「企業には政治活動の自由がある。しかし、国民には1票を投じる権利があるが、企業には参政権はない。力を持っている企業の献金によって政治がゆがめられれば、国民の参政権を侵害する。そもそも企業・団体は『見返り』を期待して献金するのであり、『賄賂性』がある」

企業・団体献金の全面禁止が急務の解決の道だ。

 

政治考 裏金事件 崖際の岸田政権
 目くらましの「派閥解散」

 今回の派閥解散は、岸田政権が「赤旗」日曜版のスクープを端緒とす国民の批判によって追い詰められた末の「奇策」です。
 政治学者の五十嵐仁法政大学名誉教授は、「諸悪の根源となっている派閥を無くすのは当然だ」と述べつつ、「派閥をやめて真相を解明せず幕引きにするということはあってはならない」と強調。「派閥の解消はトカゲの尻尾切り。それで目くらまししながら、世論の批判が沈静化するのを待つということだと思う」と言います。

 五十嵐氏は、「今まで何回も『派閥解消』と言いながら、例えば『勉強会』みたいな形で残って、ほとぼりが冷めた頃にまた復活するということが何度も繰り返されてきた」と指摘。「再び(派閥)が息を吹き返すような可能性をなくさないと問題は解決しない」と語ります。

 五十嵐氏は「『政策集団』というけれど、過去には派閥ごとに政策的なトーンの違いがあったが、全体として右傾化が進んできた結果、自民党の多元性が減少し、政策的な違いがなくなり、単にお金を集めて分配する役割やポストを獲得するための集団に変質してしまった」と指摘します。権力闘争と一体不可分の派閥政治は、まさに自民党政治そのものです。

 

口先だけだった自民党の「政治資金改革」 20年前に寄稿までしたのに「キックバック」を懐に入れた大物議員

 
<政治とカネ 自民党派閥裏金事件>②

 「現金手渡しなどというのはあまりに前近代的な慣行である」

 「政治とカネの関係を国民にとって透明で納得できる形に改革していきたい」

 自民党への厳しい批判と政治への理想が熱くつづられている。最近書かれたような内容だが、筆者は安倍派の世耕弘成参院議員。20年前に和歌山県の地方紙に寄稿された。

◆「餅代」を振り込みに…「とんでもねえな」
 当時の自民党も政治とカネで揺らいでいた。日本歯科医師連盟(日歯連)から橋本派(現茂木派)への1億円ヤミ献金事件が発覚。年金未納問題も起き、2004年7月の参院選で民主党に敗北した。政権交代が現実味を帯びつつあった。
 
政治とカネの問題を語る塩崎恭久氏=東京都千代田区で

 「塩ちゃん、これはもう党改革やらないとダメだわ。手伝ってくれ」。参院選後、塩崎恭久・衆院議員(当時、引退)に1本の電話があった。幹事長として危機感を募らせた盟友の安倍晋三元首相からだった。
 塩崎氏は世耕氏とともに動いた。目を付けたのは盆暮れに党から各議員に配られる「氷代」や「餅代」だった。現金での手渡しから銀行振り込みにする案を打ち出すと、「とんでもねえな」と仲間内から怒りの声が飛ぶこともあったという。塩崎氏が振り返る。

 「政治資金の透明化・可視化をすることで、国民に何にお金がかかっているのか見てもらって、使い方がひどいというなら、選挙で落ちるだけなんですよ」

◆選挙に負けると高まる「改革」の機運
 党内の反発を押し切り、資金の透明化や候補者公募制など改革案をまとめた。改革の一環で、自民党が06年に設立した政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の理事と事務局長を務めた鈴木崇弘氏は、当時の状況をよく覚えている。
 
 
 「今と比べて2000年代は政治に緊張感があって政治が大きく動いた。本当に変われると期待した」

 しかし、改革の熱はいつしか消えた。選挙に負けると改革の旗を掲げても、次の選挙で勝つと機運はしぼむ。その繰り返しだった。

 「見せかけだけで本気じゃなかった」と鈴木氏。シンクタンクも11年2月、約5年間の活動で解散した。

◆「あまりに前近代的な慣行」と批判していたのに…
 政治資金パーティーを巡る裏金事件で、金額が最も多かったのが安倍派の6億円。議員へのキックバックは、20年前に世耕氏が「前近代的」と批判した現金で行われていたとされる。

