きょうの潮流
 

 竜は水をつかさどる神です。このため竜の伝説は湖や池にまつわるものが多い。自らの美しさと若さを永久に保ちたいと願って、竜に化身した田沢湖の辰子姫。竜になった八郎太郎がつくった八郎潟。壮大なスケールの伝説は作家の創作欲も刺激してきました

 

▼松谷みよ子の『龍の子太郎』で、太郎は母竜の背に乗って湖を干拓、広い土地を生み出します。元は長野県の伝説。「大地を生むことは、水を統(す)べる力を持つ竜だからこそ、でき得た」と、作者は24年前の辰年に本紙に寄稿しています

 

▼泉鏡花の戯曲「夜叉ケ池」も有名です。たびたび大水をおこした竜神が、山中の池に封じ込められていました。竜との約束で、山では昼夜に三度、一日も欠かさずに鐘をついていました。しかし、権勢を笠(かさ)に着た代議士のせいで鐘はつかれず、村は大水に飲み込まれてしまいます

 

▼夜叉ケ池は福井県と岐阜県の県境近くにあり、いまも神秘的な水をたたえています。長野県の黒姫伝説では、怒った竜が四十八池の水を落として大洪水を起こしました

 

▼竜には人間の力の及ばない自然現象への恐怖と畏敬が仮託されています。うまく統御できれば豊かな実りをもたらします。一方、ひとたび人間が約束を破れば、途方もない災害が襲ってきます

 

▼巨大台風、集中豪雨などの異常気象は、人間の活動による温暖化が原因と言われます。人間のおごりが竜の怒りを呼んでいるのです。人間と自然の調和を取り戻し、竜を鎮めることができるかどうか。正念場です。

この悲惨な現実を見ても、維新は万博を続行するというのか?!人間の「命」より、利権「万博」が大事なのか!💢

 

 

「被災者の健康維持支援にも一層力を入れ、疾病の発生や悪化、災害関連死を防いでください」

 能登半島地震をめぐる5日の非常災害対策本部で、岸田首相はこう強調していた。それなら、被災者医療に関して一刻も早く負担軽減策を講じるべきだ。

 地震による石川県内の死者は100人を超えた。安否不明者は222人に上る(いずれも6日昼現在)。約3万3000人が避難生活を強いられている惨状だ。

 避難所ではインフルエンザや新型コロナウイルスの感染者が増えているという。医療へのアクセスが欠かせない中、厚労省は被災者が健康保険証や介護保険証を所持していなくても、保険診療や介護サービスを受けられる通知を全国の自治体に発出。ただ、医療費の自己負担分の減免などは、保険者である市町村の判断に委ねられている状況だ。

 そこで、全国保険医団体連合会(保団連)が5日、首相と厚労相に宛てた「令和6年能登半島地震における被災者医療に関する緊急要望書」を発表。内閣府と厚労省に送付した。

 

 保団連は要望書で〈被災者の医療確保について、1月1日並びに2日に医療保険における一部負担金及び保険料については保険者の判断で減額・免除ができる旨の通知が示されました〉と前置きしつつ、〈しかし、これらは、阪神淡路大震災や、東日本大震災、熊本地震の時に出された特例措置による一部負担金や保険料の免除通知とは異なります〉と指摘。〈特例措置による医療費一部負担金および入院時の食事一部負担金の免除、保険料(税)の免除〉などを早急に実施するよう要請した。

 保団連の前谷かおる事務局次長がこう言う。

「被災者の医療費や保険料について厚労省が現在出している通知は、あくまでも保険者が減免を判断する形にとどまっています。東日本大震災や熊本地震の時のように、医療費及び保険料を免除する特例措置が追って出されると期待していますが、能登半島地震は局地的でありながら甚大な被害をもたらしています。被災者への負担軽減は一刻も早い方がいい。まずは被災者に医療費などの負担をさせないことが第一であり、その後、国が費用について策を講じればいいと考えています。早急に決断していただきたい」

 岸田は復旧・復興について「必要な予算は柔軟に確保していく」と力を込めている。医療費や保険料などの全額免除はなぜプッシュ型で進めないのか。

 

 

主張
能登半島地震
一刻を争い命救う支援総力を

 

 能登半島地震による被害の大きさは日を追って明らかになっています。石川県内で6日午後4時までに確認された死者が126人になりました。安否不明者は200人以上です。道路の寸断によって救援の手が届かない地区もあり、命を救う対策は一刻を争います。

物資をすべての被災者に
 余震が続く中、懸命の救助作業が続いています。天候の悪化が予想され、人命救助は時間とのたたかいになっています。

 避難した住民から「水も食料もない」と悲痛な訴えが相次いでいます。日本海に突き出た、山の多い半島で、がけ崩れが多発し、道路は至る所で損壊しています。交通の途絶が、救援物資の輸送や緊急車両の往来を妨げています。

 石川県内の避難所の状況は極めて深刻です。物資が届いた所でも量が不足しています。地震当日に助かった命が避難後に失われることがないよう、災害関連死を防ぐ対策が急務です。

 水、食料、燃料をはじめ被災者が必要とする物を届けるために、政府、自治体が輸送手段の確保に総力をあげなければなりません。

 トイレの問題は深刻です。上下水道の復旧にはなお時間がかかるとみられます。給水車の派遣や、仮設・携帯トイレを届けることが切に求められています。

 体調を崩す避難者が出ており、インフルエンザなど感染症の拡大が懸念されます。65歳以上が住民の半数を占める自治体もあります。医師、医療スタッフが現地に入れるよう支援が重要です。

