特捜部は通常国会開会までに裏金疑惑の捜査を終わらせる見通し
 森氏は世耕氏の心境をこう推測する。

〈世耕は自らの立場を誇りながらも、検察捜査の危険を感じていたのかもしれない。疑惑の浮上後は、周囲に当たりちらしてきたという〉

 さらに、安倍派の裏金疑惑を巡るキーパーソンの一人が事務局長である松本淳一郎氏だ。事務局長は派閥のカネを管理する立場にある。実は世耕氏は、「5人衆」の中でもとりわけ松本氏との関係が深い。森氏はこう綴っている。

〈世耕もまた松本との関係性が注目されている。先の安倍派幹部議員が明かす。

「松本氏は前任の事務局長の定年に伴い、世耕さんがNTT勤務時代の先輩として安倍(晋三)さんに『事務のプロです』と引き合わせた。世耕さんがこの先安倍派を牛耳るために送り込んだと見られています」〉

 

 昨年12月、東京地検特捜部が自民党安倍派(清和政策研究会)の裏金疑惑を巡り、強制捜査に踏み切った。その安倍派「5人衆」のひとりであり、前参院幹事長の世耕弘成氏が、特捜部がすでに水面下で捜査を始めていた昨年7月末、ノンフィクション作家の森功氏の取材に対して、心の内を明かしていた。

 

 

「5人衆」は早い段階で検察の動きを察知
 そもそも東京地検特捜部が捜査を始めるきっかけとなったのは、2022年11月の神戸学院大学の上脇博之教授による刑事告発だった。以降、特捜部は安倍派に対してひそかに捜査を続けてきた。

 世耕氏に加えて、松野博一前官房長官、萩生田光一前政調会長、高木毅前国対委員長、西村康稔前経産大臣ら「5人衆」は、早い段階で検察の動きを察知していたと見られる。

   森氏のインタビューに対して、世耕氏は安倍派5人衆について次のように語っていた。

「5人は岸田政権で官房長官や経産大臣、政調会長、国対委員長、参院幹事長に就きました。われわれには官邸や他派閥に対するバーゲニングパワー(交渉力)があります。松野さんは官邸の要、西村さんは花形閣僚の経産大臣で、萩生田さんは政策決定の責任者、高木さんは衆議院の法案通過のポイントを握っていて、私は参議院側を押さえている。塩谷(立)さん下村(博文)さんが官邸に『俺の意見を聞け』と言ってもどうにもならないけれど、私を無視すると参院を敵に回しちゃう」

 全能感にあふれる力強い言葉だが、その一方で、世耕氏は次のような発言も残している。

「ただし、こうした役職はチャンスであるけれど、リスクも抱えています」

特捜部は通常国会開会までに裏金疑惑の捜査を終わらせる見通し
 森氏は世耕氏の心境をこう推測する。

〈世耕は自らの立場を誇りながらも、検察捜査の危険を感じていたのかもしれない。疑惑の浮上後は、周囲に当たりちらしてきたという〉

 さらに、安倍派の裏金疑惑を巡るキーパーソンの一人が事務局長である松本淳一郎氏だ。事務局長は派閥のカネを管理する立場にある。実は世耕氏は、「5人衆」の中でもとりわけ松本氏との関係が深い。森氏はこう綴っている。

〈世耕もまた松本との関係性が注目されている。先の安倍派幹部議員が明かす。

「松本氏は前任の事務局長の定年に伴い、世耕さんがNTT勤務時代の先輩として安倍(晋三)さんに『事務のプロです』と引き合わせた。世耕さんがこの先安倍派を牛耳るために送り込んだと見られています」〉

 特捜部は1月下旬の通常国会開会までに裏金疑惑の捜査を終わらせる見通しだ。過去5年間で受け取ったキックバックの総額が1000万円を超えると報じられている世耕氏だが、果たして捜査の行方はどうなるのか。

 森氏が執筆した「 安倍派五人衆の驕り 」では、昨年8月から9月にかけて、森氏が萩生田氏と松野氏にインタビューした際のやり取りも紹介。この2人は安倍派の資金面や運営の在り方に加え、解散の行方などについても語っていた。記事全文は、1月10日発売の月刊誌「文藝春秋」2月号及び1月9日公開の「 文藝春秋 電子版 」に掲載されている。