 安倍派解散の方針が決まった19日夜、その世耕氏は会見し、5年間で1542万円のキックバックがあったと明かした。「資金の管理は完全に秘書に任せていた。帳簿につけていなかったか、現金で管理をしていた形だと思う」。過去の提言とは全く違っていた。
 
 
 今回、長年にわたる組織的な裏金が発覚しても、かつてのような変革への動きは弱い。鈴木氏は惜しむ。

 「第1次安倍政権は改革志向だったが1年で退陣。その失敗から政権奪回後は長期政権を目指して、とにかく選挙に勝つことが最優先され、変化を望まなかった」。2度目の安倍政権は7年8カ月の長期となり、国政選挙で6連勝したが、政治とカネの問題は置き去りにされたままだった。

  ◇ 

<連載:政治とカネ 自民党派閥裏金事件>

 自民党の派閥に巣くっていた多額の裏金事件で、ほとんどの国会議員は法的な責任を免れた。国民の感覚との大きな落差がどこからくるのかを問う。(三輪喜人、浜崎陽介、戎野文菜、米田怜央、昆野夏子が担当します)
 
 

裏金疑惑 真相の徹底究明こそ

政治ゆがめ、参政権侵害の企業献金禁止を

NHK「日曜討論」 小池書記局長が出演
 
 日本共産党の小池晃書記局長は21日、NHK「日曜討論」で、能登半島地震の支援をめぐり、ジェンダーの視点も含めた、避難所の抜本的改善を主張し、政治資金パーティー券をめぐる裏金疑惑について、真相の徹底究明と企業・団体献金の全面禁止を訴えました。

 小池氏は、いまだに1万4千人近い人々が厳しい避難生活を強いられていると強調し、「水道が止まり、トイレも使えず、女性は特に深刻だ」と11日に被災地を訪れたことを紹介。高齢化が進んだ地域で感染症が広がる危険性も指摘し、「地震で助かった命が避難生活で失われることは絶対あってはならない。ジェンダーの視点も含めて避難所の抜本的改善が必要だ」と主張しました。

 小池氏は、住宅の確保などの最優先課題と地場産業の復興、生活・生業(なりわい)の再建などの中長期の課題をあげ、「被災地に寄り添って政治が最後まで責任を果たすべきだ」と述べ、能登の復興を最優先に大阪・関西万博の中止を求め、志賀原発、柏崎刈羽原発の廃炉を主張しました。

 小池氏は、裏金疑惑について、自民党総裁である岸田文雄首相が「真相解明」を口にせず、最大派閥である安倍派の5人の幹部が「知らなかった」と述べていることに「本当に無責任だ」と厳しく批判。「問題は派閥ではなく裏金であり、派閥解散でなく真相解明が必要だ。国会での証人喚問を含め、徹底的に明らかにすべきだ」と強調しました。

 企業・団体献金が議論となり、自民党の茂木敏充幹事長が「(企業・団体も)個人と同様に憲法で保障されている政治活動の自由を認められている」などと企業・団体献金を正当化しました。

 小池氏は、「企業には政治活動の自由がある。しかし、国民には1票を投じる権利があるが、企業には参政権はない。力を持っている企業の献金によって政治がゆがめられれば、国民の参政権を侵害する。そもそも企業・団体は『見返り』を期待して献金するのであり、『賄賂性』がある」と述べ、企業・団体献金の全面禁止を強調しました。

 各党からデジタル化による政治資金の透明性の向上などが出される中で小池氏は「透明化や厳罰化は必要だ」と指摘しつつ、リクルート事件後に「政治改革」と称して、「企業・団体献金禁止」を掲げながら、政党(同支部)への献金とパーティー券収入という抜け穴をつくったことが、今回の裏金づくりにつながったと述べ、「企業・団体献金の全面禁止に踏み込まなければいけない」と主張しました。
 

自民・安倍派解散でも前途厳しい「5人衆」 約10年前の〝みそぎ〟済まぬ小渕優子氏の例も

 
 
自民党派閥を巡る裏金問題では、取り沙汰された安倍派幹部の立件は見送られた。幹部らは口々に安倍晋三元首相への謝罪の言葉を語っていたが、前途は決して明るくない。

安倍派、二階派、岸田派の会計責任者らが、政治資金規正法違反の疑いで起訴。政治家では池田佳隆衆院議員が逮捕、大野泰正参院議員が在宅起訴、谷川弥一衆院議員が略式起訴となっていた。

