「性被害告発に実名を明かした理由」川井研一郎さんの告白 ジャニー喜多川氏の3000円を断ると連絡は途切れた

 

ここなんですよ!

 『スマイルアップに救済を求めても、自分で告知しなければ世間に知られることはない。それでも告白するのはなぜなのか。泣き寝入りせず、声を上げ続けることで、次の誰かを救える何かになると信じているからだ。信頼していた環境に追い込まれたら身も心も落ちてしまう。被害に苦しむ人をどうか追い込まないでほしい。』

 

 

 

 「ジャニーズ性被害問題被害者の会」の川井研一郎さん(55)は18歳の時、履歴書を受け取ったジャニーズ事務所(現スマイルアップ)の創業者・故ジャニー喜多川氏から電話があり、その日の夜、合宿所で被害に遭った。顔は出さずに仮名で活動していたが、1月15日の東京・永田町での会見で「顔をさらし、実名で告白しよう」とマスクを取った。なぜ実名での告白に踏み切ったのか。(聞き手・望月衣塑子)

◆映画で「マッチの弟役」の経験
 中学時代は児童劇団に所属し、映画「ハイティーン・ブギ」で主演の近藤真彦さんの弟役を務めた。俳優になるための専門学校に行くつもりだったが、両親が体調を崩して年間授業料50万円が払えなくなり、バイトなどをしながらぶらぶらしていた。

 18歳になった時、「やはり役者で生きていこう」とジャニーズ事務所に履歴書を送った。すると、喜多川氏から「大抵の履歴書は捨てるけど『マッチの弟役をやっていた』と見て連絡した。これから川崎のスタジオに来られるか」と、自宅に電話があった。

 ちょうどTBSの歌番組「ザ・ベストテン」を見ていた時でびっくりしたが、すぐに向かった。スタジオに着くと、デビュー前の光GENJIのメンバーがローラースケートで滑って踊る様子を撮影していた。

 喜多川氏が「何やりたいの」と聞いてきたので、「歌や踊りはやりたくないです」と生意気にも答えた。すると「秋から東山(紀之氏)のドラマやるからそれに出なよ。それまで東山の運転手をやっていればいいよ」と言われた。

 自分の人生が開けたと思い、「ありがとうございます!」と思わず大きな声で言ったのを覚えている。

◆みんなが雑魚寝しているのに「君はそこのベッドで寝て」
 その後、喜多川氏の運転する車で、元光GENJIメンバーの諸星和己さんら2人と都内の合宿所に向かった。着くと喜多川氏は「おなかすいたろ。フルーツ食べるか、おすしはいるか」と優しく言った。直後、所属タレントが交通事故を起こしたと言って対応に追われ外出。喜多川氏は諸星さんに「すしを取ってあげてな」と、指示していた。
 リビングでは、東山氏があぐらをかきゲームをしていたが「すし食べたい」と言うと、諸星さんが注文し皆で食べた。

 おなかいっぱいになり、疲れもあって眠くなってくると、他のみんなが雑魚寝する中で、諸星さんが一つだけあったベッドを指さし「ああ、君はそこのベッドで寝て」と言った。1人だけベッドでいいのかなと思ったが、緊張もあり疲れていたので、あっという間に寝入ってしまった。

◆「昨夜の対価として3000円なのか」
 その夜、陰部をいじられているような気がして目覚めると、喜多川氏が自分の股間をもてあそんでいた。怖かったが、身動きがとれず、疲れていたためそのまま寝てしまった。

 翌朝、喜多川氏から何度もシャワーを浴びるよう勧められ、「ご飯を食べていけ」としきりに言ってきた。

 昨夜のことがあり気持ち悪く、とにかく早く帰りたかったが、言われたようにシャワーを浴び、出されたビーフシチューを食べた。朝からビーフシチューなんてすごい場所だと思った。

 朝食を食べてすぐ帰ろうとすると、喜多川氏が追ってきて「また電話するね」と言いながら3000円を手渡してきた。「昨夜の対価として3000円なのか」とゾッとした。「いいです。要らないです」と強く断って出て行くと、喜多川氏から電話が来ることはなかった。

◆「告発は、私たちにとって命懸けの行動だと理解してほしい」
 性加害に耐えていたら、自分の将来はどうなっていたのだろう。そう思う反面、性加害に耐え続けなければ役者ができないならやめて良かったとも思う。あの時受けた心の傷はいまも癒えていない。

