紀藤正樹弁護士、自民派閥パー券事件で来週にも議員の刑事処分最終判断の報道に「厳正な判断が絶対条件」とクギ

 
 「岸田首相は『政治とカネ』の問題でまったくリーダーシップを発揮してこなかった。裏金問題も検察任せで、党総裁として率先して真相解明し、国民に説明する姿勢がない。池田議員が逮捕されたら除名しましたが、状況の後追いでしかありません」(法大名誉教授・五十嵐仁氏=政治学)

 逮捕者が出るたびにトカゲのしっぽ切りをしていても、本体が腐敗しているのだからどうしようもない。
 
 
 旧統一教会問題を長年追及する紀藤正樹弁護士が12日、自身のX(旧ツイッター)を更新。自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる事件で、東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで安倍派(清和政策研究会)と二階派(志帥会)の会計責任者を立件する方針を固め、来週にも安倍派幹部や所属議員らの刑事処分の最終判断をするとの一部報道を受け、「これ厳正な判断であることが絶対条件」などとクギを刺した。

 さらに「仮に大甘な判断がなされれば、逆に検察の信頼も与党自民党への信頼もブーメランで地に落ちる可能性があります。国民に納得の判断であることが必要です」と厳しい言葉で指摘した。
 
 

特捜部、安倍派の立件可否判断へ 自民パー券事件で〝重大局面〟 「政治刷新本部、政治資金は1円単位で開示を」識者

 
 
自民党派閥のパーティー収入不記載事件が、来週にも重大局面を迎える。東京地検特捜部は、安倍派(清和政策研究会)の議員や会計責任者の刑事処分の可否を判断するという。安倍派は、議員側にキックバック(還流)したパーティー収入を政治資金収支報告書に記載するなどの訂正を検討している。特捜部は、安倍派の対応も加味して判断するもようだ。一方、本格始動した自民党の「政治刷新本部」は、政治資金規正法の厳罰化とともに、外国人のパーティー券購入禁止も注目されそうだ。

「国民の信頼を回復するため、民主主義を守るため、党が変わらなければならない」

岸田文雄首相(党総裁)は11日、刷新本部の初会合でこう強調した。月末召集の通常国会を前に改革は待ったなしだ。

特捜部の捜査も佳境に入っている。産経新聞によると、安倍派の収支報告書の訂正内容なども踏まえ、来週にも安倍派議員や会計責任者の刑事処分の可否を判断するという。
安倍派では、議員に課したパーティー券のノルマ超過分を政治資金収支報告書に記載せず還流していた。超過分を安倍派に納入せず「中抜き」した一部議員もいるとされ、2022年までの5年間に計6億円が裏金化したとの指摘もある。

岸田内閣の支持率が「危険水域」まで下落するなか、自民党には「政治とカネ」をめぐる国民の不信感払拭のため、徹底した改革と説明責任が求められる。

焦点は、政治資金規正法の改正論議だ。パーティー券購入団体・個人の公開基準を現行の「20万円超」から引き下げるほか、会計責任者らが有罪になれば、政治家も失職する「連座制」導入などが浮上している。

政治刷新本部は、月内の中間とりまとめを目指し、議論を進める。

政治資金改革について鋭い発信を続けている経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「『政治資金の可視化』を徹底的に断行すべきだ。個人の政治献金やパーティー券購入はマイナンバーにひも付け、企業も法人番号に関連づけるなど、政治資金は1円単位で開示する。加えて、『外国人のパーティー券購入』も禁止すべきだ。政治資金規正法は外国人献金を禁じながら、パーティー券購入は国籍制限がない。政治への外国勢力の介入を招きかねず、安全保障や国益の観点から極めて危うい。与野党ともこの問題提起が乏しすぎる。『ザル法』の汚名を返上するためにも、違反があれば議員も連座制で失職させるなど厳格化が必須だ」と語った。
 
 

西村前経産相、投信880万円増 大臣規範に「抵触する取引なし」

 
 
 自民党派閥の政治資金問題を受け岸田文雄首相が昨年12月14日、安倍派の4閣僚らを交代させたのに伴い、新旧の閣僚、副大臣、政務官の家族分を含む保有資産が12日公開された。退任した西村康稔前経済産業相は有価証券のうち「証券投資信託および貸付信託等」が2022年8月の就任時の1266万円から、退任時は2143万円へと877万円増えた。西村氏の事務所は取材に「大臣規範に抵触する取引は一切ない」と回答した。

