日テレ「赤木ファイル」の衝撃 国を相手に夫の死の原因を追求する妻・雅子さんの闘いを描いた渾身作(ラサール石井)

 
不屈の戦いを続ける赤木雅子さん。札幌では「ヤジと民主主義」という映画が満席で上映を続けました。目に焼き付ける「民主主義」。「法治国家か日本は?」という意味では、赤木俊夫さんの無念、雅子さんの戦いは是非映像として残すべきだと思う。不条理なんて言う簡単な言葉では済ましてはいけない、日本という国の実態を訴えて官僚と政権の癒着を解明するべきである。
 
 
【ラサール石井 東憤西笑】#188

1月9日放送の日本テレビ系「ザ!世界仰天ニュース」の特集「命をかけた赤木ファイル“文書改ざん”の謎」。

放送直後からSNS上で話題になり、見逃し配信でやっと見られた。

言わずと知れた森友学園問題で、公文書改ざんを命じられ、自らの正義感とのはざまで苦悩し自死に至った近畿財務局の赤木俊夫さん。その改ざん開始から現在までを妻・赤木雅子さんのインタビューをもとに、再現ドラマと実写を組み合わせた渾身のドキュメンタリーだ。
まず再現ドラマのクオリティーが非常に高い。演出、照明、演技の質が高く、インタビュー部分や実写とのバランスが素晴らしく、つい入り込み、涙が出てくるほどだ。

安倍元首相の「私も妻も関係していたら、これはもう総理大臣も国会議員も辞める」という本物の映像、さらに当時の佐川理財局長が決裁文書が破棄されたと答弁する映像、これを再現ドラマで近畿財務局の赤木さんたちが実際見ていて衝撃を受けるシーンはリアリティーがあった。

佐川元局長の答弁シーンにテロップではっきり「ウソ」と描いていたのにも気迫を感じた。

そして改ざんが始まり、徐々に赤木さんは壊れていく。

うつ病と診断され、幻聴や幻覚に怯え出す。実際に雅子さんが撮った赤木さんの映像では、自らをかきむしりながら抑えきれぬ衝動に、「何か壊したら、お皿割る? 気持ちが落ち着くよ」と言うしかない雅子さんの声。

常日頃から口癖は「私の顧客は日本国民です」だった、公務員のかがみのような赤木さんの心と現実の葛藤が、ついに自らの命を絶ってしまう。

番組はそこでは終わらない。そこからの雅子さんの真実を知りたいと願う闘いが始まる。

佐川元局長には2度手紙を書いた。読んだという返事はあったが謝罪はなかった。

赤木さんが改ざんの経緯を記した「赤木ファイル」が存在すると知った雅子さんは開示を請求。さらに国と局長を訴えた。金目的ではないから賠償金は100万円にしたかったがそれでは認諾(要求を受け入れ金を払い裁判を終わらせる)されると1億円にした。すると赤木ファイルは開示されたものの、国は1億円を認諾したのである。

それでも雅子さんは諦めず闘いを続ける。安倍元首相の遊説先に出かけ、真相追求を願う手紙を手渡した。安倍氏はそれを受け取る。実際の映像が残っている。

しかし安倍氏はその翌日凶弾に倒れるのである。

見逃し配信も終わってしまった。ぜひこれはアーカイブに残して欲しい。あるいは石川テレビのように再編集して映画にできないものか。