世界では戦争が今も続き、日本では改憲(壊憲)を企む危険な匂いがしている。そんな時のこの様な企画は重要。「紙芝居は、戦争を宣伝する有力なメディアだった。当時の国民が戦争をどのように受け入れていったのかを知り、戦争と平和について改めて考えるきっかけにしてほしい」

 

 

 川崎市中原区の市平和館で、ミニ企画展「国策紙芝居展~戦争へいざなう言葉と物語」が開かれている。戦時下に、政府が国民の協力を求めるためのプロパガンダ(宣伝)に使われた紙芝居の複製を展示し、戦争が受け入れられていった過程をたどっている。(竹谷直子)

 平和館によると、国策紙芝居は、当時の政府や関係機関が戦争の正当性を訴え、国民を戦争へと向かわせるために制作された。一つの作品につき、数百から1万部ほど印刷され、量産されていた。戦時に国民を統制するためにつくられた隣組の会合などで上演されたため、大人向けの作品が多くあるという。

 企画展では、12作品約190枚を紹介。漫画家・近藤日出造(1908~79年)が描いた「総意の進軍」は、太平洋戦争中の42年に行われた衆院選「翼賛選挙」に向けて作られ、当時の東条英機首相の「翼賛選挙は戦争目的の完遂にまい進する絶好の機会である」という演説が引用されている。
 

 子ども向けの紙芝居「風呂屋の大ちゃん」は、出征した父の代わりに風呂屋を手伝っている「大ちゃん」が、兵器の原料になる硬貨の回収運動をし、たくさんの人から褒められるという内容だ。

 

 

 このほか、飛行機のエンジンオイルの代用品として利用された「ヒマシ油」を作るよう呼びかける戦時中のポスターなど10点も展示している。

 館長の北村憲司さんは「紙芝居は、戦争を宣伝する有力なメディアだった。当時の国民が戦争をどのように受け入れていったのかを知り、戦争と平和について改めて考えるきっかけにしてほしい」と来場を呼びかけている。

 2月12日まで。同月3日には、紙芝居の実演もある。午前10時半からと午後1時半からの2部制。幼児に防空訓練を指導するための紙芝居「ナカヨシ バウクウゴウ」や、閻魔(えんま)大王が、戦争を妨害する者を地獄に落とし、推進する者は極楽に送るというストーリーの「閻魔の庁」など2部で計8作品を上演する。事前申込制で各回先着50人。申し込みは、平和館=電044(433)0171=へ。