裏金問題で“大臣更迭”の折も折、「西村康稔」前経産相にまたもや“架空パーティー”疑惑 本人を直撃

 
 
数百万円規模の収入が
 政府・自民党を今なお大きく揺るがし続ける派閥の政治資金パーティー問題。派閥パーティーのチケットを捌いた議員に対し、ノルマ超過分を裏金としてキックバックしていたとして、東京地検特捜部から厳しく捜査を受けているのが清和政策研究会(以下、清和会)、いわゆる安倍派だ。
 
 その清和会を取り仕切る5人衆の一人であり、一連の問題の責任を取る格好で経産相を辞任したのが西村康稔衆院議員(61)。目下、西村氏には別の疑惑も取り沙汰されている。それが「架空パーティー」問題だ。

 政治部デスクが解説する。

「西村氏はスポンサー企業に1枚2万円のパーティー券を複数枚まとめて一括購入してもらっているにもかかわらず、実際にはホテルの会議室などで小規模の会合を開催。参加者として10人足らずの経産省職員を“サクラ”として動員して、パーティーが実施されているかのように見せかけていた疑惑があります」

 自民党関係者が言う。

「総理を目指す西村氏は“とにかく金が必要だ”と、頻繁にこうした会を開いているそうです」

現れたのはご本人
 ところが、

「12月8日に行われた“架空パーティー”の模様を『週刊文春』が報じると、ネットを中心に大炎上。“キックバックに続いてパワーワードきた”“(パー券疑惑が騒がれている)この最中にやる?”などと、西村氏に対する批判の声が多数上がりました」(社会部デスク)

 無論、架空パーティーが事実だとすれば、政治資金規正法上問題になる可能性もある。ところが当のご本人はネットでの批判も法的な問題の指摘も、どこ吹く風だったようで……。12月21日(木)の12時から、永田町にほど近いビルの会議室でまたしても“架空パーティー”を執り行うという情報がもたらされたのである。

 記者が半信半疑のまま、会場となるビルに急行したのは当日の12時30分を過ぎた頃。会場となっているビルの会議室の前には受付こそあるものの、西村氏のパーティーとわかる看板等はなかった。“流石にこのタイミングで開催はないだろう”と諦め、記者が踵を返そうとしたその時だった。閉じられた会議室の扉が開き、現れたのは西村康稔衆院議員、その人――。

 以下、記者と西村氏の一問一答である。

――今回のパーティーは、報じられている架空パーティーでしょうか。

西村前経産相(以下西村氏) …。

――派閥パーティーのパー券問題の捜査中に個人のパーティーを開いたことについて、見解を。

西村氏 …。

――キックバック問題について一言だけでも。

西村氏  …。

 無言のまま車に乗り込み、会場を後にしたのだった――。

 同日、事務所に質問書を送るも、期限までに回答は返って来なかった。

デイリー新潮編集部
 
 

【パー券裏金問題】東京地検特捜部は朝日とNHKを使って世論形成を図ろうとしているのか 「検察リーク説」をベテラン司法記者に聞いた

 
 
 東スポWEBは12月19日、「田崎史郎氏 安倍派・二階派の強制捜査報道は『朝日新聞とNHKをうまく使っている』」との記事を配信。この日に放送された情報番組「ひるおび」(TBS系列)が自民党派閥の政治資金パーティー問題を取り上げたことを伝えた。
 
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 朝日新聞は19日の朝刊1面に「安倍派・二階派、きょう捜索 パーティー券、事務所など 規正法違反の疑い 特捜部方針」とのスクープ記事を掲載。東京地検特捜部が両派の事務所を《政治資金規正法違反(不記載・虚偽記載)容疑で19日にも家宅捜索する方針を固めた。関係者への取材でわかった》と伝えた。

 MCを務める恵俊彰は朝日の報道を「捜索前にこういう情報が出るのはどうなんでしょう」と疑問視。同じくMCを務める弁護士の八代英輝氏が「これは検察からのリークですよ」と解説した。

