【政界地獄耳】修正申告だけで解決の流れ「峠を越した」の楽観論も どうした東京地検

★年末まで威勢の良かった東京地検特捜部はどうなったのか。報道を見れば仕事納め後や休日も返上して捜査を続けていたようにも見えるが、一部新聞に国会開会中からリークし続けた安倍派5人衆への関与は、秘書や本人への事情聴取はしたものの修正申告で解決するという声が流れ「地震被害や航空機事故で政治資金パーティー裏金事件は記事も減り、事情聴取を受けた秘書たちから聞けば『相当厳しく問われたものの、修正申告で帰らされた』という。峠を越したのではないか」と楽観論が支配的で党内に年末の緊張はない。
 

★首相・岸田文雄は党内に「政治刷新本部」を設置するが、特別顧問に就任する両元首相・菅義偉と麻生太郎では党内でも政治文化が違いすぎ、「菅の派閥廃止論と麻生の派閥は有益」で議論がまとまらないことを見越したかのような人選では本気度が見えない。外部の有識者の名前が漏れてこないのも人選に苦慮しているからではないか。JNNの週末の調査ではこの新しい組織に「期待しない」と答えた人は59%に上った。岸田の鈍感力というが、このままでは自民党も済まないだろう。
 

★国民からも自民党からも、ただでは済まないのが東京地検特捜部だ。あおるだけあおって陣がさ議員数人逮捕では、安倍派幹部は「シロのお墨付きをもらった被害者」だ。「政治に負けるなら手を出すな」という声が国民から聞こえてきそうだが、1992年、元自民党副総裁・金丸信の5億円の闇献金事件で、検察が上申書の提出だけで略式起訴したことの反発から、検察庁正面の看板に黄色いペンキをかけられる事件が起きた。あの教訓を生かせず、もし見通しの立たない見込みだけで政治家を攻めあげたのだとしたら、または捜査途中で政治に忖度(そんたく)でもしたのなら、事件の概要や規模ではなく、検察の国会への挑戦ともとられかねない。無論、事件はこれからヤマ場を迎えるのかもしれないが、その懸念が多くの国民によぎったのではないか。(K)※敬称略

 

 

 

パー券事件の環流主導か 西村康稔前経産相、記載方法も提案 安倍元首相は「ただちに直せ」と会計責任者を叱責も

頼むこの悪を一刻も早く立証して逮捕してくれ!

 

 

■産経新聞報道

自民党派閥のパーティー収入不記載事件で、安倍派(清和政策研究会)が一昨年夏にパーティー収入の一部を所属議員にキックバック(還流)する慣例の方針継続を決めた際、当時の派閥事務総長だった西村康稔前経産相が主導した可能性があると、産経新聞が6日朝刊で報じた。西村氏は還流分の政治資金収支報告書への記載方法も提案しており、東京地検特捜部は西村氏の認識について慎重に調べているもようだ。

 

安倍派は所属議員に課したパーティー券の販売ノルマ超過分について、収支報告書に記載せず所属議員に還流する慣例を長年続けていた。

安倍晋三元首相は2021年11月、初めて派閥会長に就任した。翌年2月に一連の状況を知り、「このような方法は問題だ。ただちに直せ」と会計責任者を叱責し、2カ月後に改めて西村氏らにクギを刺した。同年5月のパーティーでは、「還流中止」が議員側に通達された。

この経緯は、ジャーナリストの岩田明子氏が昨年12月、夕刊フジの人気連載「さくらリポート」で詳報している。

ところが、安倍氏は22年7月、参院選の街頭演説中に凶弾に倒れた。その後、同派幹部らは同年8月中旬ごろにかけて再び協議し、一転して還流を継続する方針が決まったという。

西村氏はまた、還流分を安倍派と所属議員の双方の収支報告書に記載しない慣例を改め、還流された所属議員の関連団体の収支報告書に個人のパーティー収入として記載する方法も提案したという。

