春闘、事実上スタート 経団連会長「物価高に負けない賃上げを」

 
粘り強くたたかいを進める労働組合の役割が一層重要になっています。しかし連合は戦うところか政権に頭を下げて賃上げをお願いする…。経団連はニンマリ『組みやすい相手だ』とでも言うように連合が言い出す前にいっちゃった状態「物価に負けない賃上げを」。茶番劇は辞めて本勝負にさせるには組合員の切実な声が必要だ。『過去最高の留保金を労働者に還元しろ!」
 
 
 
 主要企業の労使の代表者らが意見を交わす経団連の労使フォーラムが24日午前、東京都内で始まり、2024年春闘が事実上スタートした。

 経団連の十倉雅和会長は海外出張中のためビデオメッセージであいさつし「昨年以上の熱量と決意をもって物価上昇に負けない賃金引き上げを目指すことが、経団連・企業の社会的責務だと考えている」と強調。

 「特に物価動向を重視し、ベースアップ(ベア)を念頭に置きながら、自社に適した方法で、できる限りの賃金引き上げの検討・実施をお願いする」と述べ、基本給を底上げするベアを含めた大幅な賃上げを呼びかけた。

 午後には連合の芳野友子会長が講演し、24年春闘の要求方針を説明する。春闘は3月中旬の集中回答日で山場を迎える。【町野幸】
 
 
主張
24年国民春闘

 
賃上げへ労組の役割一層高く
 
 物価高騰下での暮らしを守るためにも、日本経済の「失われた30年」からの脱却のためにも、2024年国民春闘での大幅な賃上げが必要です。岸田文雄政権や財界も、世論に押され、賃上げを口にしています。本格的な賃上げと諸要求の実現へさらに取り組みを進めなくてはなりません。粘り強くたたかいを進める労働組合の役割が一層重要になっています。

政治を動かす世論が重要
 経団連は春闘方針「経営労働政策特別委員会報告」(16日公表)で、23年の賃上げは「30年ぶり」の高水準だったと自賛し、「昨年以上の熱量と決意をもって物価上昇に負けない賃金引上げを目指す」としました。しかし、実質賃金は20カ月連続のマイナスであり、誇れる内容ではありません。

 岸田首相は「コストカット型経済」を変えると言いますが、その手段は「供給力の強化」という名の大企業支援です。

 実質賃金の引き上げ、賃金の底上げと格差是正をかちとるには、労働組合のイニシアチブの発揮こそ求められます。全労連・国民春闘共闘は、23年春闘で22年春闘の3倍規模のストライキを実施し、それを力に23年ぶりに6000円台の賃上げをかちとりました。24年春闘でも、たたかう労働組合の奮闘が期待されます。

 ストライキは、生活できる賃金という要求を改めて職場で共有し、その正当性に確信を持ち、とことんこだわり、団結を固めなければ決行できません。ストライキを背景にしてこそ、労働組合の本気度を示した交渉ができます。

 同時に、世論の力で政治を動かすことがどうしても必要です。

 ▽最低賃金を全国一律で直ちに時給1500円に引き上げる▽公定価格であるケア労働者の賃金を一般労働者並みに引き上げる▽非正規労働者の賃金と労働条件を抜本的に改善する▽男女の賃金格差を是正する▽中小企業で働く労働者の賃金を引き上げる―これを実現するために政治が責任を果たさなければなりません。実質賃金を引き上げるために、物価を下げる消費税減税は急務です。

 日本共産党の「経済再生プラン」は、政治の責任で賃上げと待遇改善を進める具体的方策を提案しています。大企業の内部留保は510兆円を超え、手元資金は100兆円規模にふくらんでいます。賃上げの原資は十分あります。内部留保への時限的課税で財源をつくり、中小企業の賃上げを直接支援することが不可欠です。賃上げに回した分を課税対象から除けば大企業の賃上げも促進できます。

