3密を避け、人との接触を8割減らす!という目標を打ち出したのが「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」。その顔が尾身茂副座長(70)で、現在は地域医療機能推進機構理事長を務める。一方、安倍晋三首相に日夜、情勢をレクチャーするのは、厚労省の鈴木康裕医務技監(61)。この表と裏ともいうべき、2人の御用学者の履歴を振り返ってみると……。

ワイドショーのMCみたい

「安倍さんの官邸での会見は、なんだかニュース番組のキャスターとかワイドショーのMCみたいになっていますよね。安倍さんがいて、一応は語りますが、細かいところとか数字の点はぜんぶ尾身さんに振る。まあ、記者に突っ込まれても科学的に根拠のある数字を安倍さんが答えられるとは思えないので、仕方ないスタイルではありますが……。異例のことばかり起こるこのご時世の中で、やはり異例中の異例でしょう」

 と話すのは、永田町関係者。

「MCの安倍さんから話を振られる側の尾身さんは、いわゆる御用学者でないといけないわけで、それはもちろん尾身さんにも了解してもらっている。政府の方向性や主張、展望とは外れないようになぞるように尾身さんが話すということですね」

 尾身副座長は、1949年生まれ。受験の年に東大入試が紛争で中止になって、慶応大法学部に入学。在学中に医学を志し、慶大を中退して地域医療充実のために新設された自治医大に入学した。へき地医療に携わった後、厚生省の技官となり、WHO(世界保健機関)に派遣され、西太平洋地域事務局長として、ポリオ撲滅に尽力した。

「尾身さんは2003年、SARSの流行を水際で防いだ立役者と言われていますね。鳥インフルエンザの脅威を世界にアピールしたことでも評価を受けている。ただ、SARSに関しては、矢崎義雄さんの貢献も非常に大きいものでした」

 と、事情を知る関係者。

「矢崎さんは東大の元医学部長で、現在はスキャンダル続きの東京医大立て直しのために理事長を務めています。その矢崎さんが国立国際医療センターの総長時代、小泉さん(純一郎首相)に請われて、SARS対策に奔走したんですよね」

「2006年に当時のWHO事務局長が急逝した際に、日本代表として擁立されましたが、結果は中国が推薦した香港出身の候補に敗れました。アピールが足りないから在外公館を増やそうとか、色んな議論が起こりましたね。今もそうですけれど、あの頃から中国の息のかかった人がトップに立っていたわけですね。尾身さんはその後母校の自治医大教授になって、6年前から今のポジションに就きました」

 専門家会議に対しては、緊急事態宣言が延長され、「新しい生活様式」なる行動スタイルの提案がなされるに至って、国民の不信感は増幅して行く。当然、表の御用学者である尾身副座長も様々な批判にさらされたわけだが、一方で、裏の御用学者が、厚労省の鈴木康裕医務技監である。

「首相動静」を確認すると、事務方のスタッフで連日のように官邸を訪ねているのが、今井尚哉首相補佐官、北村滋国家安全保障局長、秋葉剛男外務事務次官らに加えて、この鈴木氏だ。

 

アビガン推しだった

「鈴木さんは現在、新型コロナウイルス感染症対策本部の事務局長ですね。政府の政策のとりまとめを担当しています。医務技監は事務次官級のポストとして2017年に新設され、保険局長だった鈴木さんが初代として昇格しました。医師免許を持つ医系技官の最高位です」

 と、取材を担当する記者。

「当時の塩崎恭久厚労相が決めた人事ですね。なかなかドラスティックでした。鈴木さんは慶応大医学部出身で、1984年入省。WHOでの勤務経験もある国際派とされている。塩崎さんは国際医療に注力したいという思いがあって、鈴木さんを引き上げたんです。塩崎さんの後の加藤勝信さんにもうまく取り入って、その頃からなかなかの御用学者ぶり(笑)。2年務め、2019年に再任・続投しています」

 と、担当する記者。

「バランス感覚に秀でた人物という評価がある一方で、何か功績があるのか?と忌み嫌う人もいて、それが相半ばしている印象です。鈴木さんと言えばアビガンですね。石田純一やクドカン(宮藤官九郎)が効いたと公言したり、あの岡田晴恵白鴎大教授も医療従事者にはアビガンを持たせるべきだという主張をしていましたが、ご存じのように催奇形性がある。厚労省には薬害のトラウマがあり、アビガンにはネガティブな空気が強かったのですが、その中で、鈴木さんは“アビガンは良い薬”という考えの持ち主で、実際にこの薬を推していました。ただ、厚労省のトップとなった現在は、アビガンについては慎重な姿勢を取ったりしているようで、なかなかの“政治家”かもしれません」(先の関係者)

 厚労省、WHOでキャリアを積んできた2人の御用学者に、コロナ禍の日本の運命が託されていることは間違いない。

週刊新潮WEB取材班