 昨年9月、事務所の被害者救済委員会に被害状況を書いて送ると「事務所に所属した事実が確認できなかった」と返事が来た。自分の被害や存在が認められないという苦痛は厳しい。

 事務所に何度かけあっても何も進まず、何を言っても効果がない。無力な人間は泣き寝入りしかないのかと落ち込み、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断が出るまでに精神的な状況が悪化した。

 「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の平本淳也代表が何度もかけあい、事務所の弁護士と2時間対面し、被害の状況や自分の思いを伝えることができた。藤島ジュリー景子前社長や東山社長にも伝えたいことがあったが、その場に来たのは、事務所の弁護士だけだった。

 補償の対象外とされていたことが一転し、面談できたことで落ち着きが取り戻せたが、自分のような人があと何人いるのかと考えると悲しい。「所属していなかった人にも勇気や希望を与えられたらと、顔を出し、実名で声を上げることを決めた。勇気を振り絞って告発するのは、私たちにとって命懸けの行動だということを理解してほしい」と語る。

◆会社の上司らが吹聴「あいつはジャニーにやられている」
 被害申し入れ直後の昨年9月、フラッシュバックに襲われた。気持ちの落ち込みが激しくなり、会社の上司たちに「自分も被害者でフラッシュバックで気持ちが悪く、仕事で迷惑をかけてしまうかもしれない。申し訳ない」と打ち明けた。

 すると、上司たちは驚く行動に出た。自分の性被害を本社に連絡し、社内で共有。「あいつはジャニーにやられている」と上司や幹部が言い触らしているという話も聞かされ、ショックを受けた。迷惑をかけまいと上司に報告したのがそんなにおかしいのか。

◆社内だけでなく社外にも言い触らしたのか
 会社の仲間がよく使う行きつけのスナックでは、ママが「ジャニーズから金ふんだくってみんなで酒飲もうぜ!」と大声で叫んでいた。ママの叫びを聞いた時、一瞬何が起きたか分からずぼうぜんとした。

 上司たちは社内だけでなく、社外にも言い触らしていたのか。この会社の幹部や社員は一体なんなのか。これほどひどい目に遭うとは思わなかった。その後、上司からは「仕事は無理だろ。辞めた方がいいよ」とも言われた。傷病手当を受けることになったが、退職に追い込まれそうだ。

◆被害者が直面する誹謗中傷の恐怖
 相応の年をとった自分のような男が性被害の告白をすると、会社に言い触らされるのか。警察にも相談した。こういう事例があるからこそ被害者は何も言えなくなる。何年も何十年も黙ったままにされる。話を聞いてもらえたらどれだけ救われることか。信頼して話した結果、病気が重くなり、居場所もなくなった。

 女性だったら、学校や塾で子どもがこんなことを言われたらどうだろうか。被害者は、こうやってひたすら誹謗(ひぼう)中傷の恐怖に抑え込まれている。

 スマイルアップに救済を求めても、自分で告知しなければ世間に知られることはない。それでも告白するのはなぜなのか。泣き寝入りせず、声を上げ続けることで、次の誰かを救える何かになると信じているからだ。信頼していた環境に追い込まれたら身も心も落ちてしまう。被害に苦しむ人をどうか追い込まないでほしい。

◆勤務先「今後、調査して対応」 スマイルアップ「コメント控える」
 川井さんの勤務先の担当者は本紙の取材に、「喜多川氏から性加害を受け、その後遺症などで苦しんでいると報告を受けた。再び仕事ができるよう傷病手当を出す予定で元気になって戻ってきてほしい。『上司が言い触らした』『スナックのママも知っていた』などの話は、まだ確認できておらず、今後、調査して対応するつもりだ」と答えた。

 スマイルアップは本紙の取材に「個別の告発内容についてはコメントを控える。在籍実績が確認できない方も、被害者救済委員会と相談しながら、個別に被害申告の内容を検討し、補償すべき事案は補償していきます」と回答した。

 


 

 

ジャニーズ性加害問題の止まない誹謗中傷と二次被害…実名告発した会社員男性の悲痛な告白

 