 世論喚起の上でも、地域春闘の役割はますます重要です。新自由主義で破壊された地域社会と公共を取り戻すたたかいも24春闘の大きな柱です。

平和と政治転換の課題も
 世界でも日本でも「戦争か平和か」が鋭く問われています。岸田政権は日米軍事同盟強化と大軍拡にのめりこんでいます。大軍拡路線は、国民生活破壊の大増税路線と一体です。平和の担い手として労働組合が力を発揮する時です。

 億単位の裏金疑惑にまみれている自民党に国民の怒りが沸騰しています。追い詰められている岸田政権を打倒し、自民党政治そのものを終わらせる国民的な大運動と結んで24年春闘をたたかうことを呼びかけます。


岸田首相の頼みは「経済」…実質賃金プラスをしくじれば「6月退陣」に現実味
 
 
 支持率が過去最低更新ラッシュの低迷する岸田政権。裏金問題を巡り、起死回生で打ち出した派閥解消も麻生派と茂木派が存続の方向で、“ハーフ&ハーフ”になってしまった。朝日新聞の世論調査(20、21日実施)では、派閥解散が「信頼回復につながらない」は72%に上った。

 何をやってもうまくいかない中、頼みにするのが経済だ。

 岸田首相は22日の「政労使会議」で労使の代表らに「昨年を上回る賃上げをお願いする」と訴えた。

「実質賃金は20カ月連続マイナスが続いていますが、株高、大幅な賃上げ、インフレの鈍化などの好材料がある。岸田首相は今年中に実質賃金をプラスに転じさせ、何とか政権を延命させたいと考えているようです」(霞が関関係者)


 22日の日経平均終値は前週末比583円高の3万6546円で、終値としては約34年ぶりに3万6000円台に乗せた。内閣支持率の低迷に反比例し、株価はうなぎ上り。今年に入ってからの上げ幅はすでに3000円超だ。株価だけを見れば、日本経済の見通しは明るく見える。

 春闘も大企業からは景気のいい声が聞こえる。今年の春闘賃上げ率(資本金10億円以上かつ従業員1000人以上の労働組合のある企業364社)の民間予測平均は3.85%。昨年の3.60%を上回る見通しだ。

 インフレも鈍化傾向だ。12月の全国消費者物価指数は生鮮食品を除く総合指数が前年同月比で2.3%の上昇となり、2カ月連続、伸び率は縮小している。
 
 
中小の賃上げ苦戦としつこいインフレ

   これなら実質賃金プラスに手が届きそうな感じがするが、現実は甘くない。

「大企業は今春闘も昨年に続き、高水準の賃上げを実現するでしょう。しかし、中小企業は苦しい。人手確保のため、昨年は無理して賃金アップしたが、今年は難しいとの声をよく聞きます」(経済ジャーナリスト・井上学氏)

 城南信用金庫と東京新聞のアンケート(都内と神奈川県内の城南信金と取引がある中小企業832社に聞き取り)によると、約35%が「賃上げの予定なし」と回答。「予定あり」の27%を上回った。賃上げしない理由として6割近くが「賃上げの原資がない」だった。

 インフレの収束も怪しい。消費者物価指数は2%台に落ち着いたように見えるが、カラクリがある。昨年12月は電気代がマイナス0.87%、ガス代がマイナス0.26%と、上昇率を大きく押し下げていたからだ。

「電気代とガス代の大幅なマイナスは、政府の補助金が大きく影響しています。今年5月まで延長されましたが、その後、打ち切られれば、前年比の物価上昇率は押し上げられることになるでしょう」(総務省物価統計室)

 厚労省の毎月勤労統計によると、昨年11月の実質賃金(速報値)は3.0%減と深刻だ。今年の春闘を経ても、賃金上昇がインフレ率に遠く及ばない事態が続けば、賃上げ結果が反映される6月の岸田退陣が現実味を帯びる。