「経済がよくなってるのは間違いない」自民・茂木幹事長に批判の嵐「どこが?」

 
意見を求められた日本共産党・小池晃書記局長は、茂木氏の見通しを「楽観的なお話」と批判し、中小企業の倒産が急増していると説明。「一部の大企業だけ見ていても、景気の実態はわからないと思います」と反論。20カ月連続で実質賃金が下がっているとして、中小企業への支援、最低賃金1500円への引き上げ、非正規ワーカーの立場向上、消費税の減税、インボイス制度の廃止などを訴えた。
 
自民党派閥の裏金事件を受けて、関係者が立件された安倍派、岸田派、二階派が相次いで解散を発表。他の派閥の動向に注目が集まる中、第3派閥の茂木派(平成研究会)を率いる茂木敏充幹事長が1月21日放送の「日曜討論」(NHK)に生出演。番組内で語った日本経済への見通しに「楽観的すぎる」「どこが?」と批判が集中している。

番組後半、討論のテーマが日本経済に移り、司会者から24年の見通しを尋ねられた茂木氏は、バブル後の最高値と、600兆円達成が現実味を帯びた名目GDPに触れて、「所得の増加率は3%を超えるということでありまして、経済は好転するんですから、企業マインドを変えて、価格転嫁をしっかりして思い切った賃上げをやっていくことだと思います」と述べ、デフレからの脱却を掲げた。

その後、意見を求められた日本共産党・小池晃書記局長は、茂木氏の見通しを「楽観的なお話」と批判し、中小企業の倒産が急増していると説明。「一部の大企業だけ見ていても、景気の実態はわからないと思います」と反論。20カ月連続で実質賃金が下がっているとして、中小企業への支援、最低賃金1500円への引き上げ、非正規ワーカーの立場向上、消費税の減税、インボイス制度の廃止などを訴えた。
 
これに茂木氏は「デフレマインドをさらに強調したら、なかなか変わっていかない」と前置きして「よくなってるのは間違いないわけですから」と経済好転を強調。企業への投資を100兆円の大台に乗せ、成長分野への設備投資で収益と賃金が上がり、所得増加によって消費が拡大するとして、「こういう好循環。今日より明日はよくなるんだ。こういう社会を作っていく」と述べると、小池氏は「そういうトリクルダウンが失敗したんじゃないですか!」と一喝した。

「企業への投資で社会全体が潤うとする茂木氏の説明は、小池氏が指摘したように、まさにトリクルダウン理論。これは『こぼれ落ちる』という意味の言葉で、富める者が富めば、貧困層にも富が分配されていくという考え。安倍晋三元総理がアベノミクスの際にこのトリクルダウン理論を主張していましたが、実質賃金は上がらず、貧富の差は拡大するばかり。現政権でも、『トリクルダウンは起きなかった』という見方を示しています。茂木氏の『経済がよくなっている』という指摘は庶民にはあてはまりません。SNSでも『経済が好転? どこが?』『トンチンカンが過ぎる』『これが次期総理候補とは恐ろしい』といった意見が見られました」(メディア誌ライター)

番組放送後、茂木派の存続が報じられたが、これも「経済がよくなってる」と豪語した自信の表れかもしれない。
 
 

支持率急落の自民党に岸田首相が放った「派閥解散ドミノ」の矢 麻生、茂木氏の影響力に陰りも…

 
 
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で、東京地検特捜部は1月19日、安倍派、二階派、岸田派の会計責任者や安倍派議員らを立件した。これで派閥を舞台とした「政治とカネ」のスキャンダル捜査は一区切りだが、岸田文雄首相が自派閥「宏池会」の解散方針を明らかにしたことで、事件は自民党派閥の「解散ドミノ」へと続いていくことになった。しかし、今回の裏金事件を受け、自民党の支持率は急落しているようだ。時事通信の1月の世論調査では、野党時代を除き1960年の調査開始以来最低の14.6%を記録したという。
 
 特捜部が19日に政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で立件したのは8人。在宅起訴したのが、安倍派の大野泰正参院議員(岐阜選挙区)とその秘書、安倍派の会計責任者、二階派の元会計責任者の4人。罰金を求める略式起訴としたのが、安倍派の谷川弥一衆院議員(長崎3区)とその秘書、二階派の二階俊博会長の秘書、岸田派の元会計責任者の4人。

■林官房長官は「即決で賛成」

 一連の事件では安倍派の池田佳隆衆院議員も政治資金規正法違反容疑で逮捕されている。ただし、特捜部の事情聴取を受けていた安倍派幹部は立件されなかった。「大山鳴動して鼠一匹」という世論もあるなかで、タイミングを計ったように動いたのが岸田首相だった。

