統一教会系閣僚9人。安倍政権と変わらぬ菅政権の「新宗教・スピリチュアル・偽科学」関係


菅政権の新宗教・スピリチュアルなどとの関係
昨年、第4次安倍再改造についてカルト集団や社会的に問題視される宗教団体、スピリチュアル、ニセ科学などと関わりを持つ閣僚を調べた。〈参照:第4次安倍改造内閣の知っておくべき側面。統一教会系閣僚11人、その他の問題集団との関係も枚挙に暇なし|HBOL〉

 そこで、今回も同じ要領で、今年9月に誕生した菅義偉内閣の面々について調べてみた。結果、全体的な傾向としては安倍内閣とほぼ変わらない「カルト内閣」ぶりであることがわかった。

 「カルト問題」においては一般的に、具体的な人権侵害行為を行う集団を「カルト」と呼ぶ。思想の是非は基本的に関係がない。また人権侵害の内容や程度は団体ごとに違うため、カルトと非カルトを明確に線引きはせず、問題の度合いに応じて「カルト的」「カルト性がある」などという言い方をする。

 しかし閣僚等の問題に関しては、この定義よりも幅を広げて、思想や主張の内容も含め人権侵害につながる可能性があり社会的に批判あるいは問題視されている団体もとりあげる。便宜的に「カルト」という言葉を使うが、いわゆる「カルト問題」で言われる「カルト」とは少々違うという点に留意していただきたい。
 
トップ3は日本会議、神政連、統一教会
 菅内閣の閣僚の全体像をまとめると、こうなる。カッコ内は、安倍首相辞任時点の安倍政権の数値。

神道政治連盟:16人(15人)
日本会議:13人(14人)
統一教会(現=世界平和統一家庭連合):9人(11人)
不二阿祖山太神宮:5人(4人)
霊友会:4人(4人)
統合医療:2人(2人)
親学:2人(2人)
幸福の科学:1人(1人)
世界救世教:1人(1人)
創価学会:1人(1人)
ワールドメイト:1人(1人)
EM菌:2人(1人)

 大臣以外の役職者と党4役をあわせた全体の状況は以下の通り。

神政連:50人(40人)
日本会議:38人(34人)
統一教会:15人(19人)
不二阿祖山太神宮:12人(12人)
創価学会:7人(4人)
ワールドメイト:6人(2人)
霊友会:6人(5人)
統合医療:5人(4人)
EM菌:5人(2人)
親学:3人(3人)
幸福の科学:2人(4人)
スピリチュアル議連:1人(2人)
世界救世教:1人(1人)
その他1:3人(5人)
その他2:1人(1人)
その他3:1人(1人)

 内閣の全役職者と党4役の各人に、1つの団体との関わりにつき「★」を1つ付けた。安倍内閣では、1人あたりの星の数の平均は1.73。菅内閣では1.65となった。上記の団体別の人数を見ても分かる通り、多少の増減こそあれ、おおむね安倍内閣と同様の傾向にあることがわかる。



 昨年、第4次安倍再改造についてカルト集団や社会的に問題視される宗教団体、スピリチュアル、ニセ科学などと関わりを持つ閣僚を調べた。〈参照:第4次安倍改造内閣の知っておくべき側面。統一教会系閣僚11人、その他の問題集団との関係も枚挙に暇なし|HBOL〉

 そこで、今回も同じ要領で、今年9月に誕生した菅義偉内閣の面々について調べてみた。結果、全体的な傾向としては安倍内閣とほぼ変わらない「カルト内閣」ぶりであることがわかった。

 「カルト問題」においては一般的に、具体的な人権侵害行為を行う集団を「カルト」と呼ぶ。思想の是非は基本的に関係がない。また人権侵害の内容や程度は団体ごとに違うため、カルトと非カルトを明確に線引きはせず、問題の度合いに応じて「カルト的」「カルト性がある」などという言い方をする。

 しかし閣僚等の問題に関しては、この定義よりも幅を広げて、思想や主張の内容も含め人権侵害につながる可能性があり社会的に批判あるいは問題視されている団体もとりあげる。便宜的に「カルト」という言葉を使うが、いわゆる「カルト問題」で言われる「カルト」とは少々違うという点に留意していただきたい。

日本会議と神政連


 日本会議・神政連については、日本会議国会議員懇談会や神道政治連盟国会議員懇談会に所属する人物をカウントした。閣僚以外の役職者まで含めるとあまりに多いため逐一名前を挙げることは避けるが、安倍内閣と比べて菅内閣では神政連系が10人増え、日本会議系は4人増えた。

 神政連はその名の通り神道系団体で、日本会議は、新生佛教教団、崇教真光、解脱会、黒住教、佛所護念会教団、霊友会など様々な宗教団体や関係者が関わる寄り合い世帯。その源流に、また現在の活動の広がりに、初代教主時代の生長の家で活動していた人々が関わっていることは、著述家の菅野完氏が『日本会議の研究』等で指摘している。

