しんぶん赤旗の報道をきっかけに発覚した自民党派閥のパーティー券をめぐる“裏金”疑惑は、「令和のリクルート事件」とも言われている。12月19日には安倍派と二階派の事務所に東京地検特捜部が強制捜査に入り、永田町は騒然とした空気に包まれた。そして今回、問題となったパーティー券とは別の政治資金についても問題視する声が出ている。

 

 時効にかからない過去5年間で、ノルマ以上にパーティー券を売り上げた議員にキックバックされた金額は、安倍派が約5億円、麻生派が約3億2千万円、茂木派が約1億7千万円、岸田派が約1億9千万円、二階派が約3億8千万円と推計される。これらのうち、安倍派では「入り」も「出」も政治資金収支報告書に記載されず、“裏金”とされた。この問題で、政務三役を辞任せざるをえなくなった同派の宮沢博行前防衛副大臣は、派閥から「記載しなくていい」との指示があったこと、「しゃべるな、しゃべるな」とかん口令がしかれたことを打ち明けている。

 政治資金規正法はその1条において、「政治活動の公明と公正を確保し、もって民主政治の健全な発達に寄与すること」を目的に掲げる。そしてリクルート事件の反省の下で自民党が1989年に制定した「政治改革大綱」では、政治資金について「節減・公正・公開」の新たなルールを確立する必要をうたい、政治資金の「公開性の徹底」を宣言した。

■裏金作りは続けられていた

 しかし日本歯科医師連盟(日歯連)から平成研究会(当時の橋本派)へ1億円の小切手が渡ったものの、政治資金収支報告書に記載されなかった「日歯連闇献金事件」が2004年に発覚し、翌05年に政治資金規正法が改正され、政治資金団体への寄付や政治資金団体が行う寄付(千円以下の寄付、不動産による寄付は除く)は、口座振り込み・振り替えが義務付けられた。

 にもかかわらず、今回発覚したパーティー券による“裏金作り”は続けられていた。2018年から22年までに安倍派から4800万円の“キックバック”を受けとっていたと報道され、そのうち直近3年間に3200万円の受領を認めた池田佳隆元文科副大臣は、事務所を通じて「政策活動費と認識し、政治資金収支報告書に記載しなかった」と主張した。

 

 政策活動費――。それは政治の世界で還流する資金であり、ある種のブラックボックスでもある。

 政党から政治家個人への寄付になり、収支報告の義務を負わないため、政治資金収支報告書に記載する必要がない。11月22日の衆院予算委員会で、有志の会の緒方林太郎議員はこの問題を取り上げ、「派閥のパーティー券の裏金よりも、もっともっとすそ野も広いし、額もでかい」と述べている。

■20年間で456億円!

 朝日新聞の調査によれば、2021年までの20年間で主要政党が支出した政策活動費は456億円にものぼる。実際に22年の各政党の収支報告書を調べると、自民党は14億1630万円、立憲民主党は1億2千万円、国民民主党は6800万円、日本維新の会(国会議員団)は5057万5889円を「政策活動費」として党幹部(個人)に支出している。また衆院選が行われた21年の自民党の政策活動費は、17億2870万円にものぼるのだ。

 こうした政策活動費とは、これを受けた政治家にとって、収入なのかどうなのか。

「政治家個人が政党から政治資金の提供を受けた場合には、所得税の課税上、雑所得となる。政治資金にかかる雑所得の金額は、1年間の総収入金額から必要経費の総額を差し引いて計算する。政治活動のために支出した費用を差し引いた残額が課税の対象となる。残額がない場合には、課税はない」

 緒方氏の質問に対して星屋和彦国税庁次長は、こう説明した。なるほど所得税法第37条で必要経費の控除は認められているものの、その範囲は「当該事業の業務と直接関係を持ち、かつ業務の遂行上必要なもの」と解されている。これを政策活動費に当てはめれば、必要経費は「政治に直接関係を持ち、その遂行に必要なもの」に限ることになり、政治資金の透明化の要請に鑑みれば、その使途について厳格性が求められるとともに、公にしなければならなくなる。