 岸田首相は特捜部の捜査が大詰めとなっていた18日、慌ただしく動いた。午前中、岸田派の座長を務める林芳正官房長官を官邸に呼び出し、こう告げた。

「派閥を解散したい」

 岸田派の国会議員によると、林氏はこれに対し、「即決で賛成」したという。

「岸田首相は開口一番、『派閥を解散して国民の信頼回復を』と理解を求めたそうです。林氏は岸田首相の後、首相を狙う立場。反対したのかと思って聞いたら、林氏は『派閥がカネ集め集団と国民から批判されている今、存続はできない。賛成だと即決でお答えした。岸田首相の決意はすごかった』と言っていました」

 林氏の同意を得て、岸田首相はその後、上川陽子外相ら派閥幹部も官邸の裏口から呼び込み、派閥解散の意向を伝えたという。

 同日午後になると、所属議員にも連絡が入るようになった。一部で「派閥の総会をやって決めるべき」という異論も出たそうだが、岸田首相は、

「今日、自ら発表しなければならない」(前出・岸田派の国会議員)

 と決意が固く、同日夕方、岸田首相は自ら「岸田派の解散」を発表した。
 
 これを受けて林氏ら派閥幹部は、日付が変わっても電話対応に追われた。所属議員だけでなく、派閥に所属経験があった議員や落選中の元議員らにまで連絡し、理解を求めたという。

「岸田首相と昨年12月に話す機会があった。岸田派は安倍派などより、かなりきちんと政治資金の処理をしている。岸田首相は『細かいミスで会計責任者を責め立てるのもな。けど、ケジメはつけないと自民党の政権基盤が揺るぎかねない』と口にしていた。そのころから派閥解散を考えていたようだ」(前出・岸田派の国会議員)

「宏池会」(岸田派)は自民党の派閥の中で、まさに老舗だ。

 池田勇人元首相が設立した政策集団で、派閥から大平正芳、鈴木善幸、宮沢喜一が首相の座に就き、保守本流といわれた。ただ、2000年に、当時の派閥の長である加藤紘一・元党幹事長が野党の内閣不信任決議案に同調する「加藤の乱」を起こした前後に分裂して弱体化。岸田首相は宮沢の後、実に30年ぶりの宏池会からの首相となった。そして、派閥が解散すれば、岸田首相が最後の会長となる。

■岸田首相は再選あきらめた?

 宏池会職員として働いた経験があり、自民党の政務調査役を長年務めた政治評論家の田村重信氏は、

「岸田首相は決めるときは相談もせず、思い切ってやる。それが派閥の解散だったのでしょう。私の聞いている情報だと、岸田首相を押し上げた麻生派の麻生太郎副総裁や茂木派の茂木敏充幹事長にも根回しをしなかったそうです。自民党総裁選は今年9月と迫っている。この2つの派閥の応援がないと岸田首相の再選はきわめて難しい。岸田首相は、再選されなくてもいい、自民党の派閥政治を終わらせるためにと、身を捨てて電撃的に派閥解散を決めたのだと思います。宏池会は伝統的に結束力が固いので、岸田首相が決めたなら従いますという所属議員が大半だったと聞いています。だから決断できたのでしょう」

 と話す。

 追い込まれたのは、安倍派と二階派だ。

 東京地検特捜部は、岸田派の元会計責任者を「略式起訴」、つまり罰金刑を求める処分としたのに対し、政治資金収支報告書の不記載額が6億円超の安倍派の会計責任者と2億円超の二階派の元会計責任者を「在宅起訴」、つまり公判を請求する処分とした。在宅起訴された会計責任者らは、裁判で罪を問われ、公開の法廷で供述することとなる。岸田派よりはるかに厳しい処分といえる。
 
 元検事の落合洋司弁護士は、2022年に自民党麻生派の薗浦健太郎元衆院議員が政治資金パーティーの収入など約4900万円を記載しなかったとして政治資金規正法違反(虚偽記載など)で略式起訴となった事件を例に挙げてこう説明する。

「薗浦氏が4900万円もの不記載でも、裁判を開く必要はないと検察は判断した。それが、安倍派と二階派は裁判をやることになる。不記載が億単位の高額でかつ悪質性、常習性があるとみているからではないか。また、キックバックされたカネが裏金化されていたことも、重視しているのだと思う。政治資金収支報告書に記載がないというのは個人の利得で、本来なら税金がかかるのですから」