 通信の復旧も不可欠です。多くの地域で電話、インターネットが通じません。住民が窮状を伝え、救援活動を加速するために通信の回復、電源の確保が急がれます。

 孤立した地区や、避難所にたどり着けない住民に救援物資を届けることは差し迫った課題です。通信が途絶したため、孤立を外に伝えられない集落があるとみられます。実態を把握するとともに、政府が、空からの輸送などあらゆる手段を使って、すべての被災者に物資を届ける必要があります。

 避難所の運営には、ジェンダー平等の視点が大切です。過去の災害ではトイレ、着替え、授乳の際、女性が周囲を気にせざるをえず、女性、子どもが性暴力被害に遭ったことも報告されています。仕切り、女性専用スペースの設置をはじめ、人権を守る手だてが欠かせません。要望を反映できるよう、運営に必ず女性を加え、相談体制を整えることが求められます。

 被災者の命を守るためには、当面の住まいが不可欠です。大量の仮設住宅の建設には日時を要します。近隣自治体を含めた公営住宅の活用、ホテルや民間住宅の借り上げといった緊急の住宅確保に手を尽くすべきです。

政治の優先課題として
 災害関連死を含めて地震で死者が100人以上になるのは2016年の熊本地震以来です。救援、復興は政治の優先課題です。岸田文雄政権は当面の支出として23年度予算の予備費から47・4億円の支出を表明しましたが、さらに多くの予算が必要です。

 政府の裁量で支出できる予備費を緊急の災害対策に使うことは当然ですが、大規模な被災者支援のためには、自治体や住民の要望を聞いて十分な予算案を組み、国会で審議しなければなりません。

 

 

石川・珠洲ルポ

「助けて」に耳澄ます

 
 1日に起きた能登半島地震は6日時点で死者126人、行方不明者210人と、日ごと、その深刻な被害が明らかになっています。地震と津波で甚大な被害が出た石川県珠洲市に入りました。(細野晴規、矢野昌弘)
 
(写真)津波の被害を受けた住宅に安否確認をする消防隊員=6日、石川県珠洲市(細野晴規撮影)
 
 「消防です。誰かおられますか。おられたら返事してください」

 1階がつぶれた木造住宅に、滋賀県から派遣された消防隊員たちがいっせいに大きな声で呼びかけます。

 そして、かすかな声も聞き逃すまいと耳を澄まします。それを何度か繰り返すと、隊員たちは隣の住宅へ。

 ここは珠洲市の飯田地区。住宅の白い壁に残った津波の痕跡は、4メートルほどの高さがありました。この地区では、がれきや津波で流された車が道路をふさぎ、至る所が通行止めとなっています。

 近所の女性(72)は、倒壊した家屋に誰が住んでいたかなど、隊員から聞かれていました。女性は「80代の1人暮らしの男性があの家に住んでいたけど、安否不明なの」と不安そうです。

 ところが、1匹の猫を見つけると笑顔に一変。「生存者発見」と飼い猫のスズちゃん(3)と再会しました。「ここで捕れる魚はなんでもおいしい。漁師ががんばって安く魚を提供してきた、燃料高騰でもね。これを機に『もう漁師やめる』と何人も言っていてさびしい」と話します。

 漁港には、転覆した船や、津波で岸壁に打ち上げられた漁船が斜めに傾いていたり、壊れたトラックが海に落ちかけていました。漁船数隻が津波で流されたままになっているといいます。

 男性(72)が営む船舶修理の店の前の道には大量の漁具や金属製の大きな部品が転がっていました。「なんとか仕事用の車はエンジンがかかった。車が通れるようになるだけで、片付けがかなりはかどるのに」と、車道の確保を希望していました。

余震恐怖 家いられない
給油に長蛇の列
 
(写真)ガソリンスタンドに並ぶ車列=6日、石川県珠洲市(細野晴規撮影)
 
 石川県珠洲市役所に近いガソリンスタンドでは6日の午前8時すぎには50台を超える車が給油に並んでいました。給油できるのは1台20リットルまで。

 スタンド店員は「営業時間はわからない。ガソリンが届いたら営業開始で、なくなったら閉店するだけ」といいます。

 給油待ちの軽自動車の男性(70)は妻(70)と地震以降、車中泊をしています。「夕方6時から朝7時まで夜の間中、暖房のためにエンジンをかけている。腰はまだ痛くないけど、残り10リットルぐらいしか残ってない」と話します。

 男性の家は、屋根瓦が一部落ちたぐらいといいます。それでも車中泊なのは「震度7の揺れが怖かった。次にまた来たら、死んでしまう」と1日の地震の怖さを語ります。
 
(写真)津波などの被害を受けた沿岸部=6日、石川県珠洲市(細野晴規撮影)
 
 市役所駐車場で休憩していた女性(62)は夫と2人で日中を車中で過ごし、夜は避難所で寝ます。自宅は津波で1階は散乱し、水浸し。「津波で下水道の水も流れてきたのか、ヘドロのにおいで臭い。他人の乗用車が玄関をふさいでいる」と語ります。

 珠洲市内では6日午前5時すぎにも震度5の大きな余震が発生。震度3の余震も多数起きています。

 女性は「昨年5月の地震以来、食料を備蓄してきたのでまだ余裕がある。やっぱり津波や大きな地震がまた起きないとわかるまでは落ち着かない。生活再建のめどがつけられない」と語りました。