 しかし実際には(日本維新の会以外は)「つかみ金」となっており、その内容については前述したとおり政治資金収支報告書に記載されることはない。12月8日の衆院予算委員会でも、岸田首相は「自民党における政策活動費は、政策立案とか調査研究、党勢拡大を行うために党役職者の職責に応じて支出している。政治資金収支報告書で公開すべき事柄は政治資金規正法で定められているが、政治家個人については政治団体とは異なり、収支報告の対象にはなっていない。しかし税務当局から求められた場合には、きちんと説明すべきだ」と答弁した。

 とはいえ、いくらなんでも政策活動費を全て使い切ることはないだろう。もし政策活動費の全てを必要経費として使い尽くさなければ政治活動ができないならば、14億円以上を必要経費とする自民党と連立を組む公明党が「政策活動費ゼロ」というのはありえない。

■政治資金の説明しないのは裏切り行為

 11月22日の衆院予算委員会で緒方氏はこう述べている。

「政治団体は法人税を払っていない。そして政党も、一定の要件が備われば、所得税を払わなくてよい。だからこそ、我々は高い説明責任が求められるのではないか」

 国会議員が選出されるのは、有権者の信頼に基づく委任にほかならない。にもかかわらず、政治資金について十分な説明をしないのは、裏切り行為そのものだ。そのような為政者に民主主義的正統性があるといえるのか。

(政治ジャーナリスト・安積明子)

■あづみ・あきこ/兵庫県出身。慶應義塾大学経済学部卒。国会議員政策担当秘書資格試験に合格し、政策担当秘書として勤務。その後テレビなど出演の他、著書多数。「『新聞記者』という欺瞞|『国民の代表』発言の意味をあらためて問う」(ワニブックス)などで咢堂ブックオブイヤー大賞(メディア部門)を3連続受賞。近著に「眞子内親王の危険な選択」(ビジネス社)。趣味は宝塚観劇。

 

 

自民党・松川るい参院議員に「裏金疑惑」直当たり 『やましいことですか? 私は全くありません』

 
 
フランス研修中に撮影された写真により、「エッフェル姉さん」という言葉が、流行語大賞にノミネートされるほど話題となった、自民党の松川るい参議院議員に自民党の『裏金問題』について、ジャーナリストとして安藤優子さんが取材した。

■政治にお金がかかる理由は「人件費」
自民党の政治資金パーティーの収支をめぐる裏金疑惑では、閣僚たちが次々と更迭され、検察が強制捜査に乗り出す事態にまで発展している。 安倍派のパーティーの映像を見ると、安倍元首相のすぐ近くに、松川るい議員の姿があった。
Q.ご自身やましいことはない?

自民党 松川るい参議院議員:

私ですか?全くありません

松川議員はこれまで、疑惑について否定しているが、安藤優子さんが改めて切り込んだ。

ジャーナリスト 安藤優子:

まあズバリ伺いますけど、そのいわゆる裏金疑惑で大変じゃないですか?

自民党 松川るい参議院議員:

もちろん、国民のみなさんの、政治に対する不信を招いている、非常に重大なことだと思いますし、捜査中というか調べている最中だと思うので、しっかり解明をして、国民の皆さんに対してきちんと説明をし、正すべきを正す。これは制度も含めて必要なことを正して行くべきだと思います

ジャーナリスト 安藤優子:

どうしてこんなにお金が必要なんですか?

自民党 松川るい参議院議員:

そこはあのやっぱり。なんでしょうね。選挙に勝とうと思うと、やっぱり普段、活動してないといけないと。活動するっていうときに…

ジャーナリスト 安藤優子:

それはいわゆる“接触”ですよね?

自民党 松川るい参議院議員:

接触。で、自分が接触するだけじゃなく、体ひとつで足りないし…一番たぶんお金がかかるのって人件費なんですね。何ていうのかな。政治活動に。お金はやっぱり必要な部分はある

■パーティー券の販売については「面倒くさい話」
ジャーナリスト 安藤優子:

松川さん自身がパーティー券を売らされたことってありますか?

