2023年12月の毎日新聞世論調査では内閣支持率が16% と、各メディアで発足以来最低を更新し続けている岸田文雄内閣。国際政治アナリストで日本の税制にも詳しい渡瀬裕哉氏は「岸田政権は今こそ復興減税すべきときだ」と説くーー。

復興増税で懸念すべきは利権に群がる政治家・役人たち
2024年1月1日、能登半島を中心に襲った大地震は多大な被害を同地域にもたらした。現在も余震が続いており、一瞬たりとも気を抜くことができない状況が継続している。
官民問わず、災害の救済及びインフラ復旧に向けた取り組みを実施しており、彼らの懸命な努力を行う姿には素直に頭が下がる。

1月5日、岸田首相は2023年度予備費残4600億円及び2024年度予備費5000億円を能登半島地震への対応に支出する方針を示した。災害規模は現状ではまだ確定していないものの、1兆円近い予算投入を早々に決定したことについては一定の評価はできる。一方、野党の一部には2024年予算ではなく、1~3月で新たな補正予算を組むべきとする主張もあり、被災支援の財源については一定の議論が残っている。

ただし、いずれの場合においても、早晩、政治家、役人、その関係者が復旧・復興に絡めた公金支出に利権を求めて群がることになるだろう。そのような光景は東日本大震災時にも見られたことだ。

岸田政権は内閣支持率も低下し、その支持基盤が揺らいでいる状態だ。そのため、弱い内閣総理大臣に対して、ここぞとばかりに利権集団が集(たか)ることは容易に想像がつく。

財務省が復興増税の中抜きを狙っているか
また、岸田政権は昨年末に突如として打ち出した所得税定額減税によって、予算策定を牛耳る財務省との関係には亀裂が入っている。

 

そのため、当初の救済・復旧のための予算を消化した後、被災地の復興政策に関して、地方税減免(住民税や固定資産税など)を簡素化・大規模化・長期化することを求めたい。

復興減税を石川県全体に適用すれば、奇跡の復興が起きる可能性も
復興減税をどのような基準と範囲で復興減税の対象とするか、は議論があるだろう。しかし、厳密な被災認定は、煩雑さ・複雑さはスピード感を削ぐとともにコストも増加させるだけだ。

仮に、被災地域として認定された地域に対して、特例措置として面的に減税することにすれば、その手続きは大規模かつシンプルな政策実行が可能である。

同地域全体の住民を復興減税の対象とすることで、直接的に被災者の生活コスト削減にもつながり、減税による経済効果によって地域経済は従来以上に強靭なものとなる。

たとえば、石川県の県民税総額は約1780億円(2021年度決算カード)であり、予備費の一部を回すことで、最大で複数年間の県民税を無税にすることも余裕だ。周辺県に関してもその被災度合いに応じて、県民税を大幅に引き下げることができるだろう。さらに、基礎自治体の住民税に関しても支援規模次第では大規模な減税が可能だ。

東日本大震災時に徴収された復興増税総額を復興減税として東北の被災県に投入した場合、その県民税を10年近く減税することも可能であったはずだ。仮にそのような政策を実行した場合、現在の東北地方にはヒト・モノ・カネが流入しており、既に見間違えるほどの大都市が生まれて、奇跡の復興を遂げていたことは想像に難くない。

減価償却の扱いを100%即時償却とすれば、石川県で新たな産業が勃興することもあるかもしれない
もちろん全ての地方税を減税することは非現実かもしれないが、税制はそれほど様々な主体の投資判断に影響を与える重要な要素なのだ。多少、不正のような動きも出るだろうが、そのような取り締まりこそ事後的処理として時間をかけて罰すれば良い。

さらに、地方税の復興減税を断行した上で、更に被災地域における設備投資に対して、減価償却の扱いを100%即時償却とすることを特例として認めることも併せて提案したい。

100%即時償却の導入によってほぼ確実に同地域において積極的な設備投資が起きることになる。石川県は元々機械工業が盛んな地域であるため、このような減価償却の特例を認めることで、新たな産業クラスターが強力に勃興する可能性もある。その場合、同地域は日本経済をけん引する地域に一気に生まれ変わるだろう。

東京のゼネコンやコンサルに抜かれるようなスキームではない、被災地に対する直接的な支援を実施することが重要だ。まして、その食い散らかしを復興増税で面倒を見るような過ちがもう一度繰り返されることがあっては断じてならない。

政治家、役人、その関係者によって、被災からの復興におかしな利権が組み込まれる前に、岸田首相は同地域において誰もが等しく利用することができる「復興減税」を断行するべきだ。

したがって、岸田政権が今月に始まる通常国会での質疑を乗り切るために、様々なバラマキ財源の支出と引き換えに、財務省と妥協した「復興増税」の拡大・延長を新たに秘密裏に妥協する可能性もゼロではない。岸田首相は上述の予備費支出の他、追加で4月以降に補正予算を組むことを示唆しており、その線も十分にあり得る話だ。