 二階派では、二階会長の秘書が略式起訴された後、二階氏が臨時の派閥総会を開き、

「派閥を解消したい」

 と表明した。二階派の国会議員がこう漏らす。

「うちはいつもうまく立ち回って主流派につくような派閥で、首相候補もいない。みんなあきらめムードで、派閥の解散でまとまるにはそう時間はかからないと思う」

■5人衆にリーダーシップなし

 安倍派は、安倍晋三元首相亡き後、会長不在が続き、「5人衆」と呼ばれる萩生田光一前政調会長、松野博一前官房長官、世耕弘成前参院幹事長、西村康稔前経済産業相、高木毅前国対委員長ら幹部5人の集団指導体制だった。

 その5人衆がいずれも、パーティー収入のキックバックが露見した後、「被疑者」として特捜部から任意の事情聴取を受ける事態となった。

 安倍派も19日の夕方に臨時の派閥総会を開き、派閥解散の方針を決めた。

 安倍派の衆院議員はこう話す。

「事件が拡大する中で、派閥の解散やむなしという意見はあったが、会長がいないので決められない安倍派って感じでまったく話が進まなかった。5人衆は特捜部の事情聴取を受け、特に西村氏と世耕氏は『危ない』との噂が絶えなかったので、派閥対応がまったくできない状態。それどころか、臨時の派閥総会の日程もなかなか決まらなかった。正直、5人衆のリーダーシップのなさにはあきれるばかり。そこへ岸田首相が先手を打って自らの派閥を解散との方向を出した。安倍派は議員が立件されている。これで安倍派が存続というのはあり得なくなった」

 今回、主要5派閥の中で立件されなかった麻生派、茂木派は派閥解消に批判的だ。ただ、田村氏はこう話す。

「麻生氏、茂木氏が権勢を誇れたのは、派閥の長として牛耳っているから。岸田首相には怒り心頭でしょうが、こういう流れになった以上、仕方がないので派閥解散となるでしょう。そうしないと守旧派と見られ、とても選挙が戦えない状況になる。麻生氏や二階氏は年齢からも派閥の長でなくなれば影響力に陰りが出るので、政界引退という方向になるのではないかと思う」

 岸田首相の放った矢は、自民党の派閥政治の「終焉」に突き進むのだろうか。

(AERA dot.編集部・今西憲之)
 
 

ケジメに怒り噴出、自民パー券事件〝事務方の責任〟を強調 世論調査も危機的 きょう政治刷新本部で「派閥の是非」議論

 
 
自民党派閥のパーティー収入不記載事件で、同党の「ケジメのつけ方」に疑問が噴出している。先週末、東京地検特捜部の刑事処分を受け、岸田派(宏池会)と二階派(志帥会)、安倍派(清和政策研究会)が解散を表明した。だが、事件については核心に踏み込まず〝事務方の責任〟を強調する釈明が相次いでいる。22日午後、岸田文雄首相(総裁)が本部長を務める政治刷新本部で「派閥の是非(ぜひ)」が議論されるが、国民はそれで納得するのか。

「派閥を解散すれば、すべての問題が解決するとは考えていない」

茂木敏充幹事長は21日のNHK番組で、一連の事件を受けた党改革についてこう語り、自身が会長を務める茂木派(平成研究会)の存廃について明言を避けた。

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岸田首相は18日、「岸田派の解散」を突然表明した。事件の中核となった、安倍派と二階派は続いたが、首相が党内に根回しをしなかったため、反発も出ている。
麻生太郎副総裁率いる麻生派(志公会)は「派閥解散を見送る意向」で、茂木派と森山派(近未来政治研究会)は、政治刷新本部の中間報告を踏まえて判断するという。

国民世論も厳しい。

読売新聞が22日朝刊で報じた世論調査によると、岸田内閣の支持率は政権復帰後最低だった昨年11月と同じ24%。自民党の政党支持率も25%(前回28%)だった。政治刷新本部にも「期待できない」が75%に上った。

朝日新聞が同日報じた世論調査でも、内閣支持率は23%で、政権復帰以降最低だった前回12月調査と同じ。派閥解散は政治の信頼回復に「つながらない」とする回答が72%に達した。

解散表明した派閥幹部らは、還流(キックバック)が党側と派閥の会計責任者の間で行われた〝慣行〟とする説明に終始しているが、国民の理解は得られていない。今後、政治家の説明責任を問う声が強まることは必至だ。

こうしたなか、岸田首相は21日夜、麻生氏と約2時間、会食した。一部報道によると、岸田首相は事前に相談せずに派閥解散を表明したことをわびたという。

今後の展開はどうなるか。

ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「国民が求めるのは、第1に『政治とカネ』の問題根絶と、事件の『全容解明』だ。まずは政治資金規正法の厳罰化、裏金リストをすべて公表するのが政治責任だ。岸田首相は焦点を外すかのように派閥解散を打ち出したが、決定的にピント外れだ。国民が関心を寄せる本質に切り込まないと、さらなる怒りを招き、底なしの支持率低迷となるのではないか」と指摘した。