 政治ジャーナリストの田崎史郎氏も「検察は朝日新聞とNHKをうまく使っていると思う」と指摘。政治資金パーティー問題で両社がスクープを連発しているのは、検察が捜査情報をリークすることで世論の喚起を狙っているからだと語った。担当記者が言う。

「12月13日の『ひるおび』で同じ問題が取り上げられた際も、田崎さんは検察のリークについて発言しました。その中で『報じられた派閥の関係者が自分たちのことを調べても、報道が事実なのかどうか分からない。特捜部の捜査は驚くほど早く深く進んでいる』という興味深い裏話を披露しました。つまり、特捜のリークを元に記事が書かれると、渦中の人物でも真偽が分からないというわけです」

衆院予算委で質問も
 田崎氏は「検察は朝日とNHKをうまく使っていると思う」と指摘したが、昔から両社は検察取材に強いメディアとしてその名が挙げられてきた。

「90年代ですと、読売は『警察には強いが、検察は弱い』と囁かれることもありました。しかし今では、読売が検察に関するスクープを報じても誰も驚きません。2020年、安倍晋三首相が『桜を見る会』の疑惑を追及された際、『検察は、政権に有利な捜査情報はNHKと読売に、不利な情報は朝日にリークした』とある政治ジャーナリストが月刊誌で指摘しています。検察はリーク先についても細心の注意を払い、安倍政権と歩調を合わせながら、牽制も忘れなかったというわけです」(同・記者)

 検察によるリークという指摘がいつ頃からメディアで報じられるようになったのか、新聞のデータベースなどを使って遡っていくと、1988年に起きたリクルート事件に突き当たる。偶然とはいえ、今回の政治資金パーティー問題も“令和のリクルート事件”と呼ばれている。

「1989年4月6日付の朝日新聞の夕刊に『リクルート捜査沈黙に乱れる情報』という記事が掲載されました(註1)。ここに《「東京地検が世論操作のために捜査内容をリークしている」といった怪情報》が流布しているとの一文があります。当時、衆院予算委員会で自民党の議員が検察のリーク問題について質問し、高辻正己法務大臣が『検察が何かの目的で情報を漏らすことがあれば、指揮権発動を促すことにもなりかねない』と答弁しました。指揮権とは、法務大臣が検事総長を通じて、検察官に直接、強制捜査の中止などの命令ができることを指します」(同・記者)
 
検察リークを批判した西部邁
 こうした指摘や報道に、これまで検察側は強く反発してきた。東京地検の検事正を務めた高橋武生氏、特捜部部長を歴任した五十嵐紀男氏や熊崎勝彦氏が、新聞各紙の取材に応じて「検察リーク説」を真っ向から否定している。

 1998年に起きた大蔵省接待汚職事件でも「検察リーク批判」が世論を賑わせた。そのため、当時、東京地検の次席検事を務めていた松尾邦弘氏が緊急の会見を開き、「いわれなき批判」と反論したうえで、リーク説が出るのは報道機関にも責任があるとして、取材を制限すると発表。これに司法記者クラブは反発し、撤回を求めたという騒動も起きた。

 幹部がどれだけ否定しても、検察によるリークを批判する関係者や識者は少なくなかった。内務省の官僚から警視総監を経て政界に転進、法務大臣を務めた秦野章氏は、1992年、朝日新聞の取材に、検察リークは「そりゃあるよ」と肯定。「新聞にリークして世の中を動かそうという権力のワル、それが検察だよ」と断言した(註2)。

 評論家の西部邁氏も1998年に産経新聞に寄稿し、大蔵省接待事件で道路公団の関係者が逮捕されたことを《二年間で二百五十万円程度のこんなささやかな民官接待》と強く批判。以下のように検察リークを問題視した。

《三カ月ほど前から、「特捜が大蔵省に手を入れるそうだ」と情報がマスコミの全域に、しかも一斉に、出回った。これをみて「特捜のリーク」を感じとらないものは、検察という国家権力に魂を吸いとられたもの、つまり(今風の言い方をつかえば)自立せざる市民だけであろう》