被害者を中傷誹謗する奴を許さない。絶対に許さなという姿勢で共に闘い抜く必要がある。被害者は何ら痛みを更に大きくさせられる要因はない。あるとしたら加害者側であって、こんな卑劣な行いは絶対に許してならない。もし貴方が同じ被害を受けたらという思考回路を持っていない人間が存在する。怖い話だ。

 

 

ジャニー喜多川氏による未曽有の連続性加害で、またぞろ2次被害が広がっている。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」の15日の会見で、実名告発に出た会社員、川井研一郎さん(55)はこう言った。

「テレビなど、人に伝えるために取材対応していたのですが、当時のことがまたフラッシュバックしてしまい、つらくなってしまったんです。そのため仕事に支障をきたして、迷惑をかけたら申し訳ないので、意を決して会社の直属の上司に報告したんです」

それは誰にも知られたくない過去であるとともに、数十年もただ黙って抱え苦しんできたこと。PTSDと診断されていた。まさに「命がけの告白」で、プライベートなことであるにもかかわらず、報告は社長から関係先までに瞬く間に広まり、こう後ろ指をさされていた。

「あいつ、ジャニーにやられているんだって」

社外にまで言いふらされていると知ったのは、社員行きつけのスナックでのこと。ママがこんな奇声をあげたのだ。

「ジャニーズから金ふんだくって、みんなで酒飲もうぜ」

これがセカンドレイプか。プライバシーも、人権も、あったもんじゃない。身も心も、地に落ちて救われない現実を突き付けられた挙げ句、会社に呼び出されてこう向けられた。

「仕事は無理だろう。辞めた方がいい」

正直に打ち明けたその見返りがこれか。警察に相談したが、以来、会社は休職扱いで行けなくなり、社会的身分を失いかねない窮状に追い込まれている。

2次被害はそれだけじゃない。

川井さんは1982年公開の映画「ハイティーン・ブギ」で、近藤真彦の弟役を務めた元劇団員。役者への夢を胸にジャニーズに履歴書を送った18歳の夏、ジャニー喜多川に呼び出された。

「だったら、秋にヒガシ(東山紀之)のドラマがあるから、そこに出ちゃいなよ」などと言われ、車に乗せられてたどり着いた「合宿所」。

そこには超大型テレビでゲームに興じる東山らがいて、諸星和己は「本当、ラッキーなんだよ」と、盛んにはやし立てた。腹が減ったら寿司の出前、フルーツの盛り合わせと、豪勢な話が飛び交い、浮かれた気持ちになって迎えた夜更け、諸星から「ベッドで寝て」と言われた。諸星たちは雑魚寝。ガソリンスタンドでのバイトの疲れもあり、満ち足りた気持ちで眠りに入ったとき、ジャニー氏の毒牙にかけられた。

翌朝、田原俊彦が「メシだメシだ」とパンツ姿でふんぞり返り、風呂場では何食わぬ顔でシャワーを浴びる東山と居合わせた。

「いったい何なんだ、ここは」

夢か現実かも理解できない昨晩の出来事、目の前で繰り広げられる光景に後ずさりし、逃げ出すように出て行くとき、追いかけてきたジャニー氏は1000円札を3枚、差し出した。俺は売春婦じゃない。なめんなよと突き返し、走り出したものの、怒りと悲しみ、戸惑い、悔しさが込み上げ、涙が流れ落ちた。家族に打ち明けることもできず、途方に暮れた。年月が経っても癒えない苦しみから、もう死のうと何度も思った。

そんな川井さんを、在籍確認できないと事務所は門前払いにした。

「あなたたちの存在なんて、知らない」

かつて、性加害を告発した当事者の会メンバーに、ジャニー氏の姉メリー喜多川氏はこう言い放ったという。昨年改めて騒動となり、補償や救済を社長になった東山紀之が会見で約束して以降も、事務所の体質は変わってはいなかった。

「ここまで適当にあしらわれ、泣き寝入りしかないのか。生きているという意味すら、わからなくなった」と川井さん。

当事者の会の協力もあり、昨年末にようやく面談に応じたが、「スマイルアップの方は来ていなかった。がくっときた。半ば予想してはいたんですけどね」と続けた。

とめどなく浴びせかけられる罵詈雑言、誹謗中傷。当事者の会は、そんな被害告発者たちの声がまたかき消されようとしていると訴えている。