 01年閣議決定された大臣規範は、株式など有価証券の閣僚在任中の取引自粛を求めている。西村氏の事務所は「少額投資非課税制度(NISA)を含む投資信託の積み立てだ」と説明。内閣総務官室は取材に「地位を利用した取引に当たらない」との見解を示した。

 松野博一前官房長官は21年10月から2年余りの在任期間中に、借入金(住宅ローン)689万円が381万円へ308万円減った。就任当初の資産公開では妻にも住宅ローン689万円があると報告したが、公開翌月0円に訂正した。

 西村、松野両氏は派閥の事務総長経験者。
 
 

安倍派幹部「裏金事件」で逃げ切り画策 “死人に口なし作戦”は通じるか…若狭勝氏の見解は

 
 
 自民党最大派閥「安倍派」の政治資金パーティー裏金事件について、複数の事務総長経験者が「あれは会長案件だった」と東京地検特捜部に説明していることが分かった。11日の毎日新聞が報じている。死者に罪をかぶせて、逃げ切りを狙っているらしい。

 政治資金規正法の不記載、虚偽記載の公訴時効は5年。安倍派の約6億円裏金事件に関して、時効にかからない2018年以降は、下村元文科相、松野前官房長官、西村前経産相、高木前国対委員長の4人が、それぞれ事務総長を務めてきた。事務総長は、裏金について詳細に把握していたとみられ、4人とも特捜部から聴取されている。

 ところが複数の事務総長経験者は、パー券販売ノルマ超過分のキックバックについて、事務方の会計責任者から会長に直接報告される「会長マターだった」と説明し、会計責任者との共謀を否定、“詳細を知る立場ではなかった”とスットボケているというのだ。

「18年以降、清和会(安倍派)の派閥会長は、21年11月まで細田博之前衆院議長が務め、その後は22年7月に死去するまで安倍元首相が就いていました。2人とも既に亡くなっており、事務総長経験者らは『死人に口なし』とばかりに責任を押し付け、逃げ切りを図っているとみられています。政治資金規正法の規定では、収支報告書への記載義務があるのは会計責任者です。もし、裏金づくりが本当に『会長案件』であり、事務総長は関知していなかったとしたら、共謀を立証できなくなる。事務総長経験者らは立件を免れる可能性があります。昨年末から『死人に口なし』作戦をやってくるのではないかと噂されていました」(官邸事情通)
 
 
4800万円「裏金化」池田議員にも聴取の可能性
 

安倍元首相(右)のキックバック取りやめ提案から、撤回継続までの一連経緯がポイント(西村康稔事務総長と=2022年当時)
  
 しかし、果たして「死人に口なし」作戦が通じるのかどうか。少なくても、安倍元首相が亡くなった後に行われたキックバックについては、通じないのではないか。

 22年春、会長だった安倍元首相がキックバック取りやめを提案したが、亡くなった後、夏に撤回され、キックバック継続が決まった経緯がある。当時の事務総長は西村氏だった。その後、事務総長に就いた高木氏がキックバック継続方針を引き継いでいる。

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士はこう言う。

「『会長案件』が事実であれば、会計責任者と事務総長経験者の共謀を問えず、無罪となる可能性も考えられます。特捜部としては『会長案件』を覆すための証拠がなければ、立件は難しい。ポイントは、22年の春から夏、キックバックの取りやめを撤回した一連の経緯です。西村前経産相が撤回を主導した可能性が浮上していますが、彼がキックバック継続を会計責任者などに強く指示していたとしたら、『会長案件』という説明は通らなくなる。特捜部はこの経緯に着目しているようです。安倍元首相が取りやめを提案した際、派閥所属の一部議員から異論が噴出したとされ、異論を唱えたのは約4800万円を裏金化した疑いを持たれ、逮捕された池田佳隆議員だったことが分かっています。特捜部は一連の経緯について、池田議員から聞いている可能性もあります」

 キックバック継続に深く関与しなかった下村氏、松野氏は“無罪放免”となるのかもしれない。しかし、事務総長経験者全員が「おとがめなし」とはならないのではないか。