東京地検特捜部の捜査が区切りとなったことで、安倍派幹部は19日に会見。塩谷立座長と高木毅前国対委員長は、議員辞職について否定。西村康稔前経産相も「安倍総理に大変申し訳なく思っている」としつつ、議員辞職については「考えていません」と話している。松野博一前官房長官、世耕弘成前参院幹事長、萩生田光一前政調会長からも議員辞職という発言はない。

幹部の立件はなかったものの安倍派は解散となる。一方で安倍派だった福田達夫元総務会長は「反省の上に新しい集団を作っていくことが大事だ」と、派閥とは違う形の集まりの必要性を語っている。福田氏がリードする集団となれば、5人衆の居場所があるかは不明だ。

また、みそぎの問題もある。永田町関係者は「政治資金を巡る疑惑報道があった小渕優子氏は、今でも疑惑を引きずってしまっている。当時、議員辞職や離党などをしていれば、ここまで後を引かなかったのではないかと言われている」と指摘した。

小渕氏の疑惑は2014年に週刊新潮が報道。当時、経産相を辞任することになり、元秘書らが政治資金規正法違反で在宅起訴となっていた。23年9月に小渕氏は党選挙対策委員長に就任した際に当時のことについて「大変なご迷惑をおかけした。心からおわび申し上げたい」と涙を浮かべて謝罪。約10年たった今でも説明責任を求められている。

立件されなかったとはいえ、5人衆に対する国民の目は厳しいまま。小渕氏は疑惑以来、なかなか表舞台に立つことができなかったが、同じ道を5人衆もたどるのか。
 
 

自民・松野博一氏 公式HPで裏金事件言及「合計1051万円分不記載」「不正な目的や私的な支出なし」

 
ここにきてまでも、この姿勢💢
 
 
自民党安倍派幹部の松野博一前官房長官(衆院千葉3区)が21日までに自身の公式ホームページ(HP)を更新し、政治資金パーティー裏金事件について言及した。

 松野氏は、「国民の皆様の政治不信を招いたことにつき、過去に会の事務総長を務め、現在常任幹事の一人であるものとして重く受け止め、深くお詫びを申し上げます」と謝罪。派閥から還流された分の政治資金収支報告書への不記載額が2018年から5年間で計1051万円だったとし、その全てが政治活動費であり「不正、私的な目的でなされた支出は確認されていない」と強調した。

 また、パーティ券販売ノルマ超過分は「収支報告書に適正に処理されていると認識していた」と釈明し、派閥事務局から計上は必要ないと伝えられたため、記載していなかったとした。

◇松野氏のHP全文

清和政策研究会政治資金パーティに関する政治資金の取扱いについて

本日、上記事案に対し、東京地方検察庁から、清和政策研究会の会計責任者と所属国会議員二名を起訴した旨発表がありました。

私自身に関しては、上記事案での刑事立件が見送られた旨の報道がなされております。

このような事態に至り、国民の皆様の政治不信を招いたことにつき、過去に会の事務総長を務め、現在常任幹事の一人であるものとして重く受け止め、深くお詫びを申し上げます。

同時に、私の資金管理団体において、清和会からの寄附が平成30年からの5年間で合計1051万円分不記載になっていることが確認されました。

私自身、清和会からのいわゆるノルマを超えた還付金があれば、政治資金収支報告書に記載するなど適正に処理されているものと認識しておりましたが、事務所に確認したところ、清和会事務局から各政治団体での計上は必要なしとの教示があり、それに従ったとの報告を受けました。しかし本来は、政治団体から政治団体への寄附として処理すべきであったものと認識しています。

還付金の支出先等については、現在精査を行っているところでありますが、現状把握できている支出は、すべて政治活動費等として政治資金収支報告書に記載できる性質のものであり、不正な目的や私的な目的でなされた支出は確認されておりません。

日頃から政治資金の処理には厳正を期してきましたが、今回の件は誠に申し訳なく心からお詫び申し上げます。政治資金収支報告書の訂正については速やかに行ってまいります。

今後の政治資金の取扱いについては専門家の指導も受けながら、今まで以上に厳正に取り組み、信頼回復に努めてまいります。

令和6年1月19日

衆院議員 松野ひろかず