「自分には責任がない子どもたちが過酷な状況にさらされている。彼ら自身は、入管庁の報復や、学校での差別といじめを恐れ、なかなか声を上げられない状態になっており、子どもたちに寄り添い、さらに実態を世の中に知らせていきたい」

 

 

 貧困問題に取り組む市民団体「反貧困ネットワーク」(代表世話人・宇都宮健児弁護士)は21日、優れた貧困問題報道などに贈る「貧困ジャーナリズム大賞2023」を発表した。ジャーナリズム賞には、東京新聞の池尾伸一編集委員(58)による企画「この国で生まれ育って—『入管法改正』の陰で」など9件が選ばれた。

 同企画は昨年4月に連載。外国人の収容・送還ルールを見直す改正入管難民法の国会審議に際し、在留資格のない外国籍の子どもたちが置かれた過酷な実態を詳報した。

 池尾編集委員の同賞受賞は2年連続。取材班代表としての表彰も含めて3回目の受賞になる。

 

 ジャーナリズム大賞には日本放送協会のETV特集「ルポ死亡退院」とジャーナリスト後藤秀典氏の書籍「東京電力の変節」が選ばれた。
 

◆「子どもたちの視点から問題を描き、社会の多数派にも理解させた」
 主催する反貧困ネットワークは、21日に東京都内で開かれた授賞式で、連載企画「この国で生まれ育ってー『入管法改正』の陰で」について、「在留資格のない子どもたちの視点から入管難民法の問題を描き、社会の多数派にも理解させた」と評した。

 日本では難民審査が極めて厳しく、難民申請を繰り返す外国人家族は多い。連載では、こうした家族や、超過滞在の家族に育った子どもたちの窮状を報道。幼い妹が高熱を出しても病院に連れて行けなかったクルド人少女や、就職活動で苦悩するペルー人大学生などの苦境ぶりを多角的に伝えた。報道は国会でも引用され、政府がその後、一部の子どもたちに特別に在留を認める方針を表明する一助ともなった。

 授賞式で池尾編集委員は「自分には責任がない子どもたちが過酷な状況にさらされている。彼ら自身は、入管庁の報復や、学校での差別といじめを恐れ、なかなか声を上げられない状態になっており、子どもたちに寄り添い、さらに実態を世の中に知らせていきたい」と話した。