労使ともに賃上げムード…「構造的な賃上げ」定着できるか 春闘が実質的にスタート 中小企業への配慮も

 
経団連と連合が手を結んでの賃上げなんて、大企業優先だって事は鮮明だ。芳野友子は「中小企業、零細企業、未組織の連携を」と言葉にするが、やっていることは正反対。インボイス方式導入を早くやれと政府にハッパをかけたのも芳野友子。未組織労働者虐めの先鋒を走るのである。ストライキという労働者の権利を自ら放棄しているのが連合幹部。組合貴族と言われる所以だ。労働組合は「要求で団結する」そこを大きく逸脱しているのが今の連合である。情け無い実に情け無い。歯ぎしりする思いだ!
 
 
 主要企業の経営側と労働組合側が集まる経団連労使フォーラムが24日、東京都内で開かれた。2024年春闘の労使交渉が事実上スタート。3月中旬の集中回答日に向け、賃上げや働き方全般を話し合っていく。

◆実質賃金はマイナス続く
 今春闘の焦点は、30年ぶりの高い賃上げ率(経団連集計で3.99%)となった昨年の流れを維持し、継続的に賃金が上がる「構造的な賃上げ」の足固めをできるかだ。

 昨年の高い賃上げは大手企業中心にとどまり、物価上昇分をカバーできずに実質賃金はマイナスが続いている。物価に負けない賃上げとするには、基本給の底上げとなるベースアップ(ベア)の水準がカギとなる。連合は「3%以上のベア(定昇込みで5%以上)」の要求を掲げている。

◆「ベアは有力な選択肢」企業に呼びかけ
 フォーラムでは、経団連の十倉雅和会長が海外出張中のためビデオメッセージで「動き出した歯車を今年以降も加速できるかに、日本経済の未来がかかっている」と昨年を上回る賃上げに意欲を示した。

 経団連は連合の要求に一定の理解を示しており「物価上昇に鑑みれば、定昇に加えベアは有力な選択肢となる」と会員企業に前向きな対応を呼びかけている。

◆「人への投資」好循環生まれるか
 連合の芳野友子会長は「賃金水準の停滞は、生産性の向上に見合った成果配分がなされてこなかったのが一因」と指摘。企業の稼ぎを人件費に回す割合「労働分配率」を高めることで、「人への投資」が起点となり、所得が増えて消費が拡大し、企業の利益が向上して、さらなる「人への投資」につながる好循環が生まれると訴えた。
 また、中小企業への賃上げ波及が欠かせないとの認識を労使で共有。中小企業が原材料の上昇分だけでなく、賃上げの原資となる人件費上昇分も価格に転嫁できるよう大手企業で後押ししていくことを確認した。(久原穏)
 
 

連合・経団連どちらも「賃上げを」 物価上昇を上回るか 春闘幕開け

 
 
 経済界と労働組合の代表が賃上げなどについて話す経団連主催の「労使フォーラム」が24日、東京都内で開かれた。物価が下がり続けるデフレを脱却して、賃金や物価が安定して上がる社会に向け、労使がそろって賃上げを唱える異例の春闘が事実上スタートした。
 
 労働組合の中央組織・連合の芳野友子会長はこの日、「今春闘は、経済も賃金も物価も、安定的に上昇する経済社会へとステージ転換を確実に進める正念場だ」と強調した。連合は今年の春闘に向けた統一要求の賃上げ目標を「5%以上を目安」と設定。昨年の「5%程度」より表現を強め、傘下の産業別労働組合も要求額を過去最高とする方針が相次ぐ。

 一方、中国訪問中でビデオメッセージとなった経団連の十倉雅和会長は「物価動向を重視し、ベースアップを念頭に置きながら、できる限りの賃金引き上げの検討、実施を」と呼びかけた。
 
 

賃上げ減税が人手不足倒産を増やす悲しき連鎖。労働者の9割が勤める中小零細企業は虫の息=斎藤満

 
 
産業界で大企業を中心に賃上げのムードが高まっています。第一生命は初任給の16%引き上げに7%の賃上げを表明、松屋は年収を10%引き上げると言います。政府の賃上げ減税(法人税)もあり、今年の春闘は昨年の3.58%(定昇込み)を上回る可能性が高まっています。