検察リーク説への疑問
 ベテランの司法記者に取材を依頼すると、「そもそもリークという言葉の定義すら曖昧です」と言う。ちなみに「広辞苑」(岩波書店)でリークを調べると、《1漏電 2秘密や情報などを意図的に漏らすこと》とある。

「私はリークを『独裁制など問題のある国家が、自分たちの利益のために流す歪んだ情報』と定義すべきだと考えています。情報統制の一環であり、中国やロシアでは今も行われています。日本でも太平洋戦争中には大本営発表がありました。また、戦後はGHQ(連合国軍最高司令官総司令部)が日本のメディアを統制、自分たちに都合の悪い記事を配信することは禁止し、自分たちに都合のいい情報はリークして記事に書かせました」

 この定義に従えば、日本の主要メディアが特捜部の捜査情報をキャッチしようと全力を注ぎ、スクープとして報じることは“リーク”ではないことになる。報道内容はあくまでも“事実”だからだ。

「今、検察がどんな捜査を行っているかという記事は公益に叶いますし、何よりも国民が求めている情報です。『安倍派や二階派が派閥のパーティーを悪用し、裏金を作った』というとんでもないことが行われていたわけで、これは今すぐに報道しなければならないことは言うまでもありません」(同・ベテラン記者)
 
マスコミの責務
 マスコミ各社は、獲得した検察情報についてきちんと裏付けを取り、正確な内容だと確信を得たうえで、その情報発信が公益に資すると判断できれば記事にする――。これこそが報道機関の責務だという。

「パーティー券を巡る問題で、朝日とNHKが重要な記事を報じているのは事実です。しかし、短期間に特定の報道機関が突出してスクープを連発することは珍しくはありません。その時の担当記者の実力や取材相手に恵まれる運など、複数の要因が重なります。朝日だから、NHKだからというだけの理由で、検察が優遇することはないでしょう。来年になれば、読売や毎日がスクープを連発しても不思議はありません」(同・ベテラン記者)

 司法記者クラブに所属する朝日やNHKの記者であれば、自動的にリーク情報が入ってくるわけではない。検察官は国家公務員であり、厳しい守秘義務が定められている。司法担当記者は「夜討ち朝駆け」といった様々なアプローチを駆使し、彼らの堅い口をこじ開けようと全力を尽くす。

「例えば、アメリカの捜査機関は、相当量の捜査情報を適示開示します。そのためアメリカの記者のアプローチは、日本の司法記者とは全く異なります。一方、日本では政治家など国家権力の中枢に斬り込む捜査は東京地検特捜部が担当し、国民からも期待を集めているという歴史があります。日本の捜査機関が情報を開示することはほとんどありませんから、その動きを報じる責務がマスコミにはあります。また、強大な権力を持つ検察のチェック機能も果たさなければなりません。ある大物政治家に疑惑が浮上しても、捜査が途中でストップしたのなら司法記者は真相を報じようと取材を重ねる必要があります」(同・ベテラン記者)

バランスの取れた取材
 これまでに「検察リーク説」を唱えてきたのは主に政治家という事実も大きい。

「政治部の記者を批判するつもりはありませんが、彼らが政治家と“一心同体”であるのは事実ですし、それが求められています。そして、特捜部が動くと、政治家は政治部の記者に『検察のリークだ』と、それこそリークするのです。この真偽を正しく見定めるためには、やはり検察の捜査情報をキャッチすることが求められます。報道機関は一方で政治家、もう一方で検察に取材を重ねることで、バランスの取れた報道を行っていると思います」(同・ベテラン記者)

註1:リクルート捜査沈黙に乱れる情報(ニュース三面鏡)(朝日新聞:1989年4月6日夕刊)

註2:「検察リーク」 権力報道PART3=検察・警察編:9(メディア)(朝日新聞:1992年8月4日朝刊)

註3:【正論】評論家 西部邁 「特捜」よ、奢るなかれ(産経新聞:1998年1月29日朝刊)

デイリー新潮編集部