企業献金は禁止、個人からに切り替えるべき

 

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件は、繰り返される「政治とカネ」の問題の根深さを浮き彫りにした。リクルート事件に端を発した平成の政治改革から約30年。当時の改革に足りなかったものは何か。問題の根絶には何が必要か。各界の識者らに聞いた。

 



 大山礼子(おおやま・れいこ) 1954年東京都出身。79〜95年国立国会図書館勤務。2003年から駒沢大法学部政治学科教授。専門は政治制度論。著書に「政治を再建する、いくつかの方法」(日本経済新聞出版社)など。

◆選挙が「個人戦」になってしまっている
 ―今回の問題で、国会議員個人が多額の政治資金を集めて活動している状況が浮き彫りになった。

 「多額の政治資金を必要とする原因は、今の選挙制度が『個人戦』になっていることにある。30年前の政治改革で、衆院の選挙制度を中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変えた際のテーマは『政党本位・政策本位』だった。議員(候補者)個人の資金力が影響しない選挙制度を目指したはずだったが、徹底できなかった」

 ―なぜ選挙が個人戦になったのか。

 「小選挙区で負けた候補者が比例復活するには、同じ政党内で惜敗率を争わなければならず、参院や地方議員選挙では党内競争につながる中選挙区制がそのまま残った。完全な政党本位にはならなかった」

◆制度見直しは、政治が変わる大きなシグナルに
 ―選挙制度の見直しは必要か。
 「必要だ。政治が変わる大きなシグナルになる」

 ―政治不信が続くとどうなるのか。

 「自分たちが選んでいる人を信頼できなければ、独裁者を生みかねない。議会制民主主義の根本が揺らぎ、非常に危ない」

 ―何が政治不信を招いているのか。
 「最大の要因は、世襲議員の存在だと思う。3代目、4代目が首相や閣僚を務めることで(一般市民が)『自分たちは議員になれるはずがない』という感覚を持ってしまっている。これは非常にまずい。親の遺産も政治団体を経由させることで相続税なしで受け継ぐことができ、『地盤・看板・カバン』が簡単にそろう。世襲政治家は圧倒的に有利で、親の選挙区からの立候補を禁じるなどの見直しが必要だ」

◆企業献金は禁止、個人からに切り替えるべき
 ―政治資金制度の見直しは。
 「改革が不徹底に終わったのは政治資金も同じだ。企業や団体からの献金はばっさり禁止し、個人からの献金に切り替えるべきだ。パーティー券も個人しか買えないようにすれば良い。米国では、支持者がおしゃれをして党大会に出かける。個人で献金を出すから政治に関心をもつ。企業や団体から献金を集める仕組みが続けば、個人にアプローチするようにならないのではないか」

 ―自民党内からは「制度より意識を変えることが先だ」という声も聞く。
 「意識を変えるには、まずは制度を変えることが重要だ。地方では議員のなり手不足が深刻で、すでに政治が崩壊している。もし小手先の改革に留まれば、日本は沈没する」

 

―派閥の存廃は。
 「政策集団としての派閥はあってもよいが、金の流れを完全に明らかにする必要がある。アナログ時代の発想をやめ、現金の収受を禁止し、金融機関を通せば1円からすべて記録しデータ化することができる。われわれの研究費の支出も、すべてオンラインで処理され分かるようになっている」

(聞き手・大杉はるか)

 衆院選挙制度改革 1988年に発覚したリクルート事件など「政治とカネ」を巡る一連の事件を受け、政治に金のかかる原因は同一政党の候補が争う中選挙区制度にあるとされた。89年に発足した第8次選挙制度審議会(首相の諮問機関)は90年、小選挙区比例代表並立制を柱とする改革案を答申。94年の法改正で同制度の採用が決まり、小選挙区300人、比例代表200人とした(現在は小選挙区289人、比例代表176人)。政党に小選挙区候補者の届け出などを認め、政党本位の制度を目指した。

 

 

【裏金自民党】政界の常識は世間の非常識…世耕弘成が辞任わずか1カ月で「参院幹事長に復帰準備」だってよ

 
河野太郎や麻生太郎などにも負けない世襲議員の最悪な見本。自分が低脳で無教養で力なんて持っていないと全く理解していない。
 
 
自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件をめぐり、昨年12月に参院幹事長を辞任した清和政策研究会(安倍派)の世耕弘成氏。パーティー収入の一部を政治資金収支報告書に記載しなかったとする政治資金規正法違反容疑で告発されたものの、東京地検特捜部は不起訴とする方針だと一斉に報じられている。これを受けて、空席のままの参院幹事長ポストへの復帰に、世耕氏が意欲を見せているとの情報が参院自民党内で流れている。

世耕氏と同時期に辞任した安倍派の萩生田光一前政調会長、高木毅前国対委員長の後任人事は昨年末に行われたが、参院幹事長の空席は1カ月も続く異例の事態となっている。


世耕氏は参院幹事長を辞任した後も、参院の清和会の集まりである「清風会」の会長ポストを手放していない。最近もパーティー券問題をめぐる対応について「清風会」メンバーからの相談に乗ったりするなど、復権に向けた準備に余念がない。
参院幹事長ポストが空席だった背景には、派閥の事情もある。関口昌一参院議員会長は平成研究会(茂木派)所属。石井準一参院議員運営委員長はこのポストに強い意欲があるとみられているが、関口氏と同じ茂木派なので、同じ派閥で会長、幹事長を占めるのは望ましくないとの声が多い。松山政司参院議員副会長も候補に挙がるが、岸田文雄首相率いる宏池会出身のため、最大派閥の安倍派に配慮して自ら手を挙げようとしない。つまり、膠着状態が続いているのだ。

世耕氏とすれば、不起訴で嫌疑は晴れるとして、参院幹事長に復帰する障害はないと考えているようだ。

世耕氏は理事長を務める近畿大学の教職員組合から「本学の社会的評価の低下を招く」として辞任を要求されていたが、大学側は退ける決定をした。不起訴によって世耕氏が一層、強気の対応に出てくる可能性もある。

ただ、疑惑を受けて追及されたのに、わずか1カ月で元のポストに復帰することへの批判は強い。世耕氏は政治資金パーティー問題への自身の関与について説明したこともないが、複数の議員によると、特捜部は世耕氏の役割に重大な関心を示していたという。

安倍派では参院選の年に開いたパーティーについて、改選を迎えた参院議員の販売ノルマを免除し、販売分を全額償還(キックバック)していたが、これを主導したのが世耕氏とみられているからだ。

グレーな男の復権をすんなり認めるのか。参院自民党が「良識の府」としてどのような判断をするか、注目される。

(喜多長夫/政治ジャーナリスト)