 「カルト問題」に取り組む、いわゆる「反カルト運動」において日本会議や神政連といった宗教的保守運動が槍玉に上がる場面はほぼない。これは、いわゆる「反カルト運動」が政治的に中立であることと、思想ではなく実際の行為を基準としてカルトを捉えていること、個人の被害事例に立脚して「カルト」を捉えていること等によるものだろう。イメージとしては、消費者問題の宗教版の色合いが強い。

 もちろん、思想が保守的であるとことが必ずしも具体的な人権侵害に直結するとは言い切れない。また日本会議や神政連について「壺を売りつけられました」「全財産を奪われました」といった類いの相談が寄せられているという話も聞かない。従来のカルト問題で中心的に扱われてきたような信者個人への「被害」や、それを予測させる実態についての情報がなく、「反カルト運動」において日本会議や神政連は「カルト」として扱われていない。

 こうしたカルト観や定義は、信仰に乗じて組織や指導者が個人の精神を束縛し人権侵害や財産・労働力・性の搾取を行うというカルト問題の構造への問題提起だ。政治性に左右されず人権侵害行為への問題提起に徹するために、「反カルト運動」における「カルト観」は現状のままである必要がある。

 しかしそれはそれとして、政治の分野においては、外交、安全保障、憲法改正、復古的家族観、性差観等、日本会議・神政連や関係者たちの主義主張は「人権」に関わる重大な問題を伴う。また日本会議は様々なフロント的な組織やイベントを通じて政治運動を展開しており、そこに統一教会系政治団体「国際勝共連合」等が関わる場面もある。国会議員以外も含めて、日本会議関係者が勝共連合の活動にも関わる場面もある。

 こうしたことから、カルト問題におけるカルトの定義に当てはまらない日本会議や神政連も、ここでは「カルト内閣」の構成要素に加えている。以下の各団体や分野についても同様で、「カルト」とは言えない、あるいは言い切れないものも含んでいる。

 

 
9人の統一教会系閣僚

 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は、オウム真理教などと並んで日本の代表的なカルト集団だ。旧称である統一教会の正式名が「世界基督教統一神霊協会」であることからわかるように、キリスト教の一派であるかのように自称してきた側面もある。

 韓国で生まれた統一教会は1960年代に日本に上陸。「原理運動」と称して、反共活動を伴う宗教活動を展開した。

 入信した信者がのめり込んで親との関係を断ったり学業等を疎かにするなどしたことから70年代には「親泣かせの原理運動」という言葉も生まれた。80年代には高額な宗教グッズを売りつける「霊感商法」が社会問題化し、90年代にかけてピーク時には年間100億円を超える被害相談が寄せられた。現在でも年間数千万円から1億円近い相談が寄せられている。90年代には歌手の桜田淳子が入信し合同結婚式に参加すると発表して、多くのメディアに報道された。

 大学構内や周辺、繁華街の路上、戸別訪問などで、統一教会であることを隠して勧誘する「偽装勧誘」も問題視されている。アンケートやボランティアサークル、家系図の勉強会など、様々な名目で近づき、統一教会の教義であることを知らせないままフロント組織の施設で教義を勉強させる。

 2015年に統一教会は「世界平和統一家庭連合」に名称変更。現在では、路上勧誘などの際に相手に見せる印刷物にこの新名称を記載しているケースもある。しかし「あの統一教会」であることは敢えて告げなかったり、霊感商法の問題を指摘すると「あれは教団ではなく一部の信者が勝手にやったこと」などと言い訳して、社会的に批判されている実態について隠したり偽ったりする。

 この統一教会と付き合いがある閣僚9人は、以下の通り。

首相・菅義偉:2013年7月、北村経夫候補を統一教会福岡教会など2教会に講演手配。2017年5月、金起勲北米会長が率いるワシントンタイムズ一行を首相官邸に招待。

副首相・麻生太郎:2011年に統一教会系のワシントンタイムス紙に掲載された全面意見広告に賛同者として氏名記載。

総務相・武田良太:2017年2月、韓国で開かれた統一教会による世界平和国会議員連合の総会で同教団の韓鶴子総裁 から統一教会を国の宗教にするという“国家復帰”指令を受任。2017年7月、統一教会の誘いでアメリカ外遊、ワシントンDCの米下院議院会館で「韓日米の国会議員カンファレンス』やニューヨークの国連本部で「韓日米有識者懇談会」に出席、統一教会・韓鶴子総裁主賓の超宗教フェスティバル「真の父母様マジソンスクエアガーデン大会」に出席。2018年10月、キャピトルホテル東急で開かれた国際勝共連合50周年大会に出席。