しかし、大幅な賃上げができる企業と、賃上げ分を価格転嫁できずに、賃上げにも慎重な企業もあり、明暗が分かれそうです。そして明らかに賃上げ格差が明示されれば、人はより高い賃金の企業に流れます。人手不足が深刻な企業も現れ、人手不足倒産が多発する可能性があります。その受け皿作りも考える必要があります。(『 マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
 
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

7%賃上げ表明企業続々
大企業を中心に、24年度に7%の賃上げを表明する企業が増えています。政府の賃上げ推進策を受けて昨年秋、真っ先にサントリー、明治安田生命が7%賃上げを表明しました。

政府は賃上げ推進税制を組み、7%以上の賃上げを行った企業に対して、大企業では最大35%の法人税控除を打ち出しました。7%という水準がカギとなります。


これに追随するように、最近では第一生命が初任給を16%引き上げるほか、賃上げについても7%の引き上げを表明しました。またイオンは40万人のパートの時給をこの春から7%引き上げることにしました。そして松屋は職員の年収を10%引き上げると言います。

大企業を中心に7%以上の賃上げを表明するところが増え、この調子なら昨年の賃上げ率3.58%を上回る可能性が高まっています。

大企業には賃上げ余力大
実際、大企業については賃上げ余力が高まっています。

財務省の「法人企業統計」によると、昨年7-9月期の資本金1,000万円以上企業の売上高経常利益率は6.5%と、1年前の5.7%からさらに高まり、最高益を更新する企業が増えています。

そしてもう1つ、企業の利益準備金、つまり「内部留保」は9月末で568兆円に上ります。これは日本のGDPの1年分にほぼ匹敵する規模です。

企業の利益が内部留保という形で大きく積みあがっているわけで、それだけ人件費に振り分ける余力が大きくなっていることになります。

税金で賃上げの一石二鳥
人手不足が深刻化する今日、高い賃上げを表明することは、質の良い労働力を確保するうえで大きな武器となります。

しかし、これは人件費増というコスト高になるので、どの企業でもとれる策ではありません。ところが、岸田政権が賃上げ促進税制で後押しをすることになったので、ここに大きな道が開けることになりました。

今回、7%の賃上げを表明する企業が多いのは、政府の賃上げ税制と深く関わっているとみられます。つまり、7%以上の賃上げをした企業には最大35%の税金が控除されるので、多少無理をしても7%の賃上げをすれば税金で賃上げの一部を賄うことができるわけです。

つまり、高い賃上げ表明で、雇用確保への広告効果と、法人税減税の利益との「一石二鳥」となります。
 
賃上げどころでない企業も
しかし、この賃上げ推進税制にも問題があります。

賃上げのために法人税を減額するのですが、法人税収が減る分を歳出カットでバランスを取ればよいのですが、歳出は拡大するばかりです。そうなると法人税が減る分を所得税の増税か社会保険料の引き上げなどで補う必要が出てきます。

そうなると、7%の賃上げで喜んだ労働者も、結局は自分の税金支払い増によって賃上げを実現したようなもので、実質的な手取り増はそれだけ減ります。

それよりも問題なのは、法人税減税の支援を受けられない企業、およびその労働者です。

すべての企業が減税措置を受けられるわけではありません。つまり、賃上げどころでない企業や法人税を納めるだけの利益を上げていない企業も多く、賃上げできる企業との条件格差が一段と拡大します。

しかもそれを政府が税制によってあおる形になることです。

税の優遇を得て質の良い労働力を確保できる企業と、賃上げも税の優遇もなく、低賃金で労働力が取れない企業との格差が開きます。新卒はもちろん、中途採用においても労働条件の良い企業に人は流れます。

その結果、質の良い労働力は賃金条件の良い大企業に集中し、中小零細企業はますます人手不足が深刻になり、最後には「人手不足倒産」が増える可能性があります。

ある意味では存続がぎりぎりの経営が厳しい状況の企業に対して、政府が税制によって後ろから蹴とばすようなもので、政策的に「ゾンビ企業」を淘汰し、日本経済を効率化するための荒療治、とみることもできますが、雇用の9割は中小零細企業に勤めています。

その多くが失業の危機に追いやられるわけで、政治的にこれを後押しすることがよいのか、議論の余地があります。

人手不足倒産は前年比86%増
人手不足倒産はすでに増えています。帝国データバンクによると、昨年の人手不足倒産は前年比86%増の260件に上っています。物流や建設業で特に多くなっています。