西村氏は21年10月、安倍派の実務を議員側で仕切る事務総長に就任。22年8月10日に発足した岸田文雄改造内閣で経産相に任命された。事務総長は同25日、高木毅前国対委員長に交代した。

関係者によると、高木氏は還流に関する同年8月の協議に参加しておらず、高木氏が事務総長に就任した時点で還流を継続する方針で決着していた。その後、安倍派はノルマ超過分を議員に還流し、翌5年に提出された安倍派の収支報告書には還流分が記載されなかった。

特捜部は西村氏ら幹部を任意で事情聴取。西村氏らは還流についての認識は認める一方、不記載については認識を否定しているとみられる。

西村氏は、産経新聞の取材に対し、期日までに回答しなかったという。

 

 

「大物議員が責任の押し付け合い」 自民党裏金問題、特捜部が照準を合わせた2議員の名前とは

 
 
「自民党派閥パーティー裏金事件」の捜査は2024年1月に通常国会が始まるまでの短期決戦である。前代未聞の捜査体制を敷く東京地検特捜部はそれまでに「安倍派」「二階派」とどう対峙し、大物議員の立件をめぐってどのような攻防が繰り広げられるのか――。
 
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 23年12月下旬のある日、皇居近くにそびえるパレスホテル東京の前に記者やカメラマンが集まっていた。所属議員99人を誇る自民党の最大派閥、清和政策研究会(安倍派)の「巨額裏金事件」。全国から応援検事50人をかき集めて異例の捜査体制を敷く特捜部はその日、「大物議員」らの事情聴取を行うと見られていた。しかし、議員らがホテルに入る様子がマスコミのカメラに捉えられることはなかった。

「パレスホテルで地検の聴取を受けた安倍派のある議員によると、事前に車のナンバーなどを地検側に伝えて登録し、その車でホテルの地下駐車場まで行くことになっていたそうです」

 と清和会関係者が明かす。

「地下駐車場に着くと、そこに検察事務官が迎えに来る。聴取を行うホテルの部屋番号は事前には伝えられなかったといいます。地検側はマスコミに写真などを撮られることを警戒し、ホテルの地下駐車場に入れる車を制限していたようです」(同)

聴取の二つの目的
 この議員の聴取が行われた部屋はツインルームだったという。

「聴取の目的は2点ある、と検事は議員に説明したそうです。一つはキックバックされた金の使途、もう一つは誰が、なぜその金を政治資金収支報告書に記載しなかったのか。その議員は秘書に対し不記載の指示をしておらず、また、受け取った金も自分の政治団体に入金した上で領収書も残していたため、“問題なし”と判断されたといいます」(同)

 目下、安倍派とその所属議員にかけられている嫌疑は、政治資金規正法違反罪(不記載・虚偽記載)である。同法の時効は5年。安倍派では、毎年開催してきた派閥パーティーの際、所属議員にパーティー券(パー券)の販売ノルマを課し、ノルマ超過分の代金は議員側に戻すのが慣例となっていた。そのキックバック分が派閥と議員側両方の収支報告書に記載されず、裏金に。その額は直近5年で実に5億円にも膨れ上がっていた。
 
高額キックバック議員
 数十人もの国会議員がターゲットとなっている前代未聞の捜査の現状を俯瞰するには、「派閥側」と「議員側」に分けて考えるのがいいだろう。

 先にご紹介した、パレスホテルで聴取された議員の例は、言うまでもなく「議員側」の捜査だ。聴取の中で議員が検事から聞かれている通り、収支報告書への不記載を秘書に指示していた場合、秘書だけではなく、議員本人も立件される可能性が出てくる。

「特捜部は、受け取ったキックバックの額が大きい順に聴取しています」(地検担当記者)

 中でも、特捜部が立件を視野に入れている議員とされるのが「高額キックバック議員」としてすでに新聞などで繰り返し名前を報じられている面々。すなわち、キックバック額5千万円超の大野泰正参院議員(64)、4千万円超の池田佳隆衆院議員(57)、谷川弥一衆院議員(82)の三人である。

