私たちは、戦争は最大の人権侵害だと訴えてきました。一刻も早く戦乱が収まり、世界経済が正常な軌道に戻ることを祈ってやまない大みそかです。

 

迎春

『声なき歴史などない。焼き尽くし、破壊し偽ろうとも、人の歴史は口を閉ざすことを拒む』ジャーナリスト・歴史家、エドゥアルド・ガレアーノ

 

悲惨な歴史に蓋をすることなく、正しく伝えていく事の重要さを説いた一文です。アイヌの人権を蹂躙し続ける杉田水脈を始め私達の周りは目を閉ざすと一気に山崎雅弘氏が言い続けている「大日本帝国回帰」に覆われてしまいます。今年は誰もが温かい風を感じるようなそんな年になってほしい…そんなささやかな気持ちを抱いている方々と共に歩いて行きたいと思っています。元旦

 

 

2023年が暮れてゆきます。読者の皆さんは、それぞれの1年を過ごされたことと思います。
 

 3年以上にわたって世界を覆い尽くし、私たちの生活を脅かした新型コロナウイルスの感染拡大は一応収束し、日本では5月に感染症法上の位置付けが、感染力が強く重症化リスクも高い「結核」などの2類相当から5類に移行し、日常を取り戻しています。
 

 ただ、この間収まっていたインフルエンザが再び猛威をふるっているようですので安心は禁物。引き続きマスクの着用や手洗いの励行などが必要なようです。
 

 コロナが落ち着きをみせる一方で、収まらないのが戦火です。
 

 22年に始まったロシアによるウクライナ侵攻は終わりが見えず、中東では新たに、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの攻撃が始まりました。
 

 民間人の多くが犠牲となり、今も苦しんでいます。戦いが終わっても、憎しみという火種はお互いに消えることはありません。一刻も早い停戦に向けて国際社会は一層の努力をすべきです。
 

 戦乱は、資源・エネルギー価格の高騰という形で世界経済に深刻な影響を与えています。
 

 特に、資源を輸入に頼る日本では、電気・ガス料金やガソリン代の上昇に直結していますので、暮らしへの打撃が深刻です。
 

 これに輪をかけているのが円安の進行でしょう。主な要因は、米国が過熱する経済に対応するため金利を引き上げてきたのに対し、日本は安倍晋三内閣以来の金融緩和、低金利政策を継続したことにあります。日米間の金利差が広がり、ドルが買われたのです。
 

◆アベノミクスの後遺症
 資源・エネルギーの高騰と過度の円安で物価はみるみる上がりました。アベノミクスの後遺症と言えます。読者の皆さんも日々の買い物で、価格上昇だけでなく、内容量の減少などで物価高を実感しているのではないでしょうか。
 

 暮らしの厳しさは、日本漢字能力検定協会(漢検)が毎年公募している世相を表す「今年の漢字」に表れています。今年一番多かったのが「税」でした。
 

 防衛力の抜本的強化を目指す岸田文雄首相は、関連予算を含む防衛費を27年度に国内総生産(GDP)比2%に倍増させるため「軍拡増税」を決めました。
 

 ただ、所得税や法人税、たばこ税を増税するため暮らしへの影響が避けられず、根強い反対で開始時期が決められない状況です。
 

 増税の一方、物価高に苦しむ国民を支援するため、1人当たり4万円の減税を実施する方針も決めました。しかし、実際に減税されるのは来年6月以降で、減税効果は不透明です。
 

 今年の漢字に「税」を選んだ人は「年末に来て増税と減税の話題で持ちきりです。生活に直結する問題なので、慎重に議論する必要があります」などと、その理由を記しています。
 

 政府は税制改正大綱と24年度予算案を閣議決定しましたが、自民党派閥のパーティー券を巡る問題で浮足立ち、内容が十分に議論されたとはとても思えません。
 

 税金の在り方を決めるのは議会制民主主義の根幹です。いいかげんに決めていいはずがない。
 

 首相や閣僚をはじめ国会議員は税金の在り方に国民の関心が集まっていることを軽視してはなりません。1月下旬に召集予定の通常国会では、税金の在り方を徹底的に議論するよう求めます。
 

◆最大の人権侵害止めよ
 さて、今年のはじめに掲載した「論説特集」を覚えている読者もいらっしゃると思います。日々、社説を執筆する論説委員を顔写真付きで紹介したものですが、今年は「日本一早い今年の漢字」と題して、漢字1文字に思いを込め、自己紹介してもらいました。
 

 その漢字を順不同で紹介すると「晴」「集」「守」「連」「純」「頂」「潜」「信」「防」「解」「育」「担」「在」「脱」「正」「安」「覚」「添」「鎮」「復」「乱」。漢検の「今年の漢字」の20位以内に入ったものは一つもありませんでした。
 

 論説委員の視点が独自なのか、それとも先見性の乏しさか…。そのどちらであっても、人々の暮らしに寄り添い、権力を厳しく監視し、言わねばならないことを、正しいしつこさで言い続ける姿勢は来年も変わりません。
 

 私たちは、戦争は最大の人権侵害だと訴えてきました。一刻も早く戦乱が収まり、世界経済が正常な軌道に戻ることを祈ってやまない大みそかです。