当初の復旧作業にはインフラ投資予算は必要ではあるものの、その後の復興過程において、腐敗者たちによる中抜きを可能な限り防止していくことが望まれる。

岸田政権は今こそ復興減税せよ。減税なら中抜きはできない
岸田政権に対する様々な勢力による利権づくりに釘を刺すことは極めて重要だ。そこで、復興に群がる利権争いの勃発に先駆けて、岸田首相には早々に「復興減税」を宣言することを求めたい。

もちろん、既存の被災者に対する政策パッケージの中にも、国税や地方税の減免は政策のラインナップとして存在している。しかし、従来までの減税政策は既存の無数に存在する政策の一つに過ぎず、そして煩雑かつ複雑な内容である。現場の行政職員の負担も大きく、速やかな被災の認定すら難しいだろう。

その他の既存の省庁の政策に紐づけられた被災対策は、その過程における中間コストもかかりすぎることも問題だ。納税者は東日本大震災の復興予算の中抜き・流用事例を覚えている者も少なくなく、既存の政策パッケージに伴う腐敗にはセンシティブだ。

 

 

能登半島1.1地震

被災地 要望切々

小池書記局長ら市長に募金渡す

石川・七尾

 
 
 日本共産党の小池晃書記局長・参院議員は11日、能登半島地震で震度6強の揺れに見舞われ、ほぼ全域で断水が続く石川県七尾市を訪れ、茶谷義隆市長に会い、日本共産党に寄せられた第1次分の救援募金目録を手渡しました。田村貴昭衆院議員、藤野保史前衆院議員、佐藤まさゆき県議が同席しました。
 
 小池氏らが被害状況を調査した同市沿岸部の石崎町では道路の液状化や地割れ、津波で転覆した漁船、押しつぶされた全半壊の家屋など深刻な被害が広がっていました。

 小池氏らが話を聞いた同区在住の男性(55)は「津波が50センチメートル押し寄せて防波堤が壊れた。家が半壊して避難しているが、市町村指定でない避難所のため簡易トイレなどの物資が不足している。段ボールベッドもなく暖房もきかない。体育館の冷たい床で寝ている」と実態を語り、小池氏は「行政に要望を伝え解決します」と応じました。

 また、和倉温泉で大打撃を受けた旅館業者や、石川県民医連・城北病院で被災者の医療支援にとりくむ医師らから話を聞き、激励しました。

 茶谷市長に小池氏が「国政への要望を何でも聞かせてください」と尋ねると、茶谷氏は「道路の陥没や隆起により支援物資を避難所まで届けられない」と悩みを語りました。また、観光業への財政支援や、確定申告の延長など納税期限を柔軟に対応するようにしてほしいなどの要望を寄せました。

 小池氏は「政府には被災者と被災自治体に寄り添った対応を求めています」と述べ、地場産業への直接支援などをも要求していくと応じました。

 小池氏は同日、被災した輪島市、珠洲市、羽咋(はくい)市、志賀町、中能登町、穴水町、能登町の各役場にもお見舞いの電話をかけ、救援募金を届けたことを伝えました。

 自治体に振り込む際の手数料など、救援募金を届けるために必要な経費は全て共産党が負担し、寄せられた募金は全額、被災地に届けています。

能登半島地震災害募金へのご協力を訴えます 日本共産党中央委員会
 募金は、下記で受け付けています。

【郵便振替】

口座番号 00170-9-140321

加入者氏名 日本共産党災害募金係

*通信欄に「能登半島地震募金」とご記入ください。手数料はご負担願います。
 
 

4点の緊急支援 要請

政府現地対策本部に小池氏

 
 
 
 日本共産党の小池晃書記局長・参院議員、田村貴昭衆院議員、藤野保史前衆院議員は11日、石川県庁内に設置された能登半島地震の政府現地対策本部を訪れ、被災者の救援や避難所の改善など4点について緊急要請を行いました。

 要請の1点目は、避難生活の改善、被災者支援について災害関連死を出さないためのあらゆる手だてをとることです。孤立集落、自宅を含めた自主避難者、ビニールハウスや車中泊などの実態把握と必要な支援に万全を期すことです。

 2点目は、住宅や土砂崩れの危険度判定を速やかに実施することなど、二次被害防止に万全を期すことです。

 3点目は、津波や液状化の実態を早急に把握し、地域ごとのニーズに即した支援を行うことです。

 4点目は、地盤の上昇で港が使えなくなるなどの実態を把握するとともに、漁業者を含めた地場産業の被害をつかみ、再建へ向けた支援を行うことです。

 小池氏は「これらは当面する緊急の課題だ。被災地の実態や、避難者のニーズに即した対応をしてほしい。政府を支援するいわばプッシュ型の要請です」と述べ、避難者の生活再建のための財政支援などに全力を挙げるよう求めました。

 田村氏は「災害関連死を出さないために政府はあらゆる手だてをとってほしい」と話しました。対応した上村昇内閣府大臣官房審議官(防災担当)は「ただちに各省庁と共有し、対応したい」と答えました。

 要請には佐藤まさゆき県議が同席しました。