戦車一台が1時間走ると乗用車の21年分の燃料を使うと言うのです。温暖化の現況は軍隊という事になりますね

 

 かつての事実上の禁輸政策「武器輸出三原則」は、国会での野党の質問に対する政府の答弁の積み重ねで固まった。
 政府は変更するなら説明責任を果たさねばならない。野党は来年の通常国会で問題点を追及し、政府の暴走を止めるべきだ。

 

 

 政府は、武器の輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則と運用指針の見直しを決定した。
 

 外国企業の許可を得て日本で製造する「ライセンス生産品」について、ライセンス元の国への輸出を全面解禁した。
 

 従来は米国がライセンスの部品に限り輸出を認めていたが、完成品を含め、米国以外のライセンス元国にも輸出できるようになる。
 

 殺傷能力のある武器の輸出に道を開く大きな転換政策だ。
 

 日本が長年、殺傷武器の輸出を制限してきたのは、国際紛争を助長する恐れがあり、憲法の平和主義の理念に反するからだ。
 

 輸出した武器で他国の人が殺傷されることがあれば、憲法9条が禁じる武力行使に、日本が加担したと見られかねない。
 

 それだけ重大な方針転換を与党の実務者12人による「密室」協議で決め、政府がそのまま追認するという判断は、国会軽視の専横というほかない。
 

 岸田文雄首相は国民にきちんと向き合うべきだ。
 

 政府は三原則の改定と同時に、米国企業のライセンスに基づく地対空誘導弾パトリオットミサイルの米国への輸出を決定した。
 

 殺傷武器輸出の第1号となる。政府がここまで急いだのは、ロシアの侵攻が続くウクライナへの武器供与で装備品不足にある米国への配慮だろう。
 

 今回の改定は、ライセンス元国から第三国への再輸出も可能とし、その場合、「戦闘が行われている国」は認めないとした。
 

 だが、ライセンス元国が武器をどう使うかを日本が検証するのは難しい。厳密な制限規定になっていないと言わざるを得ない。
 

 一方、国際共同開発する装備品の第三国輸出や、輸出を認める非戦闘5分野の見直しは、公明党の慎重姿勢により先送りされた。
 

 政府は英国、イタリアとの間で次期戦闘機の共同開発の協議が本格化する来年2月末までに結論を出すよう与党に求めている。
 

 公明党は「平和の党」を標榜(ひょうぼう)するなら、しっかり歯止めを掛けるべきだ。最後は容認する結論ありきの抵抗であれば、支持した有権者からも理解は得られまい。
 

 かつての事実上の禁輸政策「武器輸出三原則」は、国会での野党の質問に対する政府の答弁の積み重ねで固まった。
 

 政府は変更するなら説明責任を果たさねばならない。野党は来年の通常国会で問題点を追及し、政府の暴走を止めるべきだ。

 

 

<社説>水俣条約10年 世界の脱水銀を確実に

 
 日本の公害病の原点とされる水俣病を教訓に、水銀による環境汚染や健康被害の防止を目指す「水銀に関する水俣条約」の採択から今年で10年になった。
 
 水銀は人体に有害であるばかりでなく、自然界に蓄積して生態系に悪影響を及ぼす。
 
 水俣病の公式確認から70年近くたつが、世界の脱水銀の取り組みはいまだ道半ばと言える。
 
 喫緊の課題の一つが、水銀を使う蛍光灯の製造禁止を円滑に進めることである。
 
 先月の第5回締約国会議(COP5)は直管蛍光灯の製造と輸出入を2027年末までに禁止することなどで合意した。水銀の排出削減に一定の効果が期待される。確実に実行しなければならない。
 
 日本は条約制定を主導した立場だ。国内の発光ダイオード(LED)照明への切り替えを率先して加速させる必要がある。
 
 併せて、水銀処理・処分のさまざまな知見や技術を途上国などと一層共有し、「水銀のない世界」の実現に貢献してもらいたい。
 
 今回の合意により、25年末での製造・輸出入禁止が既に決まっている電球形蛍光灯と合わせ、全ての一般照明用蛍光灯の製造が終わることになる。
 
 ただし、28年以降も使用や在庫品販売は継続できる。
 
 日本のLED照明普及率は50%ほどだ。政府は地球温暖化対策もにらみ30年時点で100%の目標を掲げる。事業所などで照明の交換が進むよう広報や補助制度の拡充に力を注ぐべきである。
 
 蛍光灯の問題のほかに気がかりなのは、海外の鉱山などで多くの水銀が使われていることだ。
 
 ブラジルのアマゾン川流域では食用魚の2割から安全基準を超す濃度の水銀が検出されている。
 
 金を採掘する際に使用する水銀の排出が主な原因とされる。障害がある新生児が増えるなど深刻な健康被害も出ているという。
 
 ブラジルは水俣条約の締約国でもあり、水銀汚染をただちに止める責務がある。国際社会も健康被害をゼロにする施策を促し、履行を支援してほしい。
 
 水俣病の被害は化学肥料などを製造する企業チッソが、海に流したメチル水銀が原因だった。
 
 COP5では水俣病の被害者がスピーチを行い、「水銀の被害を受けると一生、病気から逃れることはできない。水銀の怖さを知ってほしい」と訴えた。
 
 世界はこの声に真摯(しんし)に耳を傾けて対策を急がねばならない。