費を差し引いた後、残高が生じていた場合は確定申告の必要があるのはその通り。私自身も支給された政策活動費は全額政治活動に当てている」と述べたが、階氏は「総理のことは聞いていない。二階さんのように50億円以上、こんな金額をどうやって使うのか。やましいことがないなら速やかに使途を公表すれば疑惑は晴れる。関係する議員については全部調べて、公表して欲しい」と情報公開を求めた。

使途が明かされない「政策活動費」については、野党から廃止を求める声が強まっている。しかし岸田首相は「政治活動の自由と国民の知る権利とのバランスの中で議論が行われ、今の扱いになった。各党、各会派は、全国会議員が共通のルールで内容を明らかにする取り組みが必要だ」と述べるにとどめた。

階氏は「政治活動の自由にも、ほどがある。バランスは取れていない。50億なんて1人の政治家に渡し、しかもまったく使い道を明らかにしないでいいというのは常識外れだ」と指摘し、廃止するよう求めたが、首相は「政治活動の自由と国民の知る権利のバランスを考えることが重要」という答弁を何度も繰り返し、廃止は明言しなかった。
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