事務局長は逮捕される? 
 一方、「派閥側」の捜査はどうなっているのか。

「安倍派の会計責任者たる事務局長は最終的に逮捕、あるいは在宅起訴になる公算が大きい」(同)

 捜査のポイントは、安倍派の事務局長が派閥の収支報告書への不記載を決めた背景に、“誰”の指示があったのか、だ。派閥会長を務めた細田博之元衆院議長と安倍晋三元首相はすでに他界している。それ故、過去5年の事務総長経験者である下村博文元文科相(69)、松野博一前官房長官(61)、西村康稔前経産相(61)に、現職の高木毅・前党国対委員長(67)を加えた四人の関与が焦点になっているわけである。ただし、

「議員と会計責任者との共謀を問う場合、派閥の事務総長という肩書にこだわることはありません」(元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士)

独自の「秘密ルール」
 当の事務局長は民間企業出身である。彼を安倍派に引っ張ってきたのは、世耕弘成前参院幹事長(61)だという。その世耕氏が牛耳る参院安倍派のパー券裏金化に独自の「秘密ルール」があることをいち早く指摘したのは本誌(「週刊新潮」)である。改選を迎えた参院議員はパー券の販売ノルマが免除され、販売分を全て裏金化することが許されていたのだ。

「この特殊なルールを世耕さんが取り仕切っていた、となった場合、検察が世耕さんの刑事責任を問う可能性もあります」

 と、若狭弁護士は言う。

「派閥の会計責任者との共謀を立証して幹部議員の刑事責任を問うのが難しいのは間違いありません。しかし、事務総長経験者の一人くらいは責任を問わないと話にならない。会計責任者の立件だけで終わり、となったら特捜部の負けだと思います」(同)
 
二人の人物に照準
 無論、特捜部とてただ手をこまねいているわけではない。議員や秘書の聴取、証言の照会、ブツ読み……。膨大な証拠が積みあがっていく中で、特捜部は二人の人物に照準を合わせた。西村前経産相と、高木前国対委員長――。二人の過去の動向が捜査の焦点となっている背景に、派閥トップだった安倍元総理の「鶴の一声」があったというのは、何たる皮肉だろうか。

「安倍さんがキックバックをやめろ、と指示したのは事実だと思います。安倍事務所に昔からいる女性秘書が問題点に気付き、安倍さんに進言した、と聞いています」(安倍派議員の秘書)

 21年11月に派閥会長に就任した安倍元総理は22年4月ごろにキックバック中止を提案したとされる。派閥パーティーが行われたのは、その約1カ月後。当時の事務総長は西村前経産相だ。西村事務所の関係者によると、

「あの時はパー券を売り始めてからキックバックをやめることになったので、他の議員の秘書から“なんでキックバックをやめるんだよ”とウチの事務所にクレームが寄せられた」

二つの大きな変化
 その後、派閥上層部には二つの大きな変化があった。一つは7月に安倍元総理が凶弾に斃(たお)れたこと。もう一つは、8月に事務総長が高木前国対委員長に代わったことである。

「西村さんがまだ事務総長を務めていた時期に、“キックバック分は個々の議員側のパーティー収入として計上させよう”という案も検討されたようです。しかし、8月に事務総長に就任した高木さんの元で方針が転換された。結局、9月にかけて従来通りの方法でキックバックが行われたとみられています」(全国紙社会部デスク)

 本誌23年12月28日号でご紹介した通り、裏金を“議員側のパーティー収入として計上”するのは、西村事務所で行われてきた手法だ。結局、派閥全体としてその方法が取られることにならなかったのは、西村前経産相が事務総長の座を退いたせいだろうか。

 いずれにせよ、22年5月の派閥パーティーが特捜部の捜査の焦点になっていることは間違いない。

「この年の7月に参院選が行われていることも、諸々の判断に影響しているのかもしれません」(永田町関係者)