自民党 松川るい参議院議員:

うん。まぁそれはあの…要するにやっぱり頑張りましょうねっていうことはありますよね。だってあの派閥のパーティーって毎年やってるわけで、そこはみんなで協力して頑張ろうってことですから

ジャーナリスト 安藤優子:

新人の時は結構大変でしたか?

自民党 松川るい参議院議員:

それは大変ですよ!はい

ジャーナリスト 安藤優子:

売れ売れプレッシャーかかるわけですか?

自民党 松川るい参議院議員:

そんなことないですね。まぁだけど、これはね。まぁとにかく面倒臭い話。面倒臭いっていうか、大変いろいろメディアを連日にぎわせ、国民の皆さんの憤りを、当然のことながら買っている話なので、まぁいろいろと…

裏金問題についてはどこか他人事のような説明が続いた松川議員だった。

■「差し控えさせていたきます」は仕方がないこと?
話は、「政治家の説明責任」へと移った。

ジャーナリスト 安藤優子:

本来だったらその場で誠実に知ってることだけをわかってることだけをきちんと話すべきじゃないかっていうことをしみじみ思った。『差し控えさせていたきます』っていうのは、なんともこう、それこそ国民を愚弄してる感じがするんですけど。どう思います?

自民党 松川るい参議院議員:

でも私、あれは仕方がないところがあると思うんですよ。実際、分からないんだと思うんですね。ほとんど断片的にしか状況がわかってないのに、その状況で答えると、かえってミスリーディングになっちゃうことって、私自身が経験、今回の件(エッフェル塔問題)でしましたし

ジャーナリスト 安藤優子:

じゃあ、あの差し控えさせていただきますは、まぁしょうがないと?

自民党 松川るい参議院議員:

永遠に差し控えちゃダメなんですよ。でも、できるだけ早くきちんと調べて明らかにしますということを、一貫して実行するべきだし。ただその時に、少し時間をいただかないと、なかなかきちんとした回答とか、対応はしにくい案件だと私は思う

(関西テレビ「newsランナー」2023年12月27日放送)
 
 

雲隠れ続ける自民・池田氏 「出てきて釈明を」あきれ・憤る地元

 
 
 自民党派閥の政治資金パーティーを巡る事件は27日、衆院愛知3区を地盤とする清和政策研究会(安倍派)の池田佳隆衆院議員(57)=比例東海=の関係先に家宅捜索が入った。裏金疑惑の発覚後、雲隠れを続ける池田氏に対し、地元有権者や自民議員からは「早く出てきて説明すべきだ」と厳しい声が上がった。

 名古屋市天白区の地元事務所には午後1時前、東京地検特捜部の係官ら約10人が入った。

 池田氏は2020~22年に派閥から受けた3208万円の寄付を記載していなかったとして政治資金収支報告書を訂正している。パーティー券収入のノルマ超過分を裏金化し、収支報告書に記載しなかったとする政治資金規正法違反(不記載、虚偽記載)の疑いが持たれている。

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 安倍派所属議員の裏金疑惑が表面化して以降、池田氏は国会や地元の行事に欠席するなど公の場に一切姿を見せていない。
 地元の自民議員のもとには支持者から「(池田氏の)ポスターをはがしてくれ」という厳しい声が多く寄せられているという。「支援者のところにいけば話題は池田氏のこと。支援者からは『本人が出てきて本人の口から説明しないといかん』と言われる」

 今回の家宅捜索を受け、別の自民議員は「本人が逃げ回っているからじゃないの」と冷ややか。一方で「あれだけのパー券をさばくのは相当な根気が必要。一生懸命にやって清和研にも貢献し、報告書に記載すれば問題なかったのに残念だという気持ちもある」と話した。

 池田氏の地元、名古屋市緑区の無職男性(83)は「ずっと隠れており、とにかく出てきて釈明し、地元の人に謝らないといけない。副文科相をやった人がこれでは話にならない」とあきれる。同区の会社役員男性(51)は「捜索に入るのが遅いと思う。民間人ならもっと早く入ったのではないか。この話が出て何週間たっているんだ」と憤った。【川瀬慎一朗、酒井志帆、藤顕一郎】