これが今年はさらに拡大すると見込まれます。

まずこの4月から時間外勤務の規制が始まり、物流業界には大きな負担となります。そこへ春闘賃上げ率が昨年以上に大きな格差をもたらす可能性があるからです。
 
労働移動と倒産企業の雇用吸収
幸い、今日の日本では中小企業だけでなく大企業でも人手不足が深刻な状況にあるので、倒産で職を失った労働者にも就職のチャンスは少なくありません。

それでもこれまで蓄積してきた技術を新しい職場で生かせるかわかりません。特に高齢の労働者が職を失うと、新しい企業のニーズに応えられるのか、不安が大きくなると思われます。

政府は法人向けに新しい技術を要する業務への配置転換を支援するためのリスキリングを進めています。しかし、今後は社内教育を超えて、転職を支援したり、失職者に資格取得支援や再就職しやすくするためのリスキリングも進め、倒産による失業問題を円滑に吸収する必要があります。

少なくとも政府による賃上げ税制が人手不足倒産を引き起こすなら、その後始末も政府の責任になります。
 
 
主張
24年国民春闘

 
賃上げへ労組の役割一層高く
 
 物価高騰下での暮らしを守るためにも、日本経済の「失われた30年」からの脱却のためにも、2024年国民春闘での大幅な賃上げが必要です。岸田文雄政権や財界も、世論に押され、賃上げを口にしています。本格的な賃上げと諸要求の実現へさらに取り組みを進めなくてはなりません。粘り強くたたかいを進める労働組合の役割が一層重要になっています。

政治を動かす世論が重要
 経団連は春闘方針「経営労働政策特別委員会報告」(16日公表)で、23年の賃上げは「30年ぶり」の高水準だったと自賛し、「昨年以上の熱量と決意をもって物価上昇に負けない賃金引上げを目指す」としました。しかし、実質賃金は20カ月連続のマイナスであり、誇れる内容ではありません。

 岸田首相は「コストカット型経済」を変えると言いますが、その手段は「供給力の強化」という名の大企業支援です。

 実質賃金の引き上げ、賃金の底上げと格差是正をかちとるには、労働組合のイニシアチブの発揮こそ求められます。全労連・国民春闘共闘は、23年春闘で22年春闘の3倍規模のストライキを実施し、それを力に23年ぶりに6000円台の賃上げをかちとりました。24年春闘でも、たたかう労働組合の奮闘が期待されます。

 ストライキは、生活できる賃金という要求を改めて職場で共有し、その正当性に確信を持ち、とことんこだわり、団結を固めなければ決行できません。ストライキを背景にしてこそ、労働組合の本気度を示した交渉ができます。

 同時に、世論の力で政治を動かすことがどうしても必要です。

 ▽最低賃金を全国一律で直ちに時給1500円に引き上げる▽公定価格であるケア労働者の賃金を一般労働者並みに引き上げる▽非正規労働者の賃金と労働条件を抜本的に改善する▽男女の賃金格差を是正する▽中小企業で働く労働者の賃金を引き上げる―これを実現するために政治が責任を果たさなければなりません。実質賃金を引き上げるために、物価を下げる消費税減税は急務です。

 日本共産党の「経済再生プラン」は、政治の責任で賃上げと待遇改善を進める具体的方策を提案しています。大企業の内部留保は510兆円を超え、手元資金は100兆円規模にふくらんでいます。賃上げの原資は十分あります。内部留保への時限的課税で財源をつくり、中小企業の賃上げを直接支援することが不可欠です。賃上げに回した分を課税対象から除けば大企業の賃上げも促進できます。

 世論喚起の上でも、地域春闘の役割はますます重要です。新自由主義で破壊された地域社会と公共を取り戻すたたかいも24春闘の大きな柱です。

平和と政治転換の課題も
 世界でも日本でも「戦争か平和か」が鋭く問われています。岸田政権は日米軍事同盟強化と大軍拡にのめりこんでいます。大軍拡路線は、国民生活破壊の大増税路線と一体です。平和の担い手として労働組合が力を発揮する時です。

 億単位の裏金疑惑にまみれている自民党に国民の怒りが沸騰しています。追い詰められている岸田政権を打倒し、自民党政治そのものを終わらせる国民的な大運動と結んで24年春闘をたたかうことを呼びかけます。