文科相・萩生田光一: 2014年10月、東京・八王子市芸術文化会館大ホールで開かれた「祝福原理大復興会」で来賓として祝辞。2014年、はぎうだ光一後援会が世界平和女性連合に会費1万5000円を支払い。2017年、自民党東京都第二十四選挙支部が世界平和女性連合に会費1万5000円支払い。

防衛相・岸信夫:2006年5月13日に統一教会系天宙平和連合(UPF)「祖国郷土還元日本大会」福岡大会に祝電。

内閣官房長官・加藤勝信:2014年と2016年にそれぞれ、自民党岡山県第5選挙区支部が世界平和女性連合に会費1万5000円支払い。2018年7月(当時、厚労大臣任期中)、岡山県岡山市のジップアリーナで開かれた「復興記念・2018孝情文化ピースフェスティバルin OKAYAMA」に秘書を代理出席。「心よりお喜び申し上げます」「敬意を表し感謝を申し上げます」とのメッセージを寄せた。

復興相・平沢勝栄:2006年5月24日に統一教会系天宙平和連合(UPF)「祖国郷土還元日本大会」東京大会に祝電。

国会公安委員長・小此木八郎:・2006年5月23日に統一教会系天宙平和連合(UPF)「祖国郷土還元日本大会」横浜大会に祝電。

デジタル改革担当相・平井卓也:・2016と2017年に、統一教会関連イベント「PEACE ROAD」四国香川県実行委員長。2016年6月1日、Facebookで、統一教会の2世組織「勝共UNITE」の前月末のデモについて「このようなデモはあまり報道されませんが、学生はシールズというイメージは間違いです」と書き込み、アピール。

 このほか、菅内閣の大臣以外の役職者で統一教会と関わりがあるのは、以下の5人。

内閣官房副長官・坂井学
内閣府副大臣・三ッ林裕巳
経済産業副大臣・江島潔
防衛副大臣・中山泰秀
総務大臣政務官・谷川とむ

 さらに、自民党政調会長・下村博文も、統一教会関連団体のイベントでの講演や関連団体への会費支払等が確認されている。
 
アウストラロピテクスの時代に天皇の王朝があった?

 安倍内閣同様、菅内閣でも統一教会に次ぐ勢力を誇るのが「不二阿祖山太神宮」(山梨県富士吉田市)。偽の古文書「宮下文書」を根拠として、200~300万年前の富士山麓(富士高天原)に天皇を頂点とする「富士王朝」(古代富士王朝)があったとし、その文明において天皇家縁の神社だった「不二阿祖山太神宮」の再建を目指している。

 人類の誕生は約100万年前。200~300万年前と言えば、猿人・アウストラロピテクスの時代だ。古事記も日本書紀もあったものではない。

 またこの宗教団体の設立は2009年。200~300万年前の「富士王朝」とは関係がない。「病気が治る奇跡の水」なるものを販売していた過去もある。

 政治との関連で問題なのが、関連NPO法人の名義で年1回開催している「FUJISAN地球フェスタWA」。学研『ムー』編集長を講師に招き「富士高天原ツアー」や「富士王朝」に関する講演会を開催するなど、教義に結びつけるような企画を含んでいた年もある。

 このイベントの初期に「代表発起人」と「名誉顧問」を務めてきたのが安倍首相の夫人・昭恵だ。彼女が関わりを持つようになって以降、多い年には47もの行政機関から後援を取り付けた。また70名近い国会議員が顧問などを務める。

 いわゆる「カルト」のような事件を起こしている団体ではない。しかし「FUJISAN地球フェスタWA」は子供連れ客の来場も想定した内容で、教育委員会などの教育関係機関も多い年で17も後援につく。偽史に基づいた宗教イベントに国会議員ばかりか子供まで巻き込んでいる。カルトというよりニセ科学に近い問題だろう。

「FUJISAN地球フェスタWA 2020」は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止となったが、今年も現職の国会議員58人が顧問等で名を連ねた。2015年以降、毎年皆勤の国会議員は54人もおり、政党別では自民44、公明5、維新2、国民1、立憲2となっている。

「FUJISAN地球フェスタWA 2020」の役員を務める閣僚は、以下の通り。全員が、2015年から現在までの「皆勤賞組」だ。

総務相・武田良太:特別顧問、代表発起人
厚労相・田村憲久:顧問
一億総活躍担当相・坂本哲志:顧問
経済再生担当相・西村康稔:顧問
国際博覧会担当相・井上信治:顧問

 閣僚以外の内閣の役職者は、以下の通り。こちらも全員が2015年以来の「皆勤賞組」。

厚生労働副大臣・三原じゅん子
農林水産副大臣・葉梨康弘
農林水産副大臣・宮内秀樹
総務大臣政務官・谷川とむ
内閣総理大臣補佐官・木原稔

 党4役では、選対委員長・山口泰明も2015年以降、毎年顧問を務めている。

※敬称略

<取材・文・図版作成/藤倉善郎 取材協力=鈴木エイト>
藤倉善郎
ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)