G6が鼻白む岸田ジャパンのペラペラ人権感覚…LGBT法案は完全骨抜き、性加害疑惑も追い打ち

 

 岸田首相が腕まくりで臨むG7広島サミットが19日に始まった。ウクライナ情勢を中心に幅広いテーマが議論のテーブルに載せられ、岸田首相は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化していくG7の強い思いを発信したい」と意気込むが、むしろ日本の人権意識の低さが浮き彫りだ。

 懸案のLGBTなど性的少数者をめぐる法整備は、自民党の保守派が骨抜きにする一方、ジャニーズ事務所創業者による性加害問題が大炎上。歌舞伎役者の市川猿之助さんが共演者に対する性加害疑惑を報じられた直後、救急搬送される事件も起きた。

 G7で唯一、同性婚を認めず、性的少数者の差別禁止を明記した法律がないまま、岸田首相が全力で見せる「やってる感」は鼻白みもの。成功裏に終われるのか。

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 性的少数者の権利促進はサミットの議題のひとつで、共同声明に権利保護を明記する方向で調整が進められている。だが、この2年というもの、自民は法整備をなおざりにしてきた。

 岸田首相が2月の国会審議で同性婚法制化について「社会が変わってしまう」と答弁した流れで、首相秘書官(当時、のちに更迭)が「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」と差別発言。世論の反発や国際社会の冷視線に焦った岸田首相が法案提出を茂木幹事長に指示し、ようやく動き出したのだが、やったことは自民も含む超党派議連がまとめた「LGBT理解増進法案」の形骸化だった。

 保守派の声がデカい自民は議連での合意をまたも反故にし、「性自認を理由とする差別は許されない」という文言を「性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」に修正。18日、自公与党で法案を国会に提出し、反発する立憲民主党と共産党などは議連がまとめた元の法案を出した。

 

 

米駐日大使のツイートに自民議員が噛みつく異常

 

 この一事をもってしても、人権蹂躙政治がまかり通っていることが丸分かり。追い打ちをかけているのが、ジャニーズ事務所を創業した故・ジャニー喜多川氏による性加害問題だ。1960年代から関連報道はあったものの、ジャニーズ人気にあやかる大手メディアは黙殺。

 安倍元首相も人気取りでジャニタレと会食を繰り返すなど、事務所に箔をつけるようなこともしてきた。それが、英BBCによる報道で一変。被害者の告発も相次ぎ、NHKも「クローズアップ現代」で詳報するに至った。

「性的少数者への差別を禁じる法整備を強く求めている米国のエマニュエル駐日大使のツイートに、自民の和田政宗参院議員が噛みついていたのには驚きました。15カ国の駐日大使のメッセージを寄せた動画をリツイートし、〈米国大使の立場を利用し作用させたいと思うのであれば、我々は即刻帰国させるための行動を取る〉と書き込んでいた。

 政府の一員だったこともある与党議員が、米国の外交使節トップにペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)を宣告したわけです。不平等条約の日米地位協定をめぐっては歯向かわないのに、この問題では大騒ぎ。アベ的なるものの深刻な浸透を痛感します」(高千穂大教授の五野井郁夫氏)

 入管法改正案の参院審議もメチャクチャなことになっている。ヨソの人権に口を出す前に、足元をなんとかせいという話だ。

 

 

 

 日本共産党、立憲民主党、社民党は18日、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」が2021年にまとめたLGBTQなど性的少数者の権利と尊厳を守る「LGBT理解増進法案」を衆院に共同提出しました。自民、公明両党も同日、与党修正案を衆院に提出。当初あった「差別は許されない」の文言が「不当な差別はあってはならない」に変わるなど後退した内容です。

 

 

 野党が提出した法案は、法の目的と基本理念に「全ての国民が、その性的指向又は性自認にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重される」「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」と明記。国・地方公共団体の施策の策定・実施に努める等を盛り込んでいます。

 提出後の記者会見で立憲民主党の大河原雅子衆院議員は「私たちの法案は2年前に超党派で合意をしている。LGBT差別解消を国民全員で共有したい」と述べました。

 日本共産党の宮本岳志衆院議員は「自民党の議論は国民にオープンにされず、当事者にも見えない。『性自認』を『性同一性』に言い換えるなど大幅に後退している」と批判し、今国会での成立を目指すと強調しました。