自民から共産まで賛同しているのになぜ、実現しないのか」――。共産党の小池晃書記局長はいら立ちを隠さなかった。7日、自粛要請に伴う補償を求める「#SaveOurLife」が都内で開いた会見のひとコマだ。

 小池ら国会議員4人のほか、ライブハウス、ミニシアター、居酒屋、美容師、非常勤講師、ジム、ホスト、セックスワーカーなど幅広い業種の23人が参加。苦しい実情を思い思いに訴えた。

 

 

 


 その場で小池が賛同したのは、同じ壇上にいた自民党の安藤裕衆院議員の提言だ。GDP押し上げ効果のある「真水」100兆円の2次補正を組み、「持続化給付金」などを拡充して事業者の損失を回復させる――。誰もが納得の救済プランが、なぜ進展しないのか。安藤本人に聞くと、「財政規律に縛られた財務省がかたくなに出し渋る。政権トップの決断の時期です」と強調した。

 

 財政規律が大事で、赤字国債はよくない。財務省の発想をよく解釈すれば将来世代への負担を減らしたいのだろう。

 だが、それは平時の原則。この緊急時に、あらゆる事業や人々が生き延びなければ「将来」はない。

 

銀座、渋谷、新宿など都心の商業地では100万円単位の家賃が、ざら。上限の50万円でもスズメの涙だ。特定警戒13都道府県のうち、東京と石川では家賃相場は大きく異なるのに、同じ網にかけるのはナンセンスだ。

「#SaveOurLife」に参加した事業主らは口々に家賃支援を求めたが、こんなドケチ策では救われない。その窮状にトドメを刺すのが、例の「新しい生活様式」の定着である。

 

 

 


〈帰省や旅行はひかえめに〉〈持ち帰りや出前、デリバリーも〉〈大皿は避けて、料理は個々に〉〈横並びで座ろう〉〈多人数での会食は避けて〉などの妄言の肝は平然と関連企業を潰しかねないことだ。経済アナリストの菊池英博氏はこう言った。

「事業継続に必要な補償を与えないまま、終息には『生活を変えろ』と人々に強要するのは飲食、小売、交通、宿泊、観光業などへの死刑宣告に等しい。それでいて『Go To キャンペーン』に約1・7兆円もの予算を計上するのは、支離滅裂です。自民党幹部が安藤議員に言い放った『もたない会社は潰す』が政権の本音で、首相もコロナ危機でも生き延びた“強い企業”だけ残ればいい、と思っているに違いない。むしろ、危機が長引くほどアベノミクスの大失敗も新型コロナウイルス感染拡大のせいにできるし、政権延命にもつながるとさえ、考えている節すら感じます。弱者見殺しの残酷な政権です」

 

 

 


 庶民が塗炭の苦しみでもがいている今こそ、一斉休校でみせた「政治決断」を発揮し、積極財政に転じるべきなのに、安倍首相はやる気ゼロ。不良品だらけのアベノマスク2枚と一律10万円給付で人々を黙らせたつもりなのか、喫緊の課題の家賃支援も自民党の岸田政調会長に丸投げだ。

■関連企業にトドメ刺す新たな生活様式

 8日、安倍に提言した自公与党の家賃支援策もヒドイ。中小・個人事業主に家賃3分の2を半年分、直接支給を柱に掲げるが、中小事業者は全国一律で月額50万円、個人事業主は同25万円を上限に縛りをかけようとする。

 

保身で三権分立すら破壊のおぞましい性分

 渋チン政権は補償そっちのけで、不要不急な法案のスピード採決にはシャカリキだから、もうムチャクチャだ。

 衆院内閣委員会はきのう、検察庁法改正案の実質審議を野党の反対を押し切って委員長職権で強行した。改正によって検察官の定年を63歳から段階的に65歳へ引き上げる。現行法は検事総長のみ定年65歳だ。

 

 

 


 問題はコロナのどさくさ紛れで、検察幹部人事への恣意的な政治介入に道を開くことだ。検事長などの幹部職は63歳で退く「役職定年制」を設けつつ、定年を過ぎても内閣が認めればポストにとどまれる。時の政権が“お気に入り”を特例的に留任できるのだ。どう考えたって、猛批判を浴びた“政権の守護神”こと、黒川弘務東京高検検事長の定年延長を後付けで正当化する帳尻合わせではないか。幹部人事が政権の腹ひとつで決まってしまえば、検察官の政治的中立性や厳格な独立性が崩れ、三権分立すらブチ壊しかねない。まさに世紀の暴挙である。

 

この政権は法の正義を捨て去る無謀な企てを押し通すため、悪知恵も重ねる。まず役人の定年を60歳から65歳へ段階的に引き上げる国家公務員法改正案と抱き合わせ、検察庁法改正案をその「束ね法案」として国会に提出。法務委員会ではなく、内閣委で審議されることになった。

「口頭決裁」などのポンコツ答弁で不評を買った露骨な森法相隠し。黒川氏の定年延長を追及する野党は、森の出席を求めたが、認められず委員会を欠席。自公与党と日本維新の会のみで審議は進んだ。

 

 

 


 さらに公務員の定年延長の実現は自治労の要求でもある。抱き合わせは自治労をバックに選挙を戦う野党には頭痛のタネで、露骨に反対できないとの狙いだろう。つくづく、卑しい連中だ。

■人の命よりも自分のレガシー優先

 検察庁法改正案は早ければ来週13日にも衆院内閣委で強行採決される見込み。現在の稲田伸夫検事総長は、7月で勇退が慣例である就任丸2年を迎え、8月14日の誕生日に65歳の正式定年となる。

 

それまでに安倍政権はスピード決着させ、政権の守護神を次期検事総長に据えたいのだ。

「三権分立すら恐れない政権側の横紙破りは、首相自身が桜を見る会の問題で刑事告発されていることと無関係ではないはず。息のかかった人物を検察トップに就け、内閣に決して背かない検察を構築したい。自分が首相を辞めた後も、自殺した近畿財務局職員の手記発表で、風向きが変わった森友問題で訴追されることも避けたい。そんな身勝手な思惑を感じます」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)

 

 

 


 コロナそっちのけで自分のために“検察人事”を強行採決――。安倍はどこまで卑しいのか。いつも自己保身に汲々とする。とにかく長く権力を維持したい。だから選挙に勝つためなら、嘘八百で何でもアリ。責任逃れの逃げ口上を重ねる体質により、森友文書改ざん問題で職員1人が犠牲になっても屁でもない。

 

安倍が五輪開催に固執し、コロナ対策の初動が遅れたのも、わが身可愛さの表れ。この国の人々の命よりも自分のレガシーづくりが最優先。常に公益よりも私欲を選ぶのが、この男のおぞましい性分なのである。政治評論家の森田実氏が言う。

「人命を救うという『公益』のために生じる負担や損害を社会全体で補う。それが補償の意義なのに、いまだ政権が満足に支給しないのは、国の税金を自分のカネだと思い込んでいるからでしょう。そう疑いたくなるほど、この政権は正義と公正に逆行し、政治権力を私物化してきました。論語の『政は正なり』から激しく逸脱した卑しい姿がコロナ危機でまたしても露呈したのに、大マスコミはどう描くのか。もっと醜い正体をありのままに伝えるべきです」

 

 

コロナ禍に世紀の暴挙 ドサクサで”検察人事”法強行へ

もはや安倍の存在こそ公益の最大の邪魔だ。