 参院安倍派には独自の「秘密ルール」が存在したことは先に触れたが、

「22年5月のパーティーでも改選を控えた参院議員の事務所についてはノルマが免除され、売った分全てが議員の裏金になっています。安倍さんがキックバック撤廃を指示したにもかかわらず従来通りの裏金作りが許されたのは、選挙に金がかかった参院議員に配慮してのことだった可能性があります」(同)
 
責任の押し付け合い
 

 
 
そうした「重要決定」を下したのは西村前経産相だったのか、それとも高木前国対委員長なのか。

「西村さんと高木さんは互いに責任を押し付け合っているようですね」

 と、明かすのは先の清和会関係者である。

「二人とも、“俺は悪くない、あいつが悪い”という情報を知り合いの記者を使って流そうとしているようですが、余裕があるのは西村さんのほうらしい。自分は安倍さんからキックバックをやめるよう言われて検討した立場。従来通りキックバックしたのは高木さんだから、ということなのでしょう」(同)

 若狭弁護士(前出)は、

「安倍会長がキックバック中止を命じていたのに、高木事務総長の時代にキックバックが実行された。これは、派閥の会計責任者に対して高木事務総長がキックバックの実行を指示した状況証拠となり得ます。つまり、高木さんの共謀を立証できる可能性があります」

 として、こう続ける。

「ただ、西村さんも“引き続き不記載にする”と会計責任者に指示していた場合、共謀を問えるかもしれません。しかし、形式犯に過ぎない政治資金収支報告書の不記載で議員を二人も立件するとは考えづらい。最終的には、より主導的に指示した議員のみを立件することはあり得ると思います」

 それが高木前国対委員長だった場合、特捜部は別の“大物”の関与を視野に入れなければならなくなる。

「安倍さんが撤廃を命じたキックバックを従来通りに行うという、重大な判断を高木さんが一人でできたはずがありません。相談相手として考えられるのは、安倍派座長の塩谷立元文科相(73)か、森喜朗元総理(86)。高木さんが大臣や国対委員長になれたのは、森さんのおかげなので、森さんに相談して決めた可能性は大いにあると思います」(前出・清和会関係者)

5年で1億円超が裏金化か
“パンツ泥棒の過去あり”と本誌に報じられて以降、永田町では「パンツ高木」と呼ばれている高木氏と森元総理は同じ北陸出身である。

 特捜部が議員や秘書への聴取の中で、“キックバックの一部を森元総理に上納していなかったか”と聞いていることは本誌23年12月28日号でお伝えした。そればかりか、捜査の焦点となっている22年5月のパーティーを巡っても、派閥の“ドン”たる森元総理の名前がちらつき始めた、というわけである。

 特捜部は目下、安倍派と並行して志帥会(二階派)の裏金作りについても捜査を続けているが、こちらでも“ドン”である二階俊博元幹事長(84)の存在に行き当たる可能性が高い。

「安倍派は所属議員側に裏金がたまる手法だったのに対し、二階派は派閥側に裏金がたまるスキームです」

 全国紙社会部デスク(前出)がそう解説する。

「例えば、1回の派閥パーティーの収入が1億円だった場合、8千万円分を収支報告書に記載し、2千万円を裏金化。各議員へのキックバックは記載した8千万円の中から出すのです。二階派では5年で1億円超が裏金化されたと見られています」

 二階派に所属していたある議員が言う。

「派閥で裏金作りが行われていたことは、所属議員側は全く知りませんでした。それを知っていたのは、派閥の会計責任者と二階さんだけでしょう。そのお金の使い方を決めるのも、二階さんだと思います」

 居並ぶ安倍派の大物議員だけではなく、森元総理や二階元幹事長まで――。誰も立件できなかった時、「最強の捜査機関」である特捜部の威信は保てるだろうか。

「週刊新潮」2024